土曜日, 5月 4, 2024
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ソメイヨシノとヤマザクラが同時に満開 気象と開花の謎

【コラム・榎田智司】地球温暖化の影響なのか、今年も季節が早く進んでいる感じがする。筑波山麓では今春、ソメイヨシノとヤマザクラの開花と満開の時期がほぼ同時だった。 筑波山麓で活動するつくば環境フォーラムの理事、大塚太郎(54)さんは「今年はソメイヨシノとヤマザクラ、さらには桃までが、同時に咲いた印象がある。フキノトウ、タラノメなども一気に大きくなり、いきなり収穫という感じになった。近年の温暖化傾向はずっと続いており、今後の対策として12月に収穫するコメを作る計画をしている」と述べる。 ヤマザクラで有名な桜川市役所観光課に問い合わせると「毎年ヤマザクラはソメイヨシノよりも1週間ほど遅く開花していたが、今年はほぼ同時だった。暖冬傾向の中で3月上旬の気温が低かったためではないか」という。 水戸地方気象台の発表ではソメイヨシノの開花は3月31日、満開は4月8日。県内の開花は平年通りだったが、近年の温暖化傾向の中では、遅い桜とも感じた。一方、九州地方から東北地方南部までの開花の差が3日ほどしかなかった。 振り返ると2024年の年明けは比較的温暖で、2月中旬には春を思わせる気温となり、このまま暖かくなるかなと思ったら、3月上旬は気温が下がり雪が降ったこともあった。ソメイヨシノは2月1日からの最高気温の積算が600度に達すると開花するという法則があるといわれるが、今年の開花時は積算が768度になっており、62年ぶりに予想が外れたといわれる。テレビでは気象予報士の森田正光さんが、これも暖冬の影響で、冬の間に十分な寒さがないと「休眠打破」が出来ずに開花が遅れたのではないかと推測していた。 一般に、ヤマザクラの開花は関西ではソメイヨシノより早く、関東では遅いと言われる。仮説としてあげられるのは、ソメイヨシノは1本の木から生まれたクローンだが、山桜には多様な種類があるために起こる現象ではないかとも言われているそうだ。開花と気候をめぐる謎は深まるばかりだ。(NEWSつくばライター)

山麓の田んぼに「逆さ筑波」出現

田植えを前に田んぼに水が張られ、筑波山麓では「逆さ筑波」が現れ始めた。田んぼの水面が鏡となって筑波山が逆さに映る。 筑波山東側の石岡市に住む出版業、野末琢二さん(65)は、逆さ筑波を地域の魅力の一つとして捉え、2015年からフェイスブックで「逆さ筑波」の写真を募集し発信している。 毎年30点ほどの作品が集まる。二つ峰の逆さ筑波のほか、女体山が男体山に隠れて一つ峰になった逆さ筑波などが水面に映る。 野末さんは「田植え前に水が入る時期から、田植えが終わって早苗が成長して水鏡に山が映らなくなるまで、ちょうど4月下旬から6月上旬まで、わずかな時の逆さ筑波との出合いを大事にしたい」という。 野末さんが逆さ筑波を発信するようになったのは、11年の東日本大震災と12年の北条の竜巻災害がきっかけだ。「災害が2年続いて起き、精神的に落ち着かない日々だった。翌13年、桜の季節が終わり、田んぼに水が張られた頃、筑波山がぽっかりと水面に映っていた。逆さに映った筑波山がとっても新鮮で愛らしかった」と話す。逆さ筑波は毎年出現していたはずなのに、急に魅力的に感じられ、皆が撮った写真を募集してみようと思い立った。 山麓の同市神郡に住む肥田芳宣さん(58)は、地元をジョキングする合い間に逆さ筑波を撮影し、野末さんの呼び掛けに応じて毎年、写真を投稿している。 肥田さんによると撮影のポイントは「風が吹き始める午前6時前が狙い目。場所としては、西はつくば市寺具や筑西市赤浜、南はつくば市小田、北は桜川市樺穂まで」と言い、1枚の田んぼでは、水が張られてから田植えまで約1週間と、田植えから苗が成長するまで約3週間の1カ月間が撮影のチャンスだという。 筑波山麓ではほとんどが5月上旬までに田植えを終える。野末さんは間もなく、今年の逆さ筑波の写真の募集を開始する予定だ。 逆さ筑波は、風がない晴れた日に見ることができる。筑西市の母子島(はこじま)遊水池の逆さ筑波などが知られる。(榎田智司)

