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筑波大 病院 -検索結果

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「電話再診」低調 筑波大付属病院が積極利用呼び掛け 新型コロナ

【相澤冬樹】新型コロナウイルスによる院内感染のリスクが高まるなか、筑波大付属病院(つくば市天久保、原晃院長)が、再診患者を対象に電話での診察を呼びかけている。 厚生労働省の通知に基づき、同病院は3月4日から「電話再診」を始めた。慢性疾患に対する医薬品が必要な場合に、電話などによる診察と処方を行うもの。しかし、1カ月を経過しても低調な申し込みにとどまっていることから、いっそうの積極的利用を呼び掛けている。 面会も原則禁止 同病院は、高度医療を提供する県内唯一の特定機能病院。39診療科、800床を備える。地域の医療機関では対応の難しい患者を受け入れているが、外来患者や付き添いの家族らが新型ウイルスを持ち込むと医療崩壊にもつながりかねない。高度な医療を提供する機能維持のため電話再診を取り入れ、3月27日からは入院患者への面会も原則禁止した。 電話で診察する対象は、慢性疾患で経過観察中の容体が安定している患者ら。インターネットで申し込むと、予約時間に担当医から電話がかかってくる。問診後に薬の処方箋がかかりつけの薬局にファクス送信され、翌日以降に薬を受け取れる仕組み。再診料は次回の通院時に清算する。 県内では県立中央病院(笠間市)、牛久愛和病院(牛久市)、県立こども病院(水戸市)などが同様の取り組みを行っている。

筑波大付属病院 大幅減なぜ 来年度の臨床研修医マッチング

【山崎実】厚生労働省は、来年度から臨床研修を開始する臨床研修医のマッチング結果を発表した。茨城県分は、募集定員に対し166人を確保したものの、筑波大付属病院は募集定員92人に対しマッチ者数が54人と、前年度比19人の減。県医療人材課は、大幅な減に首をかしげており「減少した要因の精査、検討を急ぎたい」としている。 医師臨床研修マッチングは、臨床研修が義務化されたことに伴い、日本医師会や研修医を受け入れる病院などで構成する「医師臨床研修マッチング協議会」が、医学生と病院の研修プログラムを一定の規則(アルゴリズム)に従い、コンピュータで組み合わせを探り決定するシステム。 公表結果によると、茨城県は募集定員225人に対し、マッチ者数は166人で、充足率(募集定員に対する確保人数)は73.8%。 病院別の募集定員とマッチ者数は別表の通りだが、県内の参加20病院中、募集定員に達した病院は昨年度の5病院(水戸医療センター、土浦協同病院、筑波メディカルセンター病院、JAとりで総合医療センター、茨城西南医療センター病院)から、今回は水戸赤十字病院、県立中央病院、日立製作所ひたちなか総合病院、牛久愛和総合病院、総合守谷第一病院が加わり、計10病院に増加した。 全体のマッチ者数は前年比3人の減だが、県がショックを受けているのは筑波大付属病院の19人の減。県内最多の募集人員(92人)と確保人数(マッチ者数54人)をけん引しているだけに、危機感を隠さない。 県内の参加20病院で組織する県医師臨床研修連絡協議会と連携しながら、研修医のさらなる確保ー医療人材確保の底上げに取り組む方針だ。 茨城県の臨床研修医マッチ者数 医療機関名 2019年度 2018年度 マッチ者数の増減 募集定員 マッチ者数 募集定員 マッチ者数 水戸赤十字病院 4 4 4 0 4 水戸協同病院 10 9 10 7 2 水戸済生会総合病院 10 7 10 8 ▲1 水戸医療センター 8 8 9 9 ▲1 茨城県立中央病院 9 9 9 4 5 日立製作所日立総合病院 11 9 12 9 0 日立製作所ひたちなか総合病院 8 8 8 7 1 土浦協同病院 15 15 14 14 1 霞ケ浦医療センター 2 1 3 1 0 筑波記念病院 10 10 8 6 4 筑波大学付属病院 92 54 90 73 ▲19 筑波メディカルセンター病院 12 10 10 10 0 筑波学園病院 2 0 5 1 ▲1 東京医科大学茨城医療センター 8 4 10 4 0 牛久愛和総合病院 5 5 5 4 1 つくばセントラル病院 2 0 3 0 0 JAとりで総合医療センター 5 5 5 5 0 総合守谷第一病院 2 2 3 1 1 友愛記念病院 4 0 4 0 0 茨城西南医療センター病院 6 6 6 6 0 合計 225 166 228 169 ▲3 ※定員に空席がある病院は今後二次募集を実施する ➡臨床研修医の過去記事はこちら

筑波大附属病院を高度救急救命センターに指定 県内初

【山崎実】救急医療体制の整備、構築を進める茨城県は、筑波大学附属病院(つくば市天久保、原晃院長)をこのほど高度救命救急センターに指定した。県内で初めて。来年4月1日から24時間体制で稼働する。 国が定める高度救命救急センターの要件は、広範囲な熱傷、指肢切断、急性中毒など特殊疾患を含む重篤な救急患者に24時間体制で対応する、概ね20床以上の救急専門病床を有し、センター長は救急医療、教育に精通した救急指導医などとする、3年程度以上、救急の臨床経験のある専門医を確保しているーなど。同附属病院はこれらの条件をクリアしていることから、今年9月、県に指定願いを提案した。 茨城県の救急医療体制は、市町村が対応する休日夜間急患センター、在宅当番医などによる「初期救急」から、手術や入院治療を必要とする「第2次救急」(県内66施設)、さらには複数診療科にわたる重篤な救急患者に24時間体制で対応する「第3次救急」の救命救急センター(県内6病院)が整備されている。 筑波大付属病院の高度救命救急センターは、これら3次救急までの他の救命救急センターでは対応が困難な、国の基準に定める指肢切断や急性中毒など、特定疾患重篤患者のバックアップ体制の構築が最大の目的になる。 来年4月1日から稼働予定の高度救命救急センターは、運営病床が33床、同大附属病院の救急・集中治療科の井上貴昭部長がセンター長を務める。 県庁でこのほど、指定書交付式が行われ、大井川和彦知事は同センターの本格的な運営に期待を示した。 ➡筑波大附属病院に関する過去記事はこちら

