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《法律かけこみ寺》18  特別法のある金曜日

【コラム・浦本弘海】今回は時事のニュースにからめ、ちょっとマジメな法律マメ知識を。法律相互間に矛盾するルールが定められている場合、どちらを適用すればよいのでしょうか?

この点に関し、今年5月15日に、検察OBが検察庁法改正案に反対する意見書を法務省に提出したというニュースがありました。

ことの発端は(法律的には)、

1.国家公務員法は、一定の要件のもとに国家公務員の定年延長を認めている(国家公務員法81条の3)。

2.検察庁法は、検事総長の定年を65歳、その他の検察官の定年を63歳と定めており(検察庁法22条)、定年延長の規定はない。

検察官の定年延長は、現行法上許されるかという問題です。

この問題について、制定法相互間の優劣に関する3つの原則

1.上位の法は下位の法を破る

2.特別法は一般法を破る

3.後法は前法を破る

―があります。

法律そのものに書かれているわけではありませんが、この原則を否定する法律家はいないと思います。以下、3つの原則について説明します。

特別法は一般法を破る

1.上位の法は下位の法を破る

法にはいわば「格」があって、格が上の法が優先的に適用されます。格付け的には、憲法>法律>政令>省令です。

具体例を挙げますと、

日本国憲法(昭和21年憲法)>児童福祉法(昭和22年法律第164号)>児童福祉法施行令(昭和23年政令第74号)>児童福祉法施行規則(昭和23年厚生省令第11号)です。したがって、たとえば憲法に反する児童福祉法の規定は適用されません。

2.特別法は一般法を破る

一般法とは、ある分野について適用対象がより広い法、特別法とはある分野について適用対象がより狭い法です。特別法の方がその分野に特化しているので、優先的に適用されます。

たとえば、

商法(明治32年法律第48号)>民法(明治29年法律第89号)です。民法は私人の関係について広く定めておりますが、商法は私人の関係でも特に商売に関して定めています。

検察OBが提出した意見書に「『特別法は一般法に優先する』との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される」とあるのはこの点の指摘です。

意見書は、検察官の定年延長は現行法上許されないという立場です(そして、検察庁法の改正について「検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動き」として反対しています)。

3.後法は前法を破る

前にできた法と後にできた法では、後にできた法が優先されます。現状に即しているのは後にできた法なので、当然といえば当然かもしれません。

ちなみに後法ができると、前法は廃止されるか、削除、改正されますので、この原則については出番がほぼありません…。(弁護士)

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