【鈴木宏子】公共交通の充実を求める声は多い。2年に1度実施しているつくば市の市民意向調査では、市の現状やまちづくりへの取り組みについて、公共交通に対する不満の割合が最も高く、2017年の調査では「不満」または「どちらかといえば不満」と答えた割合は54.9%を占めた。公共交通はどうあるべきなのか。
同市では今年4月から、公共交通政策の大幅な改編が実施された。同市は2011年度にコミュニティーバス「つくバス」の運行を、きめ細かく集落を回る循環型から、駅と地域の拠点を結ぶ直行型に変更してシャトル便を導入し、利用者数を増やしてきた。
8年ぶりとなる今回の大改編の柱は、▽バス停の間隔を従来の平均約1.3㌔間隔から1㌔間隔程度に短くして停留所の数を111カ所から223カ所に2倍に増やした▽これまでバス路線がなかった市西部にバスを運行するなど路線を7路線から9路線に増やし、走行総延長距離も149キロから205キロと1.4倍に増やした(ただし運行便数は334便から15%減り283便)▽高齢化率が高い茎崎地区と筑波地区では、3年間の実証実験として、路線バスの運賃補てんとワゴン車を使った支線型バスの運行をスタートさせた―などだ=1月18日付。
改編により、同市の公共交通にかける予算は、つくバスとデマンド型タクシー「つくタク」を含め、これまでの約3億8700万円(2018年度当初)から約5億6600万円(19年度当初)と約1.5倍に増えた。
利用者5%減少
改編後、利用実績はどう変わったのか=6月23日付。8月19日開かれた市議会道路・公共交通体系及びTX沿線整備調査特別委員会(木村修寿委員長)に、4~6月の3カ月間の実績が報告された。バス停が近く、きめ細かくなり、利便性が高まったはずのつくバスの利用者は、前年同期と比べ5%減少したことが分かった。
つくバスは、11年度の改編時は年間61万9000人の利用者だったが、循環型から直行型に変更するなどして、17年度は年間103万8000万人と利用者を1.6倍に増やしてきた。今回の改編はスタートしてまだ3カ月で分析などはこれからだが、人口も高齢者数も増加している同市にあって、利用者が5%減った。
最も利用者が減ったのがみどりの駅から谷田部地区を回って茎崎地区を走る「自由ケ丘シャトル」で25%減、次いで、つくば駅から金田、テクノパーク桜を通り小田、北条地区を走る「小田シャトル」が23%減と利用者を2割以上も減らした。ルートが変わらず前年度と比較可能な5路線のうち利用者が増えたのはつくば駅から松代、谷田部、茎崎を結ぶ「南部シャトル」だけだった。
利用者数の減少に対し、市は同特別委に「延べ利用者は減少したもののバス停圏域カバー人口が増加したことから、つくバスを利用できる機会が広まり、バスの公共性、公平性は一層高まった」という見解を示した。
外出が難しい高齢者や障害者をボランティアが送迎するNPO法人「友の会たすけあい」(つくば市下岩崎)の理事長、佐藤文信さんは「高齢者の多くが『運転本数を減らしてもいいから、家に近い場所に停留所がほしい』と言っている。巡回型の運行を望む住民もいる」と話す。
自治会挙げて利用呼び掛け
一方、周辺地区で始まった茎崎地区の路線バス運賃補てん事業の3カ月間の利用者実績は、1日平均217人と想定の1.4倍と上々の滑り出しとなった。これに対し、筑波地区の支線型バスの利用者は1日平均15.6人と振るわず、明暗を分けている。
市内で最も高齢化率が高い茎崎地区では、自治会を挙げて路線バス運賃補てん事業の利用を呼び掛けている。その一つ、森の里自治会長の倉本茂樹さん(77)は「森の里は年を追うごとに高齢化が進んでいるのでバスが頼りになる。住民の免許返納後の生活の足を確保、維持していかなければならない。そのためにも実証実験でいい結果が出るよう、多くの住民に路線バスを利用してほしい」と、利用する側の意識を強調する。
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