土曜日, 5月 23, 2026
ホーム土浦【土浦を受け継ぐ】116年変わらぬ味守る かりんとう「九万五千石」 前島製菓

【土浦を受け継ぐ】116年変わらぬ味守る かりんとう「九万五千石」 前島製菓

【田中めぐみ】柔らかい食感にキラキラと輝くザラメ、後をひくゴマの風味が特徴的なかりんとう「九万五千石」で知られる前島製菓(土浦市真鍋)。1903(明治36)創業の老舗だ。創業者の前島憲吉さん、2代目の寿夫さん、3代目の寛誠(ひろなり)さん(65)と引き継がれ、今年で創業116年目になる。初代から「味を変えてはいけない」、「原料を変えてはいけない」と言われ、116年間味を守り続けている。昨年は市が認定する第1期土浦ブランドにも選ばれた。

しっとりとした食感が特徴のかりんとう「九万五千石」

前島製菓は創業当初からかりんとうや駄菓子などを販売してきた。戦時中は海軍から支給される小麦粉と油、砂糖などを用いてかりんとうを作り、青森県むつ市の大湊警備府(日本海軍の軍港)に一斗缶で納めていたという。砂糖や油をたっぷりと使ったかりんとうは高級品だった。

名前の由来は土浦藩

人気商品「九万五千石」は前島製菓の代名詞でもある。戦後の食料物資統制が終わった1950年ごろから本格的に作り始めたという。「九万五千石」は、江戸時代中期の土浦藩主で江戸幕府の老中も務めた土屋数直が、徐々に石高を増やし最終的には九万五千石を有したことにちなんで名付けられた。寛誠さんの父で2代目の寿夫さんが主となり考案し、1958年に商標登録した。

当初「十万石」という名にしようと考えていたが、土浦市の郷土史家永山正さんに相談したところ、正しくは九万五千石であると指摘され、それに従ったという。「石」は土地の価値を米の生産力に換算し表す単位だが、土浦城の石垣の意味にもかけて、見た目が石のようにゴツゴツとしたかりんとうを作り上げた。

昭和20年代の店頭(前島製菓提供)

「味を変えてはいけない」

創業以来、味を守り続け、1973年には第18回全国菓子大博覧会で名誉金賞を受賞した。

しかし、父である2代目寿夫さんが病で倒れ、寛誠さんに代替わりした1988年頃、一度だけ作り方の工程を変えたことがある。それまで父とかりんとうを作りながら「この工程は統一できるのではないか、簡素化しても味は変わらないのではないか」と考えており、「自分の代からは思うようにやってみよう」と変更してみた。「自分が一番かりんとうの味を分かっている。味は変わらない」という自信があったが、製法を変えた途端に売れ行きは急降下。慌てて元の作り方に戻したが、落ちた売り上げを戻すのに3年かかった。

寛誠さんは「自分よりお客さんの方がうちのかりんとうの味をよく分かっていた。うぬぼれていたことに気が付いた」と振り返る。お客さんの優しさにも助けられた。2代目が倒れたという事情をくみ、技術が足りなかった寛誠さんを気長に待ってくれた。寛誠さんは、お客さんには感謝の気持ちしかないと話す。「たくさんの品物があふれている今の時代にうちのかりんとうを選んでくれる。本当にありがたい」。

一度も褒められなかった

寛誠さんが3代目を継いで30年になる。5年前に103歳で亡くなった叔母には死ぬ前まで「初代の方がおいしかった」と言われ、一度も褒められなかった。戒めとなりありがたくはあったが、最期までおいしいと言わせられなかったことが悔しいと話す。

納得のいく味を追求し続ける。「使っている材料は変わらなくても、気温や湿度の変化や、材料の品質に微妙な違いがある」と寛誠さん。「夏と同じ物を冬食べるとかなり固くて、冬の物は夏溶けてしまう。四季折々に美味しく食べて頂きたいので、半月ぐらいの単位で同じ物に感じられるように調整している」と話す。

製造法をかたくなに守り続けようと思っているわけではない。今以上に効率的なやり方があれは変えたいと考えている。しかし「味を変えてはいけない」という原則を守るのに、今以上の作り方が見つからない。添加物を入れれば材料が扱いやすくなり大量生産が可能だが、味が変わってしまう。多く作ることはできないが、味を変えないためには製造法を守り続けるという。寛誠さんは「古いお菓子を新しいと感じる若い人もいる。大量には作れないが、全国の人にもぜひ食べてほしいと思う」と語った。

