水曜日, 5月 21, 2025
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2つのユニバーサルデザイン《デザインを考える》20

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写真は筆者

【コラム・三橋俊雄】ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障がいの有無などに関わらず、できるだけ多くの人が利用しやすいように道具や環境をデザインすることですが、一方で、障がい者の多様な声に耳を傾け、彼らの個別ニーズに対応したデザインを行うことも必要です。今回は、京都で出会った「歩くことができないKさん」と「手首が回らないAさん」のためのデザインについてご紹介します。

Kさんのための「空飛ぶ座布団」

Kさんは脳性麻痺で、四肢のうち自由に動かせるのは左手のみ。バーセルインデックス(食事、移乗、トイレ動作、入浴、歩行など10項目の日常生活動作の能力を点数化する評価方法)では40点以下という、生活の大部分が要介護の状態で、毎日朝晩と隔日の昼間にヘルパーのサービスを受けています。屋外での移動は電動車椅子ですが、その車椅子に乗るまでの準備工程も、ほとんどをヘルパーに頼らなければなりません。また、室内での姿勢は「アヒル座り(内股座り)」しかできません。

このようなKさんに対し、自力で室内の移動ができるための福祉用具デザインを試みました。彼の移動能力を調べると、乗り移ることができる高さは19センチ、降りる時に11センチを超えると怖い、乗った時の姿勢のズレを防止する凸部が必要、乗り降りのためのブレーキが必要など、試作モデルでの使用実験を繰り返し、写真(上)のような「空飛ぶ座布団」のデザインになりました。

Kさんからは「おかげで、ヘルパーなしでも1人で乗り降りができ、うろうろすることができるようになった」とのことで、Kさんの望みをひとつ叶(かな)えられたと思いました。

Aさんのための食事補助具

脳性麻痺のAさんは、車イスで移動したり、杖を用いれば歩行も可能な学生でしたが、左手は筋肉が硬直し、手首が外側を向いたまま、手のひらを返すことができませんでした。

そのAさんの「両手を使ってみそ汁を飲みたい」という要望に応えるため、左手でお椀(わん)を口に運ぶことができる食事補助具のデザインに挑戦しました。

上肢の可動状態を把握し、左掌が下向きのままミソ汁椀を口に運ぶことができるモデルを、①お椀の持ち上げやすさ、②お椀の口元への近づけやすさ、③握りやすさ、④お椀を置いたときの安定性、⑤総合的な使いやすさなどの視点から検討し、写真(下)の補助具にたどり着きました。

健常者にとっては使いやすくても、障がい者にとっては使えなかったり、使いにくかったりする道具や環境がたくさんあります。障がい者のためのデザインがもっと増えてこそ、真のユニバーサルデザインの社会が実現するのではないでしょうか。(ソーシャルデザイナー)

学校給食に異物混入 つくば市の中学校

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給食に混入していたホチキスの針=つくば市提供

つくば市は19日、市内の中学校で16日に出された学校給食に異物が混入していたと発表した。教員が食べた鶏肉のトマト煮にホチキスの針が混入していた。

市教育局健康教育課によると、16日午後0時50分ごろ、市立中学校の職員室で、教員が鶏肉のトマト煮を食べた際、口の中に違和感を感じ、異物を吐き出したところ、長さ1センチくらいのホチキスの針一つが混入していた。教員にけがなどはないという。発見時、生徒のほとんどが給食を食べ終わっていた。

鶏肉のトマト煮は同日、つくばほがらか給食センター谷田部で調理され、幼稚園4園、小学校6校、中学校3校の3317人に提供された。異物が混入していた給食は職員室で配膳されたものだという。同校や他校などから、ほかに異物混入の報告はない。

発見後、同校のほか、給食センター、食材納入業者それぞれ、異物混入の経緯などを調査したが、現時点で混入経路は不明。

同給食センターは16日、保護者にお詫びの通知を出した。

群馬に5連敗 茨城アストロプラネッツ

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3回裏茨城1死一・二塁、先制の右犠飛を放つ原=撮影/高橋浩一

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは18日、土浦市川口のJ:COMスタジアム土浦で群馬ダイヤモンドペガサスと戦い、1-4で敗れた。今季初の土浦開催となった。茨城の通算成績は5勝10敗で東地区3位。今季の群馬戦の戦績は0勝5敗となった。

【ルートインBCリーグ2025公式戦】(5月18日、J:COMスタジアム土浦)
茨城アストロプラネッツ-群馬ダイヤモンドペガサス
群馬 000001210 4
茨城 001000000 1

試合は3回に茨城が先制。先頭の9番・原田京雅と続く1番・山本仁が右前へ連続安打、2番・高田龍の送りバントで1死一・二塁とすると、3番・原海聖が右翼へ犠牲フライを放ち1点を奪った。「ノースリーだったが四球を狙わず振っていけと指示し、しっかりと外野まで運んでくれた」と巽真吾監督。「打ったのはちょっと浮いたチェンジアップ。相手投手は入れてくると思い、甘い球を見逃さずとフルスイングすることを意識した」と原。

3回裏、先制の右犠飛を放ち、生還した原田(右)がジョ・ミンヨンとタッチを交わす

投手は金韓根が先発し、5回83球を投げて無失点。立ち上がりは低めの球を見極められ走者を出したが、途中から組み立てを変え、高めのボールからストライクになる変化球でカウントをかせぎ、後半はテンポの良い投球でフライアウトに打ち取った。5回表には内野安打と四球で1死一・二塁のピンチを作るが、相手の送りバントを自ら処理し三塁封殺に成功。「捕手は一塁を指示したが自分の判断で三塁に投げた。ここで走者を残すと単打でも1点を許すことになる。絶対に三塁を踏ませたくなかった」との振り返り。

先発し5回無失点の好投をした金

6回以降は4人の投手が1イニングずつ投げたが、2番手の三浦遼大は替わりばなの初球で本塁打を浴び、3人目の川端啓新は四球と送りバントの一塁悪送球で無死一・二塁とされ、単打と内野ゴロで2点を失った。4人目の斉藤淳斗は3安打に野手のファンブルが重なり1失点。5人目の太田大和は1安打2四球で1死満塁のピンチを迎えたものの、6-4-3の併殺で切り抜けた。

6回表群馬無死、ソロ本塁打を浴びうなだれる三浦。打者は群馬の濱田

攻撃でも茨城は小さなミスが目立った。1回は山本が四球から足を生かして一死三塁の好機をつくり、原の右飛にタッチアップを狙ったが、ポテンヒットになったことで本塁突入に失敗。5回には四球で出塁した山本が牽制球から挟殺に遭い、次打者の高田龍が右前打を放ったため、ここで山本が生きていればと惜しまれる結果になった。

9回には6番・草場悠が四球を選び、8番・三池裕翔が中前打と盗塁で2死二・三塁、一発が出れば同点という見せ場を作った。打席に立った原田はバットを折るアクシデントもありながらフルカウントまで粘ったが、最後は遊飛に倒れ、「ボールを見極めることはできたが、投手の気迫に負けて外野へ運ぶことができなかった」との無念の敗戦となった。

9回裏茨城2死二・三塁、最後の打者原田は遊飛に倒れる

「群馬戦はここ数試合接戦が続いているが、四球と失策が重なるとか、チャンスであと1本が出ないなど、いずれも勝てそうなゲームを少しの差で負けている。投手と野手がかみ合う試合をつくり、チームが一体感を持って勝利を目指したい」と巽監督はリベンジを誓う。(池田充雄)

試合終了、あいさつに向かう巽監督(中央)と茨城の選手たち

難民支える自治体ネットワークに加入 つくば市 全国19番目

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署名した賛同表明文を見せる(左から)桒原妙子国連難民高等弁務官事務所駐日首席副代表代行と五十嵐立青つくば市長=つくばセンター広場、つくばフェスティバル特設ステージ