団体客から個人客にシフト 「亀の井ホテル 筑波山」オープン

筑波山中腹のつくば市筑波に「亀の井ホテル 筑波山」が23日、リブランドオープンした。昨年9月末、「筑波山温泉 つくばグランドホテル」が米国の投資ファンドに譲渡され(23年8月10日付)、同ファンド子会社でホテル運営会社のマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京都港区)が客室やレストランなどの改修を実施していた。つくばグランドホテルは団体客の利用が多かったが、新たなホテルは家族連れやペットとの旅行、サイクリングなど多彩なスタイルで旅行する個人客を主なターゲットとする。訪日外国人の誘客も目指す。 客室は、小さな子供を持つファミリー向けのキッズルームや、3世代で宿泊できるファミリールーム、愛犬と宿泊できるペットルームなど新たな客室が新設された。 食事は、団体客向けの宴会場を無くし、2階にビュッフェ形式のレストランを新設。常陸牛の焼きしゃぶ、県産キノコを使ったきのこ鍋、県産食材でアレンジする山海丼のほか、朝食は納豆の食べ比べができるなど、県産の食材を使った豪華な食事を自由に取り分けて食べられるようにした。ビュッフェ形式は筑波山にある五つの観光ホテルで初めてという。 7階の露天風呂は、今まであった柵を取り払い、関東平野や富士山、日光連山などの大パノラマが望める絶景の露天風呂に改装した。 ロビーラウンジがある3階は、家族や友人とリラックスしたり交流できる空間としてゲームやトランプなどができるゲームエリアを新設した。 今後さらに、自転車を客室に持ち込めるサイクルルーム、部屋の中から関東平野の景観を楽しめるハリウッドパノラマビュールームなどを新設し、7月6日にグランドオープンする予定。 24日は関係者を集めて内覧会が催され、新装施設が案内された。ロビーラウンジがある3階南側には広いデッキが広がり、関東平野が見渡せる。ラウンジはファミリーなどを意識したものに改装され、元カラオケルームは大画面でゲームを楽しめるゲームルームになった。家族や友人と、トランプや人生ゲームなどのボードゲームを楽しめるテーブルも設置された。7階キッズルームはかわいいキノコのキャラクターが登場する楽しいデザインが施されている。2階のビュッフェレストランは青森のねぶた師が手掛けた「つくばねぶた」が置かれている。朝食、夕食とも好きなものが食べられ、外国人も想定した多様なニーズに応える。 同ホテルの天満龍裕支配人(45)は「茨城のおいしい食材を提供するなど食事に力を入れており、豊富なメニューをそろえている。レストラン、ビュー、新しいお部屋はもちろんだが、まずはお客様を温かく迎えられるホテル、人に会いに来ていただけるホテルづくりを今後ともしていきたい」と話す。 同ホテルは客室61室(定員325人)、宿泊料金は1人当たり一般客室1万3000円~、ファミリールーム1万8000円~(消費税、サービス料込み)。初年度は年間約3万2000人の宿泊客を目指す。 亀の井ホテルは、マイステイズ・ホテル・マネジメントが2022年4月、日本郵政から「かんぽの宿」30施設を譲り受け運営を開始したホテルと、亀の井ホテル別府(旧別府亀の井ホテル)など計32施設により22年7月に誕生した。筑波山は39施設目。県内では、かんぽの宿だった大洗、潮来に次いで3施設目。 日帰りから滞在型へ 筑波山観光の新たな戦略とは? 筑波山は首都圏から日帰りできる距離にあり、現在、日帰り観光が主流になっている。どうやって滞在型に変えていくのか、天満龍裕支配人と、本社の増井香織マーケティングアドバタイジング パブリックリレーションズチーム チームマネージャーに新たなホテルの運営戦略などについて聞いた。 ー亀の井ホテル筑波山の魅力、売りは何か。 天満支配人 今回は食事を一番変えさせていただいた。茨城県の魅力がたっぷり詰まったビュッフェになっている。ビュッフェはファミリー層が大好きかと思う。食事は県産のきのこ鍋、納豆カツなど。朝食では納豆3種食べ比べをしたり、夜朝共に茨城の食材をふんだんに準備している。あと、亀の井ホテルグループの共通メニューもあって、どこの亀の井ホテルに行ってもおいしく食べていただけるメニューもあるので自信をもってご提供させていただく。(首都圏から)近くにこんないいところがあるんだよということを知っていただきたい。 それから弊館の売りは関東平野のビュー。7階のインフィニティ露天風呂があってそこからの景色はひじょうにすばらしい。宿泊のお客様だけが利用できるので、食事や温泉の魅力を十分に発信していきたい。 今サイクリストが多く、筑波山にも自転車で来られる方がたくさんいらっしゃる。そういった方々が筑波山に上がってこられて一休みできるようなサイクルルームもつくる。いろんなニーズに応えられるように、ファミリー向けのキッズルームや3世代向けの絆ルームをつくったり、多種多様なお部屋を準備するので、今まで日帰りで帰ってしまったお客様が一休みできる空間をつくっていきたい。 ―宿泊客をどこから呼び込むのか。 天満 亀の井ホテルグループには、旧かんぽの宿で会員になっていた方々を中心にKMC会員(カメノイ・ホテル・メンバーズ)が66万人おり、亀の井ホテルのいろいろな温泉地を巡っていただこうと取り組んでいる。関東圏のお客様が多いが、遠方からお越しいただいている方もいらっしゃる。会員様を増やしていこうとキャンペーンを組み込んだりしており、さらに会員数を増やしていきたい。 ―筑波山のホテルは、客室で食事をとる個室食が中心だが、亀の井筑波山では個室食は提供しないということか。 天満 以前は団体のお客様がメーンで、宴会場も大中小3カ所あったが、ビュッフェや客室に改装した。今回、個室食のメニューから一新してビュッフェに変えた。お客様のお声をお聞きすると「個室食なんだよね」というお声が結構あった。個室食が好きなお客様もいらっしゃるが、筑波山には個室食のお宿(ホテル・旅館)がたくさんある。ビュッフェのレストランをもっているお宿はあまりない。こういった差別化を図りながら、地元の古くから営業されているお宿との共存を目指して、より多くのお客様が筑波山に来ていただけるコンセプトを考えたい。 ―地元のつくば市では職場の忘年会や宴会で筑波山のホテルを利用するというイメージがある。亀の井筑波山では宴会は受けないということか。 天満 宴会をされたい方はほかのお宿があるのですみ分けをしたい。 ―訪日外国人客(インバウンド)はどれくらいを想定しているのか。 天満 今現在のインバウンドは15%ぐらい。私の中ではまず15%から30%に増やしていきたい。インバウンドをとっていきたいというのはビュッフェにした理由の一つでもある。海外からのお客様でメニューが口に合わないものがあったり、食べられないものがあったりということがある。ビュッフェスタイルであれば好きなものが食べられる。地元の食材をふんだんに使った茨城県のおいしい料理を知っていただきたいと料理を準備させていただいた。温泉もあり、東京からのアクセスがいい。筑波山は標高877メートルと百名山の中でも低いが、コースによってはすごくきつかったり、なだらかな魅力あふれるコースがある。そういったことを身近に楽しめる場所として最適な場所だと思う。海外の方も、地元の方も大切しながら、共存できるホテルづくりをしていきたい。 ー県内には大洗、潮来、筑波山と3件の亀の井ホテルがある。どのように連携していくのか。 天満 例えば亀の井筑波山に問い合わせがきたお客様に「うちはいっぱいですけど、こちらはいかがですか」とご紹介ができたり、あと食器とか「こういういいものがあるから使ってみたら」と情報交換がすごくしやすかったりする。 ―米国の外資系ホテルが初めて筑波山に進出してきたということで、地元としては期待やさまざまな受け止めがある。 増井 本社チームマネージャー つくばグランドホテルの時代は地域との共存はすごくあったと思う。私たちが運営を引き継いで、どういうホテルになるんだろうという期待を皆さんにもっていただいている。ホテルも運営会社も、近隣の皆さんと一緒に筑波山という地域、茨城という地域を盛り上げたい、観光に貢献したい、寄与したいというスタンスでいる。(榎田智司、鈴木宏子)

