日曜日, 11月 29, 2020
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次世代の窓 つくばの公共施設で実証実験 物材機構

【相澤冬樹】遮光/透明状態をスイッチで自由に切り替えられる「調光ガラス」の実用化に向けた実証実験が8日、つくば市内で始まった。省電力性・発色性に優れたエレクトロクロミック(EC)材料を開発した物質・材料研究機構(NIMS)が、同市の支援を受け行うもので、長期使用に対する動作安定性などを検証する。 実験が始まったのは、つくばスタートアップパーク(つくば市吾妻)コワーキングスペース東側の窓。青色と紫色のEC調光ガラス(1枚10×10センチ角)を1000枚以上、木枠に入れて既存の窓の内側に設置した。窓の脇にはスイッチデバイスも置かれ、来年3 月までの実証実験期間を通じて、施設利用者らに操作してもらい、要望に沿って切り替えの操作性などを改良する予定という。 調光ガラスは、カーテンやブラインドを必要としない次世代窓として注目されている。現在、ボーイング787などで使用されているが、消費電力や発色性の面で課題があり、オフィスや商業施設などへの普及には至っていない。 調光ガラスについて説明する樋口昌芳さん=NIMS NIMSでは、機能性材料研究拠点電子機能高分子グループ(樋口昌芳グループリーダー)を中心に材料研究が行われてきた。開発したEC材料「メタロ超分子ポリマー」は低消費電力で駆動し、発色性にも優れる。含まれる金属種を変えることで、青、緑、紫、黒など様々な色に変えることができるという。

東京への台風接近1.5倍に増加 気象研 過去40年のデータ分析

【相澤冬樹】東京など太平洋側の地域に接近する台風の増加が過去40年の観測データから明らかになった、と気象研究所(つくば市長峰)が25日報告した。接近する台風は強度がより強くなっていること、移動速度が遅くなっていることもわかったという。 25日付の発表論文について、同研究所応用気象研究部、山口宗彦主任研究官がオンライン記者会見で説明した。 太平洋側で軒並み増加 台風は、平均で1年間に約26個発生し、そのうち約11個が日本に接近(台風の中心が全国の観測地点から300キロ以内に入った場合)する。接近数が「体感的に増えている」と思われても、これまで地域別・都市別などでは定量化されたことがなかったため、1980年から2019年の過去40年分の観測データや気象解析データを詳細に調査した。80年は静止気象衛星ひまわりの運用が開始された年で、観測データの品質が均質で信頼できる期間について調べた。 その結果、東京で、期間の前半20年に比べて後半20年の接近数が約1.5倍となった(図1)のをはじめ、名古屋、高知など太平洋側の地域で軒並み増加傾向をみせた。 前半20年は南方の洋上にあった台風が後半20年間に押し上げられた格好だ。

桁違いの速さ ゲリラ豪雨をリアルタイムで予報 筑波大などが実証実験

【相澤冬樹】スーパーコンピューターによる「ゲリラ豪雨予測手法」を開発した理化学研究所、筑波大学などの研究グループが、これまでとは桁違いの速さでデータを更新し、わずか数分の間に急激に発達するゲリラ豪雨を予測できるシステムに高度化した。首都圏でのリアルタイム実証実験を25日から開始するのに合わせ、同日午後2時からスマートフォンアプリを公開する。 共同研究グループは、理研計算科学研究センターデータ同化研究チームの三好建正チームリーダーをはじめ、情報通信研究機構電磁波研究所、大阪大学大学院、エムティーアイ・ライフ事業部などからなり、筑波大学は計算科学研究センターから朴泰祐センター長が参加、同大学が東京大学情報基盤センターと千葉県柏市で運用するスーパーコンピューターOakforest-PACSを使って、30秒ごとの雨雲の詳細な観測データを処理するシステムを組んだ。 スーパーコンピューターを使ったシミュレーションに基づく現在の天気予報は、1キロより粗い解像度で、1時間ごとに新しい観測データを取り込んで更新されている。例えば、気象庁で運用されている局地モデルは、全国を対象に解像度2キロで1時間ごとに新しい観測データを取り込んでいる。しかし、ゲリラ豪雨は、わずか数分の間に積乱雲が発生し、急激に発達するため、現在の粗い解像度では、十分な予測が困難という。 研究グループは2013年に研究開発に着手。昨年運用を停止したスーパーコンピューター「京」とフェーズドアレイ気象レーダー(PAWR)を生かし、2016 年に「ゲリラ豪雨予測手法」を開発した。 今回、この手法を高度化し、さいたま市に設置されている最新鋭のマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MPPAWR)による雨雲の詳細な観測データと、スーパーコンピューターを用いリアルタイムデータを30 秒ごと取り込んで更新し、30分後まで予測する超高速降水予報システムを開発した。「京」の時代では、本来30秒以内に完了しなければならない計算に、約10分かかっており、30秒ごとに送られてくるデータを時間内に処理できず、リアルタイムに動作させることはできなかった。