認知症と男性更年期の早期発見 県内初2つの人間ドック、10月から筑波大病院

【相澤冬樹】筑波大学付属病院(つくば市天久保、原晃院長)が10月から、新しい人間ドック2コースをスタートさせる。軽度認知障害(MCI)の早期発見に特化した「認知機能ドック」と中高年男性の加齢に伴う心身の不調の改善を促す「男性健康ドック」で、ともに県内初、大学病院の診療体制や研究機能とも連携した全国的にも珍しい人間ドックということだ。 2つの人間ドックは、通常行われている基本コースに付加するオプションとして設けられる。それぞれ軽度認知障害と男性更年期障害の早期発見が目的。共に高齢社会にあって、早期介入による改善の手立てが望まれている医療分野だ。異常が発見された場合、大学病院の精神神経科、泌尿器科の医師らと連携することでスムーズに治療に移れるメリットを生かしての設置となった。 中年期から「認知機能ドック」 軽度認知障害は認知症の前段階に位置づけられる。認知症の原因物質とされる脳内物質の蓄積は、発症の20~30年前から生じるため、中年期からのケアが必要になる。物忘れの自覚があったり、自覚がなくても周囲から指摘があったりする人が対象で、脳ドックのMRI(磁気共鳴画像)検査に続けて判定を行う。脳の萎縮度合いを数値化しての判断や心理士による対面でのきめ細かい検査によって調べるという。 オプション料金としては3万円だが、基本コース(6万2000円)と脳ドック(4万円)の受診が必須なため、自治体等からの助成を見込んでも1回で10万円を超える負担になる。同病院によれば、毎週水曜日のみの開設で、今年度は毎回1人、来年度からは毎回2人で、最大年96人程度の利用を見込んでいる。(利用料金はすべて税別) 軽度認知障害であることが明らかになった場合、同病院で実施の「認知力アップデイケア」が紹介される。認知症予防研究から効果が科学的に検証された運動、食事、認知トレーニングなどのプログラムを選び、インストラクターのサポートなどで認知機能を維持・改善できるよう取り組むものだ。 更年期障害に備える「男性健康ドック」 一方、男性更年期障害は加齢やストレス、生活習慣の乱れから、男性ホルモンが低下して起こる。性欲減退や発汗・ほてり、不眠、集中力低下、イライラなどの症状を伴う。近年では男性ホルモンの低下は、メタボリックシンドロームや心血管疾患とも関連することがわかり、低下の早期発見が様々な疾患の予防につながる可能性も指摘されているそうだ。 男性更年期障害の診断には、血液中の「遊離テストステロン」という男性ホルモンの量を測定することなどが有効。必要な場合、男性ホルモン製剤の注射などの治療が行われる。費用は1万2000円で、前立腺がん健診(PSA測定、3000円)との同時受診が推奨されている。年間200人程度の利用を想定している。 同病院の人間ドックは、つくば予防医学研究センター(西山博之センター部長)が担う。開設から3年目で、今年度初めて受診者が1000人台に到達する見通しになった。大学病院の診療科医師2人がダブルチェックした上で、健診結果を判定する体制を整えている。2つのドックの受診者から得られた検査結果は解析を加え、今後の研究に活用していくという。 ➡筑波大学の関連記事はこちら

心肺蘇生のオンラインイベント開催 27日に筑波大医学生がカスミと

【山口和紀】心肺蘇生の方法を伝えるイベントが27日、つくば市天久保のスーパー、カスミ筑波大学店フリースペースで開催される。カラオケボックスではやりの曲に合わせて心肺蘇生をするイベントを開催している筑波大医学部5年の森陽愛子さん(2月7日付)が主催する。イベントはカスミの公式フェイスブックや同筑波大学店ツイッターなどでもライブ配信され「リアルとオンラインの融合企画」を目指す。 主催の森さんは以前から「大学生や社会人に楽しみながら心肺蘇生を学んで欲しい」とカラオケボックスで体験イベントを開催している。しかし、新型コロナウイルスの影響でボックスが使えなくなった。「医学生としての病院実習も緊急事態宣言の影響で自宅待機となっていて、何かできることはないか考えていた」と語る。 今回はリアルで企画を行いつつオンラインで配信することで人が密集しないよう工夫をした。企画は同店のフリースペースで開催されるが、ガラス張りなので外からも見学することができる。 当日は心肺蘇生に関するクイズを出したり、ペットボトルを使った心肺蘇生の体験などを行う。ペットボトルを使う体験は、家で配信を見ている人や店舗で見学をしている人にも参加してもらう仕掛けだ。実物大の模型を使った実演も行われる。 今回、カスミはただスペースを貸すだけでなく企画から配信の準備まで森さんをサポートするが、それにはきっかけがある。森さんは今年4月にカスミ広報誌「Cha-ble」で同社の小濵裕正会長と対談した。内容は森さんがコンテストで賞をもらった小論文「SDGsと企業」に関してだった。その中で小濵会長から「今度はカスミと一緒に何かやりましょう!」という声掛けがあったことが、今回のイベントに繋がった。 「コロナ禍にあって、カスミとお客様との関係性をもう一度見直す必要がある」と語るのはカスミの担当者だ。カスミではフリースペースなどを活用した地域の人々の交流イベントが次々に中止になっている。しかし、海外ではシェフが料理をライブ配信で紹介したり、経営者がライブ配信を行ったりするなどの取り組みが行われており、それが参考にされた。今回のイベントをオンラインで配信する目的の一つには、人々が容易に集まれない中で、地域が繋がっていくためのビジョンがあるという。

40代男性事務職員を懲戒解雇 筑波大 不正に病気休暇取得

診断書を偽造して不正に病気休暇を取得し、給与を不正に受給したとして筑波大学(つくば市天王台)は31日、同大学の40代男性事務職員を同日付けで懲戒解雇処分にしたと発表した。 大学によると、男性は2017年6月から19年7月までの間、へんとう炎や急性胃腸炎などを患っているという診断書計22通を偽造し、計107日と4時間30分の病気休暇と病気休職を不正に取得し、給与約190万円を不正に受給したとされる。 病気治療中のはずの男性職員を、別の職員がたまたま外出先で見掛け、診断書を出した病院に問い合わせたところ、偽造が発覚した。 男性は大学の調べに対し、偽造を認めて謝罪し、給与の不正受給分約190万円を返納したという。動機については「なぜこういうことをしたか分からない」などと話しているという。大学は、給与の不正受給分がすでに返納されているため刑事告訴は行わないとしている。 永田恭介学長は「本学職員がこのような事態を起こしたことは極めて遺憾。事態を真摯(しんし)に受け止め、国立大学法人職員としての社会的責任の重さを認識し、職員に対し意識の向上や再発防止に向けた啓発活動を行い、信頼の維持・向上に努めたい」などとするコメントを発表した。

