【鈴木宏子】つくば市観光の中心、筑波山で、4月に入り、観光ホテルが休館する事態が起こっている。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響が長引き、状況は3月より深刻化している。
筑波山神社の大鳥居をくぐった入り口に位置する「筑波山温泉つくばグランドホテル」は4月8日から5月8日までの1カ月間、休館を決めた。筑波山にはホテルや旅館が計6館あるが、他の施設も宿泊客がいない平日などは休館し、土日などだけ営業している。
「赤字がより少ない」
同グランドホテルを経営するサンスイグループの東郷治久代表は、休館に踏み切った理由を「3月の宿泊客は前年同期比9割減で、1日当たり3人とか5人とか7人とか一桁の日もあった。営業すると露天風呂や庭園風呂、各客室の展望風呂などのお湯を24時間沸かしておかなけばならず維持費がかかる。観光ホテルは予約客がほとんどだが、4月に入っていた予約は3月にキャンセルとなり、4月に入ると5月の予約が消えている状態。休館すると赤字だが、試算をし、休館した方が赤字がより少ないことが分かった」と説明する。従業員には全員の雇用を維持すると伝えてあるという。
「どうしようもない」
「彩香の宿 一望」は土曜日などは、日帰り温泉の利用客があるため施設を開けているが、平日は休館している。小勝健太副支配人は「4月に入って平日に2組のお客様があっただけで、今は宿泊客がまったくない状態」だと語る。「3月だけで400人近いキャンセルがあった。1~2月は前年より良かったので3月までならなんとかなったが、4月に入って状況ががらっと変わった」という。
「日帰り温泉の利用者も7~8割減っている。全国的には温浴施設での感染が問題になっている例もあるので、今後、日帰り温泉の休館も検討している」と打ち明ける。「どうしようもない。早く収束してくれればと願うばかり」だと小勝副支配人はいう。
他の旅館関係者は「宿泊客は例年の1~2割。つくば市はホテル・旅館の宿泊客に最高7000円を補助する制度をつくったので、早く収束して、ゴールデンウイーク明けからでも制度がスタートしてほしい」と話していた。
今後について、グランドホテルの東郷代表は、当面1カ月間の休館だが、感染拡大がいつ収まるのか、予測できないともいう。「中国や韓国ではピークを過ぎたと報道されているので、そんなに長くかからないかもしれない。ただ感染拡大が収束すればすぐに経済が持ち直すということではなく、収束後に物価が急上昇して景気が悪化するスタグフレーションになるという経済学の専門家の見方もあり、収束後の経済がどうなるかも心配」と東郷代表は語る。