日曜日, 12月 5, 2021
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2050年、食料リスクのない農業生産技術開発の方向性探る 筑波大など呼び掛け

2050年に向け、増加する世界人口を賄う農業生産技術はどの方向に進むべきなのかー。技術開発の方向性を探るオンラインシンポジウム「2050年、食料リスクのない豊かな社会を目指して」が、筑波大学(つくば市天王台)が代表機関を務める「作物サイバー強靭化コンソーシアム」の呼び掛けで22日、開催された。 プロジェクトマネージャーを務める同大生命環境系の大澤良教授は「2050年、世界人口は97億人に達し、現在の1.7倍の食料が必要とされる。これに対して代用食を検討する方向もあるが、多くの人は今程度の豊かな食生活の維持を望んでいるのではないか」とし、「食料生産に対する研究者としての我々の責任・方向性は、科学技術によって豊かな生活を保障することだと思う」と話した。 オンラインシンポジウムは内閣府のムーンショット型農林水産研究開発事業として開催された。同事業は、日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来の延長にない大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となり関係省庁が一体となって推進する制度だ。 農林水産研究分野では「2050年までに、未利用の生物機能のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」を目標に、2020年度から10の開発事業が始まっている。そのひとつが「サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現」だ。野生植物などが持つ生物機能を活用して環境適応力の高い作物を迅速かつ自在に開発できるように、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたサイバーフィジカルシステムを使い、目的に応じて作物を迅速にデザインしてリリースできる技術開発を目指している。 世界では増加する人口を賄うため農業利用が困難な条件にある土地での作付けや、気候変動による降水量の変化や温暖化ストレスにも耐える品種が求められている。しかし現在作付けられている品種は栽培化の過程で、環境の変化に適応する多くの機能を失ってしまっている。 劣悪な環境でも栽培できる強靭な作物の開発が急務だが、現在の育種には、その実現を阻む3つの問題がある。野生植物などの持つ強靭なストレス耐性を利用できていない、多数の遺伝子を一度に改良できない、目的に応じて作物を迅速にデザインできない。

動き出す次世代がん治療法「BNCT」 10年目のつくば国際戦略特区

つくば国際戦略総合特区事業の1つ、次世代がん治療法「BNCT」(ホウ素中性子捕捉療法)の開発実用化プロジェクトで、筑波大学と高エネルギー加速器研究機構は11月から、いばらき中性子医療研究センター(東海村白方)に設置した照射装置・実証機で非臨床試験を開始する。 同特区事業は2011年12月にスタートしており、プロジェクトは10年目にして、ようやく装置の薬事承認申請を行うために必要となる「治験」の前段階にたどりついた。iAc、ステラファーマ、日立製作所、千代田テクノル、NAT、新日本科学の関連各社が協力する。 コンパクトな加速器、安全性確保に腐心 BNCTは、がん細胞に選択的に集まる特性を有するホウ素薬剤をあらかじめ患者に投与し、中性子線を照射して、がん病巣を選択的に破壊する放射線治療。がん細胞内のホウ素は中性子と核反応を起こして、アルファ線などを発生する。発生した粒子は人間の体の中では10マイクロメートル(細胞1個分の大きさ)以下しか飛ばないため、ホウ素を取り込んだがん細胞だけが破壊され、正常細胞は温存されるという原理による。 難治性の頭頸部(とうけいぶ)がんや悪性脳腫瘍などの治療法として有力視され、長年研究されてきた。2011年3月以前は中性子の発生源に、東海村にあった実験用原子炉などが用いられたが、実用化に向けては病院にも設置できるよう、小型化と安全性が求められた。特区事業では加速器ベースの中性子源の導入が図られた。 リニアック(線形加速器)で陽子を加速し、標的にぶつけて中性子ビームを発生させる。設計の段階から開発に携わったのが、筑波大学陽子線医学利用研究センター、熊田博明准教授(医学医療系生命医科学域)だ。加速器を一式組み立ててから、非臨床試験に使える状態まで改良した装置は、つくば型BNCT用照射装置・実証機(iBNCT001)と名付けられた。

