【コラム・坂本栄】前回のコラム(8月17日掲載)では、4年前の市長選挙で五十嵐さんが掲げた看板公約「運動公園問題の完全解決」について検証しました。今回はその関連ということで、この問題のプロセスで節目になった市議会の動きを取り上げます。結論を先に言ってしまうと、議会は「愚かな選択をした」ということです。
運動公園問題を整理すると、市原前市長が計画(陸上競技場など3施設をUR都市機構から買った土地に305億円かけて建設)を発表→多額の建設費に反対する市民運動(住民投票を求める署名活動)が活発化→議会が住民投票実施とその要領を可決→建設反対が多数を占め前市長は計画の推進を断念→「運動公園問題の完全解決」を目玉公約に掲げた五十嵐市長が誕生→それから4年経った今「問題の完全解決」は完全未解決―といった流れになります。
こういった経緯から、運動公園問題は、市民の反応に気落ちして4期目への出馬を断念した前市長にとっても、前回選挙で公約の目玉にして当選した現市長にとっても、とても重い案件であった(ある)ことが分かります。前市長は不出馬で失政の責任を取りましたが、看板公約を実現できなかった五十嵐さんはどうするのでしょうか?
現実策を封じた2択住民投票
話がそれましたので元に戻します。節目の動きは、2015年5月12日、「議会が住民投票実施とその要領を可決」した際に起きました。投票用紙の設問を、執行部が推す3択(計画に賛成、反対、見直し)にするか、市議側が提案した2択(賛成、反対)にするかで、議会が紛糾。採決の結果、2択方式が採用されました。これによって、当初の運動公園計画を見直すという、現実策を探る議論は封じられたわけです。
ところが今になって、公式競技ができる陸上競技場が欲しい、空き地になっている運動公園予定地に造ったらどうか―といった声が市議や市民の間から出ています。これは、当初計画(予定地に公認陸上競技場+サッカー兼ラクビー場+総合体育館を建設)のスケールダウン(予定地に陸上競技場だけを建設)ですから、3択の「見直し」そのものです。
もし住民投票が3択で実施されていれば、見直し+賛成が多数を占め、優先度が高かった陸上競技場はすでに完成、今ごろ利用されていたのではないでしょうか。5年前の議会は、スポーツ施設の是非という議会本来の仕事よりも、反市長会派(グループ)の政治的な思惑に支配され、賢さに欠ける選択をしたことになります。この愚かな行動により、市民の利益が大きく損なわれました。(経済ジャーナリスト)
<参考:市議の投票行動>
▼2択方式に賛成した現市議:久保谷孝夫(自民つくばクラブ・新しい風)、五頭泰誠(同)、小久保貴史(同)、神谷大蔵(同)、黒田健祐(同)、北口ひとみ(つくば・市民ネットワーク)、宇野信子(同)、皆川幸枝(同)、滝口隆一(日本共産党)、橋本佳子(同)、金子和雄(新社会党)、塩田尚(山中八策の会)=敬称略
▼3択方式に賛成した現市議:塚本洋二(つくば市政クラブ)、柳沢逸夫(同)、鈴木富士雄(同)、高野進(同)、須藤光明(同)、大久保勝弘(同)、小野泰宏(公明党)、浜中勝美(同)、山本美和(同)、木村清隆(つくば政清会)=同