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が進める国際キャンペーン「難民を支える自治体ネットワーク」に18日、つくば市が加入した。自治体が難民への連帯と貢献を表明することを通して難民支援の輪を広げていく取り組みで、国内では東京都、広島市、札幌市などに続いて19番目、北関東の自治体では初の加入となる。世界では59カ国309自治体目。

同日、つくば駅前のつくばセンター広場などで開かれた科学と国際交流のイベント「つくばフェスティバル2025」会場で同ネットワークの加入署名式が催され、五十嵐立青つくば市長と桒原(くわはら)妙子UNHCR駐日首席副代表代行が同ネットワークの賛同表明文に署名した。

五十嵐市長は「世界に難民は1億2000万人いる。日本の人口と同じ。(難民の)状況は厳しくなっている。ウクライナ、ガザ、世界各地で大変なことが起きていて、奪われてはいけない命が奪われている。つくばにも避難してこられたり移ってこられた方がいる。だからこそ我々自治体は、連帯し国際社会の一員として支えていく責務がある。我々に何ができるか、まずは知ること。その先に何ができるか、皆さんと共に歩みを進めたい」と話した。「分断が進んでいる社会で、自治体としてメッセージを出していこうという意思表示」だという。

桒原代表代行は「つくば市が北関東で初めて参加してくださることは本当に心強い。つくば市はSDGs(国連の持続可能な開発目標)など地球規模の課題に積極的に取り組んでいる全国でも先進的な自治体。つくば市ならではの柔軟で創造的な取り組みを通じて、難民支援の輪が地域から自分ごととして広がっていくことに期待したい」と述べた。

2023年10月、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が、ウクライナから避難してきた学生や留学生などと意見交換するため筑波大学やつくば市役所を訪れたことがきっかけになった(23年10月20日付)。つくば市がSDGsに積極的に取り組んでいたり、不平等や格差是正に取り組むOECDの先進的市長(チャンピオンメイヤー)に選ばれていることなどから、UNHCR駐日事務所が同市に自治体ネットワークへの加入を呼び掛けた。

加入にあたって同市は「いろいろな機会をとらえてまず知っていただくことが一歩」(五十嵐市長)だとして、17、18日の2日間つくば駅周辺で開かれたつくばフェスティバルで、UNHCRの難民支援の仕事などを紹介するブーズを出展した。市中央図書館では1日から30日まで、UNHCR駐日事務所の協力で平和、共生、多様性などに関する同館所蔵図書を紹介する「難民のものがたり展」を開催している。

つくば市中央図書館入り口で30日まで開催されている「難民のものがたり展」

つくば市では現在、147の国と地域出身の外国人1万4251人が暮らしている。そのうち難民や戦争などからの避難者が何人いるかは不明。

他の加入自治体の取り組みとしては、UNHCR駐日事務所と連携して、難民問題を知るための独自イベントの開催や学校などでの出張授業、難民支援のための寄付の呼び掛け、大学の奨学金制度の導入や企業の雇用支援、母国を離れ難民キャンプなどで生活している難民を第三国が受け入れる「第三国定住」などを通じた難民の受け入れなどが行われているという。(鈴木宏子)

落成式に石破首相 産総研に社会実装向け計算技術拠点 つくば

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落成式でテープカットをする(左から)石村和彦産総研理事長、石破茂首相、武藤容治経済産業相

量子技術による新産業創出の中核

「量子」と「古典」のコンピューティング技術を相互に利用し、高度な融合計算技術の確立を目指す社会実装拠点が産業技術総合研究所(産総研)に出来上がった。つくば市梅園のつくば中央事業所内に設置された量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT=ジークアット)本部棟で、18日に石破茂首相、武藤容治経済産業相らと学界、産業界の関係者を集めて落成式が催された。

620億円かけ整備

産総研によるG-QuATの設立は2023年7月で、今年3月までに2つの研究棟が建設された。鉄筋コンクリート造地上4階建てのA棟5616平方メートルと同2階建てB棟2060平方メートルからなる本部棟と、地上2階建て2243平方メートルのQubed(キューベッド)棟の2つ。本部棟には、古典・量子ハイブリット計算環境としてGPUスパコンと超伝導量子コンピューター、量子デバイス評価として希釈冷凍機と量子ビット制御装置などを整備した。Qubed棟には中性原子量子コンピューター「QuEra」が設置された。

ジョセフソン素子からデザインをとったG-QuAT本部棟=つくば市梅園

建物と関連設備の投資規模は620億円。これは国から産総研への運営費交付金1年分に匹敵する規模で、研究開発拠点を超えて社会実装に踏み出すという意欲の表れとなった。量子技術による新産業創出には国も熱心で、G-QuATはその中核となる位置づけ。産総研発足の2001年以降、現職の首相を迎えるのは今回が初めてという。

初の「商用」超伝導量子コンピューター

米国エヌビディア(NVIDIA)社のH100を2020基搭載したGPUスパコン「ABCI-Q」は最新のAI技術を用いながら「古典」型というのが面白く、富士通製の「量子」コンピューターと超高速インターフェースで結んで、古典・量子融合型計算環境を構築する。

量子コンピューターと古典・量子融合を組むスパコン「ABCI-Q」

量子コンピューター自体、「重ね合わせ」という100年前に成立した量子力学の考え方を基礎にしている。一般的な(古典)コンピューターが電流のオンとオフで0と1の状態をつくって計算するのに対し、量子コンピューターは0か1か確定していない「重ね合わせ」の状態をつくり出して計算する。並列処理によって膨大なパターンの情報をひとまとめにして計算できる。

富士通が持ち込んだ64量子ビットの超伝導量子コンピューターは、わが国では初めての「商用」タイプとなる。G-QuATは最先端設備を開放しての産業支援を掲げており、企業共同研究など特定の事業に利用制限されないのを特徴としている。産総研がサポートにつく形で、富士通など企業主体での事業化を促す。超伝導量子コンピューターは現在最も開発が進んでいるされるが、絶対温度零度(マイナス273℃)近くの極低温環境が求められており、実現のための希釈冷凍機など次世代機の開発も同時に進める。

初の「商用」タイプとして設置された超伝導量子コンピューター前で左・吉田良行副センター長と富士通社員=G-QuAT本部棟

用途としては材料、金融、創薬などの分野で実用的な量子アプリケーションを開拓中で、量子コンピューターを活用する場合システムがどのように使われるか利用者目線から記述するユースケースを開発したり、高品質な部素材の評価・標準化、量子ビットの大規模集積化などに取り組む。本部棟には国内外の企業や大学などの多様な利用者が集う結節点としてのインキュベーションスペースも整備している。

落成式で石破茂首相は「量子力学100年=メモ=という節目の年に、世界最高水準の計算環境ができたのは意義深い。高度な研究設備が備わっており中小企業の皆さんにも共同研究に取り組んでいただけるよう、国としても強力に支援していきたい。つくばには、地方から世界にはばたく、そして地方から日本を変える拠点となることを期待したい」とあいさつした。(相澤冬樹)

※メモ【量子力学100年】1920年代、ド・ブロイ、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、ディラックなどが現在の量子力学の礎となる成果を続々と発表した。ボーアによって「コペンハーゲン解釈」が成立したのが1926年。ユネスコは2025年に、量子力学100年を記念する取り組みを行うことを決議した。

なんと、ホテルから花火を審査!《見上げてごらん!》40

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4月24日にオープンした宿泊施設「お宿Onn大曲の花火」(左側の建物)と、審査員席が設置された管理棟(写真中央の低層階)=筆者撮影

