土曜日, 7月 5, 2025
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夏の高校野球茨城大会開幕 91校84チームが入場行進

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優勝旗をもって入場行進する昨年の優勝校、霞ケ浦高校。今年からプラカードは自校の部員またはマネージャーが持って先導した

第107回全国高校野球茨城大会の開会式が5日、水戸市のノーブルホームスタジアム水戸で開かれ、三つの連合チームを含む91校84チームが入場行進し、熱い戦いが幕を開けた。今年から、開会式の入場行進で長年にわたりプラカードを持ち選手を先導してきた水戸女子高校の生徒に代わって、自校のマネージャーまたは部員がプラカードを持ち入場した。

開会式は午前9時から行われた。大洗高校マーチングバンド部ブルーホークスの演奏が響き渡ると、スタンドからは大きな拍手と歓声が沸き起こった。

開会式で元気に入場行進する高校球児たち

初めてプラカードを持ち入場行進した土浦湖北高校マネージャーの3年、佐久間望さんは「人生で1度きりの経験が出来てとてもうれしい。緊張せずにいつもの練習通りに出来た」と微笑んだ。

開会式で県高校野球連盟の深谷靖会長は「皆のひたむきな姿勢、仲間を思いやる心、真剣に野球に取り組む姿は観戦する側にとっても学ぶことが多い。皆さんが流す汗と涙の一つひとつが希望や感動をもたらしている。自分を信じ、仲間を信じ、悔いのないプレーを存分に発揮して下さい。この大会が皆さんの今後の人生の誇りとなるよう心からの健闘をお祈りします」とあいさつした。

選手宣誓をする日立工業の青山海翔主将

選手宣誓をした日立工業高校の青山海翔主将は「年を追うごとに暑くなる夏をさらに暑くするため、今、僕たちはこの場所に来ている。試合をするからには必ず勝ち負けがあり、半数近くのチームの3年生は初戦で引退を迎えることになる。しかしそれをむなしいと感じる選手はこの場所には1人もいない。今日まで大好きな野球をやってこられたことに喜びと感謝の念でいっぱい」と述べ宣誓した。

開会式の司会進行は土浦三高3年の斎藤陽奈多さんと牛久栄進高校3年の弘中葵さんが務めた。斎藤さんは「緊張を感じるよりもずっと楽しくやれた。全員に届くようにハキハキと出来た」、弘中さんは「楽しかった。会場の雰囲気にのみ込まれそうになったが自分の学校の行進を見て笑顔でやれた」と2人とも満足した表情で話し「全員が全力を出し切り、悔いの無い終わり方をしてほしい」と高校球児に熱いエールを送った。

司会進行をする土浦三高の斎藤陽奈多さん(左)と牛久栄進高の弘中葵さん 

連覇を目指す昨年の覇者、霞ケ浦高校の鹿又嵩翔主将は「球場に着くなり夏の大会の雰囲気で、緊張感を感じる。チーム全員が甲子園という舞台に戻って野球をやりたいという思いがあるので、連覇して、あこがれの舞台に戻って甲子園で優勝したい」と意気込みを語った。

優勝旗の返還をする昨年の覇者、霞ケ浦の鹿又嵩翔主将

昨年、決勝で霞ケ浦に敗れ初優勝を逃したつくば秀英の吉田侑真主将は「自分たち3年生は2年半やってきて最後の大会なので、昨年の悔しさも含めてこれまでやってきたことを全部出し切る」と力強く語った。

試合が順調に進めば決勝は26日午前10時からノーブルホーム水戸で行われる。(高橋浩一)

県「学級増必要な状況でない」 竹園高2学級増求め つくば市議長、意見書手渡す 

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庄司一裕県教育庁学校教育部長に意見書を手渡す黒田健祐つくば市議会議長(左)=4日、県庁

つくば市議会が6月定例会議で、県立竹園高校の募集定員を8学級から10学級に増やすことを知事に求める意見書を全会一致で可決したことを受けて(6月27日付)、黒田健祐市議会議長らは4日、県庁を訪れ、庄司一裕県教育庁学校教育部長に意見書を手渡した。これに対し県高校教育課高校教育改革推進室の片見徳太郎室長は「学級増が必要といえる状況ではない」と話し、竹園高の学級増に否定的な見解を示した。

片見室長は「県全体で5年後までに中学卒業者が2000人減少し、10年後までに5600人を超える減少が見込まれている。つくば市は2030年まで生徒数増が見込まれていることを承知しているが、県立高校改革プランを策定した際、子供たちにどのくらいの通学時間なら大丈夫かと聞いたところ、一番多かったのが1時間程度だった。つくば市周辺地域では、つくば市の増加分以上に生徒数が減少すると推計している(24年10月24日付)。今年度はつくばサイエンス高校に普通科を設置し大学進学を打ち出して、志をもった中学生にたくさん入ってきていただいたが、サイエンス高校と筑波高校併せてまだ117人の欠員がある。県としてはサイエンス高校と筑波高校の欠員解消を中心に取り組んでおり、学級増が必要といえる状況ではない)と話した。

「落としどころ見いだしたい」

4日は、つくば市議会の意見書提出と併せて、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表が、同じ竹園高校の2学級増を求める要望書を手渡した。ほかに、篠塚英司つくば市副市長、つくば市選出の鈴木将、山本美和、うののぶこ、ヘイズ・ジョン県議4人らが同席した。

黒田議長は「(2013年に県立並木高校が閉校し並木中等教育学校に移行した後の)10年ほど前から『ちょうどいい県立高校の受け皿がない』といった声が出て、ここ最近、切実な声が大きくなっている。つくば市の県立高校は(中学卒業者数で比較し)水戸市の3分の1しかないというデータもある。市内には小中学校がたくさん新設されているが高校はそのまま。教育環境の充実は重要なこと」だなどと話し、理解を求めた。

これに対し県の庄司部長は「貴重なご意見としてお受けさせていただきたい」などと答えるにとどまった。

意見交換の席で、考える会の片岡代表は「(中高一貫により)土浦一高が(高校入試の募集枠が)8学級から4学級になって1年目の2024年は、県立高校志願者の波が土浦二高と竹園高に行き、両校とも志願者が100人以上オーバーした。2年目の25年は牛久栄進高校の志願者が137人オーバーになった。この波は2026年にどこに向かうのか。受け皿はあるのか」と迫り「県立高校改革プランに沿って学級増をやってほしい。オールつくばの願いを受け止めてほしい」と要望した。

同席した県議からは「子供たちのために何ができるか、ぶつかり合いながらも落としどころを見いだしていきたい」(山本県議)などの意見が出された。(鈴木宏子)

二十四節季と虫のはなし《続・平熱日記》182

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】夏草の生い茂る季節となり、件(くだん)の打ちっぱなしゴルフ場の草刈りに出かける。ついでにナラ枯れの木を数本伐る(確実にナラ枯れは進行している)。そのうちの1本は直径60センチの大きなクヌギで、確か一昨年あたりはカブトムシが群がっていたのを見たのだけれども、かわいそうに新芽もつけずに立ち枯れてしまった。

開けた斜面に立っていたので、伐り倒すのはそう大変ではなかったが、このクヌギの皮一枚下には恐らくカミキリムシの幼虫がはびこっていて、玉切りにした幹から何とも言えない「ワシワシ…」という幼虫のはみ音らしきものが聞こえ、それを割って薪(まき)にして積んでいくと、不気味な音のする壁となった(この幼虫は県が指定している特定外来種ではないようだ)。

しかし、一方では世界中で昆虫がどんどん減っていて、例えばミツバチの減少で草木が受粉できないで困っているとか。とはいえ、我が家では今年も軒下にテニスボールほどのスズメバチの巣を発見したので、人間様のご都合で叩き落した。多分周りはツルツルしたサイディングのお宅ばかりなので、木造の我が家の軒下は巣をかけやすいのだろう。

昔の人は(中国の人は)小さな動く生き物は大ざっぱに虫としたようだ。トカゲやコウモリも虫偏(むしへん)だし、虹も小さな虫の仕業だと思っていたらしい。

最近は聞かなくなったが、赤ちゃんが泣いているのは疳(かん)の虫のせいだなんて言っていたし、虫の居所が悪いとか、目に見えないものの犯人は虫ということにしたのだろう。というのも、パクの目の周りが急に赤くなって医者に連れて行ったらアレルギーだと言われた。飲み薬と塗り薬でよくなったが、昔だったらアレルギーも虫の仕業だと思われたに違いないと思った。

カエルも虫偏?