「魔女のフェスタ」29日石岡の廃校で 妖怪仮装パレードも

筑波山麓で、アロマテラピーなどの知識や技術を学ぶ「魔女の学校」を主宰するいしざき緑子さんらが29日、石岡市柴内の廃校、朝日里山学校で第7回「魔女のフェスタ」を開催する。受講生らがマルシェ形式で手作り品やオーガニックの品を販売する。雑貨店のほか占いの店、飲食店など計約100店が出店する。 今回のテーマは「天球オペレッタ」。関東一円から様々なジャンルのアーティスト11組が参加し、音楽ステージが途切れることなく繰り広げられる。妖怪仮装パレードなども行い「楽しい所に人は集まる」「はじけたい」という気持ちを体現してもらう。いしざきさんは「母なる天球の中を回って巡る星々のように、共鳴し合い共振して、どんなエネルギーも豊かな愛で包んでいきたい」と話す。 いしざきさんは2021年からつくば市国松の古民家で「魔女の学校」を主宰し、春と秋の年2回、受講生らが出店する「魔女のフェスタ」を開催している。春は、ドイツ各地で毎年4月30日に開催される魔女まつり「ヴァルプルギスの夜」を手本に開催する。いしざきさんは4月30日が誕生日で、特別な日だという思いが強い。29日は同まつりの前夜祭にあたり、スペインでは魔女が春をお迎えするというおめでたい日だという。 同フェスタには受講生たちのほか、いしざきさんのネットワークで毎年、関東一円からたくさんの人が参加する。雑貨、オーガニック、タロット、占いなどの出店のほか、体育館ではつくば市国松で子供の交流施設「じゅんばあの家」(2023年12月14日付)を開設する関係者でつくる「チームじゅんばあ」による昭和の遊びなどが行われる。 主催者のいしざきさんは「魔女の学校はあるがままの自然を大事にしている。グレゴリオ暦(太陽暦)ではなく太陰暦を使うことによって、自然の営みに入ることができ、免疫力も上がる。天球オペレッタに参加してもらい元気になって欲しい」と話す。(榎田智司) ◆魔女のフェスタは29日(月・祝)午前10時~午後4時、石岡市柴内630、朝日里山学校で開催。入場無料。問い合わせは魔女のフェスタのインスタグラムまたはフェイスブックへ。今年度の魔女の学校は5月開講予定、春の受講生を募集している。

カタクリが開花 筑波山山頂付近 見頃は4月半ば

筑波山山頂に近い御幸ケ原のカタクリの里で、春の訪れとともにカタクリの花が咲き始めた。「春のはかない命」(スプリング・エフェメラル)と呼ばれる春先に咲く草花の一つ。つくば観光コンベンション協会によると、今年は3月に積雪が3回あった影響で例年より開花が遅れ、見頃を迎えるのは4月中旬になる見通しだという。 筑波山はカタクリの群生地と知られ、標高約800メートルの御幸ケ原のほか男体山山頂周辺の自然研究路、ケーブルカー沿いなどに約3万株が自生している。カタクリ草はユリ科カタクリ属の多年生植物で、山野に群生して、薄紫色のかれんな花をうつむき加減に咲かせる。 カタクリの里は筑波山ケーブルカー筑波山頂駅から、山頂連絡路を女体山方向へ約100メートルほど進んだところに位置し、3月25日から5月19日まで「筑波山頂カタクリの花まつり」が催される。4月下旬には白色のニリンソウも咲き、二つのかれんな花のコントラストを楽しむことができる。 4日午前、カタクリの里で、50輪ほどが開花しているのが確認できた。観光客はまだまばらだった。 同協会観光推進課の本間良太さん(39)は「2月は暖かかったが、3月に雪が降ったため、ソメイヨシノと同じようにカタクリも開花が遅れ、見頃を迎えるのも遅れると思う。山頂付近は整備されているので、これからも多くの人に訪れてほしい」と話している。(榎田智司) ◆問い合わせは電話029-869-8333(つくば観光コンベンション協会)へ。

