木曜日, 1月 8, 2026
ホームつくば【震災9年】福島に入り猫救出を経験 つくばで地域猫活動のリーダーに

【震災9年】福島に入り猫救出を経験 つくばで地域猫活動のリーダーに

【橋立多美】つくば市在住の重松聖子さん(71)には9年経っても忘れられない光景がある。住む人を失った家の中に猫の骸(むくろ)が2体並んでいた―。巨大地震、津波に続いて福島第1原発が爆発し避難指示が出された。「すぐに帰れると思い、猫が外に出ないように鍵をかけて行ったんだと思う」

2010年、県南を中心に活動している動物愛護団体のボランティアとして啓発や犬猫の保護譲渡に取り組んた。翌年3月11日に東日本大震災が発生。厳冬期を迎えようとする10月、同団体に所属する3人で福島県東部の太平洋に面した浜通り地域の警戒区域に、置き去りにされた猫の救出に向かった。

早朝に福島県に入り、富岡町の施設で防護服に着替えて線量計を首から下げた。帽子と上着、ズボン、手袋、マスクが渡された。手袋は3重、靴は2重のビニールで覆った。

双葉町や大熊町、楢葉町、浪江町など大地震でインフラや建造物の倒壊が相次いだ被災地で、とり残された猫を探し回った。犬はほかの愛護団体が保護した。

「枯れた草の中に猫が隠れていないかと分け入る度に線量計の針が大きく振れた。自分の被ばく線量より生きている子を助けたいという思いが強かった」と振り返る。震災から半年以上空腹に耐えてまちをさまよった猫たちの体は、汚れてやせ細っていた。

街灯を流された被災地は明かり一つない。午後4時過ぎに活動を打ち切った。この日保護した猫は10匹だった。車に積んでいった100キロの餌は、救出できなかった猫が命をつなぐために、先に被災地に入った動物愛護団体が作った30カ所の餌箱に入れてきた。

シェルターで受け入れた猫たちと(2013年2月撮影、重松さん提供)

土浦のシェルターで世話

所属していた団体が福島で被災した犬猫を保護するシェルターを11月に土浦に設置し、猫舎に約40匹、犬舎に20頭ほどを受け入れた。猫の世話を担当した重松さんは「どうしても懐かない3匹がいて、ケージの隅から動かず目はうつろだった。飼い主に捨てられた、何も信用しないと抗議しているようだった」。

ところが、懐かないのを承知で里親になってくれた家に引き取られると、生き生きして顔つきまで変わった。「家族として迎えられたことで人への信頼を取り戻したと思う。猫は家につくといいますが人につくんです」と重松さんは話す。

心ならずも、ペットを家に置いて逃げなければならなかった飼い主も辛いだろうと、猫たちの写真を、保護した町の避難所に掲示した。3組の飼い主が猫の好物を持ってシェルターに会いにきた。連れ帰ったのは1組。2組は避難所暮らしで飼えないと後ろ髪を引かれつつ福島に帰っていった。

震災時の体験が動物愛護への気持ちをより強くした。犬猫の殺処分数は減少傾向だが全体の80%を猫が占めていること、野良犬を見かけることはなくなったが野良猫が増えて全国的に問題になっていることから、地域の野良猫に不妊去勢手術などをする地域猫活動を推進する「Team.ホーリーキャット」を17年に発足させた=2019年7月17日付

「飼い主は万一に備えて」

重松さんは「3月11日は震災を思い起こす日。想定外の自然災害が起こっているだけに飼い主には万一に備えてほしい」という。

首輪に迷子札を付けて写真を携帯するほか、フードや猫用の散歩ひもを入れたリュックとキャリーバッグはいつでも取り出せる場所に置く。またペット同伴の避難所が開設されるようになったことから、自治体のハザードマップで避難所の位置を確認しておくことを薦める。