【コラム・小泉裕司】毎年8月の最終土曜日に開催される大曲全国花火競技大会は、土浦全国花火競技大会とともに、国内最高峰の内閣総理大臣賞が授与される。会場となる秋田県大仙市大曲には内外から多くの観光客が訪れるが、市内のホテルや旅館は予約もままならず、全国から競技に参加する28花火業者、100人以上が滞在できる施設の確保は困難となっていた。

大曲に花火師専用の宿泊施設

この課題解決に向け、大曲商工会議所が建設したのが、花火師専用の宿泊施設「お宿Onn大曲の花火」。総工費は20億円余り。6階建てで客室は50室。最大156人が宿泊でき、8月の大会本番前後は花火師だけが宿泊できるとのこと。

この期間を除いては一般客も宿泊可能としており、筆者は4月24日オープンの翌日に宿泊した。きれいな部屋と気持ちよいおもてなし、郷土色豊かな朝食メニュー、宿泊料もオープン記念価格でかなりの割安感。ちなみに翌26日の「大曲春の章 新作花火コレクション2025」の予約は早期に完売となり、キャンセルも出ない状況。宿泊料も大会価格で多少高めの設定だったよう。

花火大会史上、画期的な事業

ホテルに隣接する鉄骨3階建ての管理棟(写真中央)は、夏の大会時に審査や大会本部が設けられるという。

これまでの大曲や土浦など競技大会の審査員席は、観客席後方に設置し、雨天時には頭上の単管パイプにシート掛けで対応するのが通例。筆者は、審査員係を担当した過去に、急な雨で集計用の高額なパソコンが故障した経験を持つ。

管理棟のこけら落としとなった26日、この建物で「春の章」の審査が行われ、打ち上げ終了後、最上階6階のレストラン(写真左上)に移動して審査会が行われたとのこと。

この日は、時折降る冷たい雨で、手元の濡れたパンフレットは凍えた指でめくれず、震えながらの花火鑑賞となった。早速、屋根付き審査員席の効果はてきめん。帰りを急ぐ観客の中を審査員席から遠く離れたホテルの審査会に急ぐストレスも解消したことだろう。

数あまたある国内の花火競技大会で、既設の建物から審査を行っている例を私は知らない。

花火会場と対岸の打上現場。手前の半球型のドーム「プレミアムイグルー席」は食事付き33万円で4人まで利用可能=筆者撮影

ホテルとしての魅力づくり

部屋や最上階のレストランの窓には、雄物川河川敷や姫神火山群の主峰大平山など自然豊かな眺望が広がる。一方、日が落ちた後、雄物川の水面に映える光源が皆無で夜景の楽しみは少なめ。ホテルスタッフは「午後早めの到着」を推奨する。

ホテルからの徒歩圏内にスーパーやコンビニは皆無。アルコール類を含めたホテル内の飲食提供はメニュー少なめの自販機頼り。大浴場の計画も進められているようだが、ホテルとしての魅力づくりは道半ばのようだ。

ちなみに、筆者が宿泊した日はアルコール類の仕入れが間に合わなかったとのこと。久しぶりの休肝日で熟睡した。宿泊する方は、チェックイン前に、持ち込みの準備を忘れずにしたいものだ。

茨城の花火師が部門優勝

新作花火コレクション芯入り割物の部に出品した山﨑煙火製造所(つくば市)の石井花火師の作品「昇曲付 五重芯銀点滅」YouTube動画)が、見事優勝に輝いた。昨年の準優勝の悔しさを晴らすかのごとく、見事な6つの真円と消え際の銀点滅は余韻を残しながらも一斉に消える完璧に近い完成度。他の作品を寄せ付けない「ぶっちぎり」の優勝は、我がことのようにうれしい。

夏の大曲、そして秋の土浦でのさらなる躍進に期待しながら、本日は、これにて打ち留めー。「ずどーーん キラキラキラ」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

※参考資料:大曲商工会議所News「おおまがり」321号(2024/7発行)

名称が決定 筑波大野球・ソフトボール室内練習場

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インヴィクタス・アスリート・パフォーマンス・センターの完成イメージ図(関彰商事提供)

9月1日開所予定

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)と関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)が同大学内に整備を進めている野球・ソフトボール室内練習場について(24年10月18日付)、名称が「Invictus athlete Performance Center」(インヴィクタス・アスリート・パフォーマンス・センター)に決定した。

インヴィクタスはラテン語で無敵や逆境への抵抗を意味し、自らの力で運命を切り開くという意味が込められているという。

同施設はコーチング、バイオメカニクス、スポーツアナリティクスを融合したトレーニング・研究拠点で、今年9月1日開所予定。

平日昼間は大学の授業や部活動で使用され、夜間や週末は関彰商事が一般向けにスクールや動作分析プログラムを提供しタイムシェア方式で運用する。関彰商事が整備し、開所後は筑波大学に所有権が移転される。

名称について同大と同社は「スポーツを通じて自分自身の未来を切り拓く力を育んでほしいという思いから決定した」とし、「今後も教育、研究、地域連携を柱とした取り組みを推進し、スポーツを通じた社会貢献を継続したい」としている。

つくば市消防職員を懲戒処分 停職5カ月 酒気帯び運転の車に同乗 

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つくば市役所

つくば市は16日、市消防本部の20代男性消防職員を同日付けで停職5カ月の懲戒処分にしたと発表した。消防職員は、非番の日だった今年2月9日未明、水戸市内で、酒気を帯びた友人が運転する車に同乗して検挙された。運転者が酒気を帯びていることを知りながら同乗したなど、地方公務員にふさわしくない非行などがあったためとされる。停職5カ月は、酒気帯び運転の場合とほぼ同様の処分という。

市消防本部によると、消防職員は同日、友人と飲食し、ビールなどを飲んだ。友人が運転する車に同乗し、警察に車を止められ検挙されたという。検挙された当日、本人から上司に報告があった。5月14日に市職員分限懲戒審査委員会が開かれ、処分が決定した。消防本部の調べに対し本人は、酒気帯び運転と知りながら同乗したことを認めているという。

青木孝徳市消防長は「市民の皆様に多大なるご迷惑をお掛けし心から深くお詫びします。今後の再発防止に万全を期すと共に、市民の不信を招くような行為を厳に慎むよう、さらなる綱紀の保持を徹底します」などとするコメントを発表した。

つくばの県立高4校が魅力を紹介 18日、市民団体が「高校進学を考える集い」

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18日開催の第6回つくばの高校進学を考える市民の集いについて話す片岡英明代表

学校選択テーマ

人口増加が続くつくば市で県立高校が不足している問題を県などに訴えてきた市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が18日、同市役所コミュニティ棟で「第6回つくばの高校進学を考える市民の集い」を開催する。今回は学校選択をテーマに、市内の県立高校4校の校長が各校の魅力をそれぞれ紹介するほか、片岡代表が今春の入試問題をもとに県立中学や県立高校入試にどう構えたらいいかなどを話す。

これまでの市民の集いとは趣向を変える。これまで年1回開催してきた集いは、県立高校の募集定員不足問題を考える場とし、参加者から出された意見などをもとに県教育庁に要望活動をしてきた。県議や市などと連携し牛久栄進高の学級増やつくばサイエンス高の普通科新設などを少しずつ実現してきた。一方生徒や保護者からは、募集定員不足の問題にとどまらず、「実際の高校の話を聞きたい」「中学受験をどう考えればいいのか」「通学の費用が大変」など幅広い声が出ているなどから、今回は学校選択を考える。

集いは2部構成で、第1部は高校進学説明会を開催する。筑波高、つくばサイエンス高、竹園高、茎崎高の市内4校の校長が一堂に会し、各校の魅力をぞれぞれ説明するほか、牛久栄進高が資料を配布する。

第2部は、伝統校が中高一貫校になり中学受験の波が押し寄せていることから、入試への構えのほか、伝統校の中高一貫校化によって学校選択に波紋の広がり、特に土浦一高の定数削減で受験生に何が起きているのかなどについて、元高校教員でもある片岡代表が話す。