4億円超調達しアプリ販売 筑波大出身医師、在宅・遠隔医療で切り込む

【相澤冬樹】医療相談アプリ「リーバー(LEBER)」を開発し、法人向けサービスに乗り出したアグリー(AGRIE、つくば市谷田部)社が3億円を目標にした資金調達で、今月末までに4億円超えを達成、売り上げ20億円を目指す戦略が整った。29日、つくばスタートアップパーク(同市吾妻)で開催のつくばイノベーション・リーダース・ミーティングの会合で、講演した伊藤俊一郎社長(40)自らが明らかにした。病院への外来と入院に大きく依存した現代日本の医療体制に、在宅・遠隔医療で切り込もうとする同社の有力な“メス”になりそうだ。 リーバーはスマホを操作して医師と相談するアプリ。ユーザーは「痛い」「かゆい」などの症状を伝え、必要に応じ写真などに撮って送付するチャットスタイルで、自動問診に答える。これを見た医師が最速3分で診断結果を伝え、最寄りの医療機関や適切な市販薬などをアドバイスする仕組み。24時間365日相談でき、110人以上の医師、45以上の診療科で対応するという。 同社ではこれまで、アプリ開発と共に実証実験を行ってきた。2018年の調査では、3052人の相談者中、77%が「不安が減った」と答え、医師による回答は88%が「分かりやすかった」とした。相談の結果、60%が「病院に行かずに済んだ」ということだ。 この結果から同社は、アプリの販売に乗り出すことを決め、まず法人向けサービスから着手、昨年から3億円を目標に資金調達に乗り出した。これまでに地元地銀のほか、東京の大手印刷会社、インターネット関連企業などが出資に応じ、今月末までに4億円を超えての達成見通しになった。 若いスマホ世代と子供たちターゲット 講演では、「病院に行くのが難しい高齢者はスマホが操作できないものが多い。どう対応するか」の質問があった。伊藤社長は「現段階では高齢者は想定していない。多種の治療薬を服用しているため、相談アプリでは合併症などが懸念される」と、主に若いスマホ世代とその子供たちの利用を想定しているという。 医療難民となりがちな高齢者に対しては、在宅医療の展開がカギになる。アグリー社などを束ねるメドアグリケアグループでは、県内外7拠点で訪問診療・看護、リハビリ、入院治療を行っている。伊藤社長は筑波大学出身の心臓外科医で、2015年6月につくばみらい市にメドアグリクリニックを開院。昨年12月にはかすみがうら市に有料老人ホームのアグリケアガーデンかすみがうらを開設するなどしている。 17年度にはつくば市の「つくばソサエティ(Society)5.0社会実装トライアル事業」に、18年度には内閣府「近未来技術等社会実装事業」に採択。医療系ベンチャーとして注目されている。「日本は病院数こそ世界一だが、医師数があまりに少なく、医師の過重労働や医療費の増大を招いている。病院依存の外来診療、入院治療と役割分担する第3、第4の医療が必要」が伊藤社長の持論。5年後には在宅医療と遠隔医療が大きなウエートを占めるだろうと予見し、起業や就労を待っている分野だと強調した。 つくばイノベーション・リーダース・ミーティングは、若者や学生などに「つくばの起業家と夢を語る」機会として設けるもので、29日の開催が第1回だった。次回開催は2月26日、筑波大学システム情報系、鈴木健嗣教授による「サイエンスの勝利」が予定されている。問い合わせは、つくばグローバル・イノベーション推進機構(電話029-869-8034)

【筑波大、26年ぶりの箱根路】㊤ 伝統校復活へ 私学に迫る強化策

【池田充雄】筑波大学陸上競技部が、来年1月2、3日に開かれる第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に、26年ぶり61回目の出場を決めた。筑波大の前身である東京高等師範学校は、箱根駅伝の創始者として知られる“いだてん”金栗四三の母校で、1920年の第1回大会の優勝校でもある。だが近年は私大勢に押され、四半世紀も出場が途絶えていた。名門復活はいかにして成し遂げられたのか。 大会100年の節目に復活 悲願が成就したのは10月26日の予選会。参加34校から各12人がハーフマラソンを走り、上位10人の合計タイムで競う。10位以内なら本選出場となるが、これに筑波大は6位というサプライズ。弘山勉監督は「チームを箱根に引き戻すことができた。100年目の大会での復活は感慨深い。監督という立場を超え、OBとして純粋にうれしい」と語る。 箱根駅伝への出場自体は94年の第70回大会以来だが、このときは記念大会として予選会11位まで出場枠が拡大された結果。自力で勝ち取った出場権となると、弘山監督が選手として走った89年の第65回大会にまでさかのぼる。 筑波大は2011年に「箱根駅伝復活プロジェクト」をスタート。15年に弘山監督を迎え、以来5年間で予選会の成績は毎年アップ、今回の快挙につながった。ライバルとなる私大各校とは資金力、選手力、練習量などで大きな差があったはずだが、それらをどう克服していったのか。 環境改善へクラウドファンディング まずは資金力の問題。国公立大学では私立大のような潤沢な強化費は望みようもない。そこで16年からクラウドファンディングを開始。得られた支援金を練習のサポートや食住環境の整備に充ててきた。「予想以上の反響に驚いている。これだけ多くの人に期待されているということ。お金がないと得られない環境はあるので、うまく力に変えていきたい」と弘山監督。 一例が、選手アパートでの食事の改善だ。以前は選手が回り持ちで調理当番をしていたが、そのため練習を早上がりしなくてはならず、体のケアもままならなかった。今は夕食を管理栄養士に任せ、選手のストレスが軽減。メニューの種類やバランスも向上している。 「合宿でも20人が行くと1回で100万円からかかる。それらを補助してもらえるのは大きい。私学との環境の差はどれくらいあるか分からないが、確実に縮まっていると思う」と上迫彬岳主務。 「勉強も箱根も狙える」大学 選手力の差を縮めたのは「復活プロジェクト」の影響が大きい。箱根を本気で目指せる大学という認知が広がり、入学してくる選手のレベルも高まった。「勉強も駅伝も続けられる大学。プロジェクトに引かれ、筑波で箱根を目指そうと入学した」と話す大土手嵩主将(3年)もその一人だ。医学群の川瀬宙夢(5年)は解剖実習や病院実習をこなしながら、猿橋拓己(3年)は理工学群で都市計画を学びながら、チームの主力として箱根に挑む。 金丸逸樹(4年、諫早高)や、相馬崇史(3年、佐久長聖高)ら、高校駅伝の名門校の出身者も増えた。「箱根を走るような高いレベルを知っている選手が今の世代にはそろった。それだけに、箱根と自分たちとの距離感もよく分かっている」と上迫主務。 選手層だけでなく指導陣も手厚くなった。一昨年までは弘山監督が一人で練習から渉外、広報まで全部こなしていたが、今はアシスタントコーチらが付き、選手の状態を逐次把握している。 これらの成果が出始め、弘山監督は「今年は明らかにチャンスの年」と手応えを感じていた。1月の第95回箱根駅伝では、相馬が関東学連の一員として5区を走り、その姿を見た選手たちの間にも「ここで自分たちのタスキをつなぎたい」との機運が高まった。だが、実際に戦えるチームになるまでには、まだ大きな壁もあった。(㊦に続く)

つくば市春日消防本部跡に患者宿泊施設や市児童発達支援センター 筑波大がPFIで検討

【鈴木宏子】筑波大学附属病院南側に隣接する、つくば市春日消防本部跡地(同市春日)約8200平方メートルを、同大がつくば市から賃借して、PFI(民間資金活用による社会資本整備)により医療複合施設の建設を検討している。3日開かれた市議会全員協議会で報告された。 同大によると、患者や家族のための宿泊施設や、つくば市による児童発達支援センター、民間の保健施設のほか収益施設の開設が検討されている。規模などは現時点で未定だが、おおむね2022年夏ごろまでの完成を目指しているという。 春日消防本部跡地は、市消防本部が2015年3月、研究学園の市役所隣りに移転した後、使われなくなった。一部が今年5月まで、水素ステーションや職員駐車場などとして利用されてきた。現在、敷地内には2階建ての旧中央消防署と、3階建ての旧筑南消防本部の建物が残っているが、解体し、さら地にして、同大がPFIにより施設を新設する。 宿泊施設は、同大附属病院の患者に限定せず、主に患者と患者家族が利用できるようにする。 つくば市が新施設内に入居して開設予定の児童発達支援センターは、発達の遅れや障害のある子供たちが通所して、日常生活の基本動作などの指導を受けたりする施設で、家族を支援したり、保育所などを訪問して支援する。同大附属病院と隣接することから、連携して事業を実施していく。切れ目のない支援体制を整備するため保健センターの母子部門や教育局相談部門の併設も検討する。 同跡地の利活用については、2017年11月に筑波大から市に利用計画が出され、市は18年から有識者や障害者団体関係者による「児童発達支援センターの在り方検討会」を設置して在り方や開設場所などを検討してきた。今年7月に提言が出され、市は賛成が最も多かった春日消防本部跡地に設置する方針だ。 今後は、12月中に市と筑波大が協定を締結、来年1月に市が住民説明会を開催する。3月には同大が実施方針を公表、4月に同大はPFI事業者の選定手続きを開始する予定。

