ホーム 科学

科学

「再認定」にらみ再始動 筑波山地域ジオパーク認定ガイド

【相澤冬樹】日本ジオパーク委員会(JGC)の「再認定」審査を控える筑波山地域ジオパークで、活動の中核を担う認定ジオガイドの今年度初会合が26日、つくば市役所で開かれた。2月に新陣容に切り替わったものの、新型コロナの影響から事業のスタートが切れずにいた。再始動後は技術研修やモデルコースの内容検討、ガイド組織の立ち上げなど盛りだくさんの事業を抱え、毎月会合を開催する「密」なスケジュールで臨むことになった。 会合には、ウェブ参加を含め約20人の認定ジオガイドが参加し、意見を交換した。同ジオパークは、石岡、笠間、つくば、桜川、土浦、かすみがうらの6市で推進協議会を構成するが、認定ガイドには6市以外からの参加者も含まれる。2月に初の更新があり、ガイドはそれまでの42人から57人に増強された。 ジオガイドは一定の研修を経て認定され、認定期間中(2年)は、同協議会主催のジオツアーに2回以上、フォローアップ・スキルアップ講座に2回以上参加することが継続の要件となっていた。 事務局のつくば市ジオパーク室は今回、この継続要件の撤廃を表明した。新型コロナの影響でジオツアーの開催が難しくなる一方、ガイド自身が推進役となりスキルアップ講座を運営するなど、より積極的な参加を求めたいとして、継続意思の表明を要件とした。新規のガイド募集を行う考えは当面ない。 スキルアップ講座は、リスクマネージメント(危機管理)、インタープリテーション(自然環境などの解説技能)、ユニバーサルデザイン(障害の有無や年齢、性別などにかかわらず、多くの人々が利用しやすいようデザインする考え方)に沿って、それぞれ研修プログラムを作成し、自ら実践する機会と位置付ける。 これらの研修を月1回のジオガイド会合に合わせ開催するともに、筑波山地域ジオパークで大きな課題となっているモデルコースの内容検討も進める。同ジオパークには現状、①筑波山は火山のようで火山じゃない②筑波・鶏足山塊で海洋プレートの動きを探れ!③海から川、そして湖へと姿を変えた霞ケ浦-など7つのジオストーリーを設定しているが、コース時間などを明示する具体的なモデルコース設定には至っていない。

新品種導入も推奨 イネ縞葉枯病対策で県

【山崎実】つくば市や筑西市など県南、県西の一部地域で発生が多くみられるイネ縞葉枯(しまはがれ)病対策として茨城県は、従来からの薬剤散布などによる防除対策に加え、水稲新品種の「にじのきらめき」や「ふくまるSL」などの抵抗性品種の導入を進めていく。 イネ縞葉枯病は、体長3~4ミリの害虫ヒメトビウンカに媒介されるウイルス病で、発病すると生育不良となり、イネが実らなくなって減収となる。 県は保毒虫率(ウイルスを持った虫の割合)5%以上を薬剤防除の目安にしている。県南、県西地域のつくば市や筑西市などで行った調査では、一部地域でいずれも5%を超え、次作でも多発可能性が高いことから、抜本的な対策が必要とされていた。 この問題は県議会第2回定例会でも議論に上り、県は①育苗期や生育期間中の薬剤散布②収穫後の田起こしや畝(うね)の雑草除去③抵抗性品種への転換ーの具体策を提示した。今後は防除対策が地域全体の取り組みとして行われるよう、薬剤散布や田起こし、雑草除去など複数の対策を組み合わせて行う従来の方法と、抵抗性品種への転換の2つの方法について効果を検証し、多発地域を指導していく考えを明らかにした。 特に抵抗性品種の導入は、栃木県や埼玉県で効果があったとされ、県も有効な被害軽減策と位置付けている。 農研機構が育成した「にじのきらめき」は「コシヒカリ」よりやや遅い収穫期の品種で、倒れにくく、収量も多い。縞葉枯病に抵抗性で、高温でもよく実り、コメの外観品質が良く「コシヒカリ」と同等のおいしさ。ブランド米に並ぶ食味と安定多収性で、外食・中食用途への利用が期待されている。