「再認定」にらみ再始動 筑波山地域ジオパーク認定ガイド

【相澤冬樹】日本ジオパーク委員会(JGC)の「再認定」審査を控える筑波山地域ジオパークで、活動の中核を担う認定ジオガイドの今年度初会合が26日、つくば市役所で開かれた。2月に新陣容に切り替わったものの、新型コロナの影響から事業のスタートが切れずにいた。再始動後は技術研修やモデルコースの内容検討、ガイド組織の立ち上げなど盛りだくさんの事業を抱え、毎月会合を開催する「密」なスケジュールで臨むことになった。 会合には、ウェブ参加を含め約20人の認定ジオガイドが参加し、意見を交換した。同ジオパークは、石岡、笠間、つくば、桜川、土浦、かすみがうらの6市で推進協議会を構成するが、認定ガイドには6市以外からの参加者も含まれる。2月に初の更新があり、ガイドはそれまでの42人から57人に増強された。 ジオガイドは一定の研修を経て認定され、認定期間中(2年)は、同協議会主催のジオツアーに2回以上、フォローアップ・スキルアップ講座に2回以上参加することが継続の要件となっていた。 事務局のつくば市ジオパーク室は今回、この継続要件の撤廃を表明した。新型コロナの影響でジオツアーの開催が難しくなる一方、ガイド自身が推進役となりスキルアップ講座を運営するなど、より積極的な参加を求めたいとして、継続意思の表明を要件とした。新規のガイド募集を行う考えは当面ない。 スキルアップ講座は、リスクマネージメント(危機管理)、インタープリテーション(自然環境などの解説技能)、ユニバーサルデザイン(障害の有無や年齢、性別などにかかわらず、多くの人々が利用しやすいようデザインする考え方)に沿って、それぞれ研修プログラムを作成し、自ら実践する機会と位置付ける。 これらの研修を月1回のジオガイド会合に合わせ開催するともに、筑波山地域ジオパークで大きな課題となっているモデルコースの内容検討も進める。同ジオパークには現状、①筑波山は火山のようで火山じゃない②筑波・鶏足山塊で海洋プレートの動きを探れ!③海から川、そして湖へと姿を変えた霞ケ浦-など7つのジオストーリーを設定しているが、コース時間などを明示する具体的なモデルコース設定には至っていない。

新品種導入も推奨 イネ縞葉枯病対策で県

【山崎実】つくば市や筑西市など県南、県西の一部地域で発生が多くみられるイネ縞葉枯(しまはがれ)病対策として茨城県は、従来からの薬剤散布などによる防除対策に加え、水稲新品種の「にじのきらめき」や「ふくまるSL」などの抵抗性品種の導入を進めていく。 イネ縞葉枯病は、体長3~4ミリの害虫ヒメトビウンカに媒介されるウイルス病で、発病すると生育不良となり、イネが実らなくなって減収となる。 県は保毒虫率(ウイルスを持った虫の割合)5%以上を薬剤防除の目安にしている。県南、県西地域のつくば市や筑西市などで行った調査では、一部地域でいずれも5%を超え、次作でも多発可能性が高いことから、抜本的な対策が必要とされていた。 この問題は県議会第2回定例会でも議論に上り、県は①育苗期や生育期間中の薬剤散布②収穫後の田起こしや畝(うね)の雑草除去③抵抗性品種への転換ーの具体策を提示した。今後は防除対策が地域全体の取り組みとして行われるよう、薬剤散布や田起こし、雑草除去など複数の対策を組み合わせて行う従来の方法と、抵抗性品種への転換の2つの方法について効果を検証し、多発地域を指導していく考えを明らかにした。 特に抵抗性品種の導入は、栃木県や埼玉県で効果があったとされ、県も有効な被害軽減策と位置付けている。 農研機構が育成した「にじのきらめき」は「コシヒカリ」よりやや遅い収穫期の品種で、倒れにくく、収量も多い。縞葉枯病に抵抗性で、高温でもよく実り、コメの外観品質が良く「コシヒカリ」と同等のおいしさ。ブランド米に並ぶ食味と安定多収性で、外食・中食用途への利用が期待されている。