依存症当事者が体験語る 29日、筑波大の大村研究室が主催

【山口和紀】アルコールおよび薬物依存症の当事者で、現在、依存症回復支援施設の生活支援員を務める渡邊洋次郎さんが29日、つくば市天久保のコワーキングスペース、つくばプレイスラボで体験談を語る。筑波大学人間系の大村美保助教が「当事者と共にある支援」を学びとってもらいたいと開催する。 大村助教は、犯罪や非行をしてしまった人の支援に関わっており、3、4年前から渡邊さんと交流を続けている。昨年、研究室の学生と、渡邊さんの勤める回復支援施設「リカバリハウスいちご」(大阪市)を訪れた。当事者同士のミーティングなどを見学し、当事者自身の回復に向けた姿勢など多くを学んだ。 大学の授業では“支援する”側の支援は多く教えられるが、“支援される”側の視点が語られることは少ないという。『当事者とともに』という視点を講演会の中で学びとってもらいたい、が開催の主旨になった。 「自分なりに頑張ろうとした結果」 渡邊さんは、中学生の頃からシンナーを使用し始めた。幼少期から周りになじめず、学校でも勉強についていけず、常に寂しさを感じていたという。そんな中、中学生のときにシンナーや万引きなどの非行に走った。理由は「誰もやらないようなことをやれば周りから注目されるからだった」と語る。 中学卒業後は、少年鑑別所に4回、少年刑務所には1年間入った。18歳からホストを始めるも仕事上、強い酒を飲むことも多く、アルコールへの依存も始まる。30歳前半まで精神科病院で入退院を繰り返した。その後、刑務所に3年入所する。 自分が回復に向かって努力しなければならないということにやっと気づいたのは30代の後半になってからだという。 渡邊さんにとって依存症は「異常なこと」ではなかった。むしろ自分なりに普通になろうとして頑張った結果だったと振り返る。社会的には薬物は危険であるというイメージがあるが、普通の生活の延長にあったと語る。 講演会では「薬物依存症」というカテゴリーにとらわれることなく、1人の人間としての姿を伝えたいと話した。 ◆講演会は29日11時から16時まで。参加費は無料(弁当代500円)。予約は25日まで下記URLから行っている。 問い合わせは主催の筑波大学人間学群障害科学類 大村研究室まで(omuralab@gmail.com)。参加申し込みはこちらから

土浦一高1、2年生が病院訪問 医学コース設置見据え

【山崎実】県立土浦一高(土浦市真鍋)は、医学部進学研究会(医学研)活動の一環として、1、2年生の病院訪問を実施する。 医学研は、同校が筑波大学や水戸協同病院などの協力の下、病院見学、出前授業などを通して、医学部進学志望生徒に対し、医師になるための志を育むことを目標に、独自に取り組んでいる。今年度は、来年度からの第2学年「医学コース」設置を見据え、第1学年も実施する。 病院訪問は、第1学年医学研が16日、1年生48人が土浦協同病院(同市おおつ野)を訪れ、オリエンテーション、病院内見学、実習、研修医との懇談などを行う。 次いで、第2学年医学研は20日、2年生20人が水戸協同病院(同市宮町)を訪問。カンファレンス見学、院長講話、病院内見学、研修医との懇談などを通し、医療現場や医師としての在り方などを学ぶ。 県は、医療後進県からの脱却―特に、医師不足解消に全力を傾けており、同校医学研の活動が注目される。 ➡土浦一高に関する過去記事はこちら

医療と介護のデータ200万件 つくば市が筑波大に託す

【鈴木宏子】つくば市が、過去5年分の医療と介護の報酬明細書(レセプト)データ約200万件を、筑波大学ヘルスサービス開発研究センター(つくば市天王台、田宮菜奈子センター長)に提供し、同センターがデータを分析して、効率的な医療と介護政策の検討に役立てる組みが始まる。 同市と同大が1日、医療介護分野のデータ解析に関する覚書を交わし、取り組みがスタートした。 市が提供するのは、国民健康保険加入者や75歳以上の後期高齢者医療制度加入者の診療報酬明細書(医療レセプト)と、介護保険給付費明細書(介護レセプト)など、年間40万件に及ぶ医療と介護のレセプト。2014~18年度の5年分計約200万件を、個人情報が特定できないよう匿名化して同センターに提供する。 センターは、医療と介護のレセプトを連結させてデータ分析し、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、効率的な地域包括ケアシステムづくりに生かす。 これまで同センターは、千葉県柏市のデータを2014年から分析し、高齢者が太ももを骨折した場合にかかる医療と介護の費用を日本で初めて算出したり、特別養護老人ホームと介護老人保健施設を比較し、入所後に、症状が悪化し病院に入院する割合が異なることを突き止めた。 つくば市のデータについては、どの観点からどのように分析するかはこれから検討する。例えば、退院後に、訪問看護サービスを受けていた高齢者と受けていなかった高齢者を比較して、サービスを受けていた高齢者の方が再入院する割合が少なかったとすれば、予防の観点から政策に反映させることができる。高齢者施設によって、入所後の高齢者の体調や体の機能維持の割合が異なれば、ケアの在り方を再検討することもできるという。 同センターの田宮センター長はこれまでも、つくば市の高齢者福祉計画策定や在宅医療・介護連携推進協議会に携わってきた。新たなデータの分析結果は、毎年、進ちょくに合わせて市に報告し、市の政策に生かす。 田宮センター長は「モデル的な分析をして、地域に根差した包括ケアシステム構築を市と協働し進めていきたい」と述べ、五十嵐市長は「レセプトをどう活用するかは行政にノウハウがない。医療と介護を組み合わせて本当に必要なサービスを検討することができれば大きな意義がある」などと話した。

スマートシティの先の未来のつくば語る 筑波大教授と県局長が講演 筑協総会

【鈴木宏子】つくばの研究機関や民間研究所などで構成する産官学の交流組織「筑波研究学園都市交流協議会」(事務局・文科省研究交流センター)の2019年度総会が28日、同市竹園の同交流センターで開かれた。つくばが国交省の先行モデルに採択された「スマートシティ」をテーマに、今年度から実際に実証実験に取り組む筑波大学システム情報工学研究科長の大沢義明教授と、けん引役の県産業戦略部技術振興局の飯塚一政局長がそれぞれ講演し、スマートシティの先の未来のつくばの姿を語った。 大沢教授は、同大とトヨタがこれまで取り組んできた共同研究の成果を話し、車に搭載されたセンサーなどの情報を収集・分析して、周辺の道路状況を把握したり、災害復旧支援などに活用する近未来の地域社会の姿を語った。 今年度からつくばで始まるスマートシティ先行モデル事業の実証実験の中身も紹介した。筑波大学を行き来する路線バスで、顔認証によるキャッシュレス決済を行うほか、公共交通と医療サービスをつないで、バスに乗った人が顔認証により筑波大附属病院の受診受付や診療費の支払いなどを一括して行えるようにする。さらに排気ガスの心配がない水素燃料電池の路線バスや救急車を運行して、病院の建物の中に直接入る実証実験なども計画しているという。大沢教授は「つくばで日本版スマートシティを実現したい」と意欲を語った。 大沢教授はほかに、車の走行台数と駐車場空きスペースなどさまざまな情報を最適にマッチングさせることで、鹿島アントラーズ試合開催日のサッカースタジアム周辺の渋滞解消や、ゴールデンウイークや紅葉シーズンの筑波山周辺の渋滞解消などに取り組む計画があるという。 県の飯塚局長は、つくばが、国交省のスマートシティモデル事業と新モビリティサービス推進事業の二つの先行モデルに選ばれたことを強調し、その先に「まるごと未来都市」と呼ばれるスーパーシティがあるなどと未来のつくばを話した。 ➡スマートシティ採択に関する関連記事はこちら