湖上スクール再開、霞ケ浦で救助訓練 新型コロナで2カ月遅れ

【鈴木宏子】子供たちが霞ケ浦の湖上に出て水環境について体験しながら学ぶ今年度の「霞ケ浦湖上体験スクール」が11日から始まったのを受けて、17日、土浦市川口の土浦港と霞ケ浦の湖上で落水者の救助訓練と船上火災消火訓練が実施された。 毎年4月に訓練を実施しているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大による学校の休校や外出自粛要請を受けて、3月から5月まで湖上スクールがすべてキャンセルとなっていた。学校が再開し湖上スクールが4カ月ぶりに再開したのを受けて、例年より2カ月遅れの訓練実施となった。 湖上スクールの指導員と、遊覧船を運航するラクスマリーナ社員のほか、県霞ケ浦環境科学センター職員、土浦市消防本部、土浦警察署の署員など計53人が参加した。 救助訓練は、土浦港から沖合約1キロの湖上で実施された。湖上スクールに参加していた小学生が船から湖に落ちたと想定。ラクスマリーナの社員が浮き輪を投げて落水者を引き上げ、スクール指導員がデッキで心肺蘇生をした。さらに通報を受けた土浦市消防本部の消防艇が駆け付け、救急隊員が船に乗り込んでAED(自動体外式除細動器)を使った心肺蘇生などを実施した。 続く火災訓練は土浦港で実施された。船のデッキに置かれたごみ箱から出火したと想定。船上のスクール指導員が子供たちを落ち着かせて風上に移動させ、別の指導員が消火器を使って初期消火をする訓練を実施した。さらに通報を受けて駆けつけた市の消防艇とポンプ車による消火訓練が実施された。 消防艇で船に乗り込み遊覧船のデッキで落水者の心肺蘇生訓練をする土浦市消防本部の救急隊員=同

【赤青白のサギの群れ】㊦ 「アマビエ」似? アオサギが街を飛ぶ

【相澤冬樹】鷺山のある桜川は、学園大橋下流から土浦市の中心市街地を抜けて霞ケ浦に注ぐ。サギ類は市民生活と隣り合わせで暮らす身近な鳥となってきた。それでも市街地上空を飛翔していくアオサギのいかつい姿にはなかなか慣れることができず、いつもぎょっとさせられる。 体長が1メートルほど、翼を広げると長さ150―170センチにもなる大型の鳥。後頭に黒い羽毛が伸長(冠羽)し、繋がるように眉状の黒い筋模様(眉斑)が入る。アオサギは桜川の鷺山には加わらず、周辺の里山で樹上生活をしているが、木の上にじっとたたずむシルエットが、疫病退散の妖怪として話題の「アマビエ」に似ているというものまでいる。 農研機構中央農業研究センター(つくば市)の研究員、益子美由希さん(34)を訪ねた。コロニー(集団繁殖地)を作って暮らすサギ類の生態に詳しい。茨城県内のサギについては筑波大学の生命環境科学研究科が1980年代から、コロニーやねぐらの分布を調査してきた。益子さんは学生時代の2008年から、その調査を引き継ぎ、大学院を経て今の研究生活に至るまで、調査を継続している。 調査対象にはアオサギも含まれており、県内での増加傾向を定量的にとらえた。「サギ類にかかわらず近年、大型の鳥類が個体数を増やす傾向にある。サギ類でみると、小型のアマサギ、コサギが減っているなかで、ダイサギ、アオサギに増加傾向が見られる」と自作のグラフを見せてくれた。 茨城県周辺でのコロニー性サギ類6種の推定個体数の変化=出典:Mashiko & Toquenaga (2013) Forktail...