片岡代表は「県立高校が不足しているところに土浦一高の定員削減という状況が起こり、(同校の)定員削減1年目に土浦二高と竹園高に、2年目に牛久栄進高に受験生の波が向かった。3年目の来年の入試でどこに向かうのが心配」だとし「つくばサイエンス高と筑波高校の魅力アップは地域の発展にとっても重要」とする。さらに「県は2019年の県立高校改革プランでつくばエリアの10校を26年までに2学級増やすと発表したが、実際は県立中が増えただけ。県平均の県立高校収容率で試算するとつくばエリアには30年までに12学級増が必要になり、いろいろな人の意見を出してもらって県と対話したい」と話し参加を呼び掛ける。

◆つくば市の小中学生の高校進学を考える会は18日(日)午前10~12時、つくば市研究学園1-1-1、つくば市役所コミュニティ棟1階会議室1・2で開催。資料代300円。詳しくは電話029-852-4118(新日本婦人の会つくば支部内)へ。

20年前と20年後の舞踏会《映画探偵団》88

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】中学1年生の時、シナリオに関する本で「舞踏会の手帖」なるフランス映画の名作があることを知った。夫を亡くした貴婦人が、昔踊った男性たちの名前の書かれた手帖を見つけ、男たちを訪ねる旅に出るお話である。監督は名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ。だが私が作品を見たのは、50年以上の歳月が過ぎてからである。確かテレビ放映で見たと思うのだが、記憶は定かでない。でも内容ははっきり覚えていて想像を超える名画であった。

製作は1937年。日本での公開は1938(昭和13)年。昭和恐慌で農村は疲弊し、満洲への移民政策が本格化し、淡谷のり子の「別れのブルース」「雨のブルース」に兵士たちが熱狂していた時代だ。この年、「舞踏会の手帖」はキネマ旬報の外国映画の第1位に輝く(チャップリンの「モダン・タイムス」が第4位)。しかし、後に軍部から退廃的とされ、上映禁止となる。

作品は、クリスティ一ヌ(マリ一・ベル)が、16歳の時に踊った8人の男性を20年ぶりに訪ねるという、オムニバス構成の物語である。

1人目のジョルジュは、失恋で自殺し写真のみの登場。2人目のピエールは、元弁護士で今は犯罪に手を染めるキャバレーの支配人。3人目のアランは、元作曲家で今では子どもたちに合唱を教える神父。4人目のエリックは、元詩人で今では山岳ガイド。5人目のフランソワは、国の政治家を目指す野心家だったが、今は田舎の町長で不良の養子に悩まされている。6人目のティエリ一は、堕胎で稼ぐ闇医師。7人目のファビアンは、昔と変わらぬ美容師。そして、8人目のジェラールはつい最近亡くなり、クリスティ一ヌは父親そっくりな息子と出会い養子にする。

なぜか、最後の8人目のエピソードがあっさりと終わる。私の見た版は2時間11分。オリジナル版は2時間24分。13分短いので、そこがもっと描かれていたのではなかろうか。だがそれでも、衝撃的な仕上がりであった。

二つの時代が同時に押し寄せる

普通のオムニバスだと7つのエピソードのどこかに乱れがあるものだが、それがなく密度が濃く7本の映画を見ている感じである。クリスティ一ヌと男たちの20年前の出来事の記憶と20年後の現実の物語。この二つの時代の話が同時に押し寄せて来て、観客は人の変貌という時の残酷さを体験することとなる。これは若い世代には重すぎる内容かもしれない。だから、50年過ぎて見たのが正解だったと思う。

ある婦人たちの話では、昔の男性に訪ねて来られるのは女性にとっては迷惑だと一致しているようだ。とすると、映画のクリスティ一ヌは男性の思いを表現しており、8人の男性とは、実は女性たちなのかもしれない。女性の物語に見せかけた男性の物語ではないのか。

クリスティ一ヌは、昔踊った舞踏会場を訪ねた時、狭苦しく野暮(やぼ)ったく見え、20年前に感じた華やかで光輝く舞踏会とは、16歳の時に見た幻想の現実であると気づく場面は切ない。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

「当たり前」を問い直す 哲学カフェ 土浦一高生が市民と開催

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4月末に開かれた哲学カフェの様子。多様な参加者が車座になり話し合う

一つのテーマをめぐり参加者らが意見を出し合い、考えを深める「哲学カフェ」を、土浦一高哲学部の生徒が市内の交流スペースで、一般市民を交えて開いている。イベントの企画、運営、進行は生徒自身が行う。子どもから高齢者まで参加できる開かれた場所で世の中の「当たり前」を問い直そうと、活発な対話が繰り広げられている。

自由って何?

「そもそも『自由』ってどんなこと?」「好きなことをするのが『自由』なの?」「選択肢が多いことが『自由』じゃないかな?」「でも本当に自分が『自由』な選択をしているのかわからないことがある」―

4月27日、土浦市中央のイベントスペース「がばんクリエイティブルーム」2階の和室では、高校生や社会人15人ほどが車座になり意見を出し合った。開かれたのは、土浦一高哲学部の生徒が市民と開く2回目の「市民哲学カフェ『語るカフェ』」だ。午前10時から始まり午後3時半まで、2部制で行われた。

(左から)土浦一高の大野さん、三浦さん、飯島教諭、小関さん、神谷さん

午前中のテーマは「『自由』とはなにか?」。午前・午後を通じたテーマである「我々は『自由』に生きることを求めているのか?」を話し合う前に、まずは参加者各自が思う「自由」について確認し合った。持ち寄られたお菓子や飲み物を口にしながら、自己紹介をしつつ和やかに進んでいく。高校生の孫を持つという市内在住の女性は、「チラシを見て興味を持った。孫がどんなことを考えながら暮らしているのか想像できればと思った」と、参加の動機を話した。

4月に大学生になったばかりだという男性が「大学に入って自由な時間が多くできたが、何をすればいいか悩んだ。大学では自発的に決めなければいけないことが多い」と思いを吐露すると、社会人の男性は「浪人時代に一番自由を感じた」と、自身の経験を語った。年齢も属性もさまざまな初対面の参加者同士が胸の内にある思いを語っていく。

40代の記者も午前中の第1部に参加した。昔の自分を思い出しながら、「大学を中退すると周りの目が気になった。その後、初めて旅した海外で感じた『自由』が今も忘れられない」と述べた。中年の自分が若者を前に自分語りをする気恥ずかしさを感じたが、揶揄(やゆ)する人はいなかった。

参加者にはいくつかのルールが課せられる。「専門用語を使わず、わかりやすく話す」「わからないことがあればその場で質問する」「人の話を最後まで聞く」「自分の意見や信条を押し付けない」「秘密は守る」などだ。人の話に耳を傾けるだけでもいい。誰もが対話の輪の中にいられるよう、工夫が凝らされる。

フランスで始まった哲学カフェ

哲学カフェは、フランスの哲学者マルク・ソーテが1992年にパリで開いたのが始まりとされる。96年にソーテの著書「ソクラテスのカフェ」の邦訳が日本で出版されると、国内の大学や高校、市民グループなどに活動が広がり、全国各地で哲学カフェが開かれるようになった。

土浦一高の哲学部ではこれまで、生徒同士やOB・OGが参加する「哲学カフェ」を学内で開いてきた。学外で行う市民参加型の催しを企画したのは昨年12月が初めて。現在、部員でつくる市民哲学カフェチームのリーダーを務める3年の神谷和奏さん(17)が、会場の関係者と出会ったのがきっかけになった。

同哲学部顧問の飯島一也教諭(57)は「土浦一高の哲学カフェで大切にしたいのが、生徒自身がイベントを運営し、議論を進めるファシリテーターを務めること」だと話す。「教員を介した高校生と市民の交流会ではなく、生徒が直接市民と向き合い、高校生も一人の市民として、多様な参加者のいる対話の場に参加させたかった」と思いを語る。