キログラム原器が重要文化財に 産総研の地下金庫で保管 つくば

つくば市の産業技術総合研究所(産総研、石村和彦理事長)の地下室金庫に保管されているキログラム原器が重要文化財に指定される。文化庁の文化審議会文化財分科会(島谷弘幸会長)が15日、文科大臣に産総研所有のキログラム原器と関連の原器類を、重要文化財「メートル条約並度量衡(どりょうこう)法関係原器」に追加指定することを答申した。 1kgの重さ130年間伝える 質量の単位「キログラム(kg)」は、メートル法にもとづく最も基本的な単位の一つ。この定義のために、メートル条約の理事機関であるパリの国際度量衡委員会は、1キログラムの具体的な質量を定める「国際キログラム原器」を1880年代に製作した。白金90%、イリジウム10%の合金でできている。日本にはNo. 6と番号付けされた原器が割り当てられ、1890(明治23)年に到着している。 以来、明治、大正、昭和、平成、令和の5つの時代にわたり約130年間、質量の基準としての役割を担い、日本の近代化および産業発展に貢献した。戦時下の1944(昭和19)年には、空襲から逃れるため、東京・銀座の中央度量衡検定所から石岡市の中央気象台柿岡地磁気観測所(現在の気象庁地磁気観測所)に疎開させるなど、原器は先人たちの英知とたゆまぬ努力によって受け継がれてきた。 それでも物体の形では質量の変動が避けられないため、キログラムの定義は2019年、普遍的な物理定数「プランク定数」にもとづく定義に改定された。産総研の研究チームも参加する、国際プロジェクトによる改定作業だった。これにより国際キログラム原器としての役割を終えたが、お役ご免ではない。引き続き、非常に優秀な分銅(ふんどう)として、我が国の質量標準の維持・管理に役割を果たすことになった。

ベンチャーのつくば×ものづくりの大田区 25日企業交流イベント

つくばのベンチャー企業と東京・大田区のものづくり企業が交流する「ミートアップ」が25日、つくば研究支援センター(つくば市千現、箕輪浩徳社長)で開かれる。両地域から医療・ヘルスケア機器開発に携わる計10社が参加し、対面とオンラインでプレゼンテーションを行う。Zoom(ズーム)配信で500人規模の聴講参加を見込んでおり、参加無料で事前登録を受け付けている。 オンラインで商機拡大 支援センターが今年度新設した事業企画「多地域との連携イベント」による第2弾。ものづくり「オンリーワン」の中小企業が集積する町として知られる大田区産業振興協会(川野正博理事長)との共催となる。傾斜のある道でも軽い力で直進できる車いす「COLORS(カラーズ)」を開発したカラーズ社の田尻久美子社長らが発表する。 つくば市側からは、▽車いす利用者(下肢機能障害者)の日常や訓練に「立ち上がる」力を提供する製品を開発、ことし筑波大学発ベンチャーに認定されたQolo(コロ)社の江口洋丞社長▽嚥下(えんげ、飲み込み)障害に対処するシステム開発を行っているPLIMES(プライムス)社の下柿元智也副社長▽人工知能による簡便・高速・高精度の睡眠計測を取り入れ睡眠医療の変革をめざすS’UIMIN(スイミン)社の藤原正明社長▽まぶしくない近赤外線カラー眼底カメラに生活習慣病の早期発見を可能にしたナノルクス社の祖父江基史社長▽外科用マイクロ手術支援ロボット開発にリニアモーター技術の応用を図るクロノファング社の渡邊浩司社長-の発表が予定されている。 支援センターには産総研や筑波大学などと培った異業種交流やビジネスマッチングのイベント実績があるが、ベンチャー支援部の石塚万里部長によれば、「つくばに増えてきたベンチャー企業は、扱う分野が多面的で、特定テーマだと少数企業でしか集まれなかった」という。共同研究や開発につながる協業関係を築くために、多地域連携が模索された。 6月に開催の第1弾では、「ライフサイエンス」をテーマに、川崎市(神奈川)の国際戦略拠点キングスカイフロント企業との交流が行われた。創薬・医療系のスタートアップ企業が機器や技術の「シーズ」をプレゼンした。「ミートアップ」は興味を持った企業が、名刺交換や懇親会など対面で距離を縮めるのが基本だが、コロナ禍からオンラインでの開催を余儀なくされた。

