土曜日, 4月 20, 2024
ホームつくば事業化を技術、金融双方から支援 サイバーダインと筑波銀行が包括連携協定

事業化を技術、金融双方から支援 サイバーダインと筑波銀行が包括連携協定

【相澤冬樹】ロボットスーツ「HAL(ハル)」開発を手がけるサイバーダイン(つくば市、山海嘉之社長)と筑波銀行(土浦市、藤川雅海頭取)は28日、つくば市をはじめとする地域のベンチャー企業の事業立ち上げを支援するための包括連携協定に調印した。同日付で、支援第1号への共同出資も発表した。

協定は、つくば市など両社が関わる地域において、スタートアップ企業に対する経営、技術、金融面での事業支援を行う枠組み。両社はこれまでに、それぞれCEJ(サイバニクス・エクセレンス・ジャパン)ファンド、つくば地域活性化ファンドを設けて、新産業創出への支援を行ってきたが、今回は双方が互いの得意分野の経営資源を持ち寄り、社会課題の解決や地域の発展方策で連携することに特色がある。

調印式で、山海社長が「つくばの研究室にとどまっているモノや情報を、人の手を介して社会に実装する仕組みを作っていきたい」と抱負を述べると、藤川頭取は「直接金融で企業の創造の機運を支援してきた当行の姿勢とサイバーダインのベクトルは完全に一致する」と応じた。

協定締結後、MIつくば社の唐捷CTO(中央)をはさんで握手する山海社長と藤川頭取=同

支援第1号はNIMS発ベンチャー

協定締結後、支援第1号として、物質・材料研究機構(NIMS)発ベンチャーであるマテリアルイノベーションつくば(つくば市、松村宗順CEO)への出資も発表された。NIMS先進低次元ナノ材料グループ(グループリーダー・唐捷同社CTO)の研究成果であるグラフェンを利用した蓄電デバイスの事業化を推進する。製品の超小型化・超軽量化を実現して、新たな市場の獲得をめざすもので、2年をメドに量産体制を構築する。

金額は明らかにされていないが、筑波銀行は地域活性化ファンドからの出資、サイバーダインはCEJを使わず、独自の出資で賄う。山海社長は「超小型化しての市場開拓は有望だが、一気の量産化には思い切りがいる。次の一歩を踏み出す支援という今回の枠組みにぴったりの案件だった」と語っている。

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飲み屋街の看板群の秘密《看取り医者は見た!》17

【コラム・平野国美】私は家系的に下戸で、飲み屋に出かけることは滅多にありません。しかし、ある時から飲み屋街の看板を眺めて歩くのが好きになりました。特に、陽が落ちてネオンに電源が入り浮かび上がった様は格別なのです。 その日もスマホを片手に飲み屋街の写真を撮っていました。そうしたら、後ろから怪しい男がついてくるのです。踏み込んではいけない場所に足を入れてしまったのか? 写してはいけないものを撮ったのか? 足早に立ち去ろうとすると、「おい、待て」と声をかけられたのです。 怪しいお前も看板屋か? 見た目70代の男は服装こそラフですが、危険な感じはありませんでした。「お前は同業者か?」と顔をのぞき込んできました。この方は何を生業(なりわい)としている方なのだろうか? 「さっきから見ていると、飲み屋の看板をずっと撮影しているから、看板屋か? 映画のセット屋か?」と、尋ねてきました。自己紹介は省略して、「おいちゃんは何をする方?」と尋ねると、「昔はな、こういう飲み屋の看板とか作ってたんだ。あんたも同業者かと思ってな」と答えました。 「お話を聞かせてください」と、喫茶と書かれた看板の店に一緒に入りました。場所は奥浅草の千束通り辺り。時間は夜の8時。古い「昭和」の喫茶店に2人で入り、生ぬるいコーヒーを飲みながら話を聞いたのです。 看板・のれん・マッチ箱 「仕事はデザイナーということでしょうか?」「デザイナー? そんなんじゃないな。俺、そういう奴ら嫌いなの。蝋石(ろうせき)って知ってるか? 子供のころから、あれで道に絵や文字を書いて遊んでいたのよ。字がうまいっていうんじゃなくて、なんていうかなあ」 何が言いたいのかを推測して、「味のある字が書けるみたいな?ですか」「そう、それだ。少し、近所じゃ評判になった。書道でも習うかって言われたけど、ああいう堅苦しいのは、俺ダメ。学校も大嫌い」と懐かしそうに語るのです。 「ある日、いつも通り、蝋石で遊んでいたら、ちょっと強面(こわおもて)のおっさんが、ずっと上から眺めているんだよ。おい坊主、卒業したら、うちに来いって言われ、いつの間にか、そこに就職したんだ」 コーヒーを一口すすって、「事務所と言っても、親方の家にソファーと机を置いてよ。合羽橋の道具街の近くだから、居酒屋やスナック開こうとする客がワンサカ来てよ。俺が話を聞いて、文字とちょっとした絵を入れて、看板、のれん、マッチ箱を作って開店させるんだ。それで50年ぐらい生きてきた」 他の看板とのバランスが大事 「この辺りの店には、まだそれが残ってる。灯りがつかなくなったネオンも随分あるけど。でも、ある時から広告会社とかデザイナーが出てきて、俺たちはお払い箱になった。その店だけが目立っちゃダメなんだ。ほかの看板とのバランスが大切なんだよ」(訪問診療医師)