スイス女子陸上チーム 筑波大で事前合宿 横浜世界リレー出場へ

【鈴木宏子】筑波大学(つくば市天王台)で3日から、陸上競技のスイス女子リレーチームが大会前のトレーニングキャンプを張っている。来年の東京オリンピックで同大はスイスの事前キャンプ地になり、つくば市は同国のホストタウンになる。来年の本番を前に、スイスオリンピック協会と同大、つくば市、県の4者が昨年4月に締結した基本合意に基づいて初めて選手団を受け入れた。 チームは4×400メートルに出場するリレー選手6人と監督、コーチなど。9日までつくば市内のホテルに宿泊しながら同大陸上競技場などで調整を続け、11、12日に横浜で開催される「国際陸上競技連盟(JAAF)世界リレー2019横浜大会」に挑む。7日午前、同陸上競技場で公開練習が行われ、選手らは入念にストレッチをしたり、軽く走るなどして体を慣らした。 キャンプでは、同大の学生ボランティア11人が交代で選手らに付き添いサポートをしている。さらにスーパーカスミから食材の提供を受けて、同大体育科学系運動栄養学の学生らが、アスリートのための食事を手作りし、ふるまっているという。ホテルや移動手段の手配はつくば市が支援している。 7日、練習会場を訪れた同大の永田恭介学長は「大学には施設だけでなく、附属病院のスポーツ医学・健康科学センターや運動栄養を研究し食事をサポートするスタッフがそろっている。選手たちが本番で力を出せるよう支援していきたい。学生ボランティアにとっても世界トップレベルの選手の姿を間近で見ることができる機会になる」などと語り、五十嵐立青つくば市長は「選手が万全の状態で戦えるよう環境をつくっていきたい。いろいろな形の交流の機会が広がっていけば」と話した。 チームは現在、世界ランク26位(2018年)。横浜大会で10位以内に入り、さらに9、10月にドーハ(カタール)で開かれる世界陸上で8位以内に入れば、東京オリンピックの出場が決まるという。ピーター・ハース監督は「温かく迎えてくれ、数々のもてなしに感謝している。アスリートたちは来年の東京オリンピックを目指して頑張っている」などと語った。キャプテンのレア・スプンジャー選手は「チームはとてもいい雰囲気でコンディションもいい。スイスからの長いフライトから1、2日で体調を整えることができたのは温かい歓迎とサポートのおかげ。東京オリンピック出場を目指している。来年ここに戻ってきたい」と話していた。

防災ヘリ 7月から医師乗せ補完運航 つくば・土浦の3病院がチーム組織

【山崎実】県は今夏の7月から、ドクターヘリの補完的運航として、医師及び看護師(医療チーム)を乗せた防災ヘリの運航を開始する。 既に昨年10月からドクターヘリの搭乗訓練(OJT)、防災ヘリ搭乗訓練等を実施している。重複要請等でドクターヘリが出勤できない場合、防災ヘリが医療チームを乗せて救急現場に向かい、速やかに治療を行い、救命率向上を図るのが狙い。 補完運航に先立ち、県は2月、この運航に協力して医療チームを組織、提供する土浦協同病院(土浦市、酒井義法病院長)、筑波大附属病院(つくば市、原晃病院長)、筑波メディカルセンター病院(同、軸屋智昭病院長)の3病院と「防災ヘリによる補完的運航に関する協定」を締結した。 これにより、防災ヘリに出勤要請があれば、防災航空隊基地(つくば市上境)から医療チーム提供3病院のいずれかの病院ヘリポートに立ち寄り、チームを乗せ現場に急行する。 2010年7月、水戸済生会総合病院(水戸市)と、水戸医療センター(茨城町)の2病院を拠点として運航を開始した現行のドクターヘリは、出動要請が年々増加し、重複要請から対応できないケースが目立っている。 県医療政策課のドクターヘリ運航実績によると、2010年度から17年度までの総出動件数は7079件、年度別では10年度の362件から17年度には1147件と3倍以上に急増。さらに重複要請も20件から8倍弱の156件に増え、全体では588件に上る。 防災ヘリをドクターヘリの補完として運航させることについて大井川和彦知事は、第1回定例県議会で県議の質問に「重複要請で(ドクターヘリが)出動できない場合や、多数の傷病者が出た際などに、防災ヘリが協力病院から医師と看護師を搭乗させ、救急現場に向かう体制が確立する。1人でも多くの県民の命を救うため、運航体制の充実、医療提供体制の強化に全力で取り組みたい」と、その意義を強調した。 ドクターヘリは、県境を超え、栃木、福島両県と相互に要請・利用できる体制を構築しているほか、千葉県のドクターヘリとも共同利用している。防災ヘリの補完的運航が、ドクターヘリの重複要請の負担軽減につながることは間違いなく、自治体関係者などからも「医療過疎地域にとっては心強い朗報」と、早期運航に期待している。 茨城県ドクターヘリ運航実績 年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 計 総要請件数 362 724 1090 956 986 884 930 1147 7079 出動件数 289 581 852 703 672 628 678 728 5131 未出動件数のうち重複要請 20 37 76 53 94 57 95 156 588