「伊能図」完成200年で企画展 19日から地図と測量の科学館 つくば

北海道から九州までの実測による初めての日本地図「大日本沿海輿地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)」(通称「伊能図」)が完成(1821年)して200年になることを記念し、国土地理院(つくば市北郷)は19日から「地図と測量の科学館」で企画展「“伊能図”近代地図の原点」を開催する。12月19日まで。 伊能忠敬は55歳の時(1800年)に蝦夷地(現在の北海道)の測量を開始し、1816年の第10次測量まで実施して、北海道から九州までの実測による日本地図を作成した。忠敬は1818年に亡くなったが地図作成は弟子たちによって引き継がれ、1821年に「伊能図」が完成し、幕府に献上された。 彎窠羅鍼(わんからしん)のレプリカ。国土地理院所蔵。方位を測定する器具で、杖先方位盤、小方位盤とも言う。測線の曲がり角で各地点の方位を測るのに使われた。杖の先に羅針盤を取り付けたもので、杖が傾いても羅針盤自体は常に水平が保てるようになっている。これは忠敬が改良したもので、伊能測量隊で最も役立った器具とされている=同 今回の企画展では、忠敬が行った測量の方法や功績、完成した伊能図、明治に入って伊能図がその後の地図作成にどのように影響したのかを、地理院収蔵の資料などを通して紹介する。当時の測量機器のレプリカ、伊能大図、中図、小図等の展示、伊能図から作成された明治時代の地図などだ。 国土地理院広報広聴室の會田美智雄さんは「今回は今年新たに存在が認められた伊能小図の副本とみられる実測輿地図(じっそくよちず)のレプリカを特別展示します。デジタル機材がない時代、長い歳月をかけ、徒歩で全国を測量した伊能忠敬の情熱に想いを馳せつつ、ご覧いただければ」と話している。(如月啓) ◆企画展「“伊能図”近代地図の原点~大日本沿海輿地全図完成二百年記念~」 19日(火)から12月19日(日)、つくば市北郷、国土地理院「地図と測量の科学館」2階特別展示室。開館時間や休館日、アクセスなどはウエブサイトに案内されている。

「はやぶさ2」帰還カプセル展示 10日からつくばエキスポセンター

小惑星探査機「はやぶさ2」帰還カプセル展示が10日から、つくばエキスポセンター(つくば市吾妻)で始まる。14日まで。展示されるのは、2020年12月に「はやぶさ2」が地球に持ち帰った、小惑星リュウグウで採取した砂や石などの調査サンプルを収容していたカプセル。 「はさぶさ2」は、地球の水や有機物の起源、生命誕生の秘密に迫ることを主な目的に、2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられた小惑星探査機。近地球型とよばれる小惑星「イトカワ」を探査し2010年に地球に帰還した「はやぶさ」の後継機にあたる。「はやぶさ2」が目指したのは、直径900mメートル小惑星リュウグウ。接近時、地球から約3億キロの距離にあった。 そこには太陽系が誕生したとされる約46億年前の水や有機物の痕跡が残るとされる。総飛行距離約52億4千万キロの末に持ち帰ったサンプルは、日本を中心とした14 カ国、109の大学と研究機関、269人が参加する国際チームで進められている。 展示会場には、金色の耐熱材が部分的に残る大気圏突入時の高温にも耐えたパーツや、大気圏を通過後に着地時の衝撃を和らげるためのパラシュートなどの実物が並ぶ。他に、一連のプロジェクトの詳細を解説したパネル展示、映像コーナーも設けられている。 充実したパネル展示=つくばエキスポセンター