議論中も、生徒自身が工夫を凝らす。第1部でファシリテーターを務めたのは部長の大野耀大さん(17)。参加者間で議論が白熱し始めると、質問を挟むなどして話し合いのペースを調整する。抽象的な言葉が行き交い始めた際は、チームのサブリーダーで2年の小関凌輔さん(16)が、図やイラストをホワイトボードに描いて議論を整理する場面もあった。議論からこぼれ落ちる人が出ないよう、生徒自身が対話を成り立たせていた。

対話の中で、イラストや図を描いて議論を整理する

チームリーダーの神谷さんは「異なる考えを受け入れ合えるのが『哲学カフェ』。私自身、他の人と違う考え方をしても受け止めてもらえることがうれしい。自分が帰属できる居場所だと感じている」とし、一般市民も参加することについては「子どもの私たちに対して、初対面の大人たちが自分の人生観や経験をもとに対等に話をしてくれる。新しい世界の広がりを感じられる」と思いを話す。

市民哲学カフェ運営スタッフで2年の三浦由宇さん(16)は「哲学カフェでは何でも議題にしていい」のが魅力だという。「『当たり前』だと感じていたことを真剣にみんなで議論できる。『これって疑問に思っていいんだ』と感じられる」。2年の小関さんは「参加する人の職業、年代、経験もさまざま。自分だけでは気づけない考え方に出合える」とし、この日のカフェでは「『浪人生時代が一番自由』という話題が衝撃的だった。勉強しなければいけない浪人生こそ一番縛られていると思っていた。参加して良かった」と感想を話した。

勝ち負けではない。

「哲学カフェで大切なことは『対話』。勝ち負けではない」と顧問の飯島教諭はいう。「対話を通じて同じ考え方を紡ぎ出していくプロセスを大切にすることが重要」だとし、「『対話』という形は人間関係のモデルになる」と考える。「社会的な分断が起きている現代社会の中で、多様性を認め合い、共通の言葉を使いながら思索を共にする経験は貴重。土浦一高の哲学部として社会的な意義を見つけることができたら」と話し、「哲学部としてどんな活動ができるのか。部員の中からアイデアがあれば今後も積極的に実現していきたい。他校で哲学をテーマにして活動する部活動があれば情報交換していきたいし、哲学カフェをする他校の生徒たちと交流することができれば」と、今後の活動への思いを語る。

次回の市民哲学カフェ「語るカフェ」は、8月の開催を予定している。(柴田大輔)

JICA筑波内のレストラン「NERICA」《ご飯は世界を救う》67

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イラストは筆者

【コラム・川浪せつ子】我が家の近くにJICA(国際協力機構)筑波センター(つくば市高野台)があります。今回はそこにあるレストラン「NERICA」(ネリカ)を紹介します。JICA は開発途上国の開発を支援する日本の国際協力機関です。こういった仕事をODA(政府開発援助)と言い、現在では150以上の国や地域を支援しているそうです。

レストランの名称「NERICA」は、アフリカの食糧事情を改善するために開発された稲の品種の総称です。変な名前ですが、この稲がアフリカの食糧事情を大幅に改善したそうです。日本でのお米づくりは主に水田ですが、「NERICA」は畑のような場所に植え付ける陸稲だそうです。

世界でお米を主食にしているのはほぼアジア。アフリカには収穫量が少ないお米しかなかったそうですが、日本人が開発・育成した「NERICA」によって米食が普及しました。

ご飯は人々の心も救う

JICAは青年海外協力隊なども運営しており、開発途上国の経済支援に貢献しています。日本には、筑波センターを含めて17の関連施設があるそうです。4月には、筑波センターで施設紹介のイベントがありました。そのとき、一般人もレストランを利用できると知り、大ファンに。

メニューにはいろいろなエスニック料理があり、とてもおいしいです。「おいしい」は、世界中一緒ですね。今回、NERICA開発の話を読み、粘り強い新種の稲開発に感動しました。NERICAの開発普及を通して、アフリカの食糧事情が豊かになったことも知りました。

手前みそですが、「ご飯は世界を救う」っていうことですね! この新種開発、その普及活動を通して、8組の方々が人生のパートナーを得たそうです。まさに「ご飯は人々の心も救う」ですね。(イラストレーター)

市職員の告発文書につくば市総務部長が注意喚起、市議「公益通報に対する威嚇だ」

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つくば市役所

市長の海外出張めぐり

つくば市職員を名乗る人物から、市議の自宅に告発文書が郵送され、受け取った市議が自身のSNSで告発文書を発信したことをめぐって、市総務部長が4月4日「市職員は行政文書や行政情報を、上司の承諾なく、正当な理由なく、外部に提供してはならない」などとする通知を各部長らに出していたことが分かった。告発文書を受け取った酒井泉市議(新・つくば民主主義の会)は「総務部長の通知は市職員の公益通報に対する威嚇で、公益通報保護法に違反する」と指摘している。

告発文書は、つくば市長らの海外出張に高額な旅費が使われていることなどを指摘する内容で、今年1月18~25日まで8日間、五十嵐立青市長がスウェーデンとフィンランドに海外出張した際の旅行代金内訳表が同封されていた。ビジネスクラスの航空運賃や宿泊・滞在費用と、随行職員の費用など合計356万円の旅行代金が記され、添えられた手紙には「自分の私利私欲のために市の税金を使っているとしか思えません」などと書かれていた。

酒井市議は、旅行代金内訳表などの文書が間違いでないことを確認した上で、一部個人名などを隠して、2月に自身のX(旧ツイッター)で発信した。

その後4月4日、市総務部長名で各部長などに通知が出された。通知は、つくば市職員からの行政文書がSNSで発信される事例があったとし、不確実な情報と共にSNSで拡散される場合があり、地方公務員法の信用失墜行為の禁止に抵触する可能性があるので、各部長などは市職員に、安易に市民に行政文書を提供しないよう指導を徹底し、厳正な職務規律の保持に努めるよう求める内容だったとされる。

通知について、9日の市長定例会見で塚本浩行市総務部長は通知を出したことを認め、「注意喚起するために流したもの」だとしている。五十嵐市長は「市職員の公益通報には適切に対応している。(酒井市議に郵送された文書は)内容に問題が多く、公益に資するものではない」などとしている。

これに対し酒井市議は「(告発文書は)市長の海外出張の宿泊費が、市の規則に規定された上限の料金を超過するなど法令違反について指摘しており、公益通報に当たる。総務部長の通知は、市職員に通報を躊躇(ちゅうちょ)させたり、通報しないように仕向ける効果があり、職員を威嚇するもの。市長に都合の悪いことを公益通報した市職員を処罰するというのであれば大きな問題となる」などと話している。

一方、市長の海外出張については市議会2月定例会議の一般質問で山中真弓市議(共産)が取り上げ、五十嵐市長は直近3年間で計5回の海外出張を行い、2365万円の市税を使っていたことを指摘している。今年1月のスウェーデンとフィンランドの市長の宿泊費については、1泊2万400円から5万4000円かかっており、市職員旅費規則に定められたヨーロッパ諸国の宿泊費規程の1泊1万8800円を超過し、市の規定が骨抜きになっていることから、旅費規程の見直しが必要だ、などと指摘していた。(鈴木宏子)

国重文2種の「原器」ご開帳 メートル条約150周年に産総研

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メートル原器の説明をする計量標準総合センター堀泰明研究グループ長(左は原器配布の1890年に発行された証明書)

産業技術総合研究所(産総研)計量標準総合センターは12日、つくば市梅園のつくばセンター中央事業所で保管している国の重要文化財「メートル原器」と「キログラム原器」の封印を解き、初めて同日公開を行った。

