【山口和紀】LGBTなどセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の多彩な人物像を撮影するプロジェクト「OUT IN JAPAN(アウトインジャパン)」の写真展が16日から筑波大学附属図書館(つくば市天王台)で始まった。様々な写真家が5年間で1万人を撮影するプロジェクトで、同大では、これまで撮影された中から、シンガポール出身の著名写真家、レスリー・キーが撮影した30点が展示されている。
尊重し学び合える大学へ
写真展をとりまとめるのは同大人間系の河野禎之助教だ。大学のセクシュアリティ支援窓口・DACセンターの担当教員でもある。同大は2017年、全国の大学に先駆け、セクシュアル・マイノリティへの相談・支援体制などをまとめ「LGBTに関する筑波大学の基本理念と対応ガイドライン」として公表した。河野助教はこのガイドラインの策定を中心的に進めるなど、大学における相談・支援体制を充実させることの必要性を訴えてきた。
同大は2017年からさらに、性別、国籍、文化の違い、年齢、障害の有無にかかわらず、人の可能性と多様性を尊重し、学び合える大学を目指すために多様性に関する啓発イベントを行ってきた。過去には、誰もが楽しめるスポーツ「ボッチャ」の体験会や、「人工知能研究からみた身体障害者支援の未来」と題したイベントが行われた。
今年度は、同性が好きな人や自分の性に違和感を覚える人を含む「セクシュアル・マイノリティ」に焦点を当てた写真展のほか、LGBTに関する座談会「LGBTQA茨城県人会議@つくば」を開催する。
「泣きそうな気持ちになった」
OUT IN JAPANは「目に見えないLGBTの存在をポジティブに可視化」するプロジェクトだ。日本のLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)を始めとするセクシュアル・マイノリティのありのままの姿を撮影する。NPO法人グッド・エイジング・エールズが主催をしており、これまで20回の撮影会が行われた。
開催について河野助教は「自分は当事者を知らないと話す学生はすごく多い」ことに触れた上で「セクシュアル・マイノリティを含む多様な生き方を知ってもらうことが目的」と話す。多くの人の目に触れる展示会は関心の薄い人たちにも伝えることができる良い機会だという。
今回はセクシュアル・マイノリティに焦点を当てるが、あくまでも「多様性」に触れて、それぞれに考えるきっかけを作ることが狙いだ。「一人ひとりにそれぞれの生き方がある。展示されている写真のメッセージを見てもらえば、同じセクシュアル・マイノリティといっても、全ての人が違う生き方を持っていることを感じてもらえるはずだ」と語る。
同大に展示されている写真にはそれぞれ被写体からのメッセージがついており「無理にカミングアウトをする必要はない」「自分の人生を生きてください」など思いの伝わる写真が並ぶ。
展示を見た学生は「実際にメッセージを読むと泣きそうな気持ちになった。セクシュアル・マイノリティが身近にいるありふれた存在だと知ってもらえたらうれしい」「OUT IN JAPANを初めて知った。良い活動だと思うし勉強になった」などと話していた。
◆展示会は16日(月)~20日(金)の1週間、つくば市天王台、筑波大学附属図書館2F展示スペースで開催されている。入場無料。図書館のカウンターで受け付けを行えば一般市民も観覧できる。