子どもたちのための科学イラスト集 つくばで絵本原画展【秋アート’21④】

茨城県立医療大学(阿見町)の「アイラボキッズ」活動から生まれた絵本の原画による「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」が18日から、つくば市天久保のギャラリーYで始まる。同市在住で絵本作家をめざす島本真帆子さん(51)にとって初の個展となる。 科学の巨人、アルキメデス、ガリレオ・ガリレイ、マリー・キューリー、レントゲンらの肖像画をはじめ、動植物や医療器具などを丹念に描いたイラスト多数を展示する。島本さんが長年描きためた長女の成長を追う色鉛筆画のコーナーも設ける予定だ。 島本さんは、東京理科大卒の元薬剤師。「どういうわけか化学だけは得意だった」ため、親の勧めで薬学部に進んだが、薬局勤務は今一つ性に合わなかったそう。「数学と美術はいつも赤点ぎりぎりだった」のに、デザイン専門学校で学び直した経験もある。結婚後、娘が生まれ、その寝姿や仕草をスケッチしているうちに絵の上達に気づいた。 自宅をアトリエに、4コマ漫画を同人誌に投稿するなどしていたが、今は絵本作家としての自立を志す。「10冊ぐらいに出来上がったら出版社に持ち込もうと思っている」という絵本は、最近2年間、医療大学の「アイラボキッズ」活動の中から生まれた作品だ。 小学校に出前授業「アイラボキッズ」 同活動は、地域の小学生対象に医療と科学の体験教室の開催を意図し、20年度から医療大の地域貢献研究費の助成を受けて活動を開始した。大学内にあるシミュレーション教育実習室「あいらぼ」に子供たちを招き、科学実験や観察会を行う予定だったが、新型コロナ感染拡大の影響で、阿見町立君島小(秋山美穂校長)への出前授業としてスタートした。

写真で感じる科学の世界 産総研に特設サイト【秋アート’21②】

フォトグラファー伊藤之一さんが産業技術総合研究所(つくば市梅園)で撮影した写真による最新作「if-then」(青幻舎)を刊行したのを受け、産総研は特設サイト「来るべき明日のために」を公開、18日からはトナリエつくばスクエアキュート(つくば市吾妻)で写真展が始まる。 同サイトは8月27日に公開された。写真自体は産総研ならではの研究ではあるものの、どこの研究所・研究者や科学者以外の人にも共感してもらえる普遍的なサイトとなることを意識したという。 産総研によれば、「世界には多様な研究現場があり、研究に打ち込む研究者たちがいる。産総研は国内最大級の公的研究機関として様々な研究テーマに取り組んでいるが、今回は産総研という場で撮影された写真を通じて、科学の魅力を感じてもらうことを目指した」そうだ。 「キログラム」定義改定がきっかけ 写真のきっかけとなったのは、「キログラム」の国際的な定義が130年ぶりに改定された際の撮影依頼。日本国キログラム原器を管理してきた産総研では、新しい定義に則った1キログラムに相当する原子数のシリコン球を作成した。この撮影を依頼されたのが伊藤さんで、「その写真は科学という営みを人々に伝える映像について研究者が考えていた固定概念とは、異次元のものだった」という。原器から物理定数へ、2019年5月、新しい定義改定は施行された。