平熱日記の掲載が月に一度になった。隔週の寄稿が長く習慣になっていたせいか、せっかちな私はあまり早く原稿を書いてしまうと、掲載されるころには季節も世の中の話題も変わっていてやや戸惑っている。

そういえば、2週間をひとつの区切りとする「二十四節季」というのがある(これも大陸経由)ことを思い出した。今まであまり気にしたことはなかったけれども、2週間という長さは何となくひと区切りになる「ちょうどいい周期」なのかもしれない。してみると、草が勢いよく伸び始めたとか、蜂が巣をかけたとかというのは五日毎の七十二候に当たるわけで、はて、私は知らぬうちにこのペースで絵を描いているような気もしてきた。

農作業とも深いつながりのある二十四節季。ひと月前には備蓄米を喜々として手にする人々の画像が流れていたが、よくよく考えてみると米もガソリンも高いから怒っているのではなくて、本来は安いはずのものが高く売られていることに人々の腹の虫は収まらないのだと思う。

パクとの散歩道にある田んぼは、今年とうとう田植えをしまずじまいだ。雨の後などはケチャダンスのようにカエルの大合唱だけが勢いよく響いている。「コメ、カエル? カワズ? ケロケロ…」。カエルも虫偏だな…。(画家)

筑波実験植物園で倒木30本超 1日、35メートルの突風で被害

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幹から折れたモミの前に立つ遊川園長=4日午後、つくば市天久保、国立科学博物館 筑波実験植物園

ダウンバーストかガストフロント 水戸気象台

つくば市が豪雨や雷に見舞われた1日午後、同市柴崎付近で突風が発生した。水戸地方気象台は3日、現地調査を実施し、4日、突風について、ダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと発表した。突風の強さは秒速約35メートルだったと推定されるという。

発表によると、1日午後4時30分ごろ同市柴崎付近で、豪雨やひょうに伴って突風が発生し、木造住宅の損壊、作業用足場の損壊、倒木などの被害が発生した。同市天久保の筑波実験植物園では樹木30本以上が倒れたり折れたりした。

ダウンバーストは積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹きだす激しい空気の流れ。ガストフロントは積乱雲の下で形成された冷たく重い空気の塊が、重みによって、温かく軽い空気の側に流れ出すことによって発生する空気の流れ。柴崎付近の被害は面的に発生し、突風の強さは、0~5まで6段階で評価する「日本版改良藤田スケール」で、最も小さい0階級(JEF0)という。

全て東から西に倒れる

つくば市天久保、国立科学博物館 筑波実験植物園の遊川知久園長によると、雨が降り始めたのは1日午後4時30分ごろ。瞬く間に激しさを増す雨が窓を打ちつけ、建物全体が揺れるような落雷の音が響き渡ったという。同施設内の研究管理棟にいた広報の久保田美咲さんは「全く外に出られないくらいの大雨で、あっという間に屋外が川のようになっていた。帰れないかと思った」と話す。その後、午後5時15分ごろまでに雨は小降りになった。

園内では展示室の一部でガラス窓が割れ、敷地内の東側周辺部を中心に、高さ15メートルほどのモミや、コウヤマキなど30本以上が根本から倒れたり、幹が割れるなどしているのが確認された。折れた木は全て、東から西に向けて倒れていた。

遊川園長は、「台風などで1、2本の木が折れることはあったが、一度にこれだけ倒れたのは初めてのこと。敷地に隣接する住宅に倒れなかったのは風向きが幸いした」とし、「来場者出入りのある主だった部分では倒壊した木々の除去は進んでいる。遊歩道から離れた箇所についてはこれから順次、除去作業を進めていく」と話す。

同市消防本部によると1日午後は、突風の被害やけがなどによる救急車や消防車などの出動要請は無かったという。市危機管理課によると柴崎で2カ所、金田、玉取、今鹿嶋でそれぞれ1カ所倒木の被害があった。市公園・施設課によると筑波実験植物園近くの山鳩公園(同市天久保)のほか、流星台北公園(柴崎)、松見公園(天久保)、天久保公園(同)で各1本、倒木の被害があり、4日までに撤去した。(鈴木宏子、柴田大輔)

筑波実験植物園近くの山場公園で根元から倒れた樹木=4日午前11時ごろ、つくば市天久保

常総だから勝たなきゃではなく歴史つくるチームに 島田直也監督【高校野球展望’25】㊦

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島田直也監督=常総学院野球場

県内強豪校の名監督インタビュー最終回は、常総学院の島田直也監督。第107回高校野球選手権茨城大会開幕を控え、チームの仕上がりや手応えをお聞きした。

低めの投げ分けがうまい

―今年のチームについて教えてください。昨年と比較してどのような特徴を持っていますか?

島田 昨年は投手力、打撃力、守備力ともに個々の力が高かったのですが、今年は全体的に力が落ちます。投手も野手も、調子の良い選手を見極めながら起用しています。

エース右腕の小澤頼人投手

―投打の中心となる小澤頼人投手についてですが、秋は最速145キロをマークしながら、春は球速がやや落ちていた印象です。

島田 球速を求めすぎるとフォームが崩れ、コントロールが乱れてしまいます。春の大会ではその点を意識して、あえてコントロール重視で投げていたと思います。土台ができれば球速は自然と戻るもの。鋭いキレのあるボールを意識してほしいと伝えています。

―春の大会ではインコースとアウトコースの投げ分けが非常に効果的に見えました。

島田 そこが彼の持ち味です。低めへの投げ分けが非常にうまい。関東大会では少し高めに浮いて打たれましたが、夏に向けては修正して臨みます。

俊足の佐藤剛希捕手

―打撃陣では佐藤剛希選手と柳光璃青選手が印象的でした。

島田 調子を落とした選手がいる中で、この2人がしっかりとカバーしてくれました。小澤と佐藤剛希は昨年メンバー入りしており、今年の中心選手です。柳光も力がありましたがけがでメンバー入りできず、今年こそはチームを引っ張ってくれると期待しています。

次の代のチームつくる難しさ実感

若手の育成と課題

―春の県大会では1年生の出場も目立ちました。

島田 将来を見据えて、若い選手に経験を積ませました。上級生にも刺激になったと思います。

―秋・春の戦いを経て見えてきた課題は?

島田 実力ある代の次にチームをつくる難しさを改めて実感しました。監督1年目だった「大川・秋本・田邊世代」のあとも、結果が出なかった。今回も似たような状況で、最初は秋に勝てる気がしませんでした。ですが、そこからチームがまとまり、秋に4強まで進出できたのは大きかったですね。

―春は県大会3連覇を達成されました。

島田 3年生たちは1年時から優勝の景色しか見ていません。「3連覇を君たちの代で止めるのか」とプレッシャーをかけながら臨みました。達成できたことは大きな自信になると思います。

―関東大会では東海大相模に大敗。受け止めを教えてください。

島田 強豪校との対戦で悔しさを経験できたことは、選手たちにとってプラスでした。練習に対する姿勢も変わってきたと感じています。

采配を振るう島田直也監督(ベンチ中央)

自分の強みアピールしていた

―夏の組み合わせ抽選についていかがですか。

島田 Aシードでしたので抽選はありませんでしたが、会場で結果を見ていて童心に戻りました。「さあ、やるぞ」と気持ちが引き締まりました。

―これまで出会った指導者の中で、影響を受けた方はいますか?

島田 プロ4球団、独立リーグでも8年やってきましたが、特定の誰かというより、出会ってきた多くの指導者から良い部分を吸収してきたと感じています。

―ご自身の高校時代を振り返って、どんな選手でしたか?

島田 「絶対負けない」という強い気持ちを持っていました。与えられたチャンスは必ずものにするつもりで、自分の強み(肩・足)をとにかくアピールしていました。

―今の選手たちとの違いは?

島田 最近の選手は「どうしたら使ってもらえるか」を考える力が弱く、自主練でも好きなバッティングばかり。私は「守備や走塁、バントでベンチ入りできる」と伝えているのですが、なかなか行動に移す選手が少ない。逆に、過去には自己プロデュース力でベンチ入りをつかんだ選手もいました。社会に出ても大事な力ですので、今のうちから身につけてほしいです。

「常総学院の使命」転換点に

―常総学院は夏の甲子園から9年遠ざかっています。そのプレッシャーは?