【赤青白のサギの群れ】㊤ 繁殖の地、土浦・桜川にアカガシラ1羽きり

【相澤冬樹】新緑から深緑に向かう今の季節は、鳥たちの動きが活発になる。サギ類が大規模なコロニー(営巣地)を作ることで知られる土浦・桜川の大曲付近には、1000羽を超す各種のサギが集まって巣を作り、子育てを始めた。これを待ちかねたように「鷺山(さぎやま)」と呼ばれる営巣地のわきの学園大橋には、側道に数人の愛鳥写真家が陣取って、超望遠レンズの放列を敷く。カメラがこぞって狙うのはアカガシラサギという希少種だ。 河川敷のコロニーには5種のサギが集まってくる。一般に白サギとくくられるが体躯の大きい順にダイサギ、チュウサギ、コサギの別があり、冬場は白一色だが夏羽になると頭から胸、背中にかけて橙色(亜麻色)となるアマサギもいる。さらに暗灰色の羽毛を背負うゴイサギが混じっている。 ダイサギ、コサギは留鳥だが、チュウサギとアマサギは渡り鳥で、暖かくなるとフィリピンなどの越冬地から日本に渡り、「お彼岸からお彼岸まで」の間、営巣地を作って子育てをする。今の時期だと求愛活動や抱卵の姿も見られ、にぎやかになっている。ふ化から巣立ちまで、ひと夏を過ごす。 研究者によれば、県内には15~20カ所のコロニーがあり、土浦・桜川の鷺山は最大級の規模といえるそうだ。子供が生まれると個体数は2000羽から3000羽になるという。 ここに集まってくる愛鳥写真家は毎日5、6人。ほぼ同じ顔触れ。足繁く通う土浦市の荒井知行さん(76)によると「アングルが絶好。鳥は樹上にいるものだけど、ここなら見下ろすように撮れるのがいい」と学園大橋の側道に陣取る。 カメラの放列を敷く愛鳥写真家とサギの群れ=土浦・学園大橋

ナダレンジャーが動画で防災教室 ウェブ学習に活用を

【池田充雄】防災科学技術研究所(つくば市天王台)が子ども向けの教育用動画を制作、1日から同所のウェブサイトやYouTubeチャンネルで公開が始まった。新型コロナウイルスの影響で利用が広がるウェブ学習に教材を提供し、防災について広く一般に考えてもらう契機としている。 科学おもちゃで仕組みを紹介 動画は「Dr.(ドクター)ナダレンジャーの防災科学教室」と題する3本。同所の納口恭明博士(67)が地震の揺れ、液状化、雪崩という3つの現象を、手作りの科学おもちゃを使って分かりやすく説明している。例えば雪崩では、容器に水とプラスチックの細粒を入れたものを用意。容器を傾けると細粒が雪崩の動きを再現し、大規模な雪崩ほど速く襲来することなども確認できる。 想定対象は小学4年生~中学3年生。理科や社会科の学習内容とリンクさせたが、大人が見ても興味深い。おもちゃの材料にはペットボトルなど身近にあるものを主に使い、家庭で作って遊びながら理科の実験ができる。放映時間はいずれも6~8分程度。 子ども向け初公開

目立たないけど敏感 コケ、菌類など県版レッドデータブック刊行

【山崎実】県生物多様性センター(県自然環境課)は、県内のコケ植物など蘚苔類(せんたいるい)、菌類などに関する初のレッドデータブック「茨城における絶滅のおそれのある野生生物ー蘚苔類・藻類・地衣類・菌類編」を刊行した。 いずれも目立たない生物だが、大気汚染、水質汚濁など生育環境の変化に敏感で、環境指標生物として重要な役割を果たしているのがこの種の特徴。 生息地が湿地や河川、林地、海洋などの限られた環境にあり、開発、乱獲、地球温暖化などから生息域が減少し、近年では多くの種が絶滅の危機に瀕(ひん)しているという。 1割が絶滅の恐れ 今回の刊行では、県内に生息しているとされる蘚苔類、藻類、地衣類、菌類約2000種のうち約1割の計199種を絶滅のおそれがあるとして選定した。5つのカテゴリー別では「絶滅」が5種、「絶滅危惧Ⅰ類」が75種、「同Ⅱ類」が37種、「準絶滅危惧」が63種、「その他(情報不足)」が19種。 分類別では、199種のうち蘚苔類が48種、藻類の海藻類が36種、淡水藻類が24種、地衣類が37種、菌類が54種。