湖上スクール再開、霞ケ浦で救助訓練 新型コロナで2カ月遅れ

【鈴木宏子】子供たちが霞ケ浦の湖上に出て水環境について体験しながら学ぶ今年度の「霞ケ浦湖上体験スクール」が11日から始まったのを受けて、17日、土浦市川口の土浦港と霞ケ浦の湖上で落水者の救助訓練と船上火災消火訓練が実施された。 毎年4月に訓練を実施しているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大による学校の休校や外出自粛要請を受けて、3月から5月まで湖上スクールがすべてキャンセルとなっていた。学校が再開し湖上スクールが4カ月ぶりに再開したのを受けて、例年より2カ月遅れの訓練実施となった。 湖上スクールの指導員と、遊覧船を運航するラクスマリーナ社員のほか、県霞ケ浦環境科学センター職員、土浦市消防本部、土浦警察署の署員など計53人が参加した。 救助訓練は、土浦港から沖合約1キロの湖上で実施された。湖上スクールに参加していた小学生が船から湖に落ちたと想定。ラクスマリーナの社員が浮き輪を投げて落水者を引き上げ、スクール指導員がデッキで心肺蘇生をした。さらに通報を受けた土浦市消防本部の消防艇が駆け付け、救急隊員が船に乗り込んでAED(自動体外式除細動器)を使った心肺蘇生などを実施した。 続く火災訓練は土浦港で実施された。船のデッキに置かれたごみ箱から出火したと想定。船上のスクール指導員が子供たちを落ち着かせて風上に移動させ、別の指導員が消火器を使って初期消火をする訓練を実施した。さらに通報を受けて駆けつけた市の消防艇とポンプ車による消火訓練が実施された。 消防艇で船に乗り込み遊覧船のデッキで落水者の心肺蘇生訓練をする土浦市消防本部の救急隊員=同

【赤青白のサギの群れ】㊦ 「アマビエ」似? アオサギが街を飛ぶ

【相澤冬樹】鷺山のある桜川は、学園大橋下流から土浦市の中心市街地を抜けて霞ケ浦に注ぐ。サギ類は市民生活と隣り合わせで暮らす身近な鳥となってきた。それでも市街地上空を飛翔していくアオサギのいかつい姿にはなかなか慣れることができず、いつもぎょっとさせられる。 体長が1メートルほど、翼を広げると長さ150―170センチにもなる大型の鳥。後頭に黒い羽毛が伸長(冠羽)し、繋がるように眉状の黒い筋模様(眉斑)が入る。アオサギは桜川の鷺山には加わらず、周辺の里山で樹上生活をしているが、木の上にじっとたたずむシルエットが、疫病退散の妖怪として話題の「アマビエ」に似ているというものまでいる。 農研機構中央農業研究センター(つくば市)の研究員、益子美由希さん(34)を訪ねた。コロニー(集団繁殖地)を作って暮らすサギ類の生態に詳しい。茨城県内のサギについては筑波大学の生命環境科学研究科が1980年代から、コロニーやねぐらの分布を調査してきた。益子さんは学生時代の2008年から、その調査を引き継ぎ、大学院を経て今の研究生活に至るまで、調査を継続している。 調査対象にはアオサギも含まれており、県内での増加傾向を定量的にとらえた。「サギ類にかかわらず近年、大型の鳥類が個体数を増やす傾向にある。サギ類でみると、小型のアマサギ、コサギが減っているなかで、ダイサギ、アオサギに増加傾向が見られる」と自作のグラフを見せてくれた。 茨城県周辺でのコロニー性サギ類6種の推定個体数の変化=出典:Mashiko & Toquenaga (2013) Forktail...