「世界計量記念日」の5月20日に、メートル条約が締結されてちょうど150年となることから、計量標準の象徴である2つの原器を通じ同条約の果たしてきた役割を紹介したいと報道陣向けに公開した。

メートル条約は1975年5月20日、当時17カ国の間で締結された。日本は1885年(明治18年)に加盟、今年4月現在、加盟国は64カ国、準加盟国は37カ国となっている。国によって長さや体積、質量などがまちまちだと貿易や製品製造などの障壁となることから、各国で一致した計量標準を定めようとした取り決め。

メートル条約の下、1890年にメートル原器とキログラム原器が加盟国に配布された。日本はこのとき両原器の配布を受けた初期の加盟国の一つ。メートル原器はフランスで30本製作されたもののうちNo.22を、キログラム原器は40個作られた複製のNo.6を、それぞれ受領した。共に白金イリジウム合金製、経年変化や熱膨張係数が少ない素材で作られた。

原器は、例えば都道府県等の保有する測定器との校正を行う際などに用いられるが、40年に一度フランスに里帰りして定期検査を受ける。普段は室温や湿度、防塵管理の厳格な場所で保管されている。日本では戦時中、都内から石岡市(柿岡)の地磁気観測所に「疎開」して戦災を避けようとした歴史もある。

「現物がそこにある意味」

国際的な計量標準は国際単位系(SI)が体系化され、最新の科技術をベースにした定義の改定が進んだ。「原器」を計量標準に用いたのは、長さ(メートル)と質量(キログラム)だけ。

メートルは元々子午線の長さを基準に定められたが、メートル原器が出来てからは原器に刻まれた2本の目盛線の中心間の、温度0℃のときの距離との定義が約70年間使われた。1960年になって、クリプトン光の波長を基準とする距離に改定され、1983年からは一定の時間に光が真空中を進む距離による定義になっている。

厳重な扉を開けてキログラム原器(上段右のガラス容器に入っている)を見せる計量標準総合センター、倉本直樹首席研究員

一方、キログラム原器は2019年までの約130年間、質量の基準としての役割を担ってきたが、原子1個の質量に関連する物理定数「プランク定数」に基づく定数に変わった。産総研の計量標準総合センターの研究グループが、シリコン単結晶球体を用いて高精度なプランク定数の測定に成功したことで、改定に大きな役割を果たしている。

こうして役目を終えたメートル原器は2012年に、キログラム原器は2022年に、それぞれ国の重要文化財に指定された。計量標準で「原器」の考え方はとらなくなったものの、特にキログラム原器は完全に引退したわけではない。非常に優秀な分銅として、現在でも産業の現場などで役立っているという。

このためキログラム原器の保管はとりわけ厳重で、つくばセンター中央事業所の地階の厳重な扉のなかに保管され、塵芥を避け、湿度は0%に保たれている。12日はこの施錠を解いての公開となった。庫内にはキログラム原器のほか、副原器、尺貫法時代の貫原器2点の合わせて4点(いずれも重要文化財)が公開された。

計量標準総合センターの臼田孝センター長は「物理量と違って現物がそこにある意味は大きい。150年変わらず維持してくれた関係者がいたわけで、その象徴としての原器を今後とも大切にしていきたい」と語っている。(相澤冬樹)

年金受給額と生活に必要なお金《ハチドリ暮らし》49

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写真は筆者

【コラム・山口京子】定年後の暮らしを考える金額として、日本年金機構が発表する公的年金の受給額、国税庁の「民間給与実態統計調査」、総務省が調査している「家計調査(家計収支編)」などの数字があります。

2025年の公的年金受給額モデルでは、国民年金の老齢基礎年金は、20歳から60歳まで保険料を納付したとして、月額6万9308円。厚生年金は、会社員の夫と専業主婦の妻をモデルにした夫婦世帯計算で、23万2784円。その内訳は、夫婦2人分の老齢基礎年金と夫の厚生年金部分の9万4168円。

この金額の前提となる保険料納付の条件は、男性の平均的な収入(平均標準報酬=賞与含む月額換算=45万5000円)で40年間就業したケースです。単身男性の厚生年金月額(老齢基礎年金を含む)は17万3457円。単身女性では13万2117円と記されていました。

厚生年金の額は現役時代の保険料額や納付期間で決まります。国税庁の「2023年分民間給与実態統計調査」によると、平均年収は460万円、中央値では351万円でした。正社員の平均年収は530万円、非正規社員の平均年収は202万円です。

高齢夫婦無職世帯の家計の収支状況を総務省の家計調査で見ると、2024年では月3万4058円の赤字。2020年は1111円の黒字でした。2020年はコロナ禍で1人10万円の定額給付金が出たため、黒字になったと思われます。

6月には年金額改定通知が届きます

話題になった「老後2000万円」不足の根拠となったのは、2017年の総務省家計調査です。高齢夫婦無職世帯は月5万4519円の赤字で、これを30年続けると約2000万円が不足すると言われました。この時の調査では、貯蓄額平均は2000万円を超えていました。現在は約2500万円となっていますが、高額貯蓄者が平均額を押し上げているためで、中央値は1600万円台とされています。

当時、「老後2000万円」問題が独り歩きし、大問題になりましたが、最近は2000万円でも足りないとも聞きます。しかし、赤字が続くと思えば、私たちは節約したり、収入を増やすなど様々な行動に出るでしょう。統計数字は参考にはなるものの、大事なのはわが家の生活です。年金はどうなっているのか、それ以外の収入があるのかで、それぞれの家計は変わります。

6月には年金機構から「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」が届きます。そこには、改定前と改定後の国民年金と厚生年金の額が記載されています。そして、毎年資産のたな卸しをしましょう。ざっくり、資産額の時系列変化を意識してください。家計の足元をしっかりさせて暮らしたいものです。(消費生活アドバイザー)

筑波山麓の民間交流施設で上映会 神社を継承する人々描く

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上映会を主催する渋谷順子さん。持っているのは縄文土器のレプリカ

福島出身 数間よし乃さん制作「継承」

つくば市国松の民間交流施設「じゅんばぁの家」(渋谷順子代表)で18日、福島県出身の写真家で映像クリエイターの数間よし乃さん(46)が監督した映画「継承」の上映会が催される。神社を継承する人々の姿を描いたドキュメンタリーで、上映会には数間さんも出席し座談会も開かれる。

数間さんは福島県猪苗代町生まれ、結婚を機に南相馬市に転居した。東日本大震災の津波で被災し、東京電力福島第1原発事故の影響で東京都府中市に移り住んだ。移住先にあった大国魂神社に1900年の歴史があることに感銘。原発事故で福島を離れたことを悩んでいた数間さんは、神社を継承する人々の姿を通じて、人間にとって大切なものを描こうと映画を制作した。

南相馬市を始めとする相双地方や出身の猪苗代町、喜多方市など福島県内外約30カ所の神社を撮影し、神職や総代、行政区長らをインタビューした。2023年、英語版を制作しフランスのナント三大陸映画祭に応募。その後、英語版を日本語版に再編集し、福島県内各地で上映会を実施している。

数間さんは作品について「私は故郷を捨てた。10年以上その選択が私を苦しめた。東日本大震災による放射能汚染を懸念し、 嫁いだ先の土地を手放した私は、 流産や病気、子供の障害、コロナ禍を経験しながら神社に参拝するようになる。 そこで日本人が長い年月にわたり大切にしてきた神社を支える『神社守り』の人々の撮影を始めた。 長い間の問い、『継承すべきものは何なのか』、失ったものの重みと新たに見つけた意識を描いた映画」だと解説している。