➡震災9年の関連記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

さて、今年はどうしましょうか?《気軽にSOS》168

【コラム・浅井和幸】明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。皆さんは新年の抱負は決めたでしょうか? 私は特に考えるわけではないのですが、あえて作るのであれば、「心身ともに健康で楽しく生活する」でしょうか。 自分自身、何十年も世界で一番幸せ者だと感じて生きてきたわけですが、幸せであることが「不幸に接しない」ことであるとは考えていません。たくさんの不幸、たくさんの苦しみ、たくさんの悲しみ、たくさんの悩みに対応してきましたし、これからも対応していくでしょう。 自分から積極的に苦しみに突っ込んでいくわけではありませんが、相談や依頼という形で私に頼ってこられる方に一生懸命対応し、希望に沿いたいと考えています。 私は今年で54歳になります。これは磯野浪平さんと同年齢になったということです。浪平さんは、漫画サザエさんのお父さんですね。一昔前であれば、定年1年前のおじいちゃんでしょうか。ちなみに、バカボンのパパは41歳(初老)だそうです。 明日が希望の世界であるように 今の54歳は、定年近くのおじいちゃんではなく、あと15年先が定年になるかもしれない時代となりました。健康寿命が延び、昔に比べて若々しい、もしかしたら先輩方から幼い、と言われてしまいます。私は個人事業主であり、いくつかの法人の理事ですので、定年退職はなく、もっと先まで動き続けると思います。 健康寿命が延びた現代、自分で選択していける時間も余裕も増えています。健康も、知識も、お金も、ほんの少しの積み重ねが功を奏します。逆に言えば、長い年月をかけて、不健康に、無知に、貧乏になることも可能です。自分の選択権を他人や環境に渡して、全てが「させられている」と感じることは大きな不幸です。 そうではなく、自分で考えて行動する、自分自身で選択する、健康で文化的に楽しく生活する―こういった生活を目指す人のお手伝いができれば、私も幸せになると考えています。すべての人にとって「明日が希望となる世界」でありますように、と。(精神保健福祉士)

19歳以上に1人5千円支給へ つくば市 政府の交付金活用

21万2000人対象 つくば市は7日、物価高騰対策として、概ね19歳以上の市民約21万2000人全員を対象に、一人当たり一律5000円を支給する方針を決めた。昨年12月に補正予算が成立した政府の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用する。各自治体が地域の実情に合わせて支給内容を決めることができる制度で、同市の場合、政府が推奨事業メニューに示した「おこめ券」や電子クーポン、プレミアム商品券などの配布は実施せず、だれもが使いやすい現金を支給する。 同日、市議会全員協議会を開き明らかにした。16日に市議会本会議を開いて審議する。可決されれば、4月以降に順次、指定の口座に振り込むなどして支給するという。 今回、5000円の支給対象からはずす18歳以下の児童手当支給対象者はすでに、経済対策として政府の物価高対応子育て応援手当を活用して一人当たり2万円を支給することが決まっている。 一人5000円の給付事業費は総額12億6200万円で、内訳は給付金が10億6000万円、事務費が1億9900万円など。 同市の同重点支援交付金は計15億6800万円で、物価高騰対策としてほかに▽特別養護老人ホームやデイサービスなどの介護保険サービス事業所271カ所に計4880万円▽放課後等デイサービスや児童発達支援事業者など障害福祉サービス事業所238カ所に計4460万円▽公立保育所と、民間保育施設155カ所に計4000万円▽児童クラブ41事業所に450万円▽病院19カ所と診療所455カ所に計4900万円▽畜産農家など15経営体に計2070万円▽農家など238経営体に計8360万円▽鉄道1社、路線バス2社、タクシー18社に計1500万円などを支給する。 ほかに、県による低所得の子育て世帯生活応援特別給付金として、児童扶養手当受給者5060人を対象に児童1人当たり5万円を支給する。支給総額は2億5600万円で、県支出金を充てる。 一方、土浦市は、政府の物価高騰対応重点支援交付金の活用方法について現時点で未定だとし、年度内に議会に諮って決めるとしている。(鈴木宏子)

