水曜日, 10月 15, 2025
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廃校をサイクリスト拠点やレストランに 旧斗利出小 土浦市が地元企業に売却へ

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旧斗利出小学校校庭(土浦市提供)

小中一貫の新治学園義務教育学校(同市藤沢)が開校したのに伴って2018年3月末で廃校となった同市高岡、旧斗利出(とりで)小学校跡地(約1.3ヘクタール)の利活用について、土浦市は15日、公募型プロポーザルを実施した結果、サイクリスト向け拠点やレストラン、マルシェ、子供たちの遊び場などとして利活用すると提案した地元の太陽光発電設備販売会社、アクセスシャイン(同市中)が最も優れた提案をしたとして優先交渉権者に決定したと発表した。今後、提案内容をもとに基本協定を締結し、合意すれば同社に用地と建物を売却する。

同社の提案内容は、同小跡地は、サイクリングロード「つくば霞ケ浦りんりんロード」に近く、つくば市春風台から桜川に架かるさくら大橋を通って国道125号につながる、土浦とつくばを結ぶ県道藤沢荒川沖線に近いなどの立地にあることから、立地条件を生かし、①2階建ての校舎をコミュニケーションゾーンとして常時、地元企業が出店したり、レストランを開いたり、地域交流スペースとして活用する②体育館をサイクリストゾーンとして常時、サイクリスト向け拠点とするほか、災害時は地域住民の一時避難所として活用する③校庭はイベント広場として、休日にキッチンカーなどによるマルシェを開いたり、イベント開催時以外は子どもの遊び場として利活用するーなど。

旧斗利出小学校校舎(土浦市提供)

同小の跡地利活用について同市は、5月30日に公募を開始し、市内外の3事業者から応募があった。プレゼンテーションとヒアリングを実施し、市のプロポーザル選定委員会が参加事業者の資質、事業内容、購入価格などについて審査した結果、アクセスシャインが優先交渉権者に決定した。

校舎は改修が必要で、体育館は耐震基準を満たしていないなどから、市は、今後必要になる校舎の改修費用や体育館の耐震補強費用などを差し引いて、最低売却価格を578万円として提示していた。公募でいくらの提示があったかは非公表としている。

今後については、11月ごろまでに利活用の提案内容について市と同社とで基本協定を締結し、年内に住民説明会を開催。さらに同小は市街化調整区域であることなどから、県の開発審査会の承認が必要となるほか、開発許可などの法令手続きに1~2年かかる見通しで、改修工事着手はその後になる。

新治学園義務教育学校の開校に伴って、新治地区では斗利出小のほか、藤沢小、山ノ荘小の3校が廃校となった。旧藤沢小は現在、体育館が地域の避難所となっているほか、日ごろ地域のスポーツクラブなどに利用されている。旧山ノ荘小は日立建機ICTデモサイトとして、情報通信技術を用いた建設機械のデモンストレーションや体験をする場に利用されており、旧斗利出小だけが利活用方法が決まってなかった。(鈴木宏子)

油彩画、水墨画など70点 筑波銀行退職者の会が美術展 つくば本部ギャラリー

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筑波嶺会の会員ら=つくば市竹園、筑波銀行つくば本部2階ギャラリー

筑波銀行の退職者でつくる筑波嶺会の土浦支部美術展が15日、つくば市竹園の筑波銀行つくば本部ビル2階ギャラリーで始まった。昨年、会の名称を筑波銀行OB会から筑波嶺会に変更して2回目の開催となる。同会に所属する22人が、退職後に制作した油彩画、水墨画、写真、書、彫刻、陶芸など約70点を展示している。

小松崎綾子(78)さんは、押し花絵「竹林」など3点を展示。バラ、銀ポプラ、落ち葉、タブの新芽、木の皮、ケイトウなどを素材にして、絵の具を用いず仕上げた。「16年前から習い始めた。根気のいる作業で一つの作品を作るのに2、3カ月かかる。最初、形がないものがだんだん仕上がっていくのは感動もの。とても達成感がある」と話す。

小松崎綾子さんの押し花絵「竹林」

堀越喜代子(78)さんは、鉛筆画「花明かり」など3点を展示。2Hから10Bの鉛筆を使い、ていねいに仕上げていく。作品は人物を描く。15年ほど前に習い始めて2018年には個展も開いた。「描くには手間がかかる、遠くから眺め確認する作業も必要。しかし完成すると充実感がいっぱいになる。人物によって筆が進むときと進まない時がある。また何か乗り移ったように筆が進むことがあるから不思議」だと語る。 

堀越喜代子さんの鉛筆画「花明かり」

今年は2024年9月に亡くなった会員、安斉克一さんの追悼展を加え、安西さんが生前に制作した油絵8点を展示している。

同銀行は2010年に関東つくば銀行と茨城銀行が合併し誕生した。筑波嶺会は水戸支部、下妻支部、土浦支部の3支部があり、今回、土浦支部が主催した。会員は60代後半から70代後半が中心。定年延長という時代でもあり、リタイアした後にすぐに会員になることは近年少なくなったという。

筑波嶺会会長の徳宿彰さんは「銀行の中でもこうした芸術関連のOB会があるのは珍しい。みんな同窓会のように楽しみにしている」と話す。(榎田智司)

旧日本軍の二つの飛行場から「戦争とつくば」考える 戦後80年企画展

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谷田部海軍航空隊の隊員だった祖父が撮影した写真が収められているアルバムを紹介する市文化財課職員の久保田昌子さん=小田城跡歴史ひろば案内所

2カ所で巡回

戦後80年を迎え戦争の記憶が徐々に失われつつある中、アジア・太平洋戦争中につくば市にあった旧日本軍の二つの飛行場から、戦争とつくばの関わりを考える巡回企画展「戦争とつくば」が同市小田、小田城跡歴史ひろば案内所で開かれている。併せて原始・古代から近代までの戦争と地域の人々との関わりを発掘出土品や古文書などの資料から振り返る。写真や地図、出土品などの資料約100点が展示され、初公開の資料もある。

二つの飛行場は、市南部にあった谷田部海軍航空隊と、北部にあった西筑波陸軍飛行場。

展示会場の様子

隊員らのスナップ写真を初公開 谷田部海軍航空隊

谷田部海軍航空隊は、現在の同市上横場、観音台、高野台にまたがってあった。1938(昭和13)年12月、阿見町にあった霞ケ浦海軍航空隊の谷田部分遣隊が設置され、翌39(昭和14)年12月に谷田部海軍航空隊として独立し、「赤とんぼ」と呼ばれた練習機の訓練などが行われた。現在、筑波学園病院がある上横場には、木造2階建ての本部や宿舎などの建物があり、農研機構の各研究所がある観音台は、縦横1.8キロ×1.3キロの芝生の滑走路があった。滑走路の南東の高野台には、敵襲から飛行機を隠す掩体壕(えんたいごう)が多数設置されていた。市の調査で3基の掩体壕跡が残っていることが確認され、写真と地図で紹介されている。

戦局が悪化した1944(昭和19)年11月以降は、神之池海軍航空隊(現在の鹿嶋市)の実戦部隊が谷田部に移設され、谷田部にあった練習機部隊は神町基地(現在の山形県東根市)に移設。神之池から零戦などがやってきて、実用機で訓練する実用機教程が行われた。1945(昭和20)年2月、米軍が群馬県の軍用機生産工場、中島飛行機工場や、霞ケ浦海軍航空隊があった阿見・土浦方面を攻撃した際は、谷田部から迎撃に向かい計4人が死亡した。その後は実用機訓練から特攻隊訓練に切り替わり、神風特攻隊「昭和隊」が編成され、同年4月7日以降は隊員らが次々に鹿児島県の鹿屋海軍航空基地に向かった。昭和隊は第7次まで編成され、54人いた隊員のうち40人が死亡した。

企画展では、カメラが趣味だった当時の隊員(故人)が撮影した隊員らのスナップ写真や、昭和隊が鹿屋に向けて出撃する1945年4月7日、水杯を酌み交わす隊員らの様子など、当時の貴重な写真を展示している。写真を撮影したのは、企画展を主催する市文化財課職員、久保田昌子さん(33)の祖父が撮影したもので、初めて一般に公開された。ほかに2006年、地元のつくば工科高校(現在つくばサイエンス高)の生徒が、宮城県白石市を訪ね、当時の昭和隊隊員にインタビューした貴重な証言を記録したビデオを会場で上映している。

谷田部海軍航空隊の写真

竹内浩三の「筑波日記」を紹介 西筑波陸軍飛行場

西筑波陸軍飛行場は当時の作岡村、吉沼村にまたがる約300ヘクタールの広大な敷地で、地元の勤労奉仕による工事で1940(昭和15)年7月、陸軍航空士官学校西筑波文教所として開設された。指令室などの建物のほか、鉄骨造の格納庫が3棟、木造の格納庫が6棟あり、谷田部と異なりコンクリートで舗装された滑走路があった。士官学校として利用されたのは2年程度で、その後は落下傘やグライダーを用いて敵地前方に進む挺身部隊の訓練地となった。1943(昭和18)年11月には滑空歩兵部隊と滑空機操縦部隊のグライダー部隊となった。