【ひと】飲酒量低減外来を開設 筑波大学 吉本尚准教授

【田中めぐみ】筑波大学との連携で1月半ば、北茨城市民病院付属家庭医療センター(同市中郷町)内に飲酒の悩みを抱えている人を対象にした「飲酒量低減外来」が開設された。精神科以外での飲酒専門外来の開設は全国で初めて。毎週木曜日午前中に同大医学医療系の吉本尚准教授ら総合診療医が診察する。反響は大きく、開設して約3週間、予約はほぼいっぱいの状況だという。 北茨城市は筑波大と地域医療で連携しており、同大は総合診療、家庭医療の専門医教育の一環として、同センターで研修や実習を行っている。同外来は飲酒量が多い人や軽度のアルコール依存症の人などが対象。飲酒習慣について質問票で調査した上で、カウンセリングをするほか、場合によっては薬物治療も行い、一人ひとりに合った飲酒量を考えていく。診療で治験を集め、今後つくば・土浦市内、ひいては全国にも取り組みを広めていければとの考えだ。 吉本准教授によると、国内にはアルコール依存症が100万人いるとされているが、医療機関を受診している人は4~5万人。アルコール依存症の診療は従来、精神科や心療内科の領域であるため、受診をためらってしまうことが原因の一つとみられる。「アルコールの問題で悩んでいる人は想像以上に多い。悩んでいる人がもっと気軽に受診できるよう、新しい取り組みにチャレンジできないかと考え、飲酒量低減外来を開設した」と話す。 厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」としている量は、ビールなら男性で500ミリリットル、女性や高齢者はその半分。吉本准教授らが関東の31大学の学生533人を対象に調査したところ、飲み放題のサービスがある店では、飲み放題でない店よりも飲酒量が2倍近く増える傾向があるという。また関東の大学生2177人を調査したところ、男性では2時間で1缶500ミリリットルのビールを2本半、女性では2本飲むと、けがのリスクが25.6倍になったという。海外では飲み放題の規制をしている国もある。 アルコール・うつ・自殺は関連が深く、「死のトライアングル」と呼ばれている。吉本准教授は「最近は芸能界やスポーツ業界などでも、お酒に関係する事件の報道がされて話題になっており、お酒との付き合い方は難しいと感じる」そうだ。「『自分は飲み過ぎではないか』『飲む量を減らしたい』など、飲酒のことで気になること、困りごとがあればなんでも気軽に相談してほしい。本人だけでなく、家族の相談でもかまわない。体、心の害が出ないようにお酒とうまく付き合える支援をしていきたい」と話している。 [吉本尚(よしもと・ひさし)]北海道出身、筑波大卒、医学博士。2014年に母校に戻り、18年から医学医療系地域総合診療医学准教授、総合診療に関わる医師の在り方を提案している。 ◆北茨城市民病院付属家庭医療センターは予約制で1日3人まで。電話0293-43-1131 ◆飲酒に関する相談は同センターのほか、筑波大学付属病院総合診療グループ。電話029-853-3189

認知症は予防できる! 筑波大の内田准教授が早期発見の検査法開発 普及へ

【田中めぐみ】認知症は予防できるという。筑波大学医学医療系の内田和彦准教授らのグループが、簡単な血液検査によって軽度認知障害(MCI)のリスクが判定できることを発見した。この検査法は内田准教授が社長を務める同大発ベンチャーMCBI(つくば市吾妻)で実用化、全国の医療機関で検査が可能になった。 検査は7㏄の採血のみで、2~3週間で結果が出る。判別精度は90%。健康保険適用外の自費診療で料金は2万円ほど。内田准教授は認知症の予防につなげる新しい検査法として普及させたい考えだ。 軽度認知障害は、もの忘れが目立つなど認知機能の低下はあるものの、日常生活には支障が出ていない状態で、認知症の前段階を指す。軽度認知障害の約40%が4年後に認知症を発症するといわれており、要注意の段階だ。しかし定期的に血液検査を行い、早い段階で発見できれば、生活習慣の改善で回復が可能だという。 3種類のタンパク質濃度を検査 アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ(ベータ)タンパク質という物質が脳内に蓄積し、正常な神経細胞に障害を与えることで発症すると考えられている。アミロイドβは誰の脳にも存在するが、蓄積しないよう排出する機能が備わっている。 認知症を発症する人は排出機能が低下しており、徐々にアミロイドβが脳内に蓄積される。排出には3種類のタンパク質が必要だが、軽度認知障害の人は、この除去に働く3種類の血中量が健常者に比べて低く、排出機能低下につながっていると考えられている。血液検査ではアミロイドβを排出に関わる3種類のたんぱく質の血中量を測ることで。軽度認知障害のリスクを判定するという。(上図参照) 予防や治療について、内田准教授に話を聞いた。 治療は生活習慣病と同じ ―どういった場合に検査をすればよいでしょうか。 内田 日常生活に支障がなくても、物忘れが多い、言葉が出てきにくいなど、本人やご家族が少しでも気になったら専門医に受診するとよいでしょう。全国1300件以上の医療機関で検査が受けられます。早期発見すれば予防効果も高いです。 ―検査で軽度認知障害のリスクがあると分かったらどうしたらよいでしょうか。 内田 リスクがあると分かっても怖がる必要はありません。予防ができるので回復のチャンスです。軽度認知障害の治療は生活習慣病の治療と同じです。中年期では生活習慣の改善が大切で、特に運動は効果があります。食事は高タンパクで良質の脂質を取ること。また、良質な睡眠を充分に取ることも大事です。高血圧や糖尿病の人はきちんと治療をし、コントロールします。適正体重を維持することも必要です。 65歳以上の高齢期はしっかり食べて栄養を取り、仕事を辞めても社会との接点をなくさないことが大切。筋トレやウォーキングなどの有酸素運動も重要です。エレベーターを使わずに階段を使って移動するのもいいでしょう。 ―軽度認知障害の治療はどのようなものでしょう。 内田 治療というと薬と思われがちですが、治療は薬だけではありません。食事療法、運動療法、芸術療法、すべてが治療です。物を見て絵を描く、粘土で造形する、歌を歌う、脳トレ、ダンスなども効果があります。また、緑茶を飲む習慣がある人も認知症を発症しにくいという報告もあります。 ―今後の研究の展望は。 内田 より多くの症例を用いて臨床研究していきます。また、運動と抹茶を飲むことの継続がどのような効果をもたらすのか、血液検査と合わせて研究していく予定です。筑波大学では軽度認知障害と診断された人たちを対象に「認知力アップデイケア」というプログラムを設けています。またMCBIでは「頭のかんたん健康チェック」というイベントも開催しており、抹茶を飲んで認知症予防する臨床研究のご案内をしています。興味のある方はぜひ参加していただきたいと思います。 ◆認知症予防セミナー「頭のかんたん健康チェック~抹茶で認知症予防しませんか?~」は2月、取手・守谷地区で開催。▽19日午前10時~12時=取手市福祉交流センター▽22日午前10~12時=サンシャイン・ヴィラ守谷倶楽夢。参加は無料。楽しく簡単に誰でもできる認知症予防チェックと講演のほか個別相談会も行われる。問い合わせは電話029-899-4431(MCBI)https://mcbi.co.jp/ ◆筑波大学附属病院 認知力アップデイケアのホームページはhttp://www.tsukuba-psychiatry.com/dc/