千年前、千葉県沿岸で巨大地震 歴史記録にない津波跡を発見 産総研

産業技術総合研究所(AIST、つくば市東)は3日、千葉県九十九里浜沿岸で歴史上知られていない津波の痕跡を発見し、それが房総半島沖で発生した巨大地震によるものであると発表した。活断層・火山研究部門の澤井祐紀上級主任研究員、行谷佑一主任研究員らが、カナダ・ サイモンフレザー大学ら複数の研究機関との共同研究で明らかにした。 かつて陸地と海の境にあり現在は陸化した「海岸低地」と呼ばれる地形の地下堆積物は、過去数千年間の環境変動を記録し、数百~数千年に一度という低頻度の巨大津波の履歴を調べるのに適している。 一方、地震計や精密な地形計測など近年の機器観測は小さな断層のずれまで測定できるが、それらの機器ができる以前の断層のずれ(地震)は観測することができない。さらに歴史記録は人がいた場所しか記録されず、今回のような1000年前は泥炭地だったところは記録に残っていなかった。 産総研はこれまでに、過去に発生した津波の痕跡を調べる地質調査を日本各地で行ってきた。今回、海岸低地だった千葉県九十九里浜地域での掘削調査により、過去の津波の痕跡である津波堆積物を2層発見し、古い方の津波堆積物(砂層B)は約1000年前に堆積した、歴史上知られていない津波の痕跡であることが分かった。 太平洋プレートが沈み込むタイプは記録なし

カワヒバリガイを早期発見、早期防除 農研機構が検出技術開発

農業用の水路や貯水池などの水利施設で大発生し、通水パイプなどを詰まらせるなどの問題を引き起こすカワヒバリガイを、農業・食品産業技術総合研究機構(NARO、つくば市観音台)は18日、侵入後間もない低密度な段階で検出する技術を開発したと発表した。NARO農業生態系管理研究領域の伊藤健二上級研究員と芝池博幸研究領域長による成果。 カワヒバリガイは中国・朝鮮半島が原産の固着性の二枚貝で、駆除の対象となる特定外来生物に指定されている。霞ケ浦では2005年に初めて確認され、18年には湖岸のほぼ全域に分布を広げた。 水利施設などの通水障害の原因になるほか、水利施設を経由し水系を超えた範囲まで分布を拡大させることから、密度が低く分布が限られた段階で駆除対策を実施する必要がある。だが、水面下に固着する貝を侵入初期の低密度の状態で、目視で発見するのは困難だった。 水を採取するだけ 伊藤上級研究員らは、カワヒバリガイのDNAを特異的に増幅する「プライマー対」(※メモ)を新たに開発し、コウロエンカワヒバリガイなどのカワヒバリガイに近縁な二枚貝の中から、カワヒバリガイ由来のDNAのみを高感度に検知することに成功した。 これにより、水利施設で表層水1リットルを採水してDNAを分析するだけで、カワヒバリガイの有無を確認することが可能になった。DNAは成貝のだけでなく、生まれてから10~20日の間、約0.1mm程度の大きさで水中を浮遊する幼生についても検出することができた。

抗原検査の感度を劇的に向上 簡易診断材料を開発 物材機構

物質・材料研究機構(NIMS、つくば市千現)は5日、新型コロナウイルスの簡易診断の感度を劇的に向上させる材料の開発に成功したと発表した。NIMS機能性材料研究拠点のグループリーダー、荏原充宏さんらとエジプト肝臓病センター(ELRIAH)の共同研究による成果。 いわゆるPCR検査は、遺伝子の特定領域を数百万から数十億倍に増幅させる反応で感染を検出する方法だが、一般に検査用の装置が高価なため、途上国などで簡便に検査を行うことができなかった。 PCR検査以外の検出方法もあるが、感染してからの日数、採取の仕方、用いる検査薬などの違いによるばらつきも大きいため偽陰性が出やすく、感度も60-70%程度と低いのが現状という。簡便で安価な方法である抗原検査(※メモ)を用いたいが、感度の悪さから抗原量の少ない陽性患者を見逃しがちなため、新型コロナの診断には使えなかった。特に抗原濃度が低い鼻腔や咽頭の拭い液を用いる場合は、検出感度の低さが障害となった。 そこで共同研究では、低濃度の抗原を、目視の抗原検査で陽性が判断できるレベルまで濃縮・精製することができる手法を開発した。荏原さんが長年研究してきた「スマートポリマー」と呼ばれる特殊な高分子材料を用いた。温度に応答して水への溶解性が劇的に変化する性質を有している。 スマートポリマーにコロナウイルスの抗体を結合させると複合体(Smart Cov)ができる。この材料は、温めると水に不溶化して沈殿する。これによって誤診断の要因となる余計な物質を取り除くと同時に、抗原を濃縮できるのだそう。 従来は1ミリリットル当たり500ピコグラムの抗原濃度を下回ると陽性・陰性を目視で判断するのが難しかったが、この濃縮技術により、同50ピコグラムという抗原濃度でも陽性ラインを目視できるレベルまで感度が向上した(1ピコは1兆分の1、ナノより1000分の1小さい)。「簡易抗原検査の感度を従来法に比べて約10倍に向上させる」技術といえるという。