つくばオフィスをオープン バックオフィスのタスキー

経理や労務などの業務を後方から支援するバックオフィス総合支援事業のタスキー(本社 東京都中央区、青谷貴典社長)は22日、つくば市二の宮に「つくばオフィス」をオープンした。同グループの拠点としては5カ所目となる。つくば市内のホテルで21日、関係者約200人を集め記念式典が催された。 つくばは人口増加が続き、集積する研究機関を中心にスタートアップ企業が生まれ続けていることから、ローカルビジネスやスタートアップビジネスを支援しようと開設した。 つくばオフィスは、スタートアップ企業の創業支援や、中小企業の会計、税務、人事、労務などを支援する。公認会計士の菊池友博さんが所長を務め、公認会計士、税理士など4人が配属される。 会計ソフトなどを開発するマネーフォワード社のクラウド型会計ソフトを積極的に活用し、業務を代行する企業の日々の取引データの入力などを効率化して会計業務にかかる時間を大幅に短縮。さらに給与計算、売上管理、労務管理、経費精算などをネットワーク化することなどが特徴だ。 地域開発を行うグループ会社のBTも同オフィスに拠点を置く予定で、外食産業の坂東太郎(青谷英将社長)と、筑波山麓でフォトウェディング事業や複合施設運営事業などの地域開発を行う。 タスキーは2018年に設立された。バックオフィスのDX化が強みで、バックオフィス総合支援事業、HR(人材)ソリューション事業、経営コンサルティング事業を3つの柱としている。マネーフォワード主催のフォワード・アワード2021では「バックオフィス改革 チャレンジ賞」を受賞した。 タスキーグループは、グループを統括するタスキ―を中心に、士業業務を担うタスキー税理士法人、タスキー社会保険労務士法人、バックオフィスアウトソーシング事業を運営するB-tas、地域開発事業を担うBTの5社から構成されている。グループ全体で、公認会計士、税理士、中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士など計32人のスタッフがいる。 21日の記念式典であいさつした青谷貴典社長(44)は「坂東太郎、青谷洋治会長の次男として生まれ、両親が事業を大きくしていくのを見てきた。社員や地域のために、坂東太郎の後を継ぎたかったが、公認会計士の道を目指した。主に仙台で仕事を学び、自分のふるさと茨城の地で事業を始めることになった。人手不足など経営者の悩みに沿った運営をしていきたい」と語った。 つくばオフィスの所長を務める菊池友博さん(34)は「人と人をつなぎ未来へたすきをつなぐということで、会計、労務、人事、情報サービス、ウェブサービスなど専門的な業務を総合的にやっていく。スタートアップ企業の多いつくばという地で役立ちたい」と意気込みを語った。 式典ではつくば市の五十嵐立青市長、筑西市の須藤茂市長、阿見町の千葉繁町長、境町の橋本正裕町長のほか、桜井姚つくば市商工会長、岡田広元参議院議員らが祝辞を述べた。続いてマネーフォワードSMB事業推進本部の服部穂住さんが「企業を成長させる組織づくりとは」というテーマで記念講演し、中小企業のDX化やバックオフィスの重要性などを語った。(榎田智司)

13カ国49人が巣立つ 日本つくば国際語学院で卒業式

つくば文化学園が運営する日本語学校「日本つくば国際語学院」(つくば市松代、東郷治久理事長)の卒業式が8日催された。13カ国49人の卒業生が出身国の民族衣装などの上に青いガウンをまとい、学士帽をかぶって笑顔で式典に臨んだ。 卒業生の出身国は中国、ネパール、スリランカ、ウズベキスタン、ミャンマー、韓国、イラン、ガーナなど13カ国。卒業式は同校に隣接する料亭、山水亭(つくば市小野崎)で催され、恩師、在校生、関係者らが見守った。卒業後はそれぞれ大学、専門学校、就職とそれぞれの専門分野に進む。 式典では、精勤賞、皆勤賞の表彰に加えて、筑波大学大学院システム情報工学研究群に進む中国出身のウェイ・マンマンさん(24)が難関大学合格者として表彰された。ウェイさんは2年前に来日、市内の産業技術総合研究所で働きながら同校に通い日本語を勉強した。 日本語でスピーチしたウェイさんは「学校生活は最初、日本語が分からなくて辛かったが、次第にたくさんの国の方と知り合えて良かった。異なる文化を理解し、多様性を認め、異文化に対するお互いの驚きを語り合ったりするのは、文化の成り立ちなどを理解する上で大変良かった」と語り、「現在産総研で人工知能の研究をしている。大学院でもしっかりと勉強したい。将来、日本で仕事をするか中国で仕事をするかは決めていない」と付け加えた。 東郷理事長は「昨年までは(新型コロナによる)水際対策の影響もあり卒業生が6人だったが、今年は49人とにぎやかになった。来年度はすでに71人の入学が決まっており、日本語学校の需要は拡大している。国際化する社会に役立ちたい」と述べた。(榎田智司)