土浦協同など5病院が充足 来春の研修医マッチング

【山崎実】土浦協同病院など県内の5医療機関が、来春からの臨床研修医マッチングで、充足率(募集定員に対する確保人数)を満たしたことが厚生労働省のまとめで分かった。茨城県は人口10万人当たりの医師数が全国ワースト2位(2016年)と医療後進県。脱却をめざす県にとって、研修医確保枠の達成は必須条件の一つだ。 医師臨床研修マッチングは2004年度、医師の臨床研修が義務化されたことに伴い導入された。日本医師会、全国医学部長病院長会議など臨床研修を行う病院等の団体で構成する「医師臨床研修マッチング協議会」(東京都港区)が、医学生と病院のプログラムを相互の希望を踏まえ、一定の規則(アルゴリズム)に従ってコンピューターにより組み合わせを探り、確定するシステムとなっている。 調査結果によると、県内の研修指定参加20病院の募集定員は228人。これに対し、マッチングによる確保人数は169人で、充足率は74.1%(前年度は74.3%)だった。臨床研修医の県内受け入れは、13年度の126人から17年度は162人と確実に増え続けており、今回も過去最多を記録した。 受け入れ先を病院別に見てみると、筑波大学附属病院が前年度比6人増の73人で県内最多。ほかに水戸済生会総合病院(2人増)、水戸医療センター(4人増)、土浦協同病院(6人増)、霞ケ浦医療センター(1人増)、JAとりで総合医療センター(5人増)、茨城西南医療センター病院(2人増)の計7病院は前年度に比べ増加した。 さらに水戸医療(9人)、土浦協同(14人)、筑波メディカルセンター病院(10人)、JAとりで(5人)、茨城西南(6人)の5病院は募集定員枠を満たし注目される。一方、受け入れ内定がゼロだったのは、水戸赤十字病院、つくばセントラル病院、友愛記念病院の3病院だった。 県医療人材課は「病院間の人的交流も活発に行われており(枠確保未達成の病院があることが)不安材料とは考えていない。むしろ、県内へのマッチング者数の増加傾向を、さらに伸ばしていくことが重要」と話している。      2019年春採用の臨床研修医マッチング結果 募集定員 マッチング 前年度比マッチング増減 1 水戸赤十字病院(水戸市) 4 0 ▼4 2 水戸協同病院(水戸市) 10 7 ▼3 3 水戸済生会総合病院(水戸市) 10 8 2 4 水戸医療センター(茨城町) 9 9 4 5 茨城県立中央病院(笠間市) 9 4 ▼3 6 日立製作所日立総合病院(日立市) 12 9 ▼2 7 日立製作所ひたちなか総合病院(ひたちなか市) 8 7 0 8 土浦協同病院(土浦市) 14 14 6 9 霞ケ浦医療センター(土浦市) 3 1 1 10 筑波記念病院(つくば市) 8 6 ▼2 11 筑波大学附属病院(つくば市) 90 73 6 12 筑波メディカルセンター病院(つくば市) 10 10 0 13 筑波学園病院(つくば市) 5 1 ▼1 14 東京医科大学茨城医療センター(阿見町) 10 4 ▼4 15 牛久愛和総合病院(牛久市) 5 4 0 16 つくばセントラル病院(牛久市) 3 0 0 17 JAとりで総合医療センター(取手市) 5 5 5 18 総合守谷第一病院(守谷市) 3 1 0 19 友愛記念病院(古河市) 4 0 0 20 茨城西南医療センター病院(境町) 6 6 2 合計 228 169 7 ※20医療機関は県内の臨床研修医マッチング参加病院 ※定員に空席がある病院は今後2次募集を実施する

ゲーム通しつくば駅前に交流空間 筑波大生が月1回開催

【鈴木宏子】ゲーム好きの筑波大生が、つくば駅前に新たな交流空間を出現させている。駅前の商業施設BiViつくば2階の交流サロンで月1回開かれているゲーム会だ。まちなかの一角が、見知らぬ人同士、テーブルを囲んでカードゲームなどに興じる空間になる。 筑波大生4人でつくる「つくばテーブルゲーム=メモ=交流協会」が毎月1回、最終土曜日の午前10時30分から午後8時30分まで開催している。参加者は、会場の8つの丸テーブルを囲んで、居合わせた人とカードなどを使ったゲームを楽しむ。毎回40~50人が集まりテーブルはすぐに満杯になる。子ども連れの参加者もいて、市内のほか、水戸、鹿嶋市などからも集まる。 「10年後につくばをテーブルゲームのまちにしたい」と、代表を務める人文・文化学群比較文化学類4年、高野大さん(22)さんが、理工学学群・工学システム学類3年、亀沢和史さん(21)や人文・文化学群比較文化学類3年、福田哲郎さん(22)さんらに呼び掛けて2016年12月に発足させた。 「ルールが簡単なのでだれでもすぐに始められるし、初対面でも楽しめる。子供も、学生も、社会人も一緒に楽しめるし、留学生など日本語がうまくしゃべれない人とも遊べる」と福田さんはいう。 「つくばはいろいろな人が移り住んで、出てゆくまちなので、ゲームを通して人と人が出会えれば」と高野さん。「テーブルゲームはつくばのまちの特性を生かせる魅力的なコミュニケーションツールになる」と強調する。 カードやボードを使ったゲームは100種類ほどあり、自宅からゲームを持参したり、新しいゲームを考案する参加者もいるという。 ほかに同大近くのコワーキングスペース(事務所スペース)「つくばプレイスラボ」や、同大留学生らの宿舎「グローバルビレッジ」などでも開催。市内各所で年間40回ほど開いているという。3月17日にはカスミのフードスクエア学園店(つくば市竹園2丁目)の飲食ができるイートインスペースで初めてゲーム会を開く予定だ。 「将来、銀行や郵便局、病院などの待合室にもテーブルゲームが置いてあって、待ち時間にだれでも楽しめるようなまちになったらうれしい」と高野さんは話す。 ※メモ 【テーブルゲーム】参加者がテーブルを囲んで行うゲームの総称で、トランプや絵札などを使ったカードゲームや、盤と駒を使ったすごろくなどのボードゲームなどがある。

スマホで小中学生の体温・体調管理 つくば市など導入 医療相談アプリLEBER

【相澤冬樹】医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」を運営するAGREE(アグリー、本社・つくば市、伊藤俊一郎社長)は19日、五十嵐立青つくば市長、小田川浩つくばみらい市長らの同席でオンライン記者会見を行い、両市の市立小中学校で導入された児童・生徒向け体温・体調管理ツールについて説明、学校版「新しい生活」の標準となるモデルをつくばから提示すると意気込んだ。 両市は6月8日からスマートフォンアプリ「LEBER」を利用して体温・体調管理ができる「LEBER フォースクール」を導入した。検温結果の記録と簡単な体調の報告をセットにするツールで、入力結果は自動的に学校に送信される。 アプリには毎朝、検温を促すプッシュ通知が送られ、入力を忘れることなく体温を計る習慣づけがなされる。保護者は、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症等の健康観察票」に準拠した、体調に関する簡単な質問への回答を加え、データを自動送信する。書類の記載や手渡しなく教育機関に伝わったデータはグラフ化などにより容易に管理でき、教職員の負担が大幅に軽減される仕組みだ。 7月リニューアルのLEBERの新機能も紹介された=記者会見資料 「LEBER」は登録ユーザーがスマホを操作して医師と相談するアプリ。チャットスタイルの自動問診で、「痛い」「かゆい」などの症状を伝えると、これを見た医師から最速3分で回答が届き、最寄りの医療機関や適切な市販薬などがアドバイスされる。24時間365日相談できる。新型コロナの感染拡大を受け、病院での受診に悩む患者や家族からの利用が拡大、茨城県内では9月末まで無償提供されている。(4月9日付)

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《映画探偵団》33 つくばセンタービル 磯崎新の設計思想