島田 「常総は勝って当然」という空気が、選手にとってプレッシャーになっていると感じています。これまでは「気にするな」と言ってきましたが、今年は「楽しもう」という方向に意識を変えたいと思っています。

―「楽しむ」とは、どのような意味ですか?

島田 緊張感の中での本気の楽しさです。その感覚があれば自然と力が出せると考えています。

―センバツよりも「夏」にこだわりがあるということでしょうか。

島田 やはり「夏の常総」が周囲からの評価にも直結します。「甲子園で勝つ」ではなく、まずは「茨城を勝ち抜く」。そこに焦点を置いています。

―最後に、今年のチームに期待することを教えてください。

島田 「常総だから勝たなきゃ」ではなく、「自分たちが歴史をつくる」という意識を持って戦ってほしいです。甲子園出場はゴールではなく、その過程で得る経験こそが大きな財産。今年は、常総学院としても大きな“転換点”になる予感がしています。

【取材後記】過去4年間、夏を前にしたタイミングで島田監督に話をうかがってきたが、今年のインタビューではこれまでと少し違う空気を感じた。かつては「今年こそ」という悲壮感がどこかに漂っていたが、今回はむしろ“開き直り”にも似た落ち着きと、確かな覚悟が伝わってきた。選手たちに求めるのは「結果」ではなく「本気の中で楽しむ」こと。そこに、勝ち負けを超えた野球の本質がある。名門・常総学院の重圧を背負いながらも、今あるチームの可能性を信じて進む監督の姿は、頼もしくもあり、まさに“歴史をつくる”旅の先頭に立つ存在だった。今年こそ、夏の常総に新たな物語が刻まれるかもしれない。その瞬間の目撃者でありたい。素直に、そう思わせてくれる取材だった。(伊達康)

終わり

世界が壊れた日 その1《看取り医者は見た!》42

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写真は筆者

【コラム・平野国美】私たちの社会には、「普通」という暗黙のルールがあります。「空気」を読み、周りに合わせることが求められ、そこから外れる人は「変わっている」「融通が利かない」と見なされがちです。しかし、もし社会の「普通」という前提自体が崩れ落ちてしまったら、一体何が起きるでしょうか。

2011年3月11日に起きた東日本大震災。被災地の町の図書館も例外ではなく、すさまじい揺れで本棚は倒れ、蔵書が床一面に散乱する光景が広がりました。翌朝、出勤したスタッフは言葉を失い、立ち尽くすばかりでした。「どこから手を付ければ…」。誰もが絶望と無力感にさいなまれ、思考を停止していたのです。

その時が止まったような空間に、カツ、カツと規則正しい足音が響きます。定刻通りに出勤してきたKさんです。彼は普段、「仕事は正確だが冗談が通じない」「空気が読めず人を戸惑わせる」と評される、少し不思議な存在でした。

この日も、Kさんはいつもと寸分違わぬ「いつも通り」でした。茫然(ぼうぜん)自失の同僚たちを一瞥(いちべつ)しただけで、散乱した本の山にまっすぐ向かいます。そして静かに一冊の本を拾うと、汚れを払い、記憶の中にある完璧な配置図通り、本来あるべき棚にそっと差し込みました。一冊、また一冊…。

Kさんは、目の前の惨状など存在しないかのように、淡々と本を元の場所に戻し続けます。周りの混乱した空気とは完全に異質なその姿。「空気を読まない」と評された彼の特性が、この極限状況において、誰にも真似できない「不動の精神」として静かな光を放ち始めた瞬間でした。その規則正しい作業は、まるで正確に時を刻む振り子のようでした。

不思議なことに、その姿を見ているうちに、パニックに陥っていたスタッフたちの心は少しずつ凪いでいきます。「…そうだ、こうしていても始まらない」。誰かがつぶやくと、1人、また1人と魔法が解けたように動き出し、Kさんの隣で本を拾い始めたのです。

Kさんの「いつも通り」が、崩壊した世界の中で、秩序を取り戻すための最初の歯車となりました。作業は1日中続きました。しかし夕方5時に終業チャイムが鳴ると、Kさんはぴたりと手を止めます。そして、まだ山のように残る本には目もくれず、「お先に失礼いたします」と一礼し、いつも通りの定時に帰って行ったのです。

輝いた「異質な人間の存在」

一見、奇妙に見える彼の行動。しかし、この一連の出来事は、私たちが当たり前だと思う「普通」や「協調性」という物差しを、根底から揺さぶるものでした。彼の行動の裏には、一体何があったのでしょうか。

この話の中にダイバーシティの概念があります。人間の集団の中には、気質や行動パターンに多様性が存在します。町の図書館の中にも異質な人間が存在したのです。同じタイプの人間ばかりでは、同じストレスがかけられた場合、その集団が全滅する可能性があります。Kさんの性格・特性は「いつも通り」でない世界で輝いたのです。(訪問診療医師)

東田旺洋、兵藤秋穂 両選手にエール 関彰商事 4日から日本陸上選手権

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ガッツポーズをとる(左から)やり投げの兵藤秋穂選手と、短距離の東田旺洋選手=つくば市二の宮、関彰商事つくばオフィス

第109回日本陸上競技選手権が4日開幕するのを前に、関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長) 所属でいずれも筑波大出身の東田旺洋選手(29)と兵藤秋穂選手(26)の壮行会が3日、同社つくばオフィスで催され、社員約100人がエールを送った。

東田選手は男子4×100メートルリレーに、兵藤選手はやり投げに出場する。同選手権は6日まで国立競技場で開催され、9月に東京で開かれる2025世界陸上につながる重要な大会となる。

一生懸命走ることだけ 東田選手

東田選手は昨年開かれたパリ五輪に出場、今年4月にはアジア陸上競技選手権に出場した。昨年の日本選手権では2位になっている。奈良県出身、筑波大学卒、同大学院を修了し、関彰商事ではヒューマンケア部に所属する。自己ベストは100メートル10秒10。

「この1年で若い選手が台頭し、現在年間ランキングは国内10位なので、ともかく決勝に残ることが重要。準決勝に焦点を当てている。出来ることは一生懸命走ることだけ」と意気込みを話す。

自己新記録目指す 兵藤選手

兵藤選手は2023年、日本インカレ優勝。持ち味は、力強い振り切りと、そこから放たれる鋭く勢いのあるやりの飛行だ。宮城県出身、筑波大学卒、同大学院修了、関彰商事ではライフサイエンス事業企画室に所属する。やり投げの自己ベストは56メートル16。

「やり投げは北口榛花選手がオリンピックで金メダルをとったので、注目を集める種目となっている。昨年は12位に終わってしまって残念だった。今年は十分練習を積むことができたので、入賞と自己新記録を目指して頑張りたい」とコメントした。

壮行会で関社長は「社員一同が応援している。2人にはぜひ頑張って、9月に東京で開催される世界陸上に選ばれてほしい」と激励した。さらに同社所属の高橋理恵子選手がスウェーデン・マルモで開催されたゴールボールの大会で銀メダルをとったこと、同社野球部が天皇杯茨城県大会で決勝に進んだことなどの報告もあった。(榎田智司)

◆日本陸上競技選手権大会スケジュール▽4×100メートルリレー予選は4日午後3時35分~、準決勝は同午後8時25分~、決勝は5日午後6時30分~▽やり投げ決勝は4日午後5時35分~。

応援されるチーム、人の心動かす野球目指して 土浦日大 小菅監督【高校野球展望’25】㊥

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小菅勲監督

第107回⾼校野球選⼿権茨城⼤会開幕まであと2日。大会を前に、強豪校の名監督インタビュー2回目は、土浦日大の小菅勲監督にお聞きした。

団子状態

ーチームの状況を教えてください。

小菅 正直に言えば、今の時点で完成度は高くありません。欠けている部分も多く、まだまだ課題の多いチームです。

ただ、高校野球は「発展途上人」の集まりです。大会に入ってから成長してくれればという期待がありますし、「これでいけるぞ」という手応えも少しずつ感じています。優勝には足りないピースもありますが、それを大会中に埋めていきたいと思っています。

──茨城全体のレベルについて、今年は突出したチームがいないと思いますが。

小菅 その通りで、まさに「団子状態」です。だからこそどのチームにもチャンスがあるとも言えます。

完璧に抑えられた

ー春に準々決勝で常総学院に3対7で敗れました。反省点や手応え、対策など教えてください。

小菅 まず良かった点は、前半が競り合いになったことです。打撃では事前に分析したデータに基づいて狙い打ちができていました。

一方で、守備は機動力を使われた際に対応できなかったことが反省点です。データに出ないような「余白の部分」への対応力も足りませんでした。ここをどうアプローチしていくかが課題ですね。

ー相手ピッチャーの小澤頼人投手は、対戦してみてどうでしたか?