【赤青白のサギの群れ】㊤ 繁殖の地、土浦・桜川にアカガシラ1羽きり

【相澤冬樹】新緑から深緑に向かう今の季節は、鳥たちの動きが活発になる。サギ類が大規模なコロニー(営巣地)を作ることで知られる土浦・桜川の大曲付近には、1000羽を超す各種のサギが集まって巣を作り、子育てを始めた。これを待ちかねたように「鷺山(さぎやま)」と呼ばれる営巣地のわきの学園大橋には、側道に数人の愛鳥写真家が陣取って、超望遠レンズの放列を敷く。カメラがこぞって狙うのはアカガシラサギという希少種だ。 河川敷のコロニーには5種のサギが集まってくる。一般に白サギとくくられるが体躯の大きい順にダイサギ、チュウサギ、コサギの別があり、冬場は白一色だが夏羽になると頭から胸、背中にかけて橙色(亜麻色)となるアマサギもいる。さらに暗灰色の羽毛を背負うゴイサギが混じっている。 ダイサギ、コサギは留鳥だが、チュウサギとアマサギは渡り鳥で、暖かくなるとフィリピンなどの越冬地から日本に渡り、「お彼岸からお彼岸まで」の間、営巣地を作って子育てをする。今の時期だと求愛活動や抱卵の姿も見られ、にぎやかになっている。ふ化から巣立ちまで、ひと夏を過ごす。 研究者によれば、県内には15~20カ所のコロニーがあり、土浦・桜川の鷺山は最大級の規模といえるそうだ。子供が生まれると個体数は2000羽から3000羽になるという。 ここに集まってくる愛鳥写真家は毎日5、6人。ほぼ同じ顔触れ。足繁く通う土浦市の荒井知行さん(76)によると「アングルが絶好。鳥は樹上にいるものだけど、ここなら見下ろすように撮れるのがいい」と学園大橋の側道に陣取る。 カメラの放列を敷く愛鳥写真家とサギの群れ=土浦・学園大橋

ナダレンジャーが動画で防災教室 ウェブ学習に活用を

【池田充雄】防災科学技術研究所(つくば市天王台)が子ども向けの教育用動画を制作、1日から同所のウェブサイトやYouTubeチャンネルで公開が始まった。新型コロナウイルスの影響で利用が広がるウェブ学習に教材を提供し、防災について広く一般に考えてもらう契機としている。 科学おもちゃで仕組みを紹介 動画は「Dr.(ドクター)ナダレンジャーの防災科学教室」と題する3本。同所の納口恭明博士(67)が地震の揺れ、液状化、雪崩という3つの現象を、手作りの科学おもちゃを使って分かりやすく説明している。例えば雪崩では、容器に水とプラスチックの細粒を入れたものを用意。容器を傾けると細粒が雪崩の動きを再現し、大規模な雪崩ほど速く襲来することなども確認できる。 想定対象は小学4年生~中学3年生。理科や社会科の学習内容とリンクさせたが、大人が見ても興味深い。おもちゃの材料にはペットボトルなど身近にあるものを主に使い、家庭で作って遊びながら理科の実験ができる。放映時間はいずれも6~8分程度。 子ども向け初公開

目立たないけど敏感 コケ、菌類など県版レッドデータブック刊行

【山崎実】県生物多様性センター(県自然環境課)は、県内のコケ植物など蘚苔類(せんたいるい)、菌類などに関する初のレッドデータブック「茨城における絶滅のおそれのある野生生物ー蘚苔類・藻類・地衣類・菌類編」を刊行した。 いずれも目立たない生物だが、大気汚染、水質汚濁など生育環境の変化に敏感で、環境指標生物として重要な役割を果たしているのがこの種の特徴。 生息地が湿地や河川、林地、海洋などの限られた環境にあり、開発、乱獲、地球温暖化などから生息域が減少し、近年では多くの種が絶滅の危機に瀕(ひん)しているという。 1割が絶滅の恐れ 今回の刊行では、県内に生息しているとされる蘚苔類、藻類、地衣類、菌類約2000種のうち約1割の計199種を絶滅のおそれがあるとして選定した。5つのカテゴリー別では「絶滅」が5種、「絶滅危惧Ⅰ類」が75種、「同Ⅱ類」が37種、「準絶滅危惧」が63種、「その他(情報不足)」が19種。 分類別では、199種のうち蘚苔類が48種、藻類の海藻類が36種、淡水藻類が24種、地衣類が37種、菌類が54種。

