【竹田栄紀】新型コロナウイルスの感染拡大は、留学生の生活を一変させたといわれる。身近に頼れる人が少ない留学生は孤立してしまうことも多い。つくばには多くの外国人が暮らす。10月から秋学期が始まる筑波大学(つくば市天王台)で、留学生の生活の現状を探った。
アルバイト収入ゼロに
筑波大大学院生命科学研究科修士2年の中国人留学生、楊逸暉さん(27)は来日4年目。来年、日本の製薬会社に就職予定だ。新型コロナの影響で来日時から志望していた観光業の新卒採用が滞ってしまい、志望業種の変更を強いられた。

楊さんは「留学生の枠はもともと限られており、そこに新型コロナによる混乱、新卒採用見送りなどが重なって苦しい就職活動となった」と振り返る。
「親からの仕送りで生計を立てている。親が公務員ということもあって仕送り額に影響はなかったが、アルバイトは大学の補助員をしていたため、仕事がなくなり収入はゼロとなった」
精神面への影響も大きいという。「長期休暇には毎回、帰省をしていたが、次にいつ帰れるか分からない。SNSのWeChat(ウィーチャット)で週に何回か連絡して寂しさを紛らわせている」と嘆く。
大学のサポートに高評価
人文・文化学群のモンゴル出身女子留学生(20)は10月から3年次に進級予定だ。卒業後は大学院への進学を考えている。
「生入は主にアルバイトと奨学金。アルバイトは幸いシフト減の影響は受けなかった。モンゴルと日本は物価差が大きく、元々自力でやりくりしていた。日本は奨学金も見つけやすいし、大学のサポートもしっかりしている方だと感じる」と語った。
大学は、オンラインで基本情報登録をした留学生全員に12万円の支援を実施した。日本人学生への支援金1万5000円~3万円と比較しても、より手厚く支援する形をとった。「申請しやすかった」と留学生からの評価は高い。
公的支援分かりにくい
しかし、2人や周囲の留学生は共通して、国や市町村などの公的機関の支援の申請の仕方や条件の分かりにくさを指摘した。特に文科省の「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』は、留学生に対する条件が曖昧だと感じた。必要書類も多いため、日本語が不得意な場合、申請しにくいという。「存在も知らなかった」と語る留学生も多い。
大学留学生相談室アドバイザーの安婷婷助教によると「筑波大の留学生は2019年度までは増加傾向だったが、今年は新型コロナの影響で日本語学校からの留学生以外ほとんど入国できず、入学者数は少ない」そうだ。
「筑波大は日本語、英語、中国語の3言語に対応しており、さらには心理専門の相談員がおり、全国的にみて専門性も高い方だと感じる。留学生はコミュニティーが狭くなりがちで孤立してしまう場合が多い。相談室では進学・進路、対人関係、心身健康などさまざまな面から相談に乗ることができる。積極的に大学のリソースを活用して困難を乗り越えて、成長して欲しい」
同相談室では7月1日から条件付きで対面による相談を再開している。秋学期も引き続き、経済面・精神面への手厚いサポート体制が大学には求められる。(筑波大学2年 ドットジェイピーインターン生)