筑波山神社宮司 上野貞茂さん《ふるほんや見聞記》12

【コラム・岡田富朗】上野貞茂さん(64)は、桜川市にある神社が御実家で、笠間稲荷神社で権禰宜(ごんねぎ)を務めたのち、4年ほど前から筑波山神社の宮司を務めています。筑波山神社は、古くから信仰の歴史を持つ霊峰筑波山を御神体と仰ぎ、「常陸国風土記」や「万葉集」にも記されている古社です。 境内は中腹の拝殿から山頂を含む約370ヘクタールにおよび、山頂からの眺望は関東一円に広がります。筑波男大神(いざなぎのみこと)、筑波女大神(いざなみのみこと)を祭神とし、縁結びや夫婦和合の神として広く信仰を集めています。結婚式や縁結び、交通安全、厄除けなどの祈祷も毎日行われています。 年越祭 年末年始からお正月の期間は、新年を祝う多くの参拝客でにぎわう筑波山神社ですが、2月には「年越祭(としこしまつり)」が開催されます。年越祭とは、新年最初の満月を迎え小正月と節分を祝う追儺(ついな)豆まき神事です。拝殿でお祓(はら)いを受けた年男・年女が福豆とともに、たくさんの福物をまき、春の訪れを祝います。 1年の家内安全や商売繁盛、厄除(やくよけ)けなどを祈願する祭礼で、本来は旧暦の正月14日に行われてきましたが、現在は毎年2月10日と11日の両日に開催されています。大相撲大島部屋から大島親方(元旭天鵬)をはじめ、力士の方々も豆まきに参加されます。 御座替祭 古来より春と秋、4月と11月には「御座替祭」(おざがわりさい)という筑波山神社の例大祭が開催されます。「神衣祭(かんみそさい)」「奉幣祭(ほうへいさい)」「神幸祭(しんこうさい)」の三種の神事が執り行われ、大神様の依代である神衣の御神座を新たに奉り、御神徳のいっそうの高揚をいただく最も重要な神事です。 午後の「神幸祭」では、御山の神様を里に迎え五穀豊穣(ほうじょう)を祝い、国の安寧を祈ります。祭装束を整えた神職・氏子総代、総勢約150名の氏子崇敬者が猿田彦を先頭に太鼓や雅楽の音色の中、神様が坐します神輿(みこし)とともに町内を巡り、筑波山神社拝殿に宮入します。御座替祭の日に限り、茨城県重要文化財である「御神橋(ごしんばし)」(徳川家光公寄進)を御神輿とともに一般の方も渡ることができます。 徳川家と筑波山神社 徳川家康が江戸城守護の霊山として筑波山を祈願所と定めて以来、筑波山神社は将軍家の崇敬を厚く受けてきました。国の重要文化財に指定されている吉宗銘の太刀は、三代将軍・家光の寄進によるものです。境内には、日枝神社、春日神社、厳島神社、さらに参道の中央に架かる神橋など、1633(寛永10)年に家光によって寄進された諸社殿も立ち並んでいます。 歴史が長く貴重な文化財が数多く残る筑波山神社ですが、その分維持や管理には大変さがあるそうです。取材した日も、厳島神社の屋根の修復作業が行われていました。 2033(令和15)年には、徳川三代将軍家光が諸社殿などを寄進してから400年の節目を迎えます。日枝神社本殿正面には、「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿の彫刻が施されており、この作は日光東照宮のものよりも前の作であると言われています。 貴重な文化財が今後も大切に守り継がれていくためにも、より多くの方に筑波山神社の魅力を知っていただきたいと感じました。(ブックセンター・キャンパス店主) <年越祭> 2月10日(火)、11日(水)の2日間、午後2時、3時、4時に開催。年男年女の参加料は2万円。

つくば駅前で市民らがスタンディング 米国のベネズエラ軍事行動に抗議

米国によるベネズエラへの軍事攻撃とマドゥロ大統領拘束に反対する市民による抗議行動が4日、つくば駅前のつくばセンター広場で催された。主催したのは同市の市民グループ「戦時下の現在を考える講座」。参加者らはメッセージボードを掲げてスタンディングを行い、暴力への反対を通行人に訴えた。 行動を呼び掛けた主催グループの加藤匡通さん(57)が活動の実施を決めたのは前日の夜。SNSで事態を知り、「戦争は許せない。理不尽な口実で武力行使が行われ、国際法を軽視する流れが広がることに強い危機感を覚えた」と話す。今回の軍事作戦が「成功」と評価されること自体が誤った前例となりかねないとし、「『ふざけるな』と声を上げなければならないと思った」と語った。 加藤さんは、抗議の場所につくばを選んだ理由について「自分たちが生活している場所だから」と話し、「通行人が行動を目にすることで、『自分も声を上げていいんだ』と思ってもらえたり、異なる人同士の議論のきっかけにつながれば」とし、「米国大使館や国の主要機関がある東京だけでなく、全国のさまざまな地域で市民が声を上げていることが見える形になることが大切」と話す。 また2003年に始まった米国によるイラク戦争にも言及し、「大量破壊兵器という口実で戦争が行われ、その混乱は今も続いている」と指摘する。「戦争が始まれば当たり前の生活は成り立たなくなる。『仕方がない』という考え方に流されず、誤った行動には『それはだめだ』と声を上げ続けるべき」と加藤さんは強調した。 一方で、ベネズエラの政治状況については「人権の抑圧や選挙不正の疑いなど、マドゥロ政権にも問題がある」としながら、「だからといって軍事侵攻が許されるわけではない。本来は国際社会が対話で対応すべきだ」と述べ、「私たちはすべての戦争に反対する。戦争に対する歯止めが効かない世界を生きるということは、いつ自分の身に降りかかるか分からないということ。日常の暮らしを守るためにも、戦争を容認しない社会を維持しなければならない」と訴えた。(柴田大輔)