企画展では、当時西筑波の隊員だった三重県出身の詩人、竹内浩三(1921-45)が遺した「筑波日記」を紹介し、小田城跡で訓練をしたり、作岡で掩体壕を掘ったり、吉沼にたびたび出掛けて外食を楽しんだり、銭湯や書店に足しげく通ったりなどの一節をパネルで展示している。ほかに中菅間の個人宅で保管されていた西筑波飛行場で使われていたと伝わる灰皿などを展示している。

近代以前の展示では、つくば市内で確認できる最古の武器として、古墳時代前期の4世紀後半ごろ出土した鉄剣などが紹介。戦国時代、落城と奪還が繰り返された小田城の堀跡から発掘された、2カ所に刀傷とみられる鋭利な外傷がある中年女性の頭蓋骨が初公開されている。

初公開されている小田城の堀跡から発掘された頭蓋骨

市文化財課は「アジア・太平洋戦争で大きな空襲を受けなかったつくばが戦争について大きく取り上げられる機会は多くなかったが、戦争と無関係でいたわけではなく、戦争の痕跡は身近なところに残されており、戦争の悲惨さと平和の大切さについて考える機会になれば」としている。(鈴木宏子)

◆巡回企画展「戦争とつくば」は10月4日(土)~来年2月8日(日)まで市内2カ所で開催される。①10月4日(土)~12月7日(日)は同市小田2532-2、小田城跡歴史ひろば案内所で、②12月18日(木)~2025年2月8日(日)は同市谷田部4774-18、谷田部郷土資料館で開催。入場無料。開館時間はいずれも午前9時~午後4時30分、月曜など休館(祝日の場合は翌日)。
▽会期中、二つの旧日本軍飛行場跡をバスと徒歩でめぐり、地割や地形に残る痕跡を見学する体験講座「飛行場の痕跡をめぐる」を11月29日(土)午前10時~午後3時に開催する。定員20人。事前申込必要。申し込みはこちら
▽ほかに、筑波大名誉教授の伊藤純郎さんによる講演会「谷田部海軍航空隊と民衆—本土防衛、特攻隊に対するまなざし」を12月6日(土)午後2~4時、市役所コミュニティ棟1階で開催する。定員約100人。当日受付。

山頭火 椋鳩十 孫の名は?《続・平熱日記》185

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】マングローブの木炭は安いけど匂いがイマイチ…。この夏の山口での話。立ち寄った道の駅で地元産の木炭の袋を見つけた。山の中では煮炊きや暖を取るのに使うので、ひとつ試しに買ってみることにした。しばらくして、別の用事でその道の駅の近くを通ることがあったので、お土産にもう一袋と思って寄ってみると、定休日。がっかりしたが、ネットで検索するとすぐ近くに製造元があるではないか。

そこは材木や伐採林などを扱う大きな工場で、事務所に入ると女性社員の方が対応してくれて、段ボール入りの製品でもいいかと聞くので「御意」と答えると、別のところからガラガラと台車でブツを運んできた。その箱には赤い文字で「山頭火(さんとうか)」とある。

言わずと知れたご当地出身の俳人の名前であるが、木炭製品に山頭火とはこれ以上のネーミングもないもんだと思った。恐らく深い意味があるに違いない! 名前の由来はと、ネットで検索。あれ? 特に深い意味は…ない。ちなみに、山頭火は日本酒の銘柄やラーメン屋の屋号にも使われているようだ。

椋の木に鳩が十羽とまる

役所から名前のフリガナについてのハガキが来た。西洋に比べ、この国の名前の表記、読み方のバリエーションはほぼ無限で、近年特に自由奔放である。身近なところでは、生徒の名前はフリガナなしではほぼ判読不可能になった。

名簿のフリガナを見ては想像力豊かな漢字と読み方に感心することしきりだが、相変わらず生徒の名前はほとんど覚えられない。そんな中、「椋介」という名前が目に留まった。その由来を聞いてみると、「椋(むく)の木に鳥が集まるように人が集まってくるような人になって欲しいという願いから」名付けられたという。

「椋鳩十(むく はとじゅう)」という動物文学者に出会ったのは小学校の図書室だったか。随分と不思議な名前だと思いながら、「椋の木に鳩が十羽とまる…」に由来していることを知ったのはそう昔のことではない。「椋の木ねえ…いい名前だねえ…」

そろそろ「山頭火」の出番

ところで、長女のおなかが目立つようになってきた。来年早々に3人目が生まれてくる。どんな名前にするんだろう…。そんなこと考えながらパクと散歩していると、大きな椋の木の下に黒くなった実がぼたぼたと落ちている。この実が食べられるということを知ったのも近年のことだが、どうも食べられる気がしなくて、いまだに口にしたことがない。ちなみに、この木の下には十羽とはいかないが、つがいと思われる二羽の山鳩をよく見かける。

喉が腫れて熱があると思ったら、はやりの病。その後しばらくの間、コーヒーの匂いが鼻を突いて飲めずにいた。暑さがやっと秋の空気に入れ替わったころ、ようやく鼻と舌が元に戻ってきた。そろそろ山頭火の出番か。今年のサンマは久しぶりに安くて脂がのってうまいという。炭の香りと共に楽しもう。(画家)

出土品の文字から遺跡の性格探る 開館30周年企画展 土浦

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文字が書かれた土器を紹介する学芸員の松田俊太さん=上高津貝塚ふるさと歴史の広場

上高津貝塚ふるさと歴史の広場

土浦市を始め県内各地の遺跡から出土した文字が記された土器などを展示し、文字に注目して遺跡の性格や社会的背景を探る企画展「文字が語るもの」が11日から、同市上高津の博物館、上高津貝塚ふるさと歴史の広場で開かれている。

文字刻まれた県内出土品約100点を一堂に

開館30周年記念として、土浦市内だけでなく、つくば、鹿嶋、石岡、水戸、古河、かすみがうら市など県内各地の遺跡の、文字が刻まれた出土品約100点を一堂に紹介する。

展示されているのは、墨で文字が記された土器、土師器(はじき)、文字が刻まれた板碑や銅製品、瓦など。県指定文化財や市指定文化財など貴重な資料もある。群馬県高崎市の特別史跡である飛鳥時代の石碑「山上碑」や国宝に指定されている福岡市史博物館所蔵の金印「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」なども写真で紹介されている。

同館学芸員の松田俊太さんは「出土品の文字から当時の土地名や社会の状況、人々の営みが推測できる」と話す。

文字から分かる当時の社会や暮らし

展示は5部構成で、出土品の文字から、役所や寺院だったことが分かる遺跡、当時の地名から地域の生業(なりわい)が推測できる遺跡など、「役所・寺院」「地名」「人物」「神・仏」「中世の祈り」の5つのテーマに分けて展示されている。

まず「役所・寺院」では、鹿嶋市の神野向(かのむかい)遺跡の、墨で文字が書かれた墨書土器「鹿島郡厨」を紹介。出土品から奈良・平安時代に鹿島郡の役所跡だったことが分かる。ほかに石岡市の常陸国分尼寺跡から出土した墨書土器「法華」など27点を展示する。常陸国分尼寺跡から出土した墨書土器には「法華」と書かかれており、平安時代の寺の名称が「法華滅罪之寺(ほっけめつざいのてら)」だったことがわかる。

石岡市指定文化財である「法華」と書かれた墨書土器=同

「地名」では、地名に関係する墨書土器を5点展示している。霞ケ浦や筑波山、桜川と天の川に囲まれた一帯は中世、「南野牧」と呼ばれ、馬が飼育されていた。入ノ上遺跡群(土浦市沖宿)からは「青毛」と記された墨書土器が出土している。「青毛」は黒い馬を意味することから、平安時代にはすでに周辺で馬の飼育が行われていたと推測できるという。

入ノ上遺跡群から出土した墨書土器「青毛」=同

「人物」では、書かれた文字から人物の活動が推測できる出土品を19点展示している。常陸大宮市の小野遺跡から出土した銅印「丈永私印」は、「丈部永○」という名前が彫られており、丈部永〇という人物が用いたとされる。

県内で出土した銅印=同

「神と仏」は、奈良時代から平安時代の集落から出土した、祭祀や仏教などに関連した墨書土器、木製品、素焼きの土器の土師器(はじき)など21点を展示している。寺畑遺跡(土浦市田村)から出土した墨書土器には「千手寺」と記されており、集落に寺があったと推測できる。さらに、僧侶の名が「案豊」だったと考えられる墨書土器も見つかっている。つくばエクスプレス沿線の島名・福田坪地区で発掘調査が行われた島名熊の山遺跡(つくば市)には、奈良時代に祭祀を行ったと推測できる水場跡が発見されている。水場跡からは「川」「山人」などと書かれた墨書土器が多数出土しており、集落内に川などに関わっていたとみられる特定の集団がいたと考えられるという。