医療相談アプリの無償提供 県下全域で9月まで 新型コロナ

【相澤冬樹】新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅・遠隔医療のAGREE(アグリー、本社・つくば市、伊藤俊一郎社長)が提供してきたスマートフォンアプリ、LEBER(リーバー)の無償サービスが、県内120万世帯を対象に9月30日まで行われることになった。8日、県と連名で発表した。 不安解消と受診抑制に効果 LEBERは、スマホを操作して医師と相談するアプリで、2018年1月にリリースされた。登録ユーザーはスマホ画面を通じたチャットスタイルの自動問診に答え、「痛い」「かゆい」などの症状を伝える。これを見た医師から最速1分、30分以内の返信で回答が届く仕組み。24時間365日相談できる。 無料になるのは通常、月額550円(税込み)がかかる家族向け利用料金。登録者本人のほか家族4人まで何回でも利用できる。該当診療科の医師による回答は、病名を特定して診断をくだすものではなく、「感冒の疑いがあります」「インフルエンザの疑いがあります」などの表現で、病医院での診察や保健所への相談が促される。処方箋は出されず、市販薬のリストが写真付きで紹介される。 新型コロナの感染拡大を受け、AGREE社は2月から無料のサービス提供を全国規模で展開。2月以降新たに4000人以上が登録し、4月1日現在の登録者数は1万2700人に達した。医師の登録数も増やして、155人(診療科目45以上)、全国17万件以上の医療機関が検索可能となった。同社の利用者に対するアフターアンケートでは、不安の解消に十分に役立っていると見られる。 個人向けの無料相談は、内閣府の「近未来技術等社会実装事業」の実証実験に9月まで取り組まれるつくば市、常陸大宮市を除き、10日でサービスが終了することになっていた(4月2日付既報、その後、通常相談について5月10日まで無料期間を延長)。

【緊急寄稿】新型コロナウイルスとつくばスタイル

【吉田智美】桜の花も膨らむ春。筑波大学大学院に進学が決まり、新しい環境に心躍らせながら筆者はつくばを満喫しようと考えていた。しかし、新型コロナウイルスはそんな私の淡い期待を裏切り入学式は中止になってしまった。そのようななか、入学式前だが色々と用事があり何度かつくばに行ったが、朝の通勤時間でも閑散としているという印象は思ったほど受けなかった。 3月27日、東京都の小池百合子知事が「緊急事態宣言 瀬戸際の状態」という会見を行った。その後の週末も感染者数は過去最高を記録している。これはつくばでも対岸の火事ではない。それは、つくばが非常に東京都内にアクセスがよい場所であるからである。平常時においてはアクセスが良くメリットの多い場所だが、その反面、新型コロナウイルスに暴露しやすいとも言える。 冒頭に掲げた参考図から、東京都に接している神奈川県、埼玉県、千葉県は当然のこと、茨城県からも多くの人が東京で仕事をしていることがわかる。 人の動きというと、学生は授業が無くても春休み中の帰省、就職活動もある。卒業生旅行に行く者もいるだろう。また社会人も転勤の時期とも重なる。さらにつくばは研究機関が数多くあり、他県よりの来訪者もある。そういった人の動きはウイルスの移動につながるのである。 ここで、茨城県内で報告されている感染者についてみてみよう。県内では16例が報告されその16例目はつくば市在住と判明した。また、つくば市内においてもこれまでに集団感染しているとわかっている場所とは異なる場所での感染患者(孤発例)が報告=3月24日付け=されている。 茨城県でもテレワークによる在宅勤務と、混雑を避けるためのフレックスタイムの積極的活用の要請がでている=茨城県3月27日付け=が、孤発例が出ている以上、最も大事なのは既に自身が新型コロナウイルスを持っているかもしれないという自覚であろう。 つまり、集団感染している場所に行かなければ大丈夫なのではなく、我々が予想しない場所にも新型コロナウイルスは存在しているかもしれないと思って行動しなくてはならないということだ。さらに東京都の会見は、「ウイルスが存在するかもしれない」という状態を超えて、「きわめてウイルスが存在する可能性の高い地域」ということだ。そのような東京とのアクセスのよい場所がつくばなのである。 そうはいっても現実問題として全く人に会わず、人と会っても距離を取って会話するとかを守れるかというと、そうではない。 では、どうするべきか。従来から言われている感染の機会を減らす方法の実践に加え、少しでも風邪の症状(くしゃみ、鼻水、頭痛、発熱等)がほんのわずかでもあれば自宅から出ないことである。実は後者のほうが難しいのではないかと筆者は思う。感染拡大を招いているのはこういった「ちょっとのことだから」「自分が休んだら大変だ」という気持ちからなのではないだろうか。体調が悪いときは躊躇(ちゅうちょ)なく休む勇気も必要だ。 とはいうものの実際に症状がでたり、感染リスクの大きいところに行かなくてはならず不安だ、などの困りごとはでてくる。そのようなときはかかりつけ医に相談をするのがいいだろう。または無料で医師が相談を受けてくれるサービス=つくば市ホームページ=があるので、これらもうまく活用するのがよいだろう。 ウイルスは人が交易すれば、それに付随して動くもの。いま置かれている状況を理解し、正しく恐れ、冷静に対処するということが肝要である。(ヘルス・コミュニケーション・ファシリテーター) 【よしだ・ともみ】名古屋市出身、東京都在住。Health Communication Facilitator®(ヘルス・コミュニケーション・ファシリテーター)として、医療・健康に関連するあらゆるコミュニケーションの場における理解の促進や問題解決を助ける仕事をしている。経営学修士(MBA)、健康運動指導士など取得。4月から筑波大学大学院社会工学学位プログラム博士課程に進学。 ➡新型コロナウイルスの関連記事はこちら