小菅 手強いピッチャーでした。ゾーンにしっかり投げ込む力があり、変化球でもカウントが取れるタイプです。うちの打線も前半はよく対応していましたが、7回以降は完璧に抑えられてしまいました。そこをどう攻略するかが、今後の課題だと感じています。

戦況を見つめる小菅監督(右端)

素材的に差はない

─打撃陣の調子はいかがでしょうか。甲子園4強入りした2年前の世代と比べてどうでしょう。

小菅 素材的にそれほど差はありません。ただ2年前の世代は課題に向き合う姿勢や思考、行動が非常に優れていました。今年の選手たちはその点でややアプローチ不足があると感じています。

理想は「波状攻撃」ができる打線です。1、2番がダメでも3、4番が、そこがダメでも5、6番がカバーする。春の時点ではそこまでできていませんでしたが、今は徐々にその形に近づいてきています。

─投手について教えてください。

小菅 エースは右腕の永井です。際立ったボールを投げるタイプではありませんが、「打たせて取る」ことを理解し、自分の投球スタイルを確立しつつあります。守備との信頼関係も生まれ、テンポ良く投げられるようになってきました。非常に頼もしい存在になりましたね。

エース右腕の永井柊帆

徐々に自覚芽生え

─1年生は甲子園4強を見て進路を決めた世代ですね。入部希望者は増えましたか?

小菅 ありがたいことに問い合わせは例年の2倍ほどありました。やはり甲子園効果は大きいです。

─甲子園4強世代はダブルキャプテン制でしたが、今年は?

小菅 今年は梶野悠仁がキャプテンです。新チーム発足時は別の選手に任せていたのですが、徐々に梶野の自覚が芽生えて言動がリーダーらしくなり、キャプテンを交代しました。年によって適した体制を選ぶようにしています。

キャプテンで中軸を務める梶野悠仁

負ける要因つぶすこと再認識

─春の敗戦から、チームはどう変わりましたか?

小菅 春は「取れるアウトをしっかり取る」という基本が徹底できていませんでした。今はまずそれを完璧にしようと取り組んでいます。負けない野球をするには、まず「負ける要因」をつぶすことが大事だと再認識できました。守備への意識が大きく変わったと思います。また、常総に負けたことで「夏こそは」という雰囲気がより一層強くなりました。

OBの自己分析を共有

──大学野球でOBが活躍していますね。

小菅 亜細亜大の芹澤優仁(4年)は東都大学リーグで首位打者とベストナイン。國學院大の藤本士生(2年)は防御率4位。法政大の小森勇凛(2年)は慶応大から初勝利。

そのほか、明治学院大の太刀川幸輝(2年)、常磐大の川井康晟(3年)もそれぞれのリーグで結果を残してくれています。芹澤と太刀川には、なぜ活躍できたか自己分析を5つずつ出してもらい、チームと共有しました。選手たちにも好評でした。

脚本家のように

─夏の大会の土浦日大の組み合わせゾーンは「死のゾーン」とも言われています。

小菅 まさに「一戦必勝」。厳しいゾーンですが、戦いながらチームは強くなっていくもの。決勝戦の頃にはまったく別のチームになっているはずです。

本番までに「負けにくい材料」をさらに整備し、仕上げていく。そして大会中も進化していく選手を見守っていく。監督として脚本家のように準備を進めていきます。

心ひきつける存在に

─最後に、応援してくれるファンや地域の方々、OBの皆さんにメッセージをお願いします。

小菅 選手たちには常に「人気のある選手であれ」と伝えています。ここで言う「人気」とは、人の心をひきつける存在であること。

ガッツあるプレー、笑顔、明るさ─選手それぞれの「自分らしさ」が人の気を引き寄せるのだと思います。感謝の念を持ちつつ、自分を押し殺さず、のびのびと自然体でプレーしてほしい。その姿が、きっと見る人の心を動かすはずです。

全力プレーで心を動かす試合を届けられるよう、「応援されるチーム」を目指していきます。高校野球ファンの皆さま、ぜひ球場に足を運んでいただき、熱い声援をよろしくお願いいたします。

【取材後記】春の敗戦を経て、どこか張りつめたような、それでいて希望に満ちた空気がチーム全体に漂っていたのが印象的だった。小菅監督の言葉は一つひとつに実感がこもっており、単なる反省ではなく、「何を得て、どう変わるか」にフォーカスが当たっていたことが、特に心に残った。「取れるアウトを確実に取る」─言葉にすれば当たり前のようだが、春にできなかったことを素直に認め、そこから逃げずに積み上げ直していく姿勢に、このチームの芯の強さを感じた。夏は“いける”、そう語る監督の眼差しはどこまでも冷静で、それでいてどこか楽しそうでもあった。

そして、今年のチームを語る上で欠かせないのが、キャプテン・梶野の存在だ。新チーム発足当初は目立たなかったという彼が、今では自然と声を上げ、チームを導く姿に変わったというエピソードは、まさに今のチームの成長そのものだろう。与えられた立場ではなく、自らの意思でリーダーシップを育ててきたその過程に、大きな可能性を感じた。

取材を終えて強く思ったのは、「このチームはまだ完成していない」ことこそが、最大の魅力なのだということ。大会を通してどのように進化していくのか──まさに“成長の物語”が始まろうとしている。その主役たちがどんな姿を見せてくれるのか、夏の開幕が今から楽しみでならない。(伊達康)

お好み焼きとジャガイモ、それからビール③《ことばのおはなし》83

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】河岸を変えようと移動した店で、彼女からかわいらしい包みを渡された。共通の台湾の旧友(本コラムに登場)の結婚式のお祝いをわざわざ届けてくれたのだ。

どうやらぎりぎりまで私を招待しようかどうか迷ってくれていたらしい。呼んでくれれば駆けつけたのに、と思ったものの、結婚式の招待というのはいろいろと気をつかうものだ。海外となればなおさらだ。実際に足を運んだわけでもないのに参列者のお祝いの品を届けてくれたことに感謝しなければなるまい。

これはめでたいと再度乾杯をする。それにしても、当時は中学生だった20年来の友人たちが皆それぞれの環境で家庭を持つに至ったのはなんとも感慨深いものがある。

本コラムの上に載っているのがその時頂いた品の一つで、「囍」という喜が二つ並んだ漢字の書かれたコースターである。二重の喜び(ダブルハピネス)を意味する漢字で、結婚式にはぴったりのシンボルである。手書きのメッセージカードを読みながら、しばし思い出にひたった。

乾杯! 乾杯!

めでたいことと言えば、と私が我が家にもう一人家族が増えることを報告すると、「これは喜が二つじゃ足りないね」ともう一度乾杯になった。「実はまだ名前が決まってなくて」と手元の紙にいくつか候補の名前を書いて見せる。こういう時に日本語の旧漢字に近い文字を使用する台湾の友人は心強いのだ。

この漢字は台湾なら画数増えるね、意味としてはこうで名前にするなら…と丁寧に説明してもらう。産まれてきた我が子が大きくなったら、おまえさんの名前はいろんな人の気持ちがこもっているんだよ、と教えてあげねばならない。

いつか私のこどもたちが大きくなったらドイツに留学させるとよいよ、と2人は言った。冗談かと思ったら本気らしい。ご縁というのは本当に不思議なものだ。私たちのかけがえのない友情とこどもたちの未来に、もう一度乾杯した(言語研究者)

武蔵美卒業生23人 個性あふれる98点一堂に 県つくば美術館

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武蔵美校友会茨城⽀部展の様子=県つくば美術館

校友会茨城⽀部展

武蔵野美術大学(東京都小平市)を卒業した県在住者及び出身者で構成する同大校友会第22回茨城支部展が6日まで、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれ、会員23人が制作した油彩、日本画、水彩、工芸など98点の個性あふれる作品が展示されている。

同大を卒業した県在住者及び県出身者は約1000人おり、そのうち約30人が会員となっている。支部展は毎年開催されている。

黒川達也さんと出展作品の「ジュンヌフィーユ」

黒川達也(65)さんは油絵「ジュンヌフィーユ」を出展した。「物語の1ページとして描いた作品。作品は決して完成するものでなく絶えず追及している。また絵を描くのは枠にとららわれない思考が必要で、技術だけで描くものではない」と話す。

