【先﨑千尋】今から100年以上も前の1918(大正7)年に起きたホンモノ(?)の米騒動。米不足と日本軍のシベリア出兵に伴う投機で米価が高騰し、富山県魚津町での騒動が全国に波及し、一部では地主や米穀商への打ち壊しなどが行われ、軍隊も出動、死者も出た。
では「令和の米騒動」はどうか。騒動と言うけれど、どこでも騒動は起きていない。小泉農相の一声で始まった価格破壊の備蓄米放出で、5キロ2000円の米を買うのに朝早くから行列。買えた人は喜び、買えなかった人は落胆する様子がテレビで放映されている。喜んだり悲しんだりするのではなく、怒るべきではないのか。国民はなぜ怒らないのか。
「米作り農家は、時給10円では生活できない」と、3月に東京など全国14か所で「令和の百姓一揆」が繰り広げられたが(コラム181)、その後も米価は下がらず、日米関税交渉で農産物の輸入拡大が焦点になってきている。これは大変だと、百姓一揆実行委員会と日本の種子(たね)を守る会、農協有志連合の呼びかけで、6月4日に東京の参議院議員会館で緊急集会が開かれ、全国から100人が集まった。
生産者の声を聴いて!

集会では、常陸農協の秋山豊組合長ら9人が、現地からの報告や消費者からの提言を行った。秋山組合長は「米不足だというのに、現在でも農家は35%の減反を強いられている。そのことを消費者は知らないでいる。米の価格が急騰したのは異常気象により政府の需給見通しが狂ったからなのにもかかわらず、それを政府は認めず、転作を緩めなかったからだ。
政府が備蓄米を放出しても、7月から9月までの絶対量は57万トンも足りない。米作り農家が生産を維持できる適正価格は、玄米60キロ当たりで2万4000円、消費者価格では5キロ3420円(いずれも税抜き)。消費者価格をそれよりも下げるには政府の対応が必要になる」と、現状とこれからの見通しを述べた。
静岡県の米農家 藤松泰通さんは「周りでは耕作放棄地が増えている。また、大規模農家や米の業者の倒産、廃業も続いている。肥料などの生産資材や石油、種子などは大半が輸入に頼っており、それが入らなくなったら日本の農業はアウトだ。食料も海外依存。止められたらどうするのか。それでいいのか」と、怒りをあらわにしていた。
新潟県の石塚美津夫さんは「かつては水路や農道の整備は集落ぐるみで行っていたが、ムラ社会が崩壊し、それができなくなっている。政府はスマート農業や大型の圃場整備を進めているが、その補助金はメーカーや土木業者に行くだけではないか」と訴えた。
その他、「消費者もマスコミも価格だけに目が向き、生産者の顔や声が見えない、聞こえない。輸入米を増やす話があるが、農薬漬けで恐ろしい。食べ物は水や空気と同じで、商品ではない。米の問題は農政ではなく、生産者、国民に対する社会保障政策と考えるべき。EUやアメリカなどのように生産者への所得補償政策を進めなければ、農業生産は維持できない。5000億円の予算があればできる」などの声が出された。
最後に、令和の百姓一揆実行委員会代表の菅野芳秀さんが「百姓一揆の行動はこれからも連続して続ける。有史以来の危機なので、命がけで行動しよう。国会議員も一緒にやろう」と呼び掛けた。(前瓜連町長)