つくばで上映会を主催する渋谷順子さん(66)は神奈川県座間市出身。ドイツに16年間、日本語講師として滞在し、2022年に帰国。現在、筑波山麓の国松に住み、自宅の一部を開放して交流施設を運営するかたわら、筑波山神社や周辺の飯名神社、蚕影神社、六所皇大神宮跡など古くから続く信仰や地域の伝統や歴史に興味を持ち、それらを守り続ける地元住民と交流を続けている。数間監督とは、古代の勉強会で知り合い、自身との接点を強く感じ、これはぜひ他の人にも伝え、応援しなければという思いが起こったという。

渋谷さんは「(自身が)横浜生まれなのに筑波山麓に住んだのはドイツの田舎に住んだから。田舎は自然が豊かであるとともに継承された歴史や文化がある。神社守りを描いた数間さんの映画は、継承すべきものというのがテーマ。捨てたもの、失ったものの重さを数間監督と思い存分語り合うことができれば」と話す。

◆ドキュメンタリー映画「継承」の上映会は18日(日)つくば市国松1022-2 筑波山麓じゅんばあの家で開催。上映時間は①午前の部=10~11時 上映会、11~12時 お話し会②夜の部=6~7時 上映会、7~8時 食事+お話し会。参加費は午前の部無料、午後の部は食事代2000円。問い合わせはじゅんばあの家(メールjunbaanoie@gmail.com、電話080-4713-3104)へ。

米の適正価格はいくら?《邑から日本を見る》182

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植えたばかりの田んぼと耕作放棄の水田(後方)

【コラム・先﨑千尋】「カラスの鳴かぬ日はあっても」という言葉がある。今なら、米に関する話題がテレビ、新聞などで報道されない日はない。「米5キロ最高値4220円。昨年の2倍。16週連続値上げ。崩壊寸前食料安保」など。

予想されたことだが、最近は米泥棒があちこちに出没しているというニュースもある。5月6日付の日本農業新聞は、今年になって千葉、茨城の両県で約30件、8000キロが農家の倉庫から盗まれた、と報じている。テレビでも、被害に遭った農家の声を伝えている。我が家でも被害に遭ったらと考えるとゾッとする。あちこちのフードバンクや子ども食堂も困っているようだ。

5反百姓の我が家は、例年どおり5月の連休に田植えをした。兄弟や子供たちが集まり、1年で一番にぎやかだ。孫が田植え機を操縦するようになった。終わったあとは「さなぶり」。皆が持ち寄った手作りの料理とビールがうまい。飲み始める前に「今年も米を食べられるゾ」と宣言する。

スーパーでの店頭価格が昨年の倍になったからといって、農家は潤っているのか。米作りを止めた農家が作付けを再開するか。「上がった」と言っても、やっと30年前の価格に戻っただけ。その間、資材代は大幅に上がっている。

2022年までは「米農家の時給は10円」と言われていた。昨年それが約100円に上がった。それでもパートの時給の1割にすぎない。リタイアした人たちは高齢化で、もう米作りはできない。米で生活できるためには最低でも20~30ヘクタールは必要だし、トラクターやコンバイン、乾燥施設などの設備投資は数千万円単位になる。

「令和の米騒動」と言うが

それにしても、米5キロ4000円台の価格は高過ぎる。生産者は「高ければ高いほどいい」などとは考えていない。大部分の農家は「米の再生産ができる正当な農業労働評価をしてほしい」と願っている。大部分の農家は出来秋に米を出荷しているので、もうかることはないのだ。

では、米の適正な小売価格はどれくらいなのだろうか。

農水省の調査では、昨年の米の相対取引価格は60キロ2万4383円だ。この価格で米卸が玄米を仕入れ、スーパーなどの小売が店頭で売る場合の「適正価格」は、卸・小売りのコスト(精米、流通など)に平均利潤を加えて、5キロ換算で2918円になる。政府備蓄米の全農から卸への販売価格は60キロ2万2402円。店頭価格が5キロで3000円より少し高いくらいになっているので、その程度が「適正価格」と言えよう。誰かが不当に儲けている。

1918年に起きた米騒動は、富山県魚津町の女たちが米の投機による米価の高騰に対して暴動を起こしたのが始まりで、全国に波及した。米倉の打ち壊しが行われ、最後は軍隊まで出動した。今回の米価の急騰は「令和の米騒動」と言われているが、騒動はどこでも起きていない。

どうして「騒動」と言うのだろうか? 米を始めとする物価高に労働組合はだんまりを決め込み、自分の給料が上がればいいと言うだけ。生活苦に声を上げた市民運動があるとも聞いていない。農民の側からは、前回の本欄で伝えたように「令和の百姓一揆」が東京など全国各地で行われたが、農協陣営は動いていない。「世の中、のどかだねえ」と言っているだけでいいのだろうか。(元瓜連町長)

世界の物語を絵で表現 上渕翔さん つくばで個展

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4年ぶりにつくばで個展を開く上渕翔さん

つくば市在住の画家、上渕翔さんの個展「紡がれる物語」が16日から、つくば市千現、二の宮公園前にあるギャラリーネオ/センシュウで始まる。日本書紀や万葉集、グリム童話、マザーグースなど、世界各地の物語から着想を得た新作を含む絵画作品約30点を展示する。会場には移動式のスロープが用意され、必要に応じて設置される。「つくばで開いている絵画教室の生徒や知人に、日常的に車いすを利用している人たちがいる。つくばでの個展開催は4年ぶり。ぜひ、多くの方に足を運んでいただき、私が受け継いだ物語を、作品を通じて見た方に伝えられたら」と、来場を呼びかける。

展示のタイトルにもなる作品「紡がれる物語」は、濃紺のマントを羽織ったうつむく女性を木製の板に描いた作品だ。開いたマントの内側には、雲から落ちる雨、雲間に浮かぶ満月、その上空に舞う3羽のツバメが描かれている。この作品は、江戸時代に活躍した石の収集家で鉱物学者・木内石亭による、日本で最初の石の専門書「雲根志(うんこんし)」からヒントを得た。木内が同書に記した石の一つに、羽を開いたツバメに似た「石燕(いしつばめ)」という二枚貝の化石がある。当時の人々はこの石を、ツバメが石になったものと考えた。雷風雨に打たれるとツバメとなって空を飛び、雨が乾くと再び石に戻ると信じたという。石燕は、安産のお守りとしても利用されていたことから、女性を表す満月と共に、雨とツバメを描き込んだ。

個展のタイトルでもある作品「紡がれる物語」をあしらったダイレクトメール

「三匹のこねこ、てぶくろなくして」は、イギリスに古くから伝わる童謡「マザーグース」の一つをもとにした作品だ。手袋をなくして怒られた三匹の猫が、見つけたごほうびにパイを食べる話で、回転する木製の歯車に描くことで、リズミカルに展開する物語を表現した。

中央に金箔の帯をあしらった「終わりから生まれる」は、古事記や日本書紀に記される、食物の起源に関する神話をモチーフに描いた。神話では、命を落とした女神の亡きがらから、稲やヒエ、蚕、小豆、牛馬など、人の暮らしに不可欠な食べ物が生まれる話が記されている。その他に、土砂崩れの原因を、地中に潜んだ法螺貝(ほらがい)によるものだとする伝説「法螺抜け」をもとにした「貝が夜空の夢をみる」、かつてあった信仰の場所を木々が覆う「眠る島」などが展示される。

スロープ設置、気軽に声をかけて

「作物の起源を記した神話は、アジアやアメリカ大陸などにもあることが知られている。さまざまな物語を読んで感じるのが、東も西も人は同じ感覚を持っているということ。当時の人が、なぜそう考え、信じたのか興味がある」と上渕さん。「昔の人の想像力を、絵という形でアウトプットした。私が受け継いだものを、見た方にも受け継いでもらえたらいいと思っている。いろいろな物語を絵に込めている。毎日在廊する予定。是非、説明させていただきたい」と述べ、「会場には、移動式のスロープがある。車いすの方だけでなく、ベビーカーの方や足の弱い方にも必要なもの。すぐに取り付けられるので、気軽に声をかけてほしい」と話す。