黒川さんは、美人画で知られる洋画家の宮永岳彦(1919-1987)最後の弟子で、2016年と18年にしんわ美術展奨励賞を受賞したなどの実績がある。地域の絵画サークルの講師などもしている。「絵描きは目が大事、ある時は科学者、医者であるという観察眼が必要で、絵は装飾品になってはじめて生かされる」と語る。

今年はシーソーをかたどった大谷統一さんの木材作品「繋ぐ」が初展示となった。NEWSつくばコラムニストの川浪せつ子さんは昨年に引き続き、NEWSつくばに連載した「おいしい時間(ご飯は世界を救う)」「洞峰公園Ⅰ、Ⅱ」の水彩画の原画などを出展している。

大谷統一さんの「繋ぐ」

会期中のイベントとして▽5日(土)午後1~3時=「モノづくりワークショップー万華鏡や缶バッジつくり」(参加費500円)▽6日(日)午後1時~2時30分=ギャラリートーク(作家による作品解説)を開催する。(榎田智司)

◆武蔵野美術大学校友会第22回茨城支部展は1日(火)~6日(日)、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは電話090-6923-7747(冨澤さん)へ。

昨夏の主力残るもチームを再編 霞ケ浦 高橋祐二監督【高校野球展望’25】㊤

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高橋祐二監督

第107回高校野球選手権茨城大会が5日開幕する。今年も、強豪の霞ケ浦、土浦日大、常総学院の名監督3人にインタビューした。第一弾は昨夏の茨城大会を制し、甲子園で念願の初勝利を挙げた霞ケ浦高校の高橋祐二監督。注目の指揮官に、新チームの仕上がりや今シーズンへの手応えを語ってもらった。

OBが活躍

ー昨年甲子園で初めて1勝を挙げました。それも相手は名門の智辯和歌山です。この結果、チームや学校、周辺の地域にどのような変化がありましたか。

高橋 中学チームから今までにない数の問い合わせがあります。智辯和歌山に勝つってことはそれだけすごいことなんだと、それくらいのインパクトだったのだろうと思います。

ープロ野球でOBが目覚ましく活躍しています。

高橋 千葉ロッテマリーンズの木村優人が5月にプロ初勝利を挙げ、先日は阪神との交流戦で高校時代にたどり着けなかった甲子園球場で先発を任されました。また、広島東洋カープの遠藤敦志は球速が最速151キロまで上がったそうです。つい先日1軍に呼ばれたものの雨で流れました。また近いうちにチャンスがあるのではないかと思っています。先輩の活躍が後輩たちの刺激になっています。

戦況を見つめる髙橋監督

無駄失点が多い

ー今年のチームの強みをお願いします。

高橋 去年の甲子園メンバーが、ピッチャー、キャッチャー、ショート、センター、レフトと、5人残っています。秋は準優勝になって関東大会に進出しました。一冬越えてその他の選手の成長もあり、ポジションをチェンジするなどチームをつくってきました。

しかしまだ私が求めるレベルまで達していません。特にディフェンス面は正直いって不安な部分が大きいです。無駄な点数を与えない守りの野球がうちの信条なのですが、今年は無駄失点が多い。作戦面でも、勝てるチームの時は監督の意図を選手がよく理解してくれているのですが、今年のチームはちぐはぐなことがあります。大会までには私の考えを浸透させたいと思います。

ー打撃陣の鍵を握る選手は?

高橋 荒木洸史朗と大石健斗を上位に据えていて、この2人が得点に絡んでいけたらと思っていますが、チーム全体として調子が上向きとは言えません。昨年もこの時期に調子が上がってきませんでしたが、かなり練習で追い込んで大会を迎え、勝ち上がるたびに奮発して頑張ってくれて甲子園の切符を手にすることができました。今年も同じように、大会を通して調子が上がってきてくれたらと思います。

打の中心、大石健斗

2番手に伸びてもらうこと必須条件

ーエース左腕の市村才樹選手はどうですか?

高橋 市村は体重が増えてスピードもアップしましたが、スピードを追い求めて全体のバランスを崩して思うようにいかない時がありました。まさに春の県大会で明秀学園日立に痛打されました。

その後、やはりスピードではなく、本来の持ち味であるボールのキレを意識するようになり、崩していたバランスが整ってきました。最近では県外の強豪校とオープン戦をやってもまとまった投球ができています。

エース左腕の市村才樹

ー2番手投手に名前が挙がるのは?

高橋 右腕の稲山幸汰です。昨年うちが甲子園に行けたのは、調子が悪いときも2番手として使い続けていた眞仲が、県大会から甲子園にかけて覚醒して救世主になったことが大きな理由の一つです。今年うちが勝ち上がるためには、稲山にもっともっと伸びてもらうことが必須条件です。眞仲のような覚醒を期待して送り出したいと思います。

新キャプテン誕生

ー秋と春の戦いから、夏に向けて何か変えたことなどありましたら教えてください。

高橋 春を終え合宿を行う中でスタッフと相談し、夏には新しいキャプテンで臨むことになり、昨年の甲子園を経験した鹿又嵩翔をキャプテンに指名しました。まだキャプテン就任から2~3週間しか経っていないのですが、彼の持ち味を発揮してチームをうまく回してくれていると感じます。

ー近年、東北地方出身の選手が多いですが、理由は?

高橋 コーチでOBの白川拓海先生が仙台大学出身で、東北地方の野球指導者とつながりがあって、ありがたいことにうちを薦めてくれることがあります。最近では秋田県や山形県出身の選手がうちの門を叩いてくれています。

一つも気が抜けない

ー今年の茨城の勢力図はどのように見ていますか?

高橋 春に優勝した常総学院が頭一つ抜けた存在だと思います。

ー組み合わせの所感をお聞かせください。

高橋 Aシードのつくば秀英はもちろん、Cシードの土浦日大にDシードの守谷に加え、ノーシードの鹿島学園や日立一、下妻一、水戸商など、上位常連校がひしめく、一つも気が抜けない厳しいゾーンです。投手陣には頑張ってもらって、打線の奮起を期待するしかありません。

甲子園で二度、三度と

ー最後に、応援してくれるファンや地元の方々へメッセージをお願いします。

高橋 皆様に支えていただき、去年甲子園で初めて校歌を歌うことができました。日本全国の霞ケ浦高校の卒業生2万9000人に、少しでも勇気と元気を与えられたことと、やっぱり応援してくれている地域の方や、霞ケ浦高校のファンの方に、少しでも恩返しができたかなと思っています。

今年も甲子園で一度と言わず、二度、三度と勝って、全国に霞ケ浦高校の校歌を届けたいと思っています。まずは茨城大会で優勝できるよう精一杯戦います。

【取材後記】昨年は良い意味で開き直って大会を迎えた霞ケ浦高校が見事に茨城大会を制し、甲子園で歴史的な1勝を挙げた。一方で、今年は指揮官の言葉からもわかるように、ディフェンス面や戦術の浸透といった点で、チームづくりに難しさを抱えている様子がうかがえる。しかし、昨年もこの時期にはチームの調子が万全とは言えなかった。そこから大会を通して一体感を深め、結果として覚醒した姿は記憶に新しい。今年も夏本番でどのような進化を遂げるのか、引き続き注目していきたい。(伊達康)

愚痴が問題解決を遠ざける《続・気軽にSOS》162

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【コラム・浅井和幸】私が代表理事をしている一般社団法人「LANS」という居住支援組織があります。住宅確保要配慮者=ざっくり表現するとアパートを借りづらい人=を支援する法人です。暴力から避難してきた人、障害者、高齢者、生活困窮者、仕事が続けられず社員寮を出なければならない人、車上生活を止め部屋を探している人などをサポートします。

6月現在、茨城県内では11カ所の法人が県から指定されています。全国では800カ所を超えていると思います。LANSは県第1号指定法人で、7月から8期目を迎えます。自治体や福祉事業者、病院や警察、不動産屋などから依頼を受けたりして、居住支援をしています。現在では10名ほどの要員が支援に当たっています。

支援には必要な知識もあり、勉強しながら進めなければなりません。分からないことがあって当たり前ですし、その時にならないと分からないこともあります。その場合、何らかの支障が出て支援できなくなるので、そこでやっと知らないことを知ります。例えば、インターネットを使った住まいの検索方法、生活保護や障害福祉の手続きなどです。

支援に行き詰まれば(できればその前の行き詰まりそうと感じたとき)、浅井に報告や相談をしてほしいと伝えています。それでも、なかなか相談に来ることが少ないので、こちらから聞いてみて支障が見つかることも多々あります。支援員の皆さんは素直で、ちょっとしたことでも相談したいと考えてはいるようですが、なかなか相談に来ません。浅井が忙しいと思い遠慮しているのでしょうか?