通年議会始まる つくば市議会

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みんなで学び合うカフェ 高校生がつくばにオープン 不登校乗り越え

つくば市内の通信制高校で学ぶ高校2年の島本美帆さん(17)が5月2日、同市上広岡にカフェ「フェルミ・カフェ」をオープンする。お菓子を食べたりお茶を飲みながら科学を中心にみんなで学び合うカフェだ。 同じ建物に入るボードゲームショップ・フライヤーのプロジェクトの一環として6月末までの試験的なスタートとなり、利用状況次第でその後も延長する予定だ。島本さんは「勉強は楽しいと知ってほしい。楽しく好奇心を持って、みんなで知識をつけていれば」と年齢を問わない幅広い来店を呼び掛ける。 一緒に勉強 中学時代、不登校を経験した島本さんは「学校に馴染めない子どもにも来てほしい」とカフェへの想いを語る。 「学校に行けていない子は自宅で理科の実験はできない。科学や理科、他の分野も含めて勉強する意欲はあるけど学校に行けず、学び方もよくわからなくなっている人もいるはず。足踏みをしてしまい前に進めない人のために、カフェでは簡単な実験道具や本をそろえる。高校レベルまでなら私も教えられるので、他の教科も含めて一緒に勉強しましょう。学校の代わりにここで一緒に知識をつけられたら」と語る。 娘の活動をサポートし、カフェにも一緒に立つ予定の母親の真帆子さんは「通信制なので時間に融通を効かせることができる。学校に行きづらくて、これからどうしようかと悩んでいる子どもや親がこの活動を知ってくれたら参考になるのではと思っている」と話す。 折り紙で作った正12面体 広々とした64平方メートルの室内に並ぶ真新しい本棚は、島本さんが自分で組み立てた。オープンまであと1カ月。自分で収支計画を立てサービス内容なども考える。多くの人が参加しやすいよう、時間制で料金を決め、その間は島本さんが用意する教材を自由に使うことができ、紅茶とお菓子を自由に飲食することができる。経費を捻出するために月35人以上の利用者を確保したいという。準備に忙しくしながら「どんなお客さんが来てくれるのか楽しみ」だと笑顔を浮かべる。 「これは私の自信作です」と本棚から島本さんが手にするのは、一枚の折り紙で作った正12面体。中学時代に作ったものだ。オリガミクスの提唱者として知られる元筑波大教授の故・芳賀和夫さんの本をもとにした。芳賀さんが主催した「サイエンスキッズ」に小学1年のとき参加したことも科学にハマるきっかけになった。 現代の「適塾」目指す カフェの営業は木曜から日曜までの週4日。休業日の月・火・水の3日間で学校から出される1週間分の課題を済ます。自分のペースで学べる通信制だからこそ可能になる活動だ。島本さんにとってカフェは「大きな実験場」だ。「自分で何かを考えるのは楽しい」。得意な科学を通じて「自分で考えることの大切さ、面白さを伝えたい」と意気込む。 目指すのは、幕末の医師で蘭学者の緒方洪庵が開いた「適塾」だ。「来る人がやりたいものを持ち寄って、自由に学べる場」を作りたい。 適塾は、1838年に洪庵が大阪で始めた私塾で、全国から集まった1000人以上の若者が、医学を中心に世界情勢や語学と幅広い分野を学び合った。福沢諭吉や橋本左内、大鳥圭介など、幕末から明治の世で活躍した多くの人物を排出したことで知られている。 昨年6月に島本さんは、カフェの前身となる出張科学教室「叶えの科学教室」をつくば市でスタートさせた。初回の講座は市内の不登校支援イベントで開いた出張教室だ。野菜の色素を分離すると「おもしろい」と参加者から声が上がった。丸いケーキを7等分する方法を参加者同士で考え合うイベントも盛り上がった。地域の小学生向けに医療や科学の出張授業を開く元薬剤師の母親とも「コラボ」し、つくば市内の公民館、小・中学校で開いた講座は1年間で10数回を数える。自分が考えた企画を多くの人が面白がってくれたり、熱心に質問してくれたときに楽しさを感じ、豊かな気持ちになったと話す。 「学ぶことは楽しいことだし、人生を楽しく生きるためには知恵が必要。知っているのと知らないのでは人生の選択肢の幅が違ってくる。一人でも多くの人に、その面白さを知ってほしいし、学習の仕方を身につけて自分でゴールに行く力を身につけて欲しい」 夢は全国展開 夢はフェルミカフェの全国展開。「お店には、そこに通う人の間でコミュニティができる。各地にできれば互いに交流し合って出会いを広げることができる。私も色々な人との出会いがあって、今の自分があると思っている」。 「未就学の子どもから100歳まで、色々な人に来てほしい。私が得意なのは科学と心理学。でも、やりたいものを持ち寄って自由に学び合える場にしたい。勉強が楽しくないと思っている人を減らせたら」 カフェの名前の由来は、1938年にノーベル物理学賞を受賞したイタリアの物理学者エンリコ・フェルミだ。統計力学、量子力学、原子核物理学と多様な分野で顕著な業績を残した彼から、「沢山実行に移せる人が増えるといい」という思いを込めた。 いきいきと、やりたいことを語る島本さんが新たな一歩を踏み出す。(柴田大輔) ◆フェルミカフェはつくば市上広岡407-1、ボードゲームショプ・フライヤー1階。営業は、木・金が午前10時から午後3時、土・日・祝が午前10時から午後5時まで。月・火・水は休業。料金は1時間、大人500円、学生300円、1日利用は大人3000円、学生1800円。月間パスもあり。利用者は時間内に紅茶とお菓子を自由に飲食できる。料金に工作・実験などの利用料も含まれる。5月3日(金)は正午から軽食付きのオープニングパーティーが開催される。詳細は同店ホームページへ。