土浦が舞台、高野史緒さん小説 SF読書ガイドで年間1位

「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」 土浦市出身の作家、高野史緒(たかの・ふみお)さんの最新作で、土浦が舞台の青春SF小説「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」(ハヤカワ文庫)が、2月15日発行のSF読書ガイドブック「SFが読みたい!2024年版」(早川書房発行)国内編で第1位を獲得した。同書はSFファンの間で全国的に話題となり、聖地巡礼として小説に描かれた場所を訪れるファンもいるという。 同書は、別々の二つの世界に住む土浦二高の高校生、夏紀と、飛び級で大学に進学し量子コンピュータの開発に関わっている登志夫の男女2人が主人公。夏紀が生きる世界は、宇宙開発が進みながらもインターネットは実用化されたばかり、登志夫が暮らす世界は、宇宙開発は途上だが量子コンピュータの運用が実現した。二つの世界は関係を持ちながら物語が進む。 小説には、土浦市の亀城公園を始め、旧土浦市役所、料亭「霞月楼」のほか、現在は閉店した百貨店「小網屋」、ハンバーガー店「チャンプ」などが登場する。さらにつくば市のノバホール、筑波大学なども出てくる。 小説の題名になっている「グラーフ・ツェッペリン」は第2次世界大戦前の20世紀前半に世界一周を達成したドイツの巨大飛行船「ツェッペリン伯号」を指す。世界一周の途中の1929年、阿見町にあった霞ケ浦海軍航空隊に立ち寄り、当時は東京からも多くの見物客が訪れるなど大きな話題となった。 高野さんは1966年土浦市生まれ、90年に茨城大学人文学部人文学科を卒業し、地元出版社に勤務した。その後94年にお茶の水女子大学人文科学研究科修士課程を修了し、1995年「ムジカ・マキーナ」(新潮社)で作家デビューした。同書は「歴史改変SF」として高い評価を得ている。2012年には、ドストエフスキーの名作の続編という体裁をとった「カラマーゾフの妹」で第58回江戸川乱歩を受賞した。昨年のSFファンの祭り「日本SF大会」では、「カラマーゾフの兄妹 オリジナルバージョン」〈盛林堂ミステリアス文庫〉がセンス・オブ・ジェンダー賞の「SF初志貫徹賞」を受賞した。 高野さんの作品は海外を舞台としたものが多い。国内それも自身が青春時代までを過ごした土浦市を舞台にした作品は珍しい。 「SFが読みたいー」は早川書房が毎年2月に発行している読書案内で、国内外の年間SF作品のベスト30位までを発表している。順位は、SF小説界で活躍する作家、評論家、翻訳家83人が、2023年度の新作SF小説の中から、印象に残った作品を5点選び点数を付ける。高野さんの作品は231点を獲得し、1位となった。SFの通が、傑作と認めた形だ。2位は久永実木彦さんの「わたしたちの怪獣」で196点だった。 高野さんは「故郷土浦を舞台にした作品で1位になれて、こんなにうれしいことはない。うちは先祖代々高齢出産の家系なので祖父母がグラーフ・ツェッペリンを見ている世代。その時祖母は母を妊娠していた。そんなこともあって、ツェッペリンのことはいつも心にあり、いつか書いてみたいテーマだった。もう土浦を『聖地巡礼』して下さった読者も何人かいらっしゃる。これからももっと多くの方に読んでいただければうれしい」などとコメントした。(榎田智司)

能登半島地震でのDMAT活動を報告 筑波メディカルセンター

「あれで良かったのか、気が晴れない」 能登半島地震の災害支援で活動した筑波メディカルセンター(つくば市天久保、河野元嗣病院長)の災害医療支援チーム(DMAT)による活動報告会が20日、同病院内で開かれた。救急診療科医長で今回の活動の隊長を務めた栩木愛登(とちき・あいと)医師(40)は「要請に従い活動は無事やってこられたが、あれで良かったのかと気が晴れない」などと振り返った。 同病院からDMATチームとして1月6~8日、能登半島地震の災害支援第3次隊として医師1人、看護師3人、業務調整員2人の計6人が石川県に派遣された。隊員らは7日、避難所となった珠洲市内の老健施設3施設の入所者らの健康状況調査や支援物資の搬送を実施した。翌8日には、介護度が高い高齢者を収容している別の老健施設入所者らの健康状況評価や支援を実施し、体調不良者を珠洲総合病院に医療搬送などした。 20日の報告会は同病院の職員を対象に開催した。報告した栩木医師は、パワーポイントでスライドなどを映しながら活動内容を詳細に説明した。 派遣が決まった後の準備段階では、雪道を走るスタッドレスタイヤがなかなか準備できなかったり、連絡役の業務調整員の確保に手間取ったりしたことが報告されたほか、能登半島では道路が寸断され、通常15分の道程を進むのに3時間近くかかり、報道で知っていたよりも被害状況がひどかったことなどが報告された。 派遣先の老健施設は、職員自身が被災したことにより通常より少ない職員での運営を余儀なくされていた。さらに避難者が押し寄せ、24時間体制で管理を求められたなど施設の職員が大変疲弊していたことなどが報告され、栩木医師は「地獄があった」と話した。 避難地はライフラインが寸断され水道が使えないため、隊員も段ボール製の非常用簡易トイレを使用したり、老健施設の事務所の床に寝袋で寝るなどしたという。 栩木医師は活動を振り返ると、出動にスタットレスタイヤとかチョッキタイプのユニフォームなど必要な物品の準備をしておかなければいけないと思ったとし、「活動が体力的には特に辛いかったわけでもなかったが、帰ってきてじんましんが全身に出来たりしたので精神的なダメージが比較的大きかったのだと思う」と述べた。 同病院の志真泰夫代表理事は活動をねぎらい「地震はどこにでも起きることだから、当院も免震構造の施設にしていかなければならない」などと付け加えた。 DMATは厚労省が阪神大震災の教訓から2005年に設立した。医師1人、看護師2人、医療事務や救急救命士など業務調整員1~2人で編成され、1チーム原則3日間、被災地にいる救急患者の治療やサポートをしたり、避難所にいる被災者の感染症に対する処置を行ったりする。 同病院のDMATは2011年の東日本大震災、12年のつくば北条竜巻、15年の常総市豪雨災害などにも出動した。今回、震度7以上の地震が起きた能登半島地震では全国のDMAT隊員に一斉に連絡が入り支援準備に入ったという。(榎田智司)