気候変動で白濁するコメ 茨城大 回避策まとめ報告書

【相澤冬樹】茨城大学(水戸市文京)に昨年4月設置された県地域気候変動適応センター(横木裕宗センター長)がこのほど、研究成果を初めての報告書「茨城県における気候変動影響と適応策―水稲への影響」にまとめた。気候変動の影響は、稲作においては白濁した白未熟粒の増加など品質低下の形で全国的に顕在化しており、本県も例外ではない。コメの品質低下の回避に向け、中長期的な適応戦略を具体的に示した。 収量減ないが品質低下が顕在化 報告書は水稲への影響と適応策に焦点を絞った。最新の予測データや予想される気候の変化に適応し、持続的に生産を行うための考え方について、「一般向けのわかりやすい言葉で紹介した」という。執筆者には同大学、県と県農業総合センター関係者のほか、農研機構(つくば市)の研究者が名を連ねている。 報告書は気候変動への適応策の考え方と大学や県の動きを概説した上で、茨城県の水稲生産の現状と今後の影響予測について解説。今後極端な降水量が増加することや、気候のシミュレーションモデルとその補正方法によって、本県の気温上昇の予測値が日本全体と比べて高くなる可能性も示された。 実地の研究例として、JAつくば市谷田部「有機稲作研究部会」の取り組みが紹介された。土壌中の窒素量が白未熟粒発生率の低減に関与する傾向がみられ、平均地温が上昇すればするほど白未熟粒の合計割合が上昇する関係が見出されている。 県西・南部から優先対策を シミュレーションでは、近い将来にかけ、温暖化により水稲の収量が大きく減る地域は予測されないものの、白未熟粒の発生率は県西・南部から高くなっていく予測値が得られた。高温耐性品種や発生低減技術の導入といった適応策をこれらの地域から優先的に進めていく必要があるという。白未熟粒の発生を抑えるためには、10年に0.5度のスピードで気温上昇する想定に基づき、高温耐性品種を開発・導入すべきという指標を示している。 たとえば、県内で栽培される水稲は、品種構成が 「コシヒカリ」に大きく偏っていることで、収穫作業が短期間に集中することが問題となっていた。作業の集中により適期の収穫が困難となり、刈り遅れによる品質の低下を招いた。高温下でも品質が安定する早生品種 「ふくまる」など県育成の新品種の導入をはじめ、移植日の変更、スマート農業化などを提案。これら具体的な適応策ごとの時間・コスト・効果を踏まえて、中長期的な適応戦略を立て、生産者・行政・研究者・企業等が連携した取り組みを進めるべきだとまとめた。 センター長を務める同大学大学院理工学研究科の横木裕宗教授は、「大学として気候変動の適応策に関する様々な研究分野の研究の蓄積があったため、全国の地域気候変動適応センターの中でもいち早く報告書を出すことができた。水稲生産への影響予測は、農業県の茨城にあって最も関心が高い情報の一つだ。報告書が、各生産者における持続的な農業の見通しや自治体による支援策の一助となれば」と話している。 同センターは、茨城大学が事業者を務め、気候変動の影響予測の情報提供や自治体の気候変動適応計画の策定支援などを行う。2018年に制定・施行された気候変動適応法に基づき、全国で初めて大学を事業者とする地域気候変動適応センターとして昨年4月1日に設置された。 ▼データ版(PDFファイル)はこちら