つくば市、島名熊の山遺跡から発見された「川」の文字がある墨書土器=同

「中世の祈り」では、法雲寺(土浦市高岡)や般若寺(土浦市宍塚)が所蔵する中世の文字が刻まれた石碑「板碑(いたぴ)」など4点を展示している。板碑は鎌倉時代や室町時代など中世、生前供養や追善供養に使われたとという。

松田さんは「開館30周年の企画として遺跡の文字に注目した。当時書かれた文字からどのようなことがわかるのか。皆さんにぜひ見ていただきたい」と語る。(伊藤悦子)

◆「開館30周年 第28回企画展『文字が語るもの』」は10月11日(土)~11月30日(日)まで、土浦市上高津1843 上高津貝塚ふるさと歴史の広場で開催。開館時間は午前9時~午後4時30分。休館日は月曜、月曜が祝日の場合は翌日。入館料は一般150円、高校生以下無料。11月3日(月)と13日(水)は無料。
▽記念講演会「中世の祈りのしるし-板碑・石塔の世界」を10月26日(日)午後1時30分~3時に開催する。講師は立正大学文学部准教授の本間岳人さん。
▽ワークショップ「消しゴムはんこを作ってみよう」を11月9日(日)午前10時~11時30分と午後1時30分~3時の2回開催する。講師はイータの小屋店主のかとうみのりさん。
▽ギャラリートークを10月12日(日)と11月22日(土)いずれも午後2時~2時30分まで開催する。

「人体の自然」に添う食が健康体をつくる《邑から日本をみる》187

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人体の自然に添う食について話す長谷山さん(左)

【コラム・先﨑千尋】「私たち人間の体は120歳まで生きられるようにできている。植物食を食べ、長生きしよう」。9月18日、那珂市瓜連の常陸農協レインボーサロンで「『人体の自然』に添う食-それが健康体をつくる」という演題の講演会が開かれた。講師は牛久市在住の長谷山俊郎さん。私と同年で、50年来の友人だ。

長谷山さんは大学を出て農水省の研究員になり、現役の時は地域農業の改善や地域づくり、地域活力の向上などの支援を行ってきた。退職してからは日本地域活力研究所を立ち上げ、もっぱら健康づくりをテーマとし、執筆や講演活動を続けている。それは、10代から病気のオンパレードで「不健康で病弱だったから」。60歳の時に水野葉子さんの本を読み、その本には「食を改善したら、持病が直った」とあった。

それから持ち前の研究熱心さで、食や健康の研究にのめりこみ、今では医療費はほとんどゼロ。健康に関する著作も多い(コラム5コラム162参照)。

長谷山さんはこの日、約40人の参加者を前に、20ページを超える資料を基に、人体の自然に添う植物食が健康を生み、人体の自然に添わない動物食や食品添加物、化学物質、加熱油、小麦が病気を生む、と話した。

アルカリ性体質だと健康になる

以下、長谷山さんの講演から、ここが大事だと私が思ったことを列記する。

・今の医療は、薬などで病状を和らげる「対症療法」であり、病気を生まない「原因療法」でない。今の医学と栄養学は食と体の関係を知らない。健康は「バランスのとれた食品群を食べること」ではない。

・私たちの体は、人類が誕生した200万年前と変わっていない。その頃は果物中心のアルカリ性体質なので、病気にならない。腸内細菌叢(そう)は免疫力を高め、栄養の吸収を良くし、老廃物を蓄積せず、体に炎症を起こさない。これが人体の自然で、健康をもたらす。

・アルカリ性体質だと健康、酸性体質だと不健康になる。アルカリ性食品を80%以上取る。食品添加物は慢性腎臓病をもたらす。肉の摂取で坐骨神経痛や痛風になる。

・動物性食品や加工食品などの酸性食品は、血管や脳によくない影響を与える。がん細胞は酸性環境で活動し、アルカリ性環境では活動できない。アルカリ性体質はコロナを防ぐ特効薬。インフルエンザにもかからなくなる。認知症の予防にもなる。

・アルカリ性体質にする食材は、生野菜、果物、海藻類、キノコ類、発酵食品、漬物など。

・酸性食品は肉類、卵、乳製品、小麦、紅茶、チョコレート、加工食品、電子レンジ食品、炭酸水など。

・小麦は1955年以降品種改良が行われ、グルテンが以前の40倍になった。それによって体の多くに炎症を起こす食品に変わった。病気を生まないためには小麦を食べないこと。私はこのことを知らなかった。(元瓜連町長)

<参考>長谷山さんは5人以上集まれば講演に来てくれる。連絡先は電話029-871-4645、メールはjuhht71724x@kna.biglobe.ne.jp

土浦花火百年を振り返る 最古の大会パンフなど55点展示 市立博物館

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1958年に開催された第27回大会ポスター=土浦市立博物館

土浦市立博物館(同市中央)で11日からテーマ展「土浦花火百年」の展示が始まった。11月1日に開かれる第94回土浦全国花火競技大会が100周年を迎える節目の年であることから、1925(大正14)年に初めて花火大会を開催した同市文京町の神龍寺住職、秋元梅峯の肖像写真や競技大会初期の記念写真、現存する最古の第2回大会プログラムなど計55点を展示する。2001年に撮影した3人の花火師たちへのインタビュー映像も放映する。

展示は「序章」から第3章までの4部構成となっている。序章「花火大会前史-江戸時代の花火」では、現在の花火につながる江戸時代の花火資料を展示している。墨田川にかかる両国橋での花火大会に集まる人々の様子が細かく描かれた同館所蔵の『江戸名所図会 巻二 両国』や、江戸時代末1858(安政5)年の両国花火の浮世絵写真パネル、旧宍塚村(現在の同市宍塚)で1862(文久2)年に花火が上げられていたことを記した「諸用日記」などを展示する。

第1章の「霞ケ浦海軍航空隊と町のにぎわい-海軍航空隊の玄関口・土浦」では、大正時代から昭和にかけての霞ケ浦海軍航空隊関連の資料として、1924(大正13)年のパンフレット「霞浦航空隊めぐり」や、同年の土浦の映像などを展示する。隣接の阿見村(当時)に設置された霞ケ浦海軍航空隊は大正時代から昭和にかけての同市の発展に関わり、花火大会のきっかけの一つになったのが殉職者の慰霊だった。

第2章「秋元梅峯と花火大会-慰霊と振興の花火」は、現在の土浦花火競技大会の始まりとなる大会を霞ケ浦湖畔で開催した秋元梅峯の肖像画や花火師たちが写る1931(昭和6)年大会の記念写真などを展示している。秋元住職は、航空隊殉職者の慰霊のほか関東大震災の影響で経済が落ち込んだ市の活性化のために私財を投じて大会を開催した。

第3章「花火師たちの競演」は、1927(昭和2)年の第3回花火大会から1975(昭和50)年までのプログラムや大会記録簿、花火師が受賞したトロフィーなどを展示する。第3回大会のプログラムからは、上空高く上がり、大きく開く尺玉、八尺玉や、仕掛、早打などを上げていたことがわかる。

1975年の第44回大会で北島義一さんが「連射連発」(スターマイン)部門で優勝した際の盾

参考展示として、農村の花火でもある、同市大畑の国選択・県指定無形民俗文化財「からかさ万灯」の模型なども展示する。

映像展示では記録映像の「土浦の花火 伝統花火から全国花火競技大会まで」「花火師たちの記憶」「大畑のからかさ万灯」を上映する。「花火師たちの記憶」では、2001年に撮影した花火師、野手保さん、武藤輝彦さん、箱守彰さんらのインタビュー映像を見ることができる。終戦直後の花火大会で「進駐軍にナイアガラ花火を早くやるように言われた」といったエピソードも聞くことができる。映像を編集した茨城ビデオパック制作の岩崎真也さんは「戦前戦後の花火師の証言や紫の煙が出る昼の花火『ブドウ煙』の再現に苦労した話など貴重なインタビュー映像」だと語る。

展示する映像を編集した茨城ビデオパック制作の岩崎真也さん。映像は、再現した紫の煙が出る昼の花火「ブドウ煙」=同

同館学芸員の萩谷良太さんは「花火の関連資料は実は意外と残っておらず、今回の展示は貴重」とし「国内でも最高峰といわれる花火師たちによる土浦全国花火競技大会の100年の軌跡を、博物館の展示を見て知ってもらいたい」と来場を呼び掛ける。(伊藤悦子)

◆「土浦花火百年」は10月11日(土)から11月24日(月)まで同市中央1-15-18、市立博物館で開催。開館時間は午前9時から午後4時半。入館料は一般200円、高校生以下は無料。11月3日(月・祝)と13日(木・県民の日)は入館無料。問い合わせは電話029-824-2928(同館)へ。
▽展示案内会を11月1日(土)午後1時から開催する。
▽土浦二高茶道部による呈茶「お茶を一服いかがですか-花火に寄せた茶会」を11月3日午後1時から展示ホールで開催する。定員50人。茶券は200円。
▽演劇「つち浦々まちなか演劇めぐり」を10月18日(土)19日(日)、博物館展示ホール・視聴覚ホールで開催する。上映時間は同館ホームページへ。