メタバース「バーチャルつちうら」17日公開 アバターで疑似体験を

パソコンやスマートフォンを使って、自分のアバター(分身)がインターネット上にある三次元の仮想空間の中に入り、自転車道「つくば霞ケ浦りんりんロード」を走ったり、湖畔から霞ケ浦を見渡したり、花火を鑑賞したり、施設の中に入って写真展を見たり、観光情報を探すなど、土浦の観光を疑似体験できるメタバース空間「バーチャルつちうら」が17日、公開される。 80種類の中から自分のアバターを選んで入室する。りんりんロードのサイクリングは360度の3D動画で疑似体験できる。仮想空間の中で名産品を販売したり、展示会やセミナーを開催したり、市政情報を発信したりもする。仮想空間にいる他のアバターと会話することも可能だ。 「自転車のまち土浦」など同市の魅力を発信し来訪のきっかけにしてほしいと、土浦市とNTT東日本茨城支店がNTTスマートコネクトと連携して構築した。メタバースを活用する自治体は、愛知県瀬戸市、山梨県北杜市、東京都江戸川区、福岡県福岡市に次いで全国で5番目という。 2022年12月、土浦市とNTT東日本が高齢者のデジタル活用を支援する連携協定を締結したのがきっかけ。その中で、メタバース空間の構築や360度の動画制作に実績のあるNTTスマートコネクトと連携して「バーチャルつちうら」の構築に取り組んだ。仮想空間はプラットフォームの「DOOR」を用いている。 公開を前に16日、土浦市役所で公開イベントが行われ、安藤真理子市長とNTT東日本の松木裕人茨城支店長のアバターが「バーチャルつちうら」に登場、企画の狙いやコンテンツの紹介をした。 その後、それぞれ別室から本人が現れてあいさつ。安藤市長は「土浦の発展のため、たくさんの人が訪れてくれるようにコンテンツを充実させていきたい」と述べた。自分のアバターについては「少し若くてかわいすぎた」と感想を話した。 「バーチャルつちうら」には同市のホームページから入室することができる。(榎田智司)

紅梅は満開、白梅5分咲き 筑波山梅林

17日 梅まつり開幕 最高気温が4月中下旬並みと暖かさが続く中、筑波山中腹にある筑波山梅林(つくば市沼田)では15日、紅梅が満開、白梅が5分咲きとなっている。白梅が満開になるのは2月下旬ごろになると予想されている。今年の筑波山梅まつりは明日17日開幕する。 同梅林は、関東平野を見渡す標高約250メートルに位置し、暖かい日差しが当たる南斜面にある。広さ約4.5ヘクタールに白梅や紅梅などが約1000本植えられており、筑波石といわれる斑れい岩の巨石と梅のコントラストに独特の趣があるとされる。晴れた日は富士山を見渡すことができ関東の富士見百景に選ばれている。1970年に開園、2005年にリニューアルした。 15日は春一番が観測され、同市の最高気温は21.4度と4月下旬から5月上旬並みを記録した。平日にもかかわらず梅林には多くの観光客が訪れ、上着を脱ぎ園内を散策する人の姿が見られた。 地元の沼田地区から訪れた男性(73)は「梅林には散歩がてらにかなりの頻度で来ている。暖冬なのであっという間に満開になりそうだ」と話していた。中国から訪れたという観光客が梅の花をバックに自撮り写真を撮影したり、地元の園児が遠足に訪れるなど、にぎやかな声が響き渡っていた。 17日開幕する第51回筑波山梅まつり(筑波山梅まつり実行委員会主催)は3月17日まで。会期中は、つくば観光大使の出迎え、筑波山名物ガマの油売り口上の実演、3月3日は筑波山水系の地酒を新酒で楽しめる「新酒DE筑波山地酒フェス」が催される。山麓の廃校には昨年11月、筑波山ジオパークの拠点施設「筑波山ゲートパーク」がオープンし、周遊観光による市北部地区の活性化が期待されている。(榎田智司) ◆筑波山梅まつりの問い合わせは電話029-869-8333(つくば観光コンベンション協会)