熊本県出身の上渕さんは、2007年に筑波大学芸術専門学群洋画コースを卒業。現在は、つくばを拠点に個展の開催や、全国各地で開かれる合同作品展への参加を通じて作品を発表している。2021年には水戸市備前町の常陽史料館で、木製の板や丸太などに描いた58作品を展示する個展を開いた。(柴田大輔)

◆上渕翔個展「紡がれる物語」は16日(金)~6月1日(日)、つくば市千現1-23-4-101、ギャリーネオ/センシュウで開催。開館は金・土・日曜のみ(月~木は休館)。開館時間は正午から午後7時まで。入場無料。問い合わせはギャラリーネオ/センシュウのメール(sen.jotarotomoda@gmail.com)へ。

筑波大が4連覇 天皇杯県代表決定戦

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後半23分、ゴールを決め喜ぶ筑波大の廣井(中央、青いユニフォーム)にチームメートが駆け寄る(撮影/高橋浩一)

第28回茨城県サッカー選手権兼天皇杯JFA第105回全日本サッカー選手権県代表決定戦は10日、ひたちなか市新光町の市総合運動公園陸上競技場で開催され、筑波大学蹴球部が流通経済大学体育局サッカー部を1-0で破り、大会4連覇を達成した。筑波大は天皇杯本戦への出場を決めた。

第28回茨城県サッカー選手権大会兼天皇杯JFA第105回全日本サッカー選手権大会茨城県代表決定戦(10日、ひたちなか市総合運動公園陸上競技場)
筑波大蹴球部 1-0 流通経済大体育局サッカー部
前半0-0
後半1-0

関東大学リーグでは無敗で首位(5月6日現在)を走る筑波大と、無勝で下位に沈む流経大が、天皇杯県予選決勝で顔を合わせた。

左サイドバックを務めた筑波大の鈴木遼主将(右)。この日スタメン出場した唯一の4年生だ

今季のチームについて、筑波大の小井土正亮監督は「加藤玄がJ1名古屋、諏訪間幸成が横浜F・マリノスに入団するなど4年生の層が薄くなり、厳しいシーズンになった。だが今季初スタメンの選手や一般入部の選手らが頑張り、新戦力が台頭してきている」と、手応えを感じている。

それでも両チームの力には、順位通りの明確な差があるわけではない。事実、4月12日の対戦では1-1の引き分けに終わっている。「今日も難しい戦いになることは想定内だった。先に押し込まれるピンチはあったが、一人一人が責任持って戦ってくれて守りきれた」と小井土監督。

前半35分、ドリブルで攻め込む筑波大左MFの清水(中央)

前半は流経大が、サイドを使ったスケールの大きな攻撃と、2ラインをきれいに並べたコンパクトな守備で筑波大を圧倒した。流れが変わったのは後半明けの選手交代から。筑波大はピッチコンディションを考慮した2トップの形を止め、FW内野航太郎とMF清水大翔の1トップ1シャドーといういつもの形に戻した。

後半は1トップで前線を支えた内野(中央)

得点が生まれたのは後半23分。右サイドでのパス交換で敵陣深くへボールを運ぶと、攻撃参加していたDF布施克真からMF清水大翔へ横パスが通る。清水がワンタッチで前へはたくと、相手守備の裏をうかがっていたMF廣井蘭人が、左足でのシュートをゴール左隅に決めた。廣井はそのまま右コーナー付近へ走り、膝スライディングで喜びをアピール。駆け寄ってきたチームメートにもみくちゃにされた。

後半23分、廣井の左足シュートがゴールを破る

「狙っていた形。センターバックとサイドバックの間が空くことはスカウティングで分かっていた。清水のパスで決まったようなもの。彼はほかの人とは違う感覚を持っている。トンと優しく置いてくれた。自分はどこを狙うというわけはなく、ふかさないよう当てることを意識した」と廣井のコメント。アシストの清水は「顔を上げたいいタイミングで布施から横パスが来て、フリーだったのでうまく抑えながら足元に出せた」と振り返った。

応援席前にて集合写真

これで天皇杯本戦への出場を決めた筑波大。初戦は5月25日、埼玉県大宮市のNACK5スタジアムでRB大宮アルディージャと対戦する。勝てば2回戦は6月11日で相手はV・ファーレン長崎。7月16日の3回戦では鹿島アントラーズが予想される。「天皇杯は毎年楽しみにしている大会。1試合でも多くやりたい。プレッシャーもあるが茨城の代表として立ち向かっていき、新しい歴史を作りたい」と小井土監督。廣井は、帝京長岡高の先輩の谷内田哲平が大宮にいるので「対戦するのがめちゃくちゃ楽しみ。行けるところまで行きたい」とモチベーションを高めている。(池田充雄)

ナイトクルージング あわや詐欺!?《続・平熱日記》180

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】東京 夢の島からナイトクルージング。よほどのことがない限りこういったお誘いはお断りするが、次女の結婚を祝っての企画とあっては喜んではせ参じるしかない。

この催しを提案してくれたのは長女の義父母。つまり、次女からすれば姉の義理のお父さんお母さんということになる。一般的にこういう関係性の場合、それほど親しく付き合うことがないと思われるが、次女と姉の義父母はとても仲がよく、誕生日や年中行事を共にする。

さて、当日は桜が一気に咲いたと思ったら真冬の寒さ。しまいかけたダウンジャケットを引っ張り出して、新木場駅から夢の島マリーナへ。いや~、世の中にはお金持ちがこんなにいらっしゃるんですねえ。マリーナに並ぶ大小様々の豪華なヨットやクルーザーを見ての率直な感想。

ところが、ここで気になる情報が飛び込んでくる。詳細は抜きにして、食べ物付きのプランを予約したのだけれど、ちょっとした手違いがあったらしく、出航がやや遅れるとのこと。そこで通されたのは、このマリーナのオーナーズルーム。さすがにお金持ちのたまり場感。とりあえずそこで待機。

しかし、待てど暮らせど、出航の案内がない。小一時間が経ったころ、オーナーズルームの営業が終了したと告げられ、追い出されるようだ。船主に連絡を取るも音信不通。一同待ちくたびれるし腹は減るし、イライラが募ってきたころ、誰ともなく「これは詐欺にあったんじゃないか?」と、つぶやいた。

というか、こうなったら新木場まで戻って、居酒屋で一杯やるかと動き出そうとしたそのとき…船長現る。

夜の東京の明るさに驚いた

多分、何とかして食べ物を手配していたのだろうと推測されたが、船長の言い訳は天候の回復を待っていたとか。それにしても、ここは一言言わずにはいられないと誰もが思っていたところに、義母の「めでたい日だから…」という慈悲深い一言で、なんとか平静を保つ。

ともあれ、無事に出航。とにかく寒い夜だったが、3歳の孫は初めての経験に大満足。雨も上がって、東京の夜景、そしてライトアップされた満開の桜が、次女夫妻の門出を祝っているかのよう。もちろん、新婚の2人も感慨ひとしおの様子。

一方、夜の東京の明るさに改めて驚いた。ウォーターフロントに林立するタワーマンションのきらびやかなこと。次々に現れる橋や東京タワー、スカイツリーも煌々(こうこう)と輝いている。世間で米が高いとかガソリンや電気代が値上げとかで騒いでいるのが、うそのようにさえ感じられる。

2日前まで、山口の山の中で、夜が明ける前の暗闇の中をパクと散歩していたことを思い出して、余計に別の国のことのようにも思えた。

帰りは、みんなと別れて独り東京駅に向かう電車に乗った。結構遅い時間になっていたが、夢の国からの客で電車は満員だった。(画家)