皆で愚痴に共感し慰める

どこで相談が止まっているのか、気づいた点がありました。それは、支援に何かしらの支障が出てきたとき、支援員同士で支援について愚痴を言い、それを共感の気持ちで受け止め、慰めることで話が止まっていることでした。例えば、法律的な問題とか、福祉のシステム的な問題とか、就労するための年齢的な問題とか、〇〇市には部屋の空きがないという不動産屋の話を鵜呑みにして…。

そこで気持ちがすっきりして、解決方法を考えることなく、支援に当たる。気持ちが楽になっているから支障への感受性が鈍くなる。今起きていることは仕方がないと思い、相談から遠ざかるという悪循環が起きていました。

LANSでは月1回、全体会議を開きます。そのとき、支援員に上記のことを挙げ、「愚痴を言って気持ちが楽になっているのではないか。愚痴が出たタイミングが、浅井やこの会議で報告するタイミングだ」と伝えました。一般の生活では愚痴を言うことも大切です。しかし、それで問題解決から遠ざかっているかも知れない―と考えてみるとよいですよ。(精神保健福祉士)

原因は下水道管の老朽化と硫化水素 土浦 道路陥没事故

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下水道管の損傷の様子。損傷が大きかった左側は下水道管を交換し、右側は損傷箇所を修復した=土浦市提供

土浦市西真鍋町で6月12日発生した道路陥没事故(6月14日付17日付)で、同市は7月1日、陥没の原因は、埋設されていた下水道管の老朽化と、下水から発生した硫化水素の影響だと断定し発表した。硫化水素の影響で鉄筋コンクリート製の下水道管の腐食が早まって損傷し、管の上の部分の土砂が損傷箇所の下水道管に流入し、地中に空洞が生まれたためという。

市下水道課によると、損傷した下水管は6月28日に補修工事が完了した。一方、道路の通行止め解除がいつになるかは現時点で未定という。

硫化水素が発生し下水道管が損傷したことが原因の道路陥没事故は、今年1月、埼玉県八潮市でも発生し、トラックを運転していた74歳の男性が死亡している。

損傷した土浦市の下水道管は、44年前の1981年に敷設された。老朽化に加え、現場から約1.6キロ離れた塚田ポンプ場から圧力をかけて送水し、水がはきだされる下流だったことから硫化水素が発生しやすかったとみられている。

下水道管は直径60センチで、地面から4.4メートル下に埋設されている。道路は長さ3.9メートル、幅3.4メートル、深さ2.5メートルにわたって陥没し、約33立方メートルの土砂が流出した。

道路陥没箇所の下水道管は2カ所に損傷があり、修復工事では、損傷が大きかったマンホールに近い西側について下水道管を長さ1.5メートルにわたって交換した。東側は幅約40センチの損傷部分を修復した。

現在、土を埋め戻す作業中で、今後、路面にアスファルトを敷設する。さらに陥没箇所の安全や周辺の安全を確認した上で、通行止めを解除する予定という。

今後の対策については、市が定期的に実施している道路管理パトロールの際に、古いマンホールについてはふたを開け、目視で土砂などがたまっていないかを点検するとしている。

軽井沢高原文庫館長の大藤敏行さん《ふるほんや見聞記》6

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軽井沢高原文庫

【コラム・岡田富朗】大藤敏行さん(62)は埼玉県の出身。筑波大学を卒業後、1985年、長野県軽井沢町に開館した軽井沢高原文庫の学芸員に着任しました。同文庫は、作家の中村真一郎さんを中心に、堀多恵子さん(堀辰雄夫人)、室生朝子さん(室生犀星長女)、『新潮』元編集長の谷田昌平さんらに力添えを得て、初代館長に大妻女子大学教授だった池内輝雄さんを迎え、スタートした施設です。

1992年に大藤さんは同館の副館長に、1996年には深沢紅子野の花美術館の館長に就任しました。そして2023年には、池内輝雄氏、中村真一郎氏、加賀乙彦氏らが歴任してきた軽井沢高原文庫の館長に就任されました。

大藤敏行さん 軽井沢高原文庫の庭にてⒸTAKAYUKI TOYAMA

大藤さんは30年ほど前から一般向けの文学散歩なども継続的に行っています。2023年には、軽井沢町制施行100年および堀辰雄来軽100年を記念して、堀辰雄文学記念館で「堀辰雄と歩く軽井沢」が開催されました。これに関連する緑陰講座では講師として招かれ、「堀辰雄と軽井沢」と題し、『不器用な天使』から『大和路・信濃路』までの数多くの作品の初版本を紹介するとともに、堀辰雄が所有していた蓄音機を使用して『ブランデンブルク協奏曲』を鑑賞するなど、貴重な体験ができる講座が開催されました。

2024年には、田端文士村記念館で、「室生犀星・芥川龍之介・堀辰雄の交友と文学~軽井沢を中心に~」と題した講演会の講師も務めました。この講演では、田端で親交を深めた室生犀星、芥川龍之介、堀辰雄の3人が、1925ごろ軽井沢で共に過ごし、交友を深めた話や、彼らの友情と創作について講演されました。

生誕100 辻邦生展-軽井沢と物語の美-

軽井沢高原文庫では今年、「生誕100年 辻邦生展―軽井沢と物語の美―」が開催されます。人間精神の高貴さを物語性の中で追求した作家・辻邦生(1925~1999)は、今年生誕100年を迎えます。『安土往還記』『嵯峨野明月記』『背教者ユリアヌス』『春の戴冠』『西行花伝』などの歴史小説は今も多くの読者に愛されています。山荘のあった軽井沢の地で、自筆原稿、創作メモ、スケッチ、書簡、蔵書、遺愛の品などの多彩な資料約250点を通して、辻邦生の生涯と仕事を知ることができます。

今回の展示で特別協力してくださる学習院大学史料館(霞会館記念学習院ミュージアム)では、辻邦生より寄贈された自筆原稿、創作ノート、書簡など、多数の資料が収蔵されています。学習院大学史料館の協力により、辻邦生ゆかりの地で生誕100年を記念した展示が行われます。各館それぞれのテーマに合わせて、学習院大学史料館の資料が出品される予定です。(ブックセンター・キャンパス店主)

軽井沢高原文庫「生誕100 辻邦生展軽井沢と物語の美-」展:7月19日(土)~10月13日(月・祝)

マダニにかまれない対策を 自分やペットをどう守る?

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SFTSを媒介するフタトゲチマダニ。吸血前の体長は3ミリ程度=平健介教授提供

人獣共通の寄生虫を媒介

茨城県内で飼われていた猫が今年5月、マダニにかまれ、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染して死んだ。6月には県内の40代男性が、渡航先の欧州でマダニにかまれライム病を発症した。いずれもマダニが媒介する人獣共通のウイルスが原因だ。自身がマダニにかまれないようにするにはどうすればいいのか、ペットの犬や猫をどう守るのか。寄生虫学が専門で、マダニが媒介する寄生虫など人獣共通寄生虫病の予防に取り組む麻布大学(神奈川県相模原市)獣医学部寄生虫学研究室の平健介教授に聞いた。

関東で初

平健介教授

―5月にマダニにかまれて死んだ猫は、マダニが媒介するウイルスによりSFTSに感染しました。SFTSは主に関西での感染例が多かったのですが、ペットの猫が感染し死んだのは関東で初めてです。STFSとはどういった感染症ですか。

 SFTSウイルスによって引き起こされるウイルス感染症であり、このウイルスを持つマダニの吸血時に人や動物が感染します。

―マダニにかまれると人も動物も感染するのですか。

 マダニに吸血された人が誰でも発症するわけではなく、発症や重症化リスクは年齢によって異なります。特に高齢者や持病がある人は注意が必要です。

―感染した場合、人、動物それぞれ、どのような症状が出ますか。致死率は。

 人が感染した場合の症状は、マダニにかまれてから1〜2週間後に、主に発熱,倦怠感,頭痛がみられます。その後,嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状が現れます。人の致死率は10〜30%程度とされます。70歳以上の高齢者では死亡リスクが高く,若年層では軽症または無症状であることが多いです。

一方、野生動物は発症することが少ないですが、猫や犬は発症しやすい。猫の致死率は60〜70%以上,犬では10〜30%程度と報告されています。

全国的に分布広がる

―今回、関東で初めて飼いネコが発症したことについてどう思われますか?