現在の前島製菓

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

地元酒販店4代目 都市型醸造所を23日オープン 土浦駅近く

土浦市新治地区の酒販店「佐藤酒店」の4代目、佐藤栄介さん(32)が23日、土浦駅近くのビルに、醸造から販売、体験までを一貫して行う小さな地酒醸造所「土浦醸造」をオープンする。 駅前や市街地などに立地し、醸造工程を見学したり、出来立てを味わうことが出来る都市型醸造所と呼ばれる業態で、地元土浦産のコメ、市特産のレンコン、市の花、桜のウッドチップなど地元の素材を生かして酒造りをする。中心市街地活性化の一役も担いたい意向だ。 佐藤酒店は同市沢辺で1948年に創業。2019年に土浦駅ビル、プレイアトレ土浦に角打ちを楽しめる地酒専門店を出店、23年にイオンモール土浦にこだわりの地酒販売店を出店した。今回、地域密着型の起業や新規事業を支援する総務省の「ローカル10,000プロジェクト」の支援を受け、酒を「売る」から「造る」に挑戦する。市内で唯一の酒類製造者になる。 店舗は土浦駅から徒歩2分のビルの1、2階を利用し、1階に醸造所、2階に試飲スペースなどを設ける。1階の醸造所には500リットルのタンク三つと、製麹室、発酵設備などを設置する。杜氏は、東京・浅草初のクラフト酒醸造所「木花之醸造所」で修行を積んだ、佐藤さんの義姉の青木彩夏さんが務める。 提供するのは、発酵したもろみを濾(こ)さない「どぶろく」や、もろみを絞った「澄み酒」で、一つのタンクから 「どぶろく」と「澄み酒」の2種類をつくる。伝統的な日本酒の醸造技術をベースに、さらに地元特産のレンコンや桜のウッドチップなどを取り入れ、土浦の風景や季節を表現する。また麹(こうじ)を利用したノンアルコールの甘酒なども製造する。 代表の佐藤栄介さんは「自分たちの土地の酒を自分たちの手で造りたいと思い醸造所を造った。この街の未来へ続く酒になれたらうれしい。そして土浦醸造がハブとなり、農業、商業、観光、研究などに関わり、地域貢献できれば。そのためにはまず自分の事業を成功させたい」と意気込みを話す。(榎田智司) ◆23日は、初仕込み酒限定200本を先着順で販売する。どぶくろタイプは720ml税込2970円。澄み酒は720ml税込3300円。見学は2200円で、醸造工程の見学から試飲までを一貫して体験できる。

詩劇「憎しみは愛によって止む」を終えて《映画探偵団》100

【コラム・冠木新市】5月16日、詩劇コンサート・つくばシルクロード2026「憎しみは愛によって止む」に、スリランカ大使とスリランカ仏教界を代表する僧侶を迎え、出席者128人(出演者も含む)の「満員御礼」で終了した。 2部構成の第1部「終わりの始まり」では、1951年に締結されたサンフランシスコ講和条約の背景と内容、その後のスリランカと日本の交流を映像と舞踊で表現した。第2部「平和の里を訪ねて」では、筑波山、桜川、北条大池を歌ったクリシャンタさんの新曲など6曲、大川晴加さんの「憎しみは愛によって止む」など2曲を披露した(コラム99)。 寄せられた感想では「歴史や社会に詳しい主人ですが、この事実(日本分割統治)を初めて知り、衝撃を受けていました」「始めから涙流しっぱなしでした。ジャヤワルダナさんに日本人として感謝です」など、たくさんの感動メールが届いた。 だが、内実は大変だった。ジャヤワルダナ氏の演説を日本語にし、AIで作成したのだが、リアルにできなくて13回やり直した。完成したのは開演2時間前で、やっと6分の演説を流すことができた。また、日本人の音響担当とスリランカ人の映像担当のやり取りが言葉の問題もあり伝わらず、映像と舞踊合わせはぶっつけ本番だった。 木下恵介監督「スリランカの愛と別れ」 翌日、疲れが残るなか、木下恵介監督「スリランカの愛と別れ」(1976年)を見直した。昨年、公開49年後に初めて見たが、あまり印象に残らなかった。ところが、今回のイベントを終えて見ると、まるで違って見えてきた。 時は1976年。舞台はスリランカ。4組の男女が出てくる。水産会社で働く青年(北大路欣也)と宝石商の女性(栗原小巻)の恋。国連の仕事をする松永(小林桂樹)とその妻(津島恵子)の夫婦愛。現地の娘ライラと結婚しようとする若者の恋。満月の夜、ホテルで過ごす謎の大富豪ジャカランタ夫人(高峰秀子)と身の回りの世話をする老僕。 この4組の愛が描かれるのだが、昨年見た時と印象がまるで違うのだ。26年間続く内戦前のスリランカの美しい景色と人々の貧しいが穏やかな生活が描かれる。物語の軸はジャカランタ夫人だ。インド人と結婚して何不自由はないが、がんを患っていて、日本に残した息子のことが気になる。インド人の夫は何者かに殺された。 昨年は日本人の視点で見ていた。今回はスリランカ人の視点で見ていたようだ。スリランカ人の日本人に対する反応がよくわかる。 国際交流とは一緒に活動すること イベントを通じて気づいたが、スリランカ人は控えめで、あまり意見を言わない。しかし意見は持っている。先に言ってくれたら対処できたことが幾つもあった。スリランカは450年間も植民地だった国。そのような歴史からきているのかもしれない。 3か月間、スリランカの方とイベントに取り組み、学ぶことが多かった。以前から感じていたが、国際交流とは、集まりに参加するだけではなく、一緒に活動することが大事と思う。同じ映画が違って見えたのは、体験がそうさせたのだ。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) <つくつくつくばの七不思議の映画とお話>・日時:5月30日(土)午後1〜3時・場所:カビオ小会議室2、参加費無料・対象:次回作のイベント参加希望者・主催:一般社団法人スマイルアップ推進委員会