医療相談アプリの無償提供 県下全域で9月まで 新型コロナ

【相澤冬樹】新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅・遠隔医療のAGREE(アグリー、本社・つくば市、伊藤俊一郎社長)が提供してきたスマートフォンアプリ、LEBER(リーバー)の無償サービスが、県内120万世帯を対象に9月30日まで行われることになった。8日、県と連名で発表した。 不安解消と受診抑制に効果 LEBERは、スマホを操作して医師と相談するアプリで、2018年1月にリリースされた。登録ユーザーはスマホ画面を通じたチャットスタイルの自動問診に答え、「痛い」「かゆい」などの症状を伝える。これを見た医師から最速1分、30分以内の返信で回答が届く仕組み。24時間365日相談できる。 無料になるのは通常、月額550円(税込み)がかかる家族向け利用料金。登録者本人のほか家族4人まで何回でも利用できる。該当診療科の医師による回答は、病名を特定して診断をくだすものではなく、「感冒の疑いがあります」「インフルエンザの疑いがあります」などの表現で、病医院での診察や保健所への相談が促される。処方箋は出されず、市販薬のリストが写真付きで紹介される。 新型コロナの感染拡大を受け、AGREE社は2月から無料のサービス提供を全国規模で展開。2月以降新たに4000人以上が登録し、4月1日現在の登録者数は1万2700人に達した。医師の登録数も増やして、155人(診療科目45以上)、全国17万件以上の医療機関が検索可能となった。同社の利用者に対するアフターアンケートでは、不安の解消に十分に役立っていると見られる。 個人向けの無料相談は、内閣府の「近未来技術等社会実装事業」の実証実験に9月まで取り組まれるつくば市、常陸大宮市を除き、10日でサービスが終了することになっていた(4月2日付既報、その後、通常相談について5月10日まで無料期間を延長)。

【緊急寄稿】新型コロナウイルスとつくばスタイル

【吉田智美】桜の花も膨らむ春。筑波大学大学院に進学が決まり、新しい環境に心躍らせながら筆者はつくばを満喫しようと考えていた。しかし、新型コロナウイルスはそんな私の淡い期待を裏切り入学式は中止になってしまった。そのようななか、入学式前だが色々と用事があり何度かつくばに行ったが、朝の通勤時間でも閑散としているという印象は思ったほど受けなかった。 3月27日、東京都の小池百合子知事が「緊急事態宣言 瀬戸際の状態」という会見を行った。その後の週末も感染者数は過去最高を記録している。これはつくばでも対岸の火事ではない。それは、つくばが非常に東京都内にアクセスがよい場所であるからである。平常時においてはアクセスが良くメリットの多い場所だが、その反面、新型コロナウイルスに暴露しやすいとも言える。 冒頭に掲げた参考図から、東京都に接している神奈川県、埼玉県、千葉県は当然のこと、茨城県からも多くの人が東京で仕事をしていることがわかる。 人の動きというと、学生は授業が無くても春休み中の帰省、就職活動もある。卒業生旅行に行く者もいるだろう。また社会人も転勤の時期とも重なる。さらにつくばは研究機関が数多くあり、他県よりの来訪者もある。そういった人の動きはウイルスの移動につながるのである。 ここで、茨城県内で報告されている感染者についてみてみよう。県内では16例が報告されその16例目はつくば市在住と判明した。また、つくば市内においてもこれまでに集団感染しているとわかっている場所とは異なる場所での感染患者(孤発例)が報告=3月24日付け=されている。 茨城県でもテレワークによる在宅勤務と、混雑を避けるためのフレックスタイムの積極的活用の要請がでている=茨城県3月27日付け=が、孤発例が出ている以上、最も大事なのは既に自身が新型コロナウイルスを持っているかもしれないという自覚であろう。 つまり、集団感染している場所に行かなければ大丈夫なのではなく、我々が予想しない場所にも新型コロナウイルスは存在しているかもしれないと思って行動しなくてはならないということだ。さらに東京都の会見は、「ウイルスが存在するかもしれない」という状態を超えて、「きわめてウイルスが存在する可能性の高い地域」ということだ。そのような東京とのアクセスのよい場所がつくばなのである。 そうはいっても現実問題として全く人に会わず、人と会っても距離を取って会話するとかを守れるかというと、そうではない。 では、どうするべきか。従来から言われている感染の機会を減らす方法の実践に加え、少しでも風邪の症状(くしゃみ、鼻水、頭痛、発熱等)がほんのわずかでもあれば自宅から出ないことである。実は後者のほうが難しいのではないかと筆者は思う。感染拡大を招いているのはこういった「ちょっとのことだから」「自分が休んだら大変だ」という気持ちからなのではないだろうか。体調が悪いときは躊躇(ちゅうちょ)なく休む勇気も必要だ。 とはいうものの実際に症状がでたり、感染リスクの大きいところに行かなくてはならず不安だ、などの困りごとはでてくる。そのようなときはかかりつけ医に相談をするのがいいだろう。または無料で医師が相談を受けてくれるサービス=つくば市ホームページ=があるので、これらもうまく活用するのがよいだろう。 ウイルスは人が交易すれば、それに付随して動くもの。いま置かれている状況を理解し、正しく恐れ、冷静に対処するということが肝要である。(ヘルス・コミュニケーション・ファシリテーター) 【よしだ・ともみ】名古屋市出身、東京都在住。Health Communication Facilitator®(ヘルス・コミュニケーション・ファシリテーター)として、医療・健康に関連するあらゆるコミュニケーションの場における理解の促進や問題解決を助ける仕事をしている。経営学修士(MBA)、健康運動指導士など取得。4月から筑波大学大学院社会工学学位プログラム博士課程に進学。 ➡新型コロナウイルスの関連記事はこちら