 関東以北でもSFTSウイルスを持つマダニが増えつつあり,人や動物への感染において警戒が一層重要になります。

北海道でも感染マダニが確認されており,全国的に分布が広がっています。まずは(人もペットも)マダニにかまれないように対策を徹底することが,効果的な予防になります。

―人とペットそれぞれの具体的な予防方法や対策は?

 マダニは草むらや雑木林などの野外環境に広く生息し、野生動物の通り道に多くみられます。そのため人は、草むらや林に入る際は,長袖・長ズボン,足首を覆う靴下や帽子を着用し、虫よけスプレーを使用することを勧めます。帰宅後に衣類や体にマダニが付着していないか確認することを習慣づけることも重要です。

ペットにはマダニ予防薬を定期的に投与し、散歩後はブラッシングや体表のチェックを習慣的に行うことがマダニ対策として有効です。

野外で具合の悪そうな野良ネコや野生動物を見掛けても、絶対に素手で触らないことも重要。市町村の環境課や保健所など公的機関に連絡してください。

口を皮膚の中に深く差し込んでイノシシを吸血するフタトゲチマダニ。吸血すると体長は10ミリ程度になる=平健介教授提供

―万が一、マダニにかまれたらどうすればいいですか?

 もしかまれたら、人もペットも医療機関や動物病院を受診したほうがいいです。人もペットも、マダニは皮膚に口を深く差し込んで固着しており,自分で無理に引き抜くと口が皮膚に残ることが多々あります。

やむを得ず自分で除去する場合は,マダニ専用ピンセット等を用いて,マダニの体部に圧をかけないようにして,口の根元をつまんで慎重に引き抜きぬく。マダニの口の部分が皮膚に残らないように気を付ける必要があります。除去したマダニは密閉して保管し診察時に持参すると診断の参考になります。

事前に動物病院に連絡を

―もしペットにSFTSの疑いがあって動物病院に行く場合の注意点はありますか。

 SFTSを疑って動物病院に行く場合は、感染動物から飼い主や他の動物,獣医師への感染リスクがあるため、受診前に必ず動物病院に連絡し,感染対策の準備を依頼してください。

SFTSウイルスは,感染した動物の血液やだ液,体液を介して人にも感染することもあるため、飼い主も手袋・長袖・マスクなどで防護し,ペットとの接触は最小限にとどめるべきです。ペットの運搬には密閉できるケージを使用したほうが良いです。

筆者の飼い猫。マダニにかまれないよう守りたい

県、市町村が注意呼び掛け

県生活衛生課によると、5月に死んだのは1歳のメスネコ。室内飼育だったが、4月下旬屋外に出てしまった時に、マダニに刺されたとみられるという。動物病院でダニを除去したが、5月9日に高熱、嘔吐、食欲低下が見られたため再度動物病院を受診。治療したものの12日に死んだ。動物病院がSTFS を疑い12日に県に連絡、検体の血液を検査したところ、15日にSTFSウイルス陽性とわかった。

県では、関西だけでなく北陸地方や東海地方でも近年、SFTSが発生していることから関東にもいると想定。ウイルスがどの程度広がっているかを動物から把握するため、今年3月から県獣医師会に所属している動物病院を対象に、疑わしい症例があった場合は検査を依頼していた矢先だった。

一方、6月にライム病を発症した男性は、5月下旬に滞在していた欧州でマダニにかまれたと推定されている。6月9日に倦怠感、10日に紅斑が出て医療機関を受診した。現在は快方に向かっているという。県内でライム病が発生したのは2017年9月以来、8年ぶり。

県生活衛生課は、県内44市町村に対して5月に猫が死んだ事案を知らせ、注意喚起を促している。ダニが媒介する人獣共通の寄生虫はSFTSやライム病のほか、日本紅斑(こうはん)熱などもあるため、人もペットも注意してほしいとSNSなどで警戒を呼び掛ける。つくば市や土浦市でも市の公式サイトなどで注意を呼び掛けている。(伊藤悦子)

歯科口腔外科の仕事とは?《メディカル知恵袋》11

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筑波メディカルセンター病院

【コラム 寺田和浩】歯科口腔外科という名称はあまりなじみがないかもしれませんが、口腔、顎、顔面、これらの周囲の疾患に対する治療を行う診療科です。埋伏歯(親知らず)、過剰歯などの抜歯、顎の骨折や歯の脱臼などの外傷による口腔外科疾患に対する治療を中心に、全身疾患を有する方の歯科治療も行っています。

また近年では、がん治療中や周術期(手術前後)の口腔内トラブルの治療や予防を行い、安心・安全に治療が継続できるよう病院内での口腔ケアを担当しています。

私たちの対象疾患

より具体的には、以下のような治療を担当しています。

・親知らずなどの抜歯
・外傷(顎の骨折、歯の脱臼など)
・炎症(顎骨炎、歯性感染症など)
・口腔粘膜疾患(口内炎、白板症、扁平苔癬=へんぺいたいせん=など)
・顎関節疾患(顎関節症、顎関節脱臼)
・唾液(だえき)腺疾患(唾石症、顎下腺・舌下腺・小唾液腺にできる疾患)
・のう胞(顎骨内や口腔内にできるのう胞)
・口腔腫瘍(口腔領域に発生する良性・悪性腫瘍)
・周術期口腔機能管理(周術期の口腔内トラブルの治療や予防)

周術期口腔機能管理

周術期における口腔の状況・環境により引き起こされる合併症やトラブルを予防し、がんなどの治療を滞りなく進めていくことを目的とし、かかりつけ歯科医院と連携しながら口腔機能管理を行います。

周術期の口腔機能管理の意義(図1)として、口腔内の細菌数減少による誤嚥性肺炎予防や薬剤性口腔粘膜炎の症状緩和、むし歯や歯周炎などの口腔内感染源除去による歯性感染および血行性感染の減少、自然脱落の可能性がある動揺歯を一時的に固定することによる誤飲の予防などがあります。

大事な口腔ケア

口の中には400~700種類の細菌が住んでいます。普段はあまり悪いことをしませんが、食後などは細菌がねばねばした物質を作り出し歯の表面にくっつきます。これを歯垢(プラーク)と言います。歯垢1ミリグラムの中に約10億個の細菌が住み着いていると言われていて、歯周病やむし歯の原因になると言われています。

また、口腔は「ごはんを食べる」だけではなく、喋るなど大切な役割を持っています。近年、誤嚥性肺炎(図2)の発症と口腔衛生状態との関連が示唆されるようになってから注目されるようになり、現在では肺炎の予防、ADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)の向上に重要であると認識されています。

口腔ケアの具体例としては、検診、口腔清掃、義歯の手入れ、咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉や頬のマッサージ、口臭の改善、口腔乾燥症予防などがあり、セルフケアと専門的な口腔ケアで成り立っています。

口腔ケアは日常自分で行うセルフケアが非常に重要になります。しかし、セルフケアでは落ちきらない汚れもあるので、定期的に歯科医院で専門的な口腔ケアを行ってもらうのがお勧めです。

口の中に違和感があったら相談を

口の中を清潔に保つことは、いろいろなメリットがあります。かかりつけ歯科をつくって定期的に受診するようにしましょう。

筑波メディカルセンター病院の歯科口腔外科では、入院中や通院中の患者さんに対して周術期口腔機能管理、口腔ケア、応急的な歯科治療を実施しています。特に、当院は地域におけるがん診療の拠点病院であり、がん化学療法や放射線治療に伴う口内炎などの口腔トラブルに対応しています。口の中に不安や違和感がありましたらお気軽にご相談ください。(筑波メディカルセンター病院 歯科口腔外科)

200種のハス 開花始まる 土浦 霞ケ浦総合公園

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ハスが咲き始めた霞ケ浦総合公園の花蓮園=土浦市大岩田

霞ケ浦湖岸の土浦市大岩田、霞ケ浦総合公園の花蓮(はなはす)園で、白やピンク、淡い黄色などたくさんの品種のハスが開き始めた。約200品種のハスが栽培されている。見頃は7月中旬ごろという。