事業用軽自動車の課税に誤り 116台 56万円を返金へ 土浦市

土浦市は22日、黒ナンバーの事業用軽自動車の課税額に誤りがあり、本来より高い軽自動車税を課税してしまったと発表した。誤りがあったのは過去5年間で計116台。過大に課税した金額は計56万7600円。市は今後、所有者に返金するとしている。 市課税課によると、車のナンバープレートのひらがな部分が「り」と「れ」となっている軽自動車は本来、事業者用として登録すべきところ、市のシステム設定に誤りがあり、自家用として登録し、自家用の軽自動車税を課税したという。 システムは2012年ごろ設定され、少なくとも14年度分から誤っていた。一方、5年で時効となることから、市は5年前の2021年度以降に課税した事業用軽自動車を対象に、過大分を返金するとしている。 今年度の軽自動車税の納税通知書を受け取った車の所有者から問い合わせがあり、誤りが分かった。他の車も調査したところ、今年度は79台の課税額が誤っていた。過大だった金額は1台当たり年間で1000円~4700円。 市は対象者に対し22日付でお詫びの通知を出した。今後、返金手続きを進める。再発防止策として市は、システム設定の再確認やデータ確認の徹底、職員のチェック体制強化などを実施するとしている。

リアリズムをとことん追求 60人の水彩画と色鉛筆画200点一堂に 県つくば美術館 

「水彩画と色鉛筆画のアトリエ・ハートタイム展」が19日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれている。土浦一高OBで東京芸大出身の水彩画家、田中己永(みのり)さんが主宰する絵画教室のグループ展で、同教室で教える講師の作品と、教室の生徒60人の水彩画と色鉛筆画203点を展示している。TBSテレビの人気番組「プレバト」に出演している色鉛筆画講師の三上詩絵さんの作品も展示されている。24日(日)まで。 絵画教室「アトリエ・ハートタイム」は土浦や石岡に教室があり、水彩画を田中さん、色鉛筆画を三上詩絵さんが教える。コロナ禍で生徒が30人ぐらいまで減った時期もあったが、現在は60人を超えている。 出展作品は、風景画や人物画、リアリズムをとことん追求した作品など多彩だ。テーマは設けず自由だという。「ヤカン」を描いた、同教室生徒の南雅人さんは、ヤカンの金属光沢や立体感を見事に表現する。山本千さんの「静寂/しじま」は音を吸い込み張り詰めた静けさの雪景色と雲の合い間から現れる光を表現する。小野洋子さんの「クワガタの戦い」は主役のクワガタを引き立てるために背景をぼかした技術を使っている。 絵画教室主宰者で水彩画講師の田中さんは「作品を作るのに1カ月から3カ月という時間をかける人が多い。根気よく続ければ必ず納得できる作品になっていく」と話す。 講師の作品も展示している。田中さんが今回展示している水彩画「花・装束」は、みずみずしく繊細だ。「教室を開いているが、自分の絵は自己流」だとし「誰でも根気さえあれば描くことができる。誰よりもうまいとかいうことでなく、自分の表現を磨いてほしい」と語る。 色鉛筆画講師の三上さんは土浦市出身、つくば市在住。今回は色鉛筆画「スターダスト」1点を展示する。「長崎市で講演会があった縁で壱岐で展示会が決まり、作品200点が壱岐島に行っている」と語り「最初に描いたのは2011年で色鉛筆画はなかなか大変だったと気付いた。大変なものを克服して、大変だからこそはまっていったと思う」と話し、「作品はネットでも見ることは出来るが、原画を見てこそ本当の良さがわかるので、是非とも展示会に足を運んでもらいたい」と付け加えた。 ◆「水彩画と色鉛筆画のアトリエ・ハートタイム展」は19日(火)~24日(日)、つくば市吾妻2-8 県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは電話029-823-3132(アトリエ・ハートタイム)へ。