後期ホーム最終戦は引き分け つくばFCレディース

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アディショナルタイムに同点ゴールを決めて喜ぶつくばFCレディースの石黒璃乙(青いユニフォーム)

関東女子サッカーリーグ1部のつくばFCレディースは11日、つくば市山木のセキショウチャレンジスタジアムで後期のホーム最終戦を行い、日体大横浜SMGサテライトと対戦、2ー2で引き分けに終わった。

つくばFCレディース 2ー2 日体大SMG横浜サテライト
       前半 0ー0
       後半 2ー2
〈得点〉62分=日体大・堀井咲穂、65分=つくば・鏡玲菜、90+4分=日体大・堀井咲穂、90+6分=つくば・石黒璃乙

つくばは昨シーズン、なでしこリーグ2部から降格し、今シーズンでの復帰を目指す。9月24日から28日に福島で行われたなでしこリーグ2部の入替戦予選は3勝1敗の2位で終え、入替戦の権利を得ていた。関東リーグ残り2試合はアウェーで18日にFC十文字Mare、11月9日に東京国際大学と対戦する。

前半3分シュートを放つ諸冨愛莉

つくばはここまで勝点6の4位で、首位の神奈川大学を勝点3差で追う。対する日体大は最下位に低迷する。つくばは、勝って優勝に望みをつなぎたいと、ホーム最終戦に臨んだ。

開始からつくばが主導権を握ると、16分に中村真奈が右サイドからドリブルで駆け上がり、中央へクロスを上げる。しかし中央の諸冨愛莉に合わせることが出来ずチャンスを逃す。

前半23分、右サイドからドリブル突破する中村真奈

23分に再び中村が右サイドからクロスを上げ、石黒璃乙がシュートを放つがゴールネットを揺らすことは出来なかった。中村は「チャンスはつくれていたが最後のクロスの質が悪く、合わせることが出来なかったので、もっとコミュニケーションをとって正確なクロスを上げたい」と今後の課題を上げた。

前半23分、中村真真奈のクロスに頭で合わせる諸冨愛莉。わずかに合わず

32分には高橋萌々香が中央から右足で放ったシュートがポストに弾かれ、こぼれ球を中村がシュートするもゴールを奪うことが出来なかった。前半は5本のシュートを放ったが得点を奪うことはできず0ー0で折り返した。

前半32分、右足でシュートを放つ高橋萌々香

つくばは後半も開始から相手陣内に攻め込み、積極的に攻めチャンスをつくるも、決定力に欠き得点を奪うことが出来ない。

後半17分、日体大の堀井咲穂からゴールを決められ先制点を許すが、3分後、中央からのフリーキックをつくばの鏡玲菜が右足で蹴り、ボールはゴールネットを揺らし試合を振り出しに戻した。鏡は「行けると思って直接狙って蹴った」と話した。

フリーキックで直接ゴールを決めた鏡玲菜(右端)

しかし終盤、徐々に日体大にボールを支配される場面が増え、アディショナルタイムに堀井咲穂に2点目となるゴールを決められ勝ち越しを許す。これで勝負が決まったかと思われたが、つくばは直後に右コーナーキックからのクロスを石黒璃乙が頭で決めて終盤間際のラストチャンスで見事に起死回生の同点ゴールを決め、ホームで意地を見せた。

石黒は「ゴール前に来いと思って、フリーになったところを頭で合わせ完璧に決まった」と改心の笑みを見せた。すると直後にホイッスルが鳴り、2−2のドローで試合終了となった。

試合後に健闘を称え合う両選手

つくばの志賀みう監督は「なでしこリーグの入れ替え戦まであと2試合なので、その試合に向けてのプレー、練習、戦術の確認をすることも込めて試合に挑んだ。いくらボールを保持してもゴール前に入り込めたとしても、最後にゴールを決められなかったら勝てないってことをすごく学べる試合だった。後半は攻撃のところで攻めあぐねてしまったので、1つ起点をつくろうと整備した簡単なミスから2失点だった。自陣は安心、安全にボールを回さなければいけなかった。それが出来た中でゴールまでいけなかったので整備したい。(なでしこの)入替戦では自分たちはチャレンジャー精神で戦うしかない。相手はレベルの高いリーグで戦ってきたので簡単ではないが、しっかり大胆に戦っていきたい」と抱負を語った。

フリーキックを決めた鏡は「最後に追いつけて良かった気持ちだか、勝ち切ることが必要なので短い時間で修正していきたい。(入替戦は)やるしかないので100%の力を出せるように頑張る」と力を込めた。最後に同点ゴールを決めた石黒は「入れ替え戦では絶対に自分が点を取って勝ってなでしこリーグに昇格する」と力強く語った。

試合後サポーターとハイタッチする選手達

なでしこリーグ2部の入替戦はホームアンドアウェーで行われ、第1戦(対戦相手は未定)は25日ホームのセキショウチャレンジスタジアムスタジアムで行われる。(高橋浩一)

ルート66とつくばシルクロ一ド《映画探偵団》93

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イラストは筆者

【コラム・冠木新市】東京オリンピック開催に向けて日本中が湧いていた時代。一度も見たことはなかったが、「ルート66」(1960〜1964)というテレビ番組があったことを記憶している。小学生のころだ。

日本でも反体制的な時代の空気に包まれていたベトナム戦争時代。アメリカン・ニューシネマの先駆的な作品「俺たちに明日はない」(1967)が1968年に公開された。世界大恐慌時代の男女ボニ一&クライドの銀行強盗と逃避行を描いた犯罪映画なのだが、なぜかすんなりと共感したことを覚えている。高校生のころだ。

1970年に入り「イ一ジ一・ライダー」(1969)が公開される。主人公キャプテン・アメリカ(ピ一タ一・フォンダ)がコカイン密売で金を得てバイクを買い、腕時計を捨て相棒と自由を求めて旅立つシ一ン。ロックの流れるタイトルバックに心が躍った。大学生のころだが、当時の若者たちは皆同じ思いを抱いたのではないか。

渋谷パルコ周辺に人が集まった1989年、「バグダッド・カフェ」(1987)を渋谷で見た。アメリカ旅行中のドイツ人女性が旦那と大喧嘩し、車から降りトランクを転がしアスファルト道路をとぼとぼ歩くシーン。テ一マ曲が流れ、黄色の画面のスクリ一ンに一瞬にして吸い込まれた。結婚したころだ(コラム10参照)。

印象深い3本の映画だが、この3本の舞台が同じルート66であることを後から知って驚いた。その後見たジョン・フォード監督の名画「怒りの葡萄」(1940)、「ハリ一とトント」(1974)、「レインマン」(1988)、「テルマ&ルイ一ズ」(1991)も、ルート66が舞台であると知る。

地名は知っていても、いちいち地図で確認することをしなかった私は、長い間、同じロ一ドを舞台にした映画であることを知らず見ていたわけだ。

ルート66とは、アメリカ合衆国東部イリノイ州シカゴと西部カリフォルニア州サンタモニカを結んだ全長3755キロの旧国道。マリリン・モンローが生まれた1926年に指定された。しかし、州間高速道路の発達によりその役目を終え、つくば科学博覧会が開かれた1985年に廃線となった。

道には物語がある。私はつくば市の赤塚公園から筑波山までのほぼ一直線の道を「つくばシルクロード」と呼んでいる(コラム60参照)。この道には文化・歴史・伝説が眠っている。それらを再創造し、「つく つく つくばの七不思議」としてア一トイベント化してきた。今にして思えば、小学生のころ無意識にルート66を記憶したのは、物語のある道に興味があったのかもしれない。

来年はルート66が誕生して100年になる。アメリカでも色々なイベントが行われることだろう。こちらも、つくばシルクロードをアピールする企画を計画しよう。道が物語を生み出すのか、物語が道に輝きを与えるのか。いずれにしても、道と物語は深く結びついているのは確かである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

<お知らせ> 物語観光「つく つく つくばの七不思議セミナー」(参加費無料)
・日時:10月25日(土)13〜15時
・場所:コリドイオ小会議室
・内容:映画上映『サイコドン』第1話、お話と懇談会

人件費の上昇が顕著 筑波総研 経営コスト調査

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筑波銀行グループの筑波総研(本社土浦市、瀬尾達朗社長)は9月、同行取引先334社(製造業122社、非製造業212社)を対象に今年の経営コスト動向を調査し10月上旬に集計した。それによると、人件費が上昇したと回答した会社が73.4%に達した。1年前の調査に比べ増えており、原材料費・商品仕入高上昇(81.9%)などのほか、人件費増が経営の負担になっていることが改めて明らかになった。

アンケート調査を担当した上席研究員の山田浩司氏は「資源価格上昇の一服と政府の緩和措置などによって燃料費や水道光熱費は低下したが、賃上げや最低賃金引き上げが続いたことで人件費や外注費が上昇した」と解説している。