取り組みの達成度は40% 筑波山地域ジオパーク「再認定」へ難所

【相澤冬樹】筑波山地域ジオパークの「再認定」に向けた作業が、険しい難所に差し掛かっている。直面する課題への取り組みについて、自己評価で達成度を計ったところ、総合評価で40%と合格ラインには程遠かった。特に地質保全については保全計画もなくゼロ評価、6市にまたがる運営体制の構築・強化など山積する課題を前に、勝負の年となる新年度を迎えようとしている。 保全と運営面に大きな課題 厳しい現状認識は、つくば市、土浦市、かすみがうら市、石岡市、笠間市、桜川市の6市からなる筑波山地域ジオパーク推進協議会(会長・五十嵐立青つくば市長)が17日開いた臨時総会で報告された。 日本ジオパークは全国に44地域が認定されているが、継続には4年に1度、日本ジオパーク委員会(JGC)の審査を受けなければならない。筑波山地域の審査は20年10~11月に予定されており、5月~9月にかけ審査員による現地審査、現況報告書の作成、新たなアクションプラン(2021~25年)の策定などが予定されている。 同地域は認定を受けた16年の段階で、JGCから13の課題が示されていて、うち9課題は概ね1~2年以内に解決すべき取り組みとされた。地質や景観の見どころとなるジオサイトのデータベース、解説板、ガイドブックの整備や地域振興部会、教育・学術部会の具体的活動での進展などが指摘された。 これらの対応を怠ると、再認定は条件付きとなり、2年後に再審査となる。条件付き再認定はいわゆる「イエローカード」扱い、再審査をパスできないと「レッドカード」となり、認定が取り消される。活動への理解や認識の低さを指摘され、17年に茨城県北ジオパークが取り消しとなった前例がある。 19年度は、全国で再審査の2地域を含む9地域が再認定審査を受け、初審査の7地域中、4地域にイエローカードが出された。この結果に、事務局は緊張感を募らせている。審査時にも提出する自己評価表で課題への対応を洗い出したところ、達成度を示す総合評価は40%にとどまった。再認定審査をパスした地域では66%に達していたことから、いっそうの取り組みが望まれた。 特にジオサイトの地質保全は手つかず状態、地域内にジオサイトは26あるが、個別診断の「カルテ」の作成は行われたものの、データベース化には至っていない。求められた保全計画が策定されていないことから、アクションプランのなかに位置づける考えでいる。 また、運営体制の強化も急がれる。現状、専任職員を置くのはつくば市とかすみがうら市だけで、専門知識を持つ人材を欠いている。つくば市で任期付き専門員の採用計画を進めているが、6市による体制構築のため協議会での専門員雇用も検討課題にあげた。これらは5月に予定する定例総会で、事業計画として決定する。 五十嵐市長は「課題は解決されなくても達成度を示すのが重要。多地域にまたがるジオパークは特に一体的取り組みがポイントになる。広域連携によってイエローカードでなくグリーンカードを目指して進んでいきたい」と協調をアピールした。