夏休みだ!お勉強だ!クレオで科学実験 つくば駅前

21日、夏休みが始まった。この日早くも宿題の仕上げよろしく突貫工事に励んでいたのは物質・材料研究機構(NIMS、つくば市並木)の面々。22日からトナリエクレオ(つくば市吾妻)に特別展示を開始するのを前に、コーナーの飾り付けに汗だくで取り組んだ。 クレオは22日、開業第2弾として家電量販のケーズデンキ、百均のダイソーなどがオープンする。3階の一画にNIMS特別展示も名を連ねる(7月10日)。 25日までの4連休中、「リアル実験ショー」と銘打って、1日に5回の公開実験を行う。通常、浮遊状態で見せる超電導実験を「逆さにしても落ちない」ユニークなスタイルで行ったり、手の熱で氷を切るダイヤモンド切断ショーなどを準備している。各回10~15分程度。NIMS特製「元素バッジ」がもらえるクイズなども行う。 実験イベントは4日間限定だが、展示自体は夏休みいっぱい継続の予定。NIMSが開発した白色LED、ジェット機に使われる超合金などの先端材料を目にすることができる。 クレオを運営する日本エスコン側から「駅前につくばらしい雰囲気を持ってきてほしい」との要請があり、出展を決めた。NIMSがつくばセンター地区に展示施設を置くのは初めてで、秋以降の継続についてもエスコン側と協議する構えでいる。(相澤冬樹)

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つくばの市街地にイノシシ出没

つくば市の市街地にイノシシが出没している。11月初旬から12月初めに天久保4丁目、学園の森、天王台付近で相次いで目撃された。農村部ではイノシシによる農作物被害が大きな問題になっているが、街中でイノシシが目撃されるのは同市で初めてだ。市や警察は連日パトロールを実施している。現時点で被害の報告はない。 市鳥獣対策・森林保全室によると、11月4日、松塚と古来で目撃された。その後、7日に筑波大学近くの天久保4丁目の住宅地で目撃され、20日と21日には学園の森の商業施設周辺で目撃された。11月25日から12月4日には天王台で目撃された。 大きさなどは不明だ。これまで市内各所で目撃されたイノシシが同じ個体なのか、別の個体なのかなども分かっていない。 目撃場所付近では、市と警察などが巡回を続けているほか、学園の森付近では目撃場所近くにわなを設置している。3日までにまだ捕獲されていない。 「初期段階の対策重要」

やっかいな「完璧主義」《続・気軽にSOS》98

【コラム・浅井和幸】心理相談をしていて、頻繁に出てくる自己評価に「完璧主義」というものがあります。「自分が苦しいのは完璧主義だからです。それが悪いのは分かっているのですが、やめられないんです」という感じですね。 きっと元気なころは、完璧に仕上がるようにやり抜こうという強い意志で、様々な物事に対処してきたのでしょう。そして、それがうまく機能していた。しかし、そうそう完璧に物事をやり遂げられることが続くとは限りません。 そのうち、完璧じゃなくても物事を先に進めなければいけない場面に出くわすでしょう。それは、締め切りなのか、体力なのか、技術なのか、認識なのか―何かしら有限の壁にぶつかります。 何とかできる範囲で仕上げようと、適当なところで切り上げられればよいのですが、できないと心身ともに疲労が蓄積されていきます。その疲労のため、完璧にやり遂げようではなく、完璧にできないのであればやらないという考えや行動につながります。心身のストッパーが効いて、考えや行動ができなくなる状態です。 「なんとかなるさ」「適当に行こう」 それを、さらに無理して動いたり考えたり、完璧を目指すと、疲労は限界を超えます。過ぎた完璧主義は、オーバーワークになりやすいといえるでしょう。そうすると、心身にダメージを負い、適応障害やうつ病などの病を発症するかもしれません。