つくば、土浦、水戸にEVバス 19日から3台が運行 関東鉄道

関東鉄道(本社土浦市、松上英一郎社長)は19日から、つくば中央、土浦、水戸の各営業所に新型の電気自動車(EV)バスをそれぞれ1台、計3台導入し、路線バスとして各地区で運行を開始すると発表した。昨年6月、守谷営業所に2台を導入したのに次いで、同社のEVバスは計5台となる。 定員80人の大型車で、フル充電した場合の運行距離は約240キロ。座席は26席あり、全座席にUSBの端末が付いている。床面はフラットで、障害者やベビーカーなどにも配慮した段差無く乗り降りできるノンステップバスとなっている。災害時には電源供給車としても使用できる。購入は国交省の補助金「訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金」を活用し、2分の1の補助を受けた。 運行路線は、つくば中央営業所(同市上横場)が市内循環と牛久、土浦、常総、取手、つくばみらい行き、土浦営業所(同市川口町)が市内循環と阿見、つくば、牛久行き、水戸営業所(同市住吉町)が市内循環と茨城町、小美玉市、石岡行きとなっている。各営業所1台がさまざまな路線を走行する。 EVバスは走行時に二酸化炭素や排気ガスを排出しない。エンジン音や振動などがほとんど感じられず、音が静かなのが特徴だ。車内にはカメラが配置され、運転席から客席がモニターできるようになっていて安全に配慮配備している。 3台のバスのデザインは昨年11月~今年1月にそれぞれの地域の観光をアピールしたものを公募し、社内で各1点を選考した。つくば営業所のバスは、EVの充電ケーブルをモチーフに、筑波山のシルエット、研究をイメージした六角形の幾何学模様、地球と太陽、宇宙を表現し、守谷市在住の税所(さしょ)早苗さんがデザインした。 土浦は、シンボルのオランダ風車や自転車、レンコン、ハスの花をちりばめ、牛久市在住の青木杏香さんがデザインした。水戸は、水戸黄門の着物の色を彷彿(ほうふつ)とさせるイエローに、水と緑の自然都市をイメージさせる青緑色の水玉模様と梅の花をちりばめた。流線は納豆の糸引きをイメージし、大阪府の小林咲希さんのデザインを採用した。 関東鉄道の廣瀬貢司常務(57)は「現在全営業所で338台のバスが走っているが、今後EVバスはさらに増えていくだろうと思う。EVバスの導入は、当社グループの経営理念や行動指針に基づいたもので、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて取り組みたい。SDGs の目標である『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』『気候変動に具体的対策を』に貢献していくことを目指したい」と話している。 17日には「新型EVバスお披露目撮影会」を開催し、試乗したり撮影したりできるので、応募してほしいという。(榎田智司) ◆記念イベント「新型 EV バスお披露目撮影会」は2月17日(土)開催。 集合は午前9時30分~10時、土浦駅東口。行程は午前10時、土浦駅東口を出発→水戸営業所→土浦営業所→つくば中央営業所を回って、午後4時つくばセンターに着く。荒天中止。募集人員40人、参加費7000円。①各営業所でEVバスと特徴ある車両を並べた撮影会②土浦営業所で新型EVバスに試乗③参加記念に限定バスグッズをプレゼントする。昼食付き。参加方法は、関鉄観光バス予約サイトで受け付ける。先着順。問い合わせは関鉄観光株式会社(電話0120-22-3725)へ。電話の受け付け時間は月曜~土曜日の午前9時~午後5時30分。

三村山不殺生界碑 つくば市有形文化財に指定

鎌倉時代の僧侶、忍性が寺域整備を裏付け つくば市小田にある石造物「三村山不殺生界碑(みむらさんふせっしょうかいひ)」が市有形文化財に指定された。貧者やハンセン病患者など病人の救済に尽力した鎌倉時代の僧侶、忍性が、不殺生界を定めて寺域を整備したことを裏付ける重要な歴史的資料という。ほかに同市臼井にある弘法大師像など「立野大師堂石仏群・175軀(く)」が市独自の市地域文化財に認定された。 市有形文化財の指定は2004年7月以来約20年ぶり、84件目。市認定地域文化財は13年1月以来11年ぶりで、筑波山ガマの油売り口上に次いで2件目となる。いずれも市教育委員会が1日、指定及び認定した。 三村山不殺生界碑は高さ1.5メートル、幅1.3メートル、厚さ0.13メートル。黒雲母片岩で造られた板碑で「建長五年 癸丑/三村山/不殺生界/九月十一日」という銘文が刻まれており、鎌倉時代中期の1253(建長5)年に製作されたものだとわかる。現在小田にあるが、もともと宝篋山の山麓にあり、運搬されてきたと推測されている。現在は雨除けの屋根が架けられているが、風雨による経年劣化により表面がはがれやすくなっており、銘文の文字もかなり薄くなっている。現在は個人が所有している。 西大寺(奈良市、真言律宗)の僧侶だった忍性は鎌倉時代、布教活動のため関東に行き、宝篋山の南麓、三村山極楽寺を1252年に律宗に改めた。さらに小田氏の保護を得て整備、拡張するなど、同寺を関東の布教の拠点として整備していく過程が分かる資料という。 年号の刻まれた石造物としては市内最古。三村山極楽寺に関わる石造物は県やつくば市、土浦市が指定するものがすでに多くある。今回は他の石造物と比較しても歴史的な重要性は遜色ないという。 市教育局文化財課の石橋充課長は「最初、つくば市のボランティアグループから報告があり、文化財として指定してほしいという依頼だった。市で調査し、大変貴重なものだと分かった。今後は劣化を防ぐために覆いを作るなど支援していきたい」と語った。 市認定地域文化財に立野大師堂石仏群 立野大師堂石仏群はつくば市臼井、立野地区の大師堂に納められ、江戸時代後期から明治時代の弘法大師像87体、如来・菩薩・明王像88体で構成されている。 伝承では、江戸後期の1832(天保3年)、地区に住む皆川重兵衛が、四国八十八ケ所霊場の霊山寺から持ち帰った土で土地を清めて弘法大師像を安置したことに始まり、地域の大師講の信仰対象になったとされる。1913(大正2)年には、筑波山南麓に「新四国八十八ケ所弘法大師尊霊場」がつくられて巡拝経路が整備され、大師像は分散配置されていたが、その後、大師堂に収められることになった。 江戸時代後期から大正時代にかけて製作された大師講に関わる石仏群で、 地域の信仰の歴史を物語る資料であり、現在に至る経緯も明らかであること。さらに、堂内に多数の石仏が整然と並んでいる状況は市内でも珍しく、現在でも地区住民で大切に管理されていることなどが認定の理由。 現在、大師堂と石仏は立野区会が所管し、市道から立野児童館や蔵王神社に向かう途中にあるトタン作りの小屋に保管されている。地元住民で構成される「橘会」のメンバーが、弘法大師の月命日である21日に集まり、石仏の袈裟(けさ)を作るなどの行事や、維持管理を行っている。 立野区会では、石仏群が持つ地区の歴史を示す文化財としての重要性が広く知られ、次世代に継承されていくことを期待しており、同地区に住む菊地武司(69)さんは「大師堂は地域の6~7人が一生懸命守っている。地元の人でも由来など知らない人も多い。市の認定を受けたことで、整備管理など地区全体で関わっていかなければならないのではないか」と話していた。 市指定文化財は、補助金などの支援により特に貴重なものを保護していくもので、現状を変更することは規制される。市認定地域文化財は市独自の制度で、幅広い物件を文化財とし保存や活用を促進していこうというもの。補助金の支援はないが規制は緩やかになっている。(榎田智司)