最先端の利用環境をつくばで提供 電子顕微鏡のシェアリング

【相澤冬樹】電子顕微鏡のシェアリングサービスというユニークな業態のベンチャー企業がつくばで動き出した。ANMIC(アンミック、井上佳寿恵社長)で、サービスは5月にも開始する。高額な電子顕微鏡を複数の企業でシェアしつつ、周辺機器を含む技術の刷新に人材育成を含めて対応する構えでいる。 会員制10社で5月スタート ANMICは、物質・材料研究機構(NIMS)で電子顕微鏡の運用支援に当たっていた井上社長が2019年8月に設立した。電子顕微鏡は半導体、セラミックス、金属のような無機物からプラスチックや生物組織のような有機物まで、電子ビームを当てて材料の微細な構造を観察出来る装置。ナノ(10億分の1)メートルより1ケタ小さい原子レベルまで観察できる分解能を有する。 今回の装置は、日本電子の電子顕微鏡「JEM-F200」。透過型電子顕微鏡(TEM)の高性能機で、最高加速電圧は200キロボルト、分解能と機能の拡張性に優れる。高速なカメラがついており、加熱した時に金属や半導体などが溶けたり、構造が変化する様子をリアルタイム(1秒間に300フレーム)で観察できるという。 同市千現のつくば研究支援センターの1室を新たに借り、レンタルリース会社所有の電子顕微鏡を借り受け運用する。装置の高さが3.5メートルにもなるため、天井高などを改装、据え付けを4月から開始し、機器の調整を経て、5月半ばにもサービスを開始したい考えでいる。 井上社長によれば、NIMSでは最新の電子顕微鏡を使えたが、開発要素を含まない試験や企業からの委託分析ができないなど使途に制限があった。1台が数億円する電子顕微鏡は高額な装置だが、運用にはさらに付属の機器やソフトウエアを使いこなす必要があり、技術の刷新に追いついていかないと1、2年で陳腐化する。 ANMICは、F200に材料解析のための4D-STEMなどのオプションを付加する予定で、それらがどういう原理で、どういうことが出来るのか、実際に解析できた事例などを大学の専門家らに講演してもらったり、メーカーやエンジニアなどに実演や技術講習をしてもらうことにしている。同型機を持つ企業でもシェアリングに参加することで、新たなソフトウエア導入に際し、使い勝手の検証や技術の習得に役立てることもできる。 サービスの利用は会員制。利用目的でプランを分け、メーカーや研究機関が研究開発用途で利用する場合はベーシックプラン(年会費370万円)、受託解析会社などがビジネス用途で利用する場合はビジネスプラン(同780万円)の料金設定が示されている。研究法人を含む10社程度で1台をシェアし、会員は1日単位で予約して装置を利用する。 井上社長「つくばにこだわりたい」 常総市出身で、東京家政学院筑波女子短大(現・筑波学院大学)の秘書課程で学んだ井上社長は結婚・育児後の復職に際し、つくば市の産総研での秘書業務に就き、NIMSに転じた。その経験と研究者らの後押しにより、ANMIC設立に至ったが、「起業場所としてつくばにこだわりたかった」という。常に最先端装置の利用環境を提供するため、今回を1号機として、2号機以降の展開も構想、その視野もつくばに置いている。

Most Read

《令和楽学ラボ》9 茨城の和紅茶づくり

【コラム・川上美智子】「古内(ふるうち)茶の紅茶ができたので1つ持っていってください」と、9月の茨城県議会の折に加藤明良議員から声をかけられました。水戸光圀(みつくに)が愛(め)でた古内の在来種の茶葉100%を原料にした紅茶は、きれいにパッケージされ、高安園の城里和紅茶と名付けられていました。 「昨年、この紅茶を銀座の茨城県アンテナショップ『Ibaraki Sense(イバラキ・センス)』に出品したところ、お客様から台湾の東方美人(オリエンタル・ビューティー)の香りがすると言われたんですよ」と、うれしい報告もありました。 東方美人は知る人ぞ知る最高級の赤烏龍(うーろん)茶です。100グラム〇万円もする高価なお茶で、現在ではなかなか手に入りません。今から25年前にその香りを分析する機会を得、マスカットのような独特の香りが、2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diol(2,6-ジメチル-3,7-オクタジエン-2,6-ジオール)と本物質が脱水したHotrienol(ホトリエノール)の2つの化合物に起因することを突き止めました。 また同時期に、マスカットフレーバーが特徴であると言われるインド・ダージリンのセカンドフラッシュの紅茶試料も手に入り、分析を行うことになりました。この紅茶も、他の紅茶に比較し2化合物の含有比が高いことがわかり、ダージリン紅茶の特有香になっていることを明らかにしました。 そして、赤烏龍茶とダージリン紅茶の共通点を調べているうちに、どちらもウンカ芽(昆虫のウンカの加害を受けた茶芽)を原料にしていることを突き止めました。学会で加害を受けて生成する化合物の発表をしたところ、海外の科学者たちは色めき立ち、最終的に中国の著名な茶の研究者が、2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diolは、加害を受けた茶芽がウンカの天敵の昆虫を呼び寄せるために作り出した化合物であることを明らかにしました。

