【鈴木宏子】2019年2月にまとめた調査を白紙にして陸上競技場の立地場所や規模などを改めて検討する、つくば市の陸上競技場整備基本構想策定検討会議(座長・萩原武久つくば市スポーツ協会会長)の初会合が30日夜、同市役所で開かれた。11月上旬ごろ開催予定の第3回会合で、場所や規模などを改めて決める方針という。
陸上競技場の立地場所をめぐって市は、18年度に、市内11カ所の学校跡地を比較検討し(18年12月18日付)、19年2月、上郷高校跡地が最も評価が高いとして、市内大会レベルが開催可能な4種公認施設の整備を想定した調査結果をまとめた(19年5月9日付)。
その後、19年9月議会で基本構想策定費約1000万円の補正予算を計上した。しかし当時、市が旧総合運動公園用地の民間一括売却方針を示し、これに待ったをかける形で市議会が調査特別委員会を設置した。市はこれを受けて、陸上競技場の基本構想策定作業を約半年間、凍結した。この間、議会の一部から、総合運動公園用地の利活用について陸上競技場も検討すべきだなどの意見が出された。
旧総合運動公園用地の利活用について同調査特別委でさまざまな意見が出される中、議会としてどう取りまとめるのかの方向性が見えない中、市は今年3月、陸上競技場基本構想策定の業務委託に着手し、7月末、同検討会議の発足に至った。
担当の市スポーツ振興課によると、19年2月策定の上郷高校跡地を立地場所とする案は「一つのケーススタディー」だという。今回発足した検討会議で、陸上競技場の規模や施設の水準、立地場所、運営や資金計画などを改めて検討する。立地場所は上郷高校跡地に限定せず、総合運動公園用地も含め改めて検討する。来年1月ごろパブリックコメントを実施し、2月上旬に基本構想案をまとめる計画だ。
一方、19年2月時点では、上郷高校跡地に市内中学校の公式競技会が可能な水準の施設を整備する案が示され、整備水準としては400メートルトラック8レーン、インフィールドは人工芝、観客席1000席、駐車場190台—など、4種公認の競技場とする案が示された。
30日の検討会議初会合では委員から「つくば市だけでなく周辺市町村の需要も考えていくべき」「陸上だけでなく、インフィールドを天然芝にしてサッカーなど広く多く利用される施設であるべき」だなど、市が昨年2月にまとめた4種公認の施設では不十分だとする意見が多く出た。
民意は2択か3択か
【取材後記】陸上競技場の話題が出るとき、つくば市民の民意とは何かということを考えずにいられない。陸上競技場を含む総合運動公園基本計画は、住民投票により白紙撤回された。住民投票の結果は極めて重い。このとき民意は、陸上競技場だけはつくってほしいと望んでいたのだろうか。この問題は、住民投票のやり方を「賛成」と「反対」の2択にするか、「賛成」「反対」「見直し」の3択にするのか、投票方法を決める際にすでに議論されてきた。当時の議論の結果は、住民の思いは「賛成」か「反対」かの2択だとして、議会は2択の投票方式を決めた。そして投票結果を受け、前市長は計画を白紙にした。陸上競技場だけはつくるという案は3択目の「見直し」に当たる。が、2015年8月の住民投票で示された民意は、白紙撤回ではなかったのか。さらに今回、当初は学校跡地としていた調査費用をまた無駄にして、場所や規模を改めて検討し直すという。調査費も血税だ。住民投票にまで至った民意について、深く考えるべきではないのか。