「コスト増転嫁できない」18

コスト上昇を販売・サービス価格に転嫁できたかとの質問には、「1~2割転嫁できた」と回答した会社が34.4%と最も多く、「まったく転嫁できていない」会社が17.7%あった。

山田氏は、回答の中から「取引先には、材料コスト上昇については理解を得られるが、人件費に関しては認められにくい傾向がある」(繊維製造)、「大企業の外注費単価が上がらないため、給与アップには限度がある」(情報通信)、「仕入れ分は価格転嫁できているが、燃料費や光熱費などは企業努力で吸収している」(木製品製造)などのコメントを紹介してくれた。

「デジタル化している」7割強

筑波総研は同時に「デジタル化の取り組み状況」も調査した。それによると、デジタル化を進めている会社が7割強を占めたものの、依然としてアナログな業務が多いと回答した会社が3割弱あった。「デジタル化は従業員規模が大きい会社ほど進んでいる。だが、その経費の負担や担当人材の不足が課題になっている」と言う。

デジタル化の内容については、「インターネットバンキング」が一番多く(全産業で79.5%)、「給与管理ソフト」(同65.3%)、「紙書類の電子化・ペーパーレス化」(同44.2)の順だった。

中小こそAI活用のチャンス

全体の傾向について、山田氏は「従業員が多い会社ほど多くの項目で採用している割合が多い。今回調査項目に入れた生成AI(人工知能)は、中小企業向けのツールも存在しているため、従業員が少ない企業でもその活用が期待できる」と、中小企業こそビジネスに生成AIを活用するよう勧めている。(坂本栄)

子会社が不正アクセス被害 最大延べ1万5000人の個人情報漏えい 関彰商事

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関彰商事が発表したプレスリリース

関彰商事は10日、子会社で人材派遣会社のセキショウキャリアプラス(つくば市東新井)が第三者によるサーバー内部への不正アクセス被害を受け、ベトナム人やインド人最大延べ1万5559人と日本人最大延べ270人の個人情報の漏えいが判明したと発表した。現時点で漏えいしたデータの悪用は確認されていない。同社は国の個人情報保護委員会に被害を申告し、茨城県警に被害届を出した。

発表によると、9月10日、顧客から問い合わせがあり、セキショウキャリアプラスが一部の業務で使用しているサーバーから、顧客情報漏洩の疑いがあること分かり、即座に同サーバーを外部と遮断し運用を停止した。サーバーは、子会社でベトナム現地法人のセキショウベトナムが運用していた。

さらに対策チームを設置し、外部専門機関の協力を得て調べたところ、セキショウベトナムが運用しているサーバーが第三者による不正アクセスを受け、保管されていた個人情報を含む社内データが、今年5月から7月ごろの間に漏えいしていたことが10月6日に判明した。

漏えいしたデータは①セキショウキャリアプラスとセキショウベトナムが、ベトナムとインドで開催した就職支援イベントで参加登録したベトナム人とインド人最大延べ1万5535人の氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスと解読されない暗号化されたパスワードなど。②セキショウキャリアプラスが運営を受託し県内で2021年に開催された「副業・兼業meet UP in茨城」に参加登録した日本人延べ42人の氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスと解読されない暗号化されたパスワードなど。③ ①と②のイベントに出展した日本人とベトナム人の企業担当者最大延べ252人の氏名、メールアドレスと解読されない暗号化されたパスワードなど。いずれも銀行口座番号やクレジットカード番号は含まれていない。

同社はすでに対象者に個別に連絡し、安全性を高めるためパスワードを変更するよう依頼しているという。

再発防止策として同社は、サーバー及びアプリを最新バージョンで再構築した上で、セキュリティー監視ツールを整備し、不正侵入や新たな脆弱性を予防・検知するほか、定期的なアクセス、操作ログの分析と脆弱性診断を実施するとしている。さらに個人情報の適正な管理を徹底し、システム開発・運用に携わる従業員を対象にセキュリティ教育を強化し情報管理に関する意識向上を図るとしている。

同社は「お客様及び関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をお掛けし、深くお詫び申し上げます。セキショウグループでは本事案を重く受け止め、セキュリティ対策の徹底を図り再発防止に全力を尽くします」などとするコメントを発表した。

35人学級移行と高校審議会《竹林亭日乗》33

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山麓に朝霧が出た筑波山(写真は筆者)

【コラム・片岡英明】7月から「2027年~33年の高校のあり方」を議論する県の高校審議会が始まった。私たちは同審議会に要望を提出しているが、狭い既定路線を進むのでなく、充実した議論と子どもたちに希望を与える答申が出ることを期待している。

今期の高校審の主要な論点は3つあると考える。これらについて、県の大方針である「県民が日本一幸せな県」の実現に向けて深めてほしい。

⑴ 前回答申を基に作成された高校改革プランの実施状況の点検と評価

⑵ 生徒減に合わせた県立高の魅力アップと地域に必要な学校づくりの提起

⑶ 生徒が増えているつくばエリアの高校不足への事実に基づいた議論と対策

26年から中学は35人学級に

もうひとつ、議論を期待するテーマがある。それは27年~33年で必ず課題となる高校35人学級である。

5月に県は26年度から中学1年にも35人学級を実施し、順次広げると発表した。これにより、教室にゆとりが生まれ、教職員の多忙化が少し軽減される。すでに、秋田県では2001年から30人学級が始まり、山梨県でも21年から25人学級が始まっている。生徒の個性を伸ばす少人数学級への期待は大きい。

一方、市立中学と同時に、県内13校の県立中学も今までの男女別募集枠が廃止された上、35人学級となる。つくば市内の並木中等は4学級160人募集が140人に20人減。つくばエリアの水海道一高付属中も40人→35人。土浦一高付属中は2学級80人→70人、下妻一高付属中も40人→35人などとなる。

県立高不足のつくばでは、県立中学進学は高校受験のバイパスの側面があるので、ここが絞られると一段と進路選択が厳しくなる。県には泣き面に蜂のような定員削減ばかりでなく、竹園高校の学級増や県立高新設などの抜本的定員増を求めたい。

29年から県立高も35人学級?

26年入学の県立中1年生が高校に進む29年には、県立高の35人学級が当然テーマになる。国が方針を決めていないので県は先走りしないと言うかもしれないが、審議会ではぜひ議論してほしい。

25年の県立高募集枠は432学級である。40人学級が35人学級になると、ここで生徒減の2160人を吸収することになり、審議会の生徒減対策の基本に関わってくる。

それに伴って、県立高不足に悩むつくばエリアではもっと深刻な問題が発生する。現在、つくばエリアの県立高は58学級。これが35人学級となると、さらに290人の募集定員減となる。これは35人学級の8学級分であり、高校1校分の定員削減になる。

昨年、県は定員見込み試算を発表した。私たちの会が同一資料で計算すると、つくばエリアは14学級不足だった。これに加えて、審議会資料では24年~33年のエリア生徒数は382人増。それに見合う必要学級数は7学級になる。さらに35人学級を実施すれば、新たな学級不足が8学級上乗せとなるのである。

高校審議会は、以上のような点を視野に入れて十分な議論を行ってほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

外国語を翻訳し即時に字幕表示 つくば市役所窓口に導入

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つくば市役所1階の窓口に設置されている透明なアクリル板に貼り付けられた「字幕表示システム」。市職員が日本語で「マイナンバーカードをお持ちですか」と訪ねると、外国語の字幕と、マイナンバーカードの図が表示される

音声をリアルタイムで字幕表示する「字幕表示システム」がつくば市役所の窓口に導入された。外国語を即時に翻訳して字幕で表示するほか、耳が不自由な障害者や、会話が聞き取りにくい高齢者なども字幕スクリーンを介して日本語でやりとりできる。外国人や障害者などと、より円滑なコミュニケーションを図る目的で導入した。

市役所1階 市民窓口課の八つある窓口の一つに1台設置された。透明なアクリル板に、縦18センチ×横30センチの透明なスクリーンが貼り付けられ、マイクに向かってしゃべると、スクリーンのそれぞれの面に、双方の言語に合わせて、日本語や外国語の文字が表示される。134の言語に対応できる。価格は月額3万円のリース。

聴覚障害者などはキーボードを打ちながらやりとりしたり、会話を聞き取ることが難しい高齢者などは、字幕を確認しながら会話できる。

スクリーン上には、文字のほか、あらかじめ登録しておいた図や写真も表示される。同市では現在、マイナンバーカードや健康保険証の図、市役所の建物や駐車場の配置図、筑波山の写真などを登録している。

8月1日、つくば市が県内市町村で初めて導入した。現在は水戸市と鉾田市などでも導入されている。

市によると、これまで約2カ月間で外国人による利用が約10件あった。導入前は、英語なら複数の職員が対応できたが、英語以外の外国語はスマートフォンの翻訳機能を使って対応するなど時間がかかっていたという。