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《霞月楼コレクション》11 リンドバーグ夫妻 土浦で名残りの一夜「人生最良の日々」

【池田充雄】1931(昭和6)年9月12日、リンドバーグ夫妻は、霞ケ浦を発つ前の最後の1日を土浦で過ごした。錦秋の筑波山をケーブルカーで登り、夜の土浦の街でそぞろ歩きも楽しんだ。午後6時30分に霞月楼に戻って入浴後、霞ケ浦海軍航空隊の松永寿雄副長主催による歓送会が松の間で開かれた。 霞月楼での歓送会の様子。中央にチャールズと松永副長、その右にアン。外国客向けに特注した高脚の膳が並ぶ 宴を待つ間、満寿子女将が夫妻に茶を立てており、当時10歳の恒二(後の霞月楼3代目)が迎えに行くと、アン夫人が歩み寄り、頬に優しくキスをしてくれたそうだ。芸者の白粉とは違う、初めて嗅ぐ香水は少年にとって忘れられない思い出になり、集まった記者団に感想を聞かれ「とてもいい匂いがした」と答えたという。 1カ月の長旅の末に霞ケ浦へ 霞月楼で歓送会を前にくつろぐ夫妻

《令和楽学ラボ》10 リンゴ狩に行こう 茨城は南限産地

【コラム・川上美智子】リンゴの生産量のランキングをみると、青森、長野、岩手、山形、福島などの市町村が上位を占め、100位以内に茨城の市町村は入っていません。平均気温10度前後の冷涼な気候を好むリンゴにとり、茨城は南限に位置するので、商業ベースに乗りにくいのであろうと思われます。 茨城では、大子町がリンゴの主産地として有名ですが、日立市、水戸市、石岡市、城里町などでもおいしいリンゴが生産され、観光リンゴ園では手軽にリンゴ狩を楽しむことができます。 リンゴの品種改良が世界一の日本では、本当に多くの品種が栽培されていますが、現在の品種の主流は、「ふじ」「つがる」「王林(おうりん)」「ジョナゴールド」です。子どものころに食べた「国光(こっこう)」や「紅玉(こうぎょく)」は、料理に使いたいと思ってもなかなか手に入れることができません。 先日、蜜が多いことで「幻のりんご」として人気上昇中の「高徳(こうとく)」を食する機会がありました。大子ではこのリンゴを木で完熟させ「奥久慈りんご」として販売しています。実は固めですが、リンゴ本来の甘い香りをもち、甘味も強く感じられました。 この甘い蜜の正体は、ソルビトールという糖アルコールです。リンゴは、葉で光合成の作用で作られたでんぷんをソルビトールに転換して、果実に転流(運ぶ)させる性質があります。運ばれたソルビトールは、果実の中でブドウ糖や果糖に変えられ細胞内に蓄積し、甘さを増して行きます。 完熟のころには、ブドウ糖や果糖が飽和状態になり、芯の部分にソルビトールが蜜となって残ります。そのため、葉がたくさんついた木ほど、蜜がよく入ると言われています。