土浦の学校を爆破予告 36校で警察と巡回点検へ

土浦市は28日、市内の小中高校、大学を29日爆破し、市役所を銃で襲撃するなどの予告が、28日午前0時過ぎ、市ホームページのお問い合わせフォームにあったと発表した。 市危機管理室によると、予告内容は「29日午後0時30分より、市内の小中学校、高校、大学を爆破し、その混乱に乗じて児童・生徒を数名誘拐する」、さらに「29日午後1時30分ごろに市役所を銃で襲撃する」など。併せてビットコインを要求しているという。 予告を受けて市は28日に土浦警察署に通報、さらに市内にある小中高校と特別養護学校、短大、大学の計36校に通知し状況を説明した。 予告日の29日は朝から、警察官が市内の各学校に行き、学校職員と共に校内や周辺の点検やパトロールを実施する。 さらに市役所は、正午から午後2時まで、各階の出入口を1カ所のみに制限し、入り口に警察官と市職員が立って警備する。 同市は「同様の予告は全国の自治体で確認され、これまで被害が実際に発生した報告はないが、市民の安全を第一に考え万全の体制で対応する」としている。

就職・進学への不安 新しい生活様式に生きる留学生 筑波大学

【竹田栄紀】新型コロナウイルスの感染拡大は、留学生の生活を一変させたといわれる。身近に頼れる人が少ない留学生は孤立してしまうことも多い。つくばには多くの外国人が暮らす。10月から秋学期が始まる筑波大学(つくば市天王台)で、留学生の生活の現状を探った。 アルバイト収入ゼロに 筑波大大学院生命科学研究科修士2年の中国人留学生、楊逸暉さん(27)は来日4年目。来年、日本の製薬会社に就職予定だ。新型コロナの影響で来日時から志望していた観光業の新卒採用が滞ってしまい、志望業種の変更を強いられた。 筑波大大学院修士課程で学ぶ楊逸暉さん 楊さんは「留学生の枠はもともと限られており、そこに新型コロナによる混乱、新卒採用見送りなどが重なって苦しい就職活動となった」と振り返る。

《邑から日本を見る》72 安倍政治を検証する(2) 私たちの暮らしとアベノミクス

【コラム・先﨑千尋】浜矩子(はま・のりこ)同志社大学教授が「アホノミクス」と揶揄(やゆ)したアベノミクスは、私たち国民に何をもたらしたのだろうか。私たちの暮らしは、安倍政権の7年8カ月で、それより前に比べてよくなったのだろうか。 そのことを検証するには数字を見ればわかる。8月31日の「東京新聞」が「数字で見る生活の変化」を出しているので、それからいくつかを引用する。 平均月給は横ばい、消費者物価指数は5%上がり、実質賃金指数は11%下がった。エンゲル係数は23.5%から26.9%に上がり、非正規労働者比率も2ポイント上がった。日経平均株価は1万円から2万3千円と2.3倍になり、年収1千万円以上の人が172万人から249万人と45%も増えた。企業の内部留保も273兆円から470兆円と1.7倍に増えている。 これらからわかることは、私たち庶民の暮らしは落ち込み、大企業や株に投資できる一部の人たちが潤った。国民が1年でつくる富の生産量は一定だから、富の分配の段階で格差が広がったことを示している。 安倍政権が打ち出したアベノミクスは、経済の好循環、財政再建と経済成長の両立を目指し、大胆な金融政策、機動的な財政政策、投資を喚起する成長戦略の3本の矢を柱とした。異次元の金融緩和の行きつくところはゼロ金利。そのことにより、地方銀行など金融機関の多くは本来の金融事業で赤字になり、頭を抱えこんでいる。 財政では、日銀の輪転機をフルに回し、国債を大量に発行し、それを日銀が抱え込む。国と地方が抱える借金残高は1100兆円を超え、政権の発足時から250兆円近く増えた。日銀が抱える国債の割合は13%から44%になってしまった。