高校生が挑む舞台「百年の花火」や湖上朗読も 土浦まちなか演劇巡り

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実行委員会事務局の根岸佳奈子さん(右端)と、「百年の花火」に出演する吉田梨衣紗さん(中央右)、布施輝々さん(中央左)、「百年花火」脚本、演出の新堀浩司さん(左端)

18-19日 駅周辺の飲食店などが会場

土浦市内の店舗や寺社を会場とする演劇企画「つち浦々まちなか演劇めぐり2025」(同実行委員会主催)が18、19日の2日間、県内外から多彩な劇団が参加して催される。、土浦駅周辺の飲食店や寺院、博物館など計17カ所が会場となる。まちの各所で上演される演劇を巡りながら、演劇とまちの魅力を知ってもらおうとする企画で、今年で3回目の開催となる。昨年は神立駅周辺で開かれた。

今年は新たに、市内の個人商店を題材にした「つちうら商店街劇場」、霞ケ浦の遊覧船上で上演する「湖上ドラマリーディング」、県内高校生による舞台「百年の花火」などの新企画が登場する。

個人店の物語を演劇に

土浦市立博物館展示ホールで開かれる「つちうら商店街劇場」では、1933年開業の老舗「ムトウ削り節店」(同市川口)、昨年4月に開店した梶原自転車店(同市大手町)、築90年の古民家を活用する城藤茶店(同市中央)の3店舗を取り上げる。長崎市在住の劇作家・福田修司さんが各店を取材し、店主の歩みや店の歴史を元に脚本を執筆した。

土浦市真鍋の劇団「百景社」に所属する、実行委員会事務局の根岸佳奈子さん(38)は「つちうら商店街劇場」について「演劇を通じて、街を歩きながら土浦の歴史や人々の思いを感じてもらうというイベントの趣旨と合わせて、個人の歴史や物語を通じてさらに街の魅力を掘り下げる試み」だという。

「湖上ドラマリーディング」は、霞ケ浦の遊覧船「ラクスマリーナ ホワイトアリス号」の船上で朗読と中国伝統楽器・二胡の生演奏を楽しむ企画。根岸さんは「湖上から眺める土浦の景色は本当にかっこいい。天候に恵まれれば夕暮れ時に富士山のシルエットも見える。芝居と風景の両方を味わってほしい」と語る。

花火100周年題材に青春劇

もう一つの新企画として、県内高校生の有志が出演する舞台「百年の花火」が土浦市立博物館視聴覚ホールで上演される。土浦花火大会100周年を題材に、打ち上げを待つ2人の少女の心の揺れを描く会話劇だ。

出演するのは、神栖市在住で鉾田一高3年の布施輝々(るる)さん(17)と、小美玉市在住で大成女子高1年の吉田梨衣紗(りいさ)さん(15)。ともに演劇部に所属し、公募に応募し参加。週末の稽古を8月から重ねてきたという。

稽古に励む吉田梨衣紗さん(右)と布施輝々さん

布施さんは「クールなセリフの裏にある温かい思いや、感情の揺れを表現したい。花火大会は土浦の方々にとって特別なイベント。見る人の心に残る演技ができれば」と意気込む。吉田さんは「明るく元気な役柄。見る人に元気が伝わるように動きを工夫した。家族や友人を思う心情も伝えたい」と話す。

脚本を手がけた、鉾田一高演劇部コーチの新堀浩司さん(44)は「これから先も2人の関係を築いていこうとする少女たちの思いとともに、困難を乗り越え100年にわたり花火大会を支えてきた人々の思いを伝えたい。異なる環境で活動する高校生が力を合わせて舞台をつくる姿も見ていただけたら」と語った。

総合案内所で観劇コース提案

第1回から企画運営に携わる根岸さんは「世代を超えて演劇を通じてつながること、若い世代が土浦に関心を持つきっかけになれば」と今年の企画への思いを語り、「土浦には面白いところがたくさんある。外から来た人にも楽しんでもらいたい。赤ちゃんから楽しめる人形劇から文学作品を原作とした演劇まで幅広い内容。お気に入りの1本を見つけてほしい」と呼び掛ける。

亀城公園前の公園ビル1階「がばんクリエイティブルーム」に4日から設けられている「総合案内所」では、チケット販売のほか、観劇希望者の興味に応じたコース提案を行っている。根岸さんは「おすすめルートを一緒に考えながら、土浦の街歩きを楽しんでもらいたい」と語った。(柴田大輔)

◆「つち浦々まちなか演劇めぐり2025」は10月18日(土)・19日(日)、土浦駅周辺の店舗や寺社、土浦市博物館など17会場で開催される。チケットは、1日フリーパス券が一般3500円、18歳以下2000円。2日フリーパス券が一般6000円。「湖上ドラマリーディング」券は専用チケットが必要で4000円。

◆18日(土)、19日(日)の2日間、亀城公園では、毎月第3土曜日に駅前アルカス土浦で定期開催されている「あおぞらまるしぇ」が、各日午前10時から開催される。

◆総合案内所は、同市中央のがばんクリエイティブルームに設けられ、17日(金)までは正午から午後5時まで、18日(土)・19日(日)は午前10時から午後8時まで。

◆チケットの申し込み、イベントの詳細は公式ホームページへ。問い合わせは、つち浦々まちなか演劇めぐり実行委員会のメール(tsuchiuraura@gmail.com)または電話(029-896-3099)へ。

➡つち浦々まちなか演劇めぐりの過去記事はこちら(2023年1月1日付23年9月27日付24年10月5日付

県内作家8人がつくる「12分の1の世界」 つくばでミニチュア・ドールハウス展

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宮崎由香里さんの作品

実物の12分の1の世界を楽しむミニチュア・ドールハウス作品展「茨城ミニチュア・ドールハウス作家会 第2回展覧会」が7日から、つくば市吾妻、県つくば美術館で始まった。出展するのは、磁器、木材、樹脂粘土、編み物など、多彩な素材で独自の世界を表現する県内在住の8人の作家たち。計約35点が展示されている。2023年以来で、今回が第2回目の開催となる。会期は13日まで。

小さな人形のための家「ドールハウス」の起源は、1500年代のドイツにさかのぼる。その後ヨーロッパ各地で、貴族のコレクションや子ども用の教育玩具として用いられてきた。20世紀初頭にはイギリス王室で、女王に献上するためのドールハウス制作プロジェクトが発足。その中で、実物の12分の1サイズにすることが決められ、大きさのひとつの基準として現在に引き継がれている。

100年後も残せる作品を

カマチマリコさん

虫眼鏡でのぞき込むと、異なる表情で微笑みかける、頬を赤く染めた少女が見える。2センチほどの人形は、頭、腕、太もも、すね、手、足、それぞれ個別に型を取り、数回に分けて電気炉で焼き固めたものを組み合わせて作る。

作者はつくば市在住のカマチマリコさん。30年前に渡った米国で、焼き重ねた磁器を素材に作られた人形「ビスクドール」と出合った。当初は大きなサイズを作っていたが、人形が抱き抱える人形を作る中で、徐々に、小さな人形作りの魅力に引き込まれたという。「小さなものは、自分の気持ちが穏やかじゃないと仕上げることができない。制作作業は自分と向き合う時間」だと話す。これまでに、米国やドイツの人形コンクールで賞を受賞するなど、国内外で活動の場を広げてきた。現在、市内の自宅で月に4回、教室を開いている。「自信を持って、これが100年後にも残せると思えるものを作り続けたい」と思いを語る。

一番好きな場面を閉じ込める

宮崎由香里さん

宮崎由香里さんが作るのは色とりどりの花々だ。直径1センチにも満たないバラの花は、樹脂粘土を用いて作った一枚一枚の花びらを重ね合わせて作り上げる。1、2ミリほどのがくが集まる直径数ミリのアジサイも圧巻だ。花が飾られる部屋も内装から自作する。2002年ごろから独学で始めた。23年4月には2冊目となる作品集「ミニチュアローズBOOK」(グラフィック社)を刊行した。「つぼみから徐々に開いていって、最後に散っていく。その過程で自分が一番好きな場面をその場に閉じ込められるのが、一番の魅力」と語る。

時間の流れもとどめたい

河内和子さん

水戸市の河内和子さんは、実生活で使ってきた衣服や紙、使われなくなった小物などを利用して、自身の記憶の中にある「昭和」の風景を再現する。棚に置かれるレコードプレーヤー、壁にかかるアコースティックギター、テーブルの上には食べかけのショートケーキとメロンソーダが並んでいる。河内さんが青春時代を過ごした音楽喫茶の風景だ。作品作りのきっかけは、実家で営んでいた茶店を残そうとしたことだった。「過ごした時間の流れも、作品の中にとどめたい」と話す。

さらに小さな作品を

赤星友香さん

つくば市在住の赤星友香さんが作るのは、12分の1サイズでつくる編み物による作品だ。セーターや靴下、手袋、人形など、継ぎ目のない「シームレス」の作品を展示する。15個の引き出しがついた手のひらサイズのキャビネットには、空いた引き出しに爪先ほどの靴下やポシェット、人形などが収められている。子どもの頃から手芸が好きだったという赤星さん。普段は編み物を教えている。小さな作品作りには違った高い技術が必要になると言い、「今取り組んでいるのは、編み物で作るぬいぐるみ『あみぐるみ』。今あるのは元となる作品の6分の1。12分の1までできるよう、頑張りたい」と語る。