《宍塚の里山》71 コロナ禍で野外活動参加者が急増

【コラム・及川ひろみ】新型コロナ感染がまた広がっている。春ごろから、秋~冬には再拡大が心配と言われていたが、いきなり起こった拡大。私たちの会の活動に参加している会員も濃厚接触者になり、近隣施設でも感染者が出たそうで、コロナ禍が身近に迫っている。今回は、里山で何が起こり、会はどのように対応したのか、まとめてみた。 3~6月、全国の小中高が休校になり、保育施設なども休園した。そのころから、里山にやって来る人が急増。散策、写生、釣りを楽しむ親子が増えた。と言っても程よい程度で、その姿から、日ごろ「ゆっくり」「のびのび」することに飢えている人が多いように感じた。 会の活動は野外が主で、「三密」を心配するようなことは少ない。しかしコロナ禍で、月例テーマ観察会などに参加する親子が急増し、危険な状態になった。そこで、参加希望者は会のホームページから申し込んでもらい、参加人数を制限した。その際、在学校をまんべんなく選び、初参加者を優先した。活動人数は、スタッフを含め40人ほどに抑えている。 収穫祭など大イベントは中止 「大池の魚の観察会」には250人以上の申し込みがあり、自然体験欲求が強いことを感じた。多田多恵子さんを講師に依頼した「実と種観察会」では、「植物のたくさんの秘密を、実物を見ながら学べるなんて、なんて幸せなんだろう」との感想も寄せられた。 今年は特に、「田んぼの学校」(年間を通して田んぼに関する親子の活動)も参加者が増えた。三密にならないように、田植え、稲刈り、かかし作りも複数回ずつ行った。参加する親子に、モノの本質を見て考えてもらう活動の大切さを感じた。

土浦・つくばなど8市町 不要不急の外出自粛、深夜営業自粛を要請

新型コロナウイルスの感染状況が県南部などで深刻化しているとして、大井川和彦知事は27日、土浦、つくばなど8市町を感染拡大市町とし、8市町の住民に対し12月13日まで不要不急の外出自粛を要請するほか、酒類を提供する飲食店などに夜10時以降の営業自粛を要請すると発表した。 8市町は、土浦、つくば市のほか、つくばみらい、牛久、取手、かすみがうら市、阿見、境町。 特に土浦、つくばみらい市、境町の3市町は、直近1週間の人口1万人当たりの新規感染者数が、土浦市4.27人、つくばみらい市5.88人、境町4.98人と、2.5人を大きく上回り、国の指標で、爆発的な感染拡大が起き医療提供体制が機能不全に陥ることを避けるための対応が必要な「ステージⅣ」に相当する状況だとした。 つくば市など5市町は、同1.5人を超え、国の指標で、感染者数が急増し医療提供体制に支障が出ることを避けるための対応が必要な「ステージⅢ」に相当するとした。5市町の同新規感染者数はつくば市2.30人、かすみがうら市1.98人、阿見町2.09人、牛久市2.48、取手市1.73人。 県全体でも直近1週間の新規感染者は人口1万人当たり1.04人となり、千葉県を上回った。新規感染者数が集中している県南が県全体を押し上げた形だ。11月以降の新規感染者の感染経路は、家庭内などが30%、職場が29%、会食が23%、他県で感染が13%。 病床稼働率は現在52%に上っている。冬場は心疾患などが増える傾向にある中、病床がひっ迫しているとした。一方、県南を中心に、コロナ患者用の病床を現在の316床(重症者用44床)から12月中旬までには416床(重症57床)に増やす。