レインボーの中で、虐殺に抵抗する 《電動車いすから見た景色》53

【コラム・川端舞】毎年4月後半に開催される国内最大級のLGBTQ(性的少数者)関連イベント「東京レインボープライド」。今年も19日から3日間、予定されている。 例年、イベントにはイスラエル大使館がブースを出展していた。イスラエル政府はLGBTQフレンドリーであると世界にアピールすることで、パレスチナへの占領という負のイメージを覆い隠そうとしていると批判されてきた。「東京レインボープライド」もイスラエルのイメージ戦略に利用されているのではないかと、当事者団体などが指摘している。 今年のイベントも、パレスチナで虐殺を続けているイスラエルに製品・サービスを提供しているとして、世界中で不買運動が呼びかけられている企業が協賛しているため、イベントに参加するべきかどうか、当事者団体のなかでも激しく議論されている。 一方、毎年イベントに参加することを生きる目標にしている人もいるだろう。今の社会は、出生時に割り当てられた性別と、自認する性が一致し、異性愛である人を前提につくられ、そこから外れた人はいないことにされている。自分の性別に違和感を持ったり、同性に恋愛感情をもつことが周囲に知られた瞬間、偏見にさらされる危険性もある。 そのような社会でかろうじて生き延びるために、本当の自分を隠しながら毎日を過ごしているLGBTQ当事者がたくさんいるはずだ。過酷な状況を生きる当事者が「年に一度、本当の自分を認めてくれる仲間に会える」「東京なら、地元の知人に出くわす心配もなく、堂々といられる」などの思いで、「東京レインボープライド」に参加することを誰が責められるだろうか。 イスラエルがパレスチナでの虐殺を覆い隠すために、LGBTQを利用するのは決して許せないが、イベントでLGBTQの人権を祝うのが悪いわけではない。 LGBTQはパレスチナにもいる ……と偉そうなことを言っておきながら、私も今回のイベントに参加する予定だ。普段からLGBTQの社会問題に関心を持っているが、それを気軽に話せる場はあまりない。そんな私を気にかけてくれた高校時代の友人が、「一緒に行こう」と誘ってくれた。 しかし、イスラエルの虐殺に加担したくない。友人に相談し、イベント最終日のパレードにパレスチナの旗を持ちながら参加することにした。そもそも、LGBTQはイスラエルの専売特許ではないし、LGBTQ当事者は日本にもイスラエルにも、当然、パレスチナにもいる。LGBTQの人権と、パレスチナへの連帯を天秤にかけるべきではない。 きれいごとかもしれないが、LGBTQとパレスチナ、双方に連帯するために私は友人と一緒に歩く。(障害当事者)