電子顕微鏡でミクロの世界体験 土浦一高で科学実験講座

県立土浦一高(中澤斉校長 生徒数911人)の産学連携科学実験講座が3日、土浦市真鍋の同高科学実験室で行われた。電子顕微鏡の日本電子(本社・東京都昭島市)の理科支援チームが走査型電子顕微鏡(SEM)を持ち込んで指導。生徒たちは3時間にわたる講義と実習で「ミクロの世界」に没頭した。 日本電子CEOの栗原権右衛門会長が同高OBという縁で、実現した電子顕微鏡体験の機会。昨年予定されていたがコロナ禍で中止となり、2年越しの開催となった。定期テストの最終日午後に組まれた日程で希望者を募り、付属中学校の生徒13人と高校1年生19人、2年生1人が参加した。 栗原会長自ら来校し、「岸田内閣は科学技術立国をいうが、それを支えるのは、人材と電子顕微鏡などの観測装置だ。こうした機会を増やし、若い人たちの間で進んでいるという理科離れに待ったをかけたい」と後輩たちの授業を見守った。 後輩たちに科学の志を説く栗原日本電子会長(右)=同 電子顕微鏡の構造や見え方についての講義を受けた後、生徒たちは顕微鏡写真を見比べるグループ、教室に持ち込まれた卓上型のSEMを操作して実地に観察するグループなどに分かれて、ミクロの世界を体験した。短い波長の電磁波で物体を観察する電子顕微鏡は単色の画像となるが、拡大・縮小したり、焦点深度を変えるだけで多彩な驚異の世界が展開する。 同高では生徒たちがチームを組んで行う探究学習活動があり、「マイクロプラスチック」を研究テーマにした1年生のチームは事前に霞ケ浦で採集した試料を濾紙(ろし)でこしとり、乾燥させて同社に送っていた。試料は検体となって実験室に持ち込まれた。

つくば駅前にチャレンジショップ2店オープン

つくば駅前の商業施設キュート1階とBiViつくば2階に3日、古着店と弁当店がそれぞれオープンした。市内での新規出店や創業を目指す若者を後押しする市のチャレンジショップ事業で、来年2月末まで期間限定で出店する。 自分に合うおしゃれをコーディネート 古着店 古着店は、筑波大学理工学群社会工学類2年の岡本萌実さん(20)が代表を務める「リリー・オブ・ザ・バレイ(Lily of the valley)」で、約90平方メートルの店舗に、ジーンズやジャケット、シャツ、スカート、ワンピースなど1着3000円から6000円の普段着約300点が並ぶ。中高生や大学生など若い世代がターゲットで、アクセサリーやバッグなどもある。 岡本さんは秋田県出身。服が好きで、高校1年の時から、自分が着ている服を写真に撮り、コーディネートのポイントと共にインスタグラムでほぼ毎日紹介してきた。大学に入ってからはアパレル会社から依頼を受け、はやりの服を紹介したり、コーディネートの相談に乗ったり、服を貸し借りする市内の大学生同士のLINEグループを立ち上げるなどしてきた。友人から服のコーディネートを頼まれることも多いという。 ファッションへの愛が高じ、着られてない服を次の持ち主に届けて服を循環させ、さらにファッションの相談に乗りながら、昨日よりちょっぴりおしゃれになれる場所をつくりたいと、市の事業に応募し出店した。