赤星さんは、「参加している作家の皆さんは、使う素材や製法、作品も、それぞれジャンルが異なっているので、小さい物が好きな方、 手仕事が好きな方だけでなく、いろいろなことに関心のある方に楽しんでいただける展示だと思う。ぜひ多彩な作品を見にお越しいただければ」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆「茨城ミニチュア・ドールハウス作家会 第2回展覧会」は7日(火)から13日(月)まで、つくば市吾妻2-8 県つくば美術館・第2展示室で開催。開館時間は午前9時30分から午後5時まで。最終日は午後3時まで。入場無料。問い合わせは茨城ミニチュア・ドールハウス作家会の公式サイトへ。

乳幼児も楽しめる舞台芸術 つくばでイタリア劇団が公演

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「日伊櫻の会」の多田亮彦さん

19日 カピオ

乳幼児も楽しめる舞台作品をつくり続けるイタリアの劇団「ラ・バラッカ」の公演が19日、つくばカピオホール(同市竹園)で開かれる。演目は、多様な家族の姿をユーモアを交えて観客に問いかける「ファミリエ」(上演時間40分)。午前は0歳から2歳、午後は3歳以上を対象とした2部制で上演される。

主催するのは、桜の植樹や芸術活動を通じてイタリアとの文化交流を進める「日伊櫻の会」(沢辺満智子代表)。同劇団によるつくばでの公演は昨年に続き2回目となる。

つくばカピオホールで催された昨年の公演の様子(多田亮彦さん提供 )

魔法のような時間

「以前は、小さな子どもが本当に演劇を楽しめるのか疑問もあった」と、主催団体理事の多田亮彦さん(46)は言う。

多田さんが初めてラ・バラッカの舞台を見たのは2019年。会の代表である妻の沢辺さんと、劇団の拠点であるイタリア・ボローニャ市を訪問した時だった。

ラ・バラッカは1976年、ボローニャで創設された劇団で、子どもを対象とした作品を50年近くつくり続けている。特に乳幼児向けの演劇分野で世界的に高い評価を得る。現在は地元自治体と協力し、教育現場に演劇を取り入れ、まちの中に劇場を整備するなど、日常的に子どもが演劇に触れる環境づくりを進めている。

多田さんらが劇場を訪ねて目にしたのが、演劇に夢中になる子どもたちと、子どもが手で触れられそうな距離で、全身を使って物語を表現する俳優たちだった。

「俳優の表情や仕草だけで十分伝わっていて、子どもたちの反応を引き出す魔法のような、幸せな時間だった。これを日本の子どもたちにも見せてあげたい」と感じた。

ボローニャは、世界最大の児童書の見本市が開かれることでも知られている。沢辺さんは現在、つくばで子ども向け書籍の出版会社を経営する。多田さんらの当初の訪問目的は、児童書の見本市を訪ねることだった。同時に、同市で活動するラ・バラッカを知り、「日伊櫻の会」が進める文化交流・創造事業への関心から劇団を訪ねたのが、劇団との出会いのきっかけとなった。

つくばカピオホールで催された昨年の公演の様子(多田亮彦さん提供 )

昨年つくばで上演されたのは、突然いなくなった仲良くしていた野良猫を、マンションの上下階の住民が一緒に探す物語。セリフはなく、体の動きや表情の変化で思いを伝える。

2歳以下の子どもたちは保護者と一緒に舞台上に座り、手が届きそうな距離で役者の動きを目の当たりにする。俳優は、子どもたちとアイコンタクトを取り表情を見ながら、ときに手を差し伸べつつ、物語を表現する。観客も物語の中に引きずり込まれるような感覚を味わえる。年齢を超えて誰もが演劇を楽しめる仕掛けがあるという。

「あれは何だろう、これは何だろうと、子どもたちの好奇心が喚起され、本当に芸術を楽しんでいるのが伝わってきた」と多田さん。来場した保護者からも「自分の子どもがこんなに集中して見るなんて思わなかった」「小さな子どもでも演劇が分かると気づいた」などの感想が寄せられた。

「人を生き返らせる力がある」

ラ・バラッカの演劇は、決して鑑賞者を子ども扱いしないのが特徴だと多田さんは言う。「大人が思い描く子ども像に合わせてつくられていない。作品を通じて作り手が『私はこう思うけど、あなたはどう思う?』と問いかけるような、平等な関係がそこにある。だから、大人も見て感じることがあるのだと思う」「演劇には、人を生き返らせる力がある。芸術は子どもだけでなく、大人たちにとっても生活に必要なものだと思う」と語る。

今後について「つくばで舞台芸術を子どもたちに提供していきたい。みんながそういう機会に触れられるように頑張っていきたいし、つくば市で一緒に取り組みを進めていけたら」と思いを述べる。(柴田大輔)

二つのワークショップ開催

◆「つくば世界こどもシアター2025 劇団ラ・バラッカ『ファミリエ』」は、10月19日(日)、つくば市竹園1-10-1 つくばカピオホールで開催。公演時間は、0歳から2歳までは午前10時30分から、上演時間は各40分。3歳以上は午後2時30分から。入場料は大人3000円、17歳以下1500円。

◆16~18日に二つのワークショップを開催する。①18歳以上を対象にしたワークショップを16日(木)と17日(金)いずれも午後4時から、つくば市吾妻1-10-1 つくばセンタービル・コリドイオ3階大会議室で開催する。参加費は2日間通しで5000円(学生2500円)②親子を対象とした演劇ワークショップを18日(土)午後2時30分から、つくばカピオ2階リハーサル室で開催する。参加費は3500円(親子2人分)。いずれも事前申し込み制。詳細はイベント公式サイトへ。劇団が訪日する10月中に市内の小学校や保育園での上演も企画している。

戦後80年 あるババアの繰り言《ハチドリ暮らし》54

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写真は筆者

【コラム・山口京子】

腹が減る 家は焼かれる 傷を負う 臭い汚い 痛い苦しい
餓死という戦死があった
帰って来ない兄さんの遺骨はどこでどうしているのか

原子爆弾が投下された
生きものがそんな殺されかたをしていいはずがない
人がそんな死にかたをしていいはずがない

1945年 日本敗戦
戦勝国によって裁かれ アメリカの思惑で戦犯が返り咲く
政治の中枢は連綿と 命の重さは今も赤紙一枚のほどか

1956年 もはや戦後でない アメリカンライフに憧れる
楽になること きれいに暮らすこと 物が増えること
忍び寄っていたコインの裏側は何だったのか

写真は筆者

もっと もっと もっと もっと もっと もっと
無制限に 無責任に作り 無責任に使い 無責任に捨てる
正気の沙汰でないことが どんどん積み上がる

マネーとパワーで化粧された言葉や数字たち
化粧を落としたら 一体どんな言葉や数字が現れるのか
肝心なことが表に出なく わけが分からなくなる

自分よりも自分を知っているデータが集められる
そして 人であることがなぎ倒される
これが普通になった罪深さ

(消費生活アドバイザー)

豪華!土浦花火弁当 7店が13種 販売開始 地元食材ふんだんに

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お披露目された今年の土浦花火弁当をPRする(左から)小林勉副市長、安藤真理子市長、中川喜久治土浦商工会議所会頭

11月1日開催の第94回土浦全国花火競技大会で販売される「土浦花火弁当」が6日、同市役所でお披露目された。土浦名産のレンコン、霞ケ浦のシラウオ、県産の常陸牛など地元の食材をふんだんに使い、趣向を凝らした各店オリジナルの弁当だ。今年は土浦とかすみがうら市の飲食店6店と土浦飲食店組合など7事業者が13種類を販売する。

弁当は、花火を打ち上げる筒をイメージした3段重ねの容器に入れられ、花火がデザインされた外箱を広げると、三つの容器を並べて食べられるようになっている。価格は2000円から7940円(消費税込)。今年も昨年と同じ1200個の注文を目指す。

中止の昨年「たくさんの応援いただいた」

昨年は前日に大会中止が発表され、各店は対応に追われた。市内の飲食店などでつくる土浦名物弁当事業者部会の嶋田玲子部会長は「昨年は残念ながら中止となったが、予約された方がキャンセルせずに購入してくれたり、市民が『大変だ』と心配してお店に直接電話してくれたりして、だいたい完売し、何とかなった。SNSを見て予約以上に購入があった店もあり、たくさんの応援の気持ちをいただいた」と振り返り、今年の花火弁当について「土浦のレンコン、霞ケ浦のつくだ煮など地元食材を生かした花火弁当を通して土浦をPRしたい」と話した。

土浦市食のまちづくり検討委員会の堀越雄二委員長は、今年100周年を迎える大会の歴史に触れ「気合を入れて、力を入れて、おいしい、見栄えのあるお弁当を作った。(各店は)大会に何らかの価値を付け、土浦の観光に協力したいという気持ちで参加している」などと話した。