【コラム・冠木新市】東京ディズニーランドのシンボル、シンデレラ城が新型コロナウイルスで休園中に改修された。シンデレラ城は、ドイツのバイエルン国王ルードウィッヒⅡ世によって創られたノイシュバンシュタイン城をモデルにしたものである。東京ディズニーランドと同じく1983年に完成した「つくばセンタービル」も、実はノイシュバンシュタイン城の影響を受けて創られている。 「狂王ルードウィッヒが純粋に快楽のために建設したこの折衷主義のあだ花、キッチュの権化ともいうべきノイシュバンシュタインは、いまでは確実にポピュリズムの核心にある。《つくばセンタービル》の複合体が独自の象徴作用をなすためには、私はキッチュ的な要素の使用も辞すまい、と考えたことも事実である」「私はノイシュバンシュタイン的なものへ接近する道を歩んでいたのかもしれない」(磯崎新編著『建築のパフオーマンス』PARCO出版局) 「こんな面白いところが、入場料もとらずに開放されているなんて、信じられない」と言った人がいた。私も30年ほど前から、毎日のようにセンタービルを眺めてきたが、見飽きないし、少しも古びないのは驚きである。晴れた日には、3棟のビルの表面がきらきら輝き、美しいかぎりだ。さらに、1000人以上入るホールがあるのに、巨大さを感じさせないのはなぜだろうか。 なかでも中央の楕円形の広場、いや、庭は実に刺激的だ。何もない空間だからである。だが、東洋的なこの庭は、西洋的な3棟の建物を際立たせている。しかし、権力、財力、名誉を求める人にとっては、廃墟をイメージするような空間は腹立たしさを覚えるのに違いない。力を暗示するシンボルが存在しないからである。 霞ケ浦を模した階段から流れる水は、つくば市の位置に相応する中央へと流れ落ちる。センタービルの空っぽの庭は、創造性を触発する器であり、水が主役なのである。私などは、崩れかけたような岩山に大魔神が埋め込まれているのではないかと、つい想像してしまう。 大映の『大魔神』ドーム屋根案を踏み壊す?

新品種導入も推奨 イネ縞葉枯病対策で県

【山崎実】つくば市や筑西市など県南、県西の一部地域で発生が多くみられるイネ縞葉枯(しまはがれ)病対策として茨城県は、従来からの薬剤散布などによる防除対策に加え、水稲新品種の「にじのきらめき」や「ふくまるSL」などの抵抗性品種の導入を進めていく。 イネ縞葉枯病は、体長3~4ミリの害虫ヒメトビウンカに媒介されるウイルス病で、発病すると生育不良となり、イネが実らなくなって減収となる。 県は保毒虫率(ウイルスを持った虫の割合)5%以上を薬剤防除の目安にしている。県南、県西地域のつくば市や筑西市などで行った調査では、一部地域でいずれも5%を超え、次作でも多発可能性が高いことから、抜本的な対策が必要とされていた。 この問題は県議会第2回定例会でも議論に上り、県は①育苗期や生育期間中の薬剤散布②収穫後の田起こしや畝(うね)の雑草除去③抵抗性品種への転換ーの具体策を提示した。今後は防除対策が地域全体の取り組みとして行われるよう、薬剤散布や田起こし、雑草除去など複数の対策を組み合わせて行う従来の方法と、抵抗性品種への転換の2つの方法について効果を検証し、多発地域を指導していく考えを明らかにした。 特に抵抗性品種の導入は、栃木県や埼玉県で効果があったとされ、県も有効な被害軽減策と位置付けている。 農研機構が育成した「にじのきらめき」は「コシヒカリ」よりやや遅い収穫期の品種で、倒れにくく、収量も多い。縞葉枯病に抵抗性で、高温でもよく実り、コメの外観品質が良く「コシヒカリ」と同等のおいしさ。ブランド米に並ぶ食味と安定多収性で、外食・中食用途への利用が期待されている。

筑波山・霞ケ浦を稼げる観光地へ 遊べる旅行企画など募集

【山崎実】茨城県は、筑波山・霞ケ浦広域エリア観光連携促進事業を2018年度から3カ年計画で進めている。現在、両地域の観光資源を生かした「土産品・グルメ」「アクティビティーコンテンツ」の新商品開発プランを募集している。 観光連携の新たな魅力創出と、稼げる観光地域づくり促進が狙いで、選定されたプランには補助金の交付、販売支援などが行われる。 募集は▽新たな定番商品の開発▽アクティビティー(遊べる)ツアープログラム企画の開発ーの2部門。定番商品の開発では、観光目的の大きな要因である「食(グルメ)」、地域を代表する新たな「土産品」を募集する。既存商品の味やデザイン、パッケージなどに工夫・改良を加えたものも応募可能とする。採択は4件程度を予定し最大補助額は75万円。 アクティビティー・ツアープログラム企画開発部門は、アウトドア層を対象に、地域の観光資源を活用した新たな「ツアープログラム」を募集する。採択は2件程度で最大補助額は50万円。 応募資格は新商品の企画・開発をめざす個人、法人、グループなど。「土産品・グルメ」提案部門は県内に事業所をもっていることが条件だが、アウトドア層向けの企画開発の提案は、事業所の所在地は問わない。 応募締め切りは8月21日。同月下旬に書類審査、9月にプレゼンテーション審査を行い、商品開発を実施。来年2月に成果報告会を予定している。

《雑記録》13 アメリカ大統領選挙・雑感

【コラム・瀧田薫】2013年1月、再選されたオバマ大統領は2度目の就任式に臨み、リンカーン大統領と公民権運動の指導者キング牧師が愛用した聖書に手を置いて就任の宣誓をした。このパフォーマンスにこめられた政治的意図は、アメリカ建国以来の宿痾(しゅくあ)である人種差別を解消し、分断された社会に調和と協調をもたらすことにあった。しかし、不幸なことに、アメリカ初の黒人大統領の願いは実らず、トランプ大統領の登場以降、アメリカ社会の分断はむしろ拡大の一途を辿(たど)っている。 今年11月、トランプ大統領は再選をめざして民主党候補バイデン氏とたたかう。現時点(7月2日)で、大方の専門家の予想はバイデン氏有利としているが、前回選挙同様、予断を許さない。それはさておき、ここまでの選挙運動を通じて目立った動きは、オバマ氏が前職大統領としては異例なほどにバイデン氏に肩入れし、支援する姿勢を見せていることだ。トランプ氏が再選されれば、アメリカ建国以来の理想(自由、民主主義、人権など)の崩壊につながるとの危機感が彼の背中を押しているに違いない。 2020年5月25日、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで、白人警官が黒人男性の首を膝で押さえ続けて死亡させる事件が起きた。この映像がネットを通じて拡散されると、全米各地で人種差別に抗議するデモが発生し、時間の経過とともに、デモは人種差別に対する抗議の域を超えて、米国社会に残る「構造的な差別」の根絶を訴える運動へと展開しつつある。黒人奴隷制度と先住民からの収奪のうえに繁栄を遂げた米国の歴史そのものを見つめ直す議論も始まっている。 南北戦争のトラウマが大統領選に影響 一例をあげれば、南部ミシシッピ州議会(上下院ともに共和党が多数を占める)は、南北戦争(1861年)で南軍が使用した旗をあしらった州旗を廃止する法案を圧倒的な多数で可決した。アメリカの全州の旗から南軍旗のデザインは消え去ることになる。アメリカで、何かが動き始めたようだ。 筆者は、過去何回かの米国大統領選挙について、毎回同じ仮説上に立って分析を試みてきた。すなわち、「南北戦争」(同じ国民同士が殺し合った記憶)のトラウマが大統領選挙の結果に影響を及ぼすのだが、その影響の出方(強弱)は選挙ごとに異なるという仮説である。例えば、オバマ氏の選挙の時よりもトランプ氏の選挙の時に「分断国家」のトラウマはより強く出た。分析の手法としては実に単純で、南軍に参加した州と北軍に参加した州それぞれにおける投票行動(誰に投票したか)を比較する。