花蓮園の広さは約1000平方メートル。コンクリートで仕切られた池が80区画、たる容器が240個設置されている。

6月中旬から咲き始めた。花は早朝に開き、昼前には閉じてしまう。一つの花の開花期間も約4日と短い。開き始めたハスを見ようと、28日も朝早くからカメラを手にした人や家族連れが訪れていた。

土浦市内で育種された天慈(てんじ)=28日早朝撮影

花蓮園が開園したのは2001年。近くのオランダ風車で霞ケ浦の水をろ過し、花蓮の栽培に利用している。土浦市内で育種された品種など、花蓮園でしか見られないハスもある。

日立市から訪れた60代の女性は「ハスが咲いている時期に初めて来た。冬に来たときは何もなくて、本当にここに花が咲くのかなと思っていた。小さくてかわいいハスや立派なハスも咲いていて本当にきれい」と話していた。

隣接のネイチャーセンターのスタッフは「ハスの花が咲き始めている。満開になるのは7月中旬。お昼には花が閉じてしまうので、午前中にぜひ見にいらしてください」と来場を呼び掛けている。(伊藤悦子)

夏の汗には木綿の下着《くずかごの唄》150

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】急に暑くなる日が多い。汗をかくと、後で、背中が異常なほどかゆくなる。そのかゆさたるや、表現できない。我慢の限界を超えたかゆさなのだ。

若いころ、「顔はまずいけれどオッパイの形だけはいいね」と亭主に褒められて、好い気になり、ブラジャーの形、色、飾りに凝って、たくさんのブラと付き合ってきた。しかし、老人になったら、いつの間にか自慢の乳房が垂れ下がってきた。今度はひもの太いブラを探して、垂れ下がったオッパイを肩に食い込ませて引き揚げなければならない。

急に暑くなって汗をかくと、そのブラが身体に食い込んでかゆい。いろいろ試しにやってみたあげく、かゆくなるのはブラの飾りひもの合成繊維が原因だと、気が付いた。木綿だけで作ったブラジャーを探したが、見つけられなかった。東京に住んでいる次女に話をしたら、どこかで見つけて買ってきてくれた。しばらく、夏の間だけ娘のくれた木綿のブラを愛用していた。

しかし、ここ2~3年、天気予報で熱中症の注意などがある日、急に暑くなると、背中が異様にヒリヒリしてかゆくなる。もうブラどころではない。私は垂れ下がったオッパイの、3人の子供を育てた長い歴史をしのびながら、ブラジャーを卒業することにした。

生活の中の年齢改革

こういう時、皮膚科の医者を受診すると、飲み薬の抗アレルギー薬と、ステロイドの入った軟膏(なんこう)を処方箋に書いて出してくれるに違いない。私も薬剤師だから薬に頼ってみるのもいいかもしれないが、しかし、薬で一時的に治ったとしても、皮膚炎はまた起こる可能性が大きい。

若いころ、「ツラの皮の厚さ」を誇っていたのに、老人になってみたらツラノカワまでが薄くなってしまって、ファンデーションがうまく乗ってくれない。年齢になってみないとわからない、皮膚のトラブルとの付き合い方を生活の中で身につけるよりほかない。

私はブラをやめて、木綿のシャツを一番下に着てみた。汗をたちどころに吸ってくれるような気がする。半日着て、シャツの襟をなめてみたら、飛び上がるほどショッパイ。それだけ沢山の汗を吸い取ってくれていたのだ。シャツを取り替えるだけで、皮膚はかゆくならない、ヒリヒリ痛くもならない。

1日2回取り替える木綿のシャツ。汗取りだけが目的の下着なのだから、装飾のない白の半袖で充分だ。衣料品店を探してみると、男性用木綿シャツはたくさん売っているのに、女性用は少ししかない。仕方がない。私は男性用の白い木綿シャツを何枚も買ってきて使っている。

生活の中の年齢改革。なるべく薬に頼らないで、根気よく工夫していくしかない。(随筆家、薬剤師)

ジェンダーバランス改善目指す 女性限定、教員20人募集 筑波大

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筑波大学正門

筑波大学(つくば市天王台)の永田恭介学長は26日の定例会見で、女性に限定し20人の教員を募集すると発表した。同大の女性教員の割合は現在20.7%。女性の割合が少ない状況の改善を目指し、男女雇用機会均等法に基づく「ポジティブ‧アクション」(積極的是正措置)として取り組む。

永田学長は「(女性教員が)まだ少ない。50対50にするには時間がかかるが、思い切って女性の雇用を増やそうと考えた。筑波大として女性に限らず、多様な人材が活躍することが大学のさらなる発展になる」と話した。

20人のうち14人は准教授と助教で、学内全ての研究分野を対象に一括で募集を行う。大学のホームページで11日に公表しており、7月31日まで募集を受け付ける。ほかの6人は生存ダイナミクス研究センター、生命環境系ですでに募集が始まっている。人文社会系、数理物質系、システム情報系、体育系はそれぞれ準備が整い次第、募集を始める。

これまでに出産や育児、介護、病気などを理由に研究活動が中断されたり、遅延した期間がある場合には、選考の際。考慮するとしている。

同大では女性教員の仕事との両立支援として、年間最大15万円の研究費助成、学内保育所「ゆりのき保育所」の利用、ベビーシッター利用料補助、学内の育児・休憩スペースの設置、家族の看護や介護などに対する特別休暇制度を用意している。同大の全教員数は現在1777人、そのうち女性教員は368人。(柴田大輔)

「図説日本の里山」が刊行されました《宍塚の里山》125

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上空から見た宍塚の里山(宍塚の自然と歴史の会の依頼で及川昭文さんが撮影)

【コラム・森本信生】朝倉書店から「図説日本の里山ー73の里山のくらしと生物多様性」が6月に刊行されました。宍塚の里山も、茨城県では唯一の里山として取り上げられています。宍塚エリアが日本を代表する里山の一つとして取り上げられたことをうれしく思っています。

「図説日本の里山」の表紙

里山とは「人間が多様な生態系サービスを得るために自然(主に陸域)に人為を加えたもの」であり、「人の手が加えられることによって生物生産性と生物多様性が高くなった二次的自然」と定義されています。

里山は生活の糧でした。田畑での食料の生産はもちろん、樹木は薪(まき)や炭などの燃料として、あるいは建築資材として使われてきました。そして、山菜やキノコは自然の恵みとして貴重でした。畜産がそれほど発達しなかった日本では、雑木林で供給される肥料は重要でした。

自給自足社会において里山は生活の糧だったのです。生活の糧を得るために農業を淡々と営むことによって生物多様性が維持され、美しい景観が守られてきました。別の角度でとらえれば、地域文化の基盤となり、神の依代(よりしろ)ともなり、人々の心の糧ともなってきました。

「図説日本の里山」では、現代に残されている価値ある全国73の里山の「概要と景観」「生業と利用」「特徴づける生物相」「現在の利用状況と管理」が、豊富な写真をとともに紹介されています。生物だけでなく、人々の暮らし、現在の利用状況、保全活動が、偏りなく紹介されています。

もう一つの特徴は、日本全国の里山を網羅していることです。これまで里山といえば、関東や近畿地方にある雑木林に関心が向けられる傾向があったのですが、この本では北海道から沖縄・西表島まで、全国の里山が紹介されています。

それぞれの地域において特徴と魅力を兼ね備え、固有の歴史や文化、そして思いが込められたかけがえのない場であることを、改めてうかがい知ることができます。さらに、巻頭の総説(18ページ)は、里山を知るための出色の解説になっています。

私たちの生活を取り巻く最も身近な存在は里山です。その価値を知り、未来を語ることは、とても重要だと思います。その手助けとして、この本は、いまなら書店の店頭にあるでしょうし、つくば市や土浦市の図書館にも所蔵されています。手に取ってみてはいかがでしょうか。

そして、宍塚の里山においでください。毎月第1日曜日(原則)には、専門家によるテーマ別観察会を行っています。お子さん向けには子ども探偵団(毎週第4土曜日)、季節の移ろいを実感できる土曜観察会(毎週土曜日午前)も実施しています。

環境省のモニタリング1000の調査は毎月ありますし、保全活動で汗を流したければ、さわやか隊の活動など、メニューはいろいろです。もちろん、お一人での散策もお勧めします。身近な、そして豊かな里山が、あなたをお待ちしています。(宍塚の自然と歴史の会 理事)