安藤真理子市長らも花火弁当をPRした。安藤市長は「土浦の花火に行くと、こんな素晴らしいお弁当を食べられることを知っていただきたい」とし、土浦商工会議所の中川喜久治会頭は「料理をつくる人たちの腕で地域の素晴らしさを発信していただき、今年の大会を成功させて、次の百年に向けて地域のPRを頑張りたい」などと語った。

今年販売されるのは▽土浦の老舗料亭「霞月楼」(同市中央)による会席料理のエッセンスを凝縮した花火弁当や、8分ほどで炊き立ての温度になる具だくさん釜めし弁当。

霞月楼の「発熱容器 具だくさん釜めし弁当」(左)と「三段花火筒弁当 彩響」

▽弁当・ケータリング・会食の「さくらガーデン」(同市宍塚)による常陸牛のローストやレンコンの天ぷら、うなぎのひつまぶしなど地元の名物を取り入れた花火弁当と、ステーキ重。

さくらガーデンの「ステーキ重」(左)と「三段花火筒弁当 常陸牛のローストとレンコンのひつまぶし」

▽「鮨の旦兵衛」(大和町)による季節の食材や茨城の食材をふんだんに使ったちらし寿司など和食中心の花火弁当と、常陸牛をぜいたくに使い自家製の野菜の香りだれで香ばしく焼き上げた常陸牛香味焼き重。

鮨の旦兵衛の「謹製 花火弁当三段重」(左)と「常陸牛香味焼き重」

▽無農薬野菜や無添加食材のオーガニック料理「ダイニングムーン№385(ミヤコ)」(同市川口)によるタコライス、ハイローラーがメーンの地元野菜をふんだんに使った花火弁当と、タコライス弁当。

ダイニングムーン№385の「タコライスBENTO」(左)と「三段花火筒弁当 綾京」

▽創業109年の小松屋(土浦市大和町)による霞ケ浦のつくだ煮とうなぎを使用した国産うなぎ牛肉弁当と花火弁当うな丼、土浦名物づくし弁当。土浦名物づくり弁当はすでに予約完売という。

小松屋の「国産うなぎ牛肉弁当」(左)と「土浦全国花火競技大会100周年記念 土浦名物づくり弁当」

ほかに、▽天然うなぎ専門うなぎ村(かすみがうら市安食)が、霞ケ浦の天然うなぎやシラウオ、土浦のレンコンや新栗を使用した三段花火筒弁当を販売。▽土浦飲食店組合の福来軒(土浦市中央)が中華花火弁当を販売する。

◆土浦花火弁当は予約受付中。詳細は土浦市観光協会のホームページへ。注文は同ホームページから各店へ。当日の弁当引き渡し場所が変更になり、今年は土浦市田中3-4-5になる。詳しくは電話029-824-2810(同市観光協会)へ。

つくばアルボラーダ 世界大会出場へ 3人制バスケ

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3x3グランプリつくば2025でプレーする「つくばアルボラーダ」の藤原叶夢選手(中央)=アルボラーダ提供

11日から中国 杭州

つくば市を拠点に活動する3人制バスケットボール、3X3(スリー・エックス・スリー)男子の「つくばアルボラーダ」が11〜12日に中国・杭州で開催される国際大会「FIBA 3×3 ワールドツアー」(国際バスケットボール連盟主催)に出場する。世界大会の出場権を賭けた「3×3グランプリつくば2025」が9月6日つくばカピオで開催され、つくばアルボラーダが優勝し出場権を得た。

つくばアルボラーダは、アウトサイドからの攻撃を得意とし、戦術の遂行力が高いことが特徴。選手はU-18日本代表候補になった藤原叶夢(とむ)選手、中学生時代からチームに所属する増崎雄大選手、筑波大医学部出身で医療関係の仕事をしながらプレーする八幡原礼音選手、筑波大出身で教員の資格を持つ喜入大地選手などがいる。中国での戦いについて「格上のチームが相手なので苦戦が続くと思うが、自分たちの戦術がどれだけ続くか挑戦していきたい」と意気込みを語る。

大会で優勝した「アルボラーダ」の選手たち=同

筑波大出身者が設立

チームを運営する一般社団法人アルボラーダ(中祖嘉人代表)は、筑波大学体育専門学群出身でプロバスケットボールチームのアシスタントコーチを務めていた中祖さん(44)と、筑波大バスケットボール部選手だった吉村拓さん(39)が、選手の育成や普及を目指し2012年に設立した。

チームは男子トップチームの「つくばアルボラーダ」のほか、女子トップの「モーリスラクロア」、U-18男子、U-15男子と女子、U-12男子と女子があり、小中学生を対象としたスクールを開くなどの活動を続けている。現在、小学生から社会人まで約150人が所属する。

これまで男女とも日本代表選手を輩出している。谷田部地区出身の小澤峻選手はU-15時代からアルボラーダに所属し、アジアの男子得点王になった。現在はプロバスケットボールB3リーグの「しながわシティ」に所属する。女子の鶴見彩選手は埼玉県出身、5人制バスケの社会人チーム日立ハイテクで活躍し、現在女子トップチームのモーリスラクロアに所属する。

筑波山麓秋祭り」に協力

「認知度を上げたい」と話す理事の吉村拓さん

理事の吉村拓さん(39)は「今まで育成に力をいれてきたが、バスケットに夢中で、地域のことをあまり知らなかった。地域あってこそのチームなので、これからは地域を応援しながら認知度を上げていきたい」と話す。

手始めに10月下旬から始まる「筑波山麓秋祭り」に協力する。きっかけは、女子チーム「モーリスラクロア」が出場する女子の国内プロリーグが11月1日、同市北条の筑波総合体育館で開催することが決定したこと。同時期に山麓秋祭りが開催されることを知り、コラボ出来ないか検討した。秋祭りは、山麓のさまざまな場所で広範囲に開催されることから、アルボラーダが地区ごとに動画を撮影して秋祭りのPRに協力することになった。吉村さんはさらに月1回開催される秋祭りの打ち合わせ会議にも出席、地元と協力関係が芽生えている。(榎田智司)

県詩人協会理事長 柴原利継さん《ふるほんや見聞記》9

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柴原利継さん

【コラム・岡田富朗】茨城県詩人協会は2005年に創立され、会長の鈴木満さん(故人)、理事長の武子和幸さん、名誉会員の星野徹さん(故人)、瀬谷耕作さん(故人)、新川和江さん(故人)、粕谷栄市さん、山本十四尾さんと、会員130名での船出、今年7月で20周年を迎えました。現会長は髙山利三郎さんが務めており、会員数は約90名です。

現理事長の柴原利継さんが詩と出会ったのは、中学3年生のとき。詩人の大島邦行さんが桜中学校に赴任してきたことがきっかけでした。大島さんは水戸市出身で、星野さんの愛弟子。詩誌「白亜紀」の同人でもあり、日本現代詩人会、茨城県詩人協会の会員。詩集『海または音叉』(1979年、国文社)の著者でもあります。

柴原さんは2007年、塚本敏雄さん、福田恒昭さんと共に詩誌「GATE」を創刊。現在も発行しており、柴原さんの詩を読むことができます。同誌では毎号発刊時に読書会を開き、テーマを設けた競作を行っています。また、原稿段階での合評やゲストの招待、持ち回りによるエッセイの執筆なども柱としています。

塚本さんは、日本現代詩人会の前理事長であり、柴原さんとは幼稚園からの旧知の仲。共に大島さんに出会い、詩の世界へと導かれました。高校時代には、大島さん、塚本さんと3人で同人誌を発行していました。

元気をもらえるのは谷川俊太郎の詩

谷川俊太郎詩集 (1965年、思潮社、二十億光年の孤独 収録)

柴原さんは「詩が完成した時もうれしいが、詩を作る中でいろいろなことを考える時間が、何よりも貴重」だそうです。特に好きな詩人はとの質問には、「若い頃は、ちょっと斜に構えて世の中を見ていたので、渋沢孝輔さんのブラックユーモアに面白さを感じていました。でも、読んでいて元気や勇気をもらえるのは、やはり谷川俊太郎さんの詩ですね。『さすが』と思える詩がたくさんあります」と話してくれました。

さらに「谷川俊太郎の詩集の中で、1冊を挙げるなら」と聞くと、「やはり第一詩集『二十億光年の孤独』(1952年、創元社)ですね」と教えてくれました。

谷川俊太郎は2024年11月13日、92歳で逝去されました。1952年の『二十億光年の孤独』刊行以来、絵本を含めて何百冊もの著作を世に送り出してきました。25年6月6日には、朝日新聞連載の「どこからか言葉が」をまとめた詩集『今日は昨日のつづき どこからか言葉が』が出版されました。

この詩集には、谷川俊太郎が最後に残した「感謝」を含む47篇の詩が収録されています。「感謝」は逝去から4日後の朝日新聞に掲載されました。(ブックセンター・キャンパス店主)