つくば、土浦で雪やみぞれ 登校は2時間繰り下げ

5日から6日にかけて南岸低気圧が本州の南を通過した影響で、つくば、土浦でも雪やみぞれが降り、両市の小中学校、義務教育学校は6日朝、登校時間を2時間繰り下げた。 気象観測地点のつくば市館野と土浦市ではいずれも積雪は記録されなかった。 つくば市消防本部によると同市内では6日午前11時までに、雪の影響により転倒したなどの救急搬送が2件あった。土浦市内では雪の影響による救急搬送は無かった。 つくば市南部、TXみどりの駅近くのみどりの中央公園では6日午前9時過ぎ、芝生に5センチほど雪が積もり、登校前に子供たちがそりで斜面を滑り降りるなどして遊ぶ姿が見られた。近所の家族と一緒に子供たちを連れて遊びに来た、近くに住む会社員男性(38)は「自宅にそりがあってなかなか使う機会が無かったが、雪が積もったので遊びに来た。子供が喜んでいてうれしい」と話し、小学1年の女子児童は「楽しい」と話していた。 つくば市北部の筑波山は6日朝7時30分ごろ、5合目より上が白く雪化粧した姿が見られた。この冬の筑波山の積雪は1月14日以来、2回目。一方、山麓の臼井地域では5日夜の雪はみぞれから雨に変わり、積雪はなかった。(鈴木宏子、榎田智司) 【7日追加】雪が止み、快晴となった7日朝は放射冷却で冷え、青空をバックに美しい筑波山が姿を見せた。

冬の北条市で豆まき つくば

節分の3日、つくば市北部の北条商店街で「冬の北条市」が開催され、豆まきが実施された。旧筑波町の中心地だった同商店街の振興を目指す「北条街づくり振興会」(坂井英幸会長)が主催した。 200人ほどの住民らが集まり、同振興会の坂井会長、五十嵐立青つくば市長、青山大人衆院議員らが壇上に登り、掛け声とともに、豆や紅白の餅、菓子、景品などを投げた。坂井会長は「福は内 福は内、鬼は外 鬼は外」と2回繰り返し、最後に「福でもってぶっ止めろ」と言い、北条地区に伝わる豆まきの掛け声を子供たちに説明していた。 北条市は毎年、季節ごとに計画されており、2月は冬の北条市と呼ばれ、例年豆まきが行われている。今年は開催日と節分がちょうど重なった。コロナ禍は不定期で開催しており、冬の時期の開催は4年ぶりとなる。 北条市は2007年から行われ、県の事業「元気あきない人材育成事業」が元になっている。北条市など古い街並みの商店街を生かした振興会の取り組みは経産省の「新・がんばる商店街77選」に選ばれている。旧郵便局を利用したカフェ・ポステンや国指定重要文化財となった「矢中の杜」なども街並みを構成している。 3日は豆まきのほか、26業者と県立筑波高校の生徒らが参加し、商店街に露店やキッチンカーが並び、地元住民らの交流が盛んに行われた。 振興会会員として当初から北条市に関わる市内に住む会田直美さんは「もともとは商店街の調査事業として始まったが、北条マイクリーム(北条米を使ったアイスクリーム)の開発、古民家再生、蔵を使ったコンサートなどが行われてきて、現在のような定期的なイベントを持つようになった。北条市はTX開通、東日本大震災、北条竜巻、コロナ禍を経て少しずつ形を変えながら続いてきた。現在どこの街並みもコピーをしたように同じ形だが、古くからの商店街には個性がある。地域住民でないからこそ北条市の魅力を感じて、活動に参加している」と話していた。 次回開催は5月のGW期間中を予定している。(榎田智司)

最優秀賞につくばの上野雅洋さん 土浦の写真コンテスト

土浦の景観や催事を美しくとらえた作品を公募した「第18回土浦の写真コンテスト」の表彰式が27日、同市大岩田、国民宿舎「水郷」霞浦の湯で開かれ、最優秀賞に手野のハス田の風景を撮影したつくば市、上野雅洋さん(52)さんの「幾何学模様」が選ばれた。主催は同市観光協会(中川喜久治会長)。 美しい自然、貴重な文化遺産、伝統芸能など土浦の風景や催事を再発見し広く紹介することを目的に、おおむね5年以内に本人が撮影という条件で、昨年10月に公募が実施された。県内外の67人から計226点の応募があり、審査の結果、最優秀賞に上野さんの作品、優秀賞に田井俊夫さん(かすみがうら市在住)の「亀城の春」、平堅次さん(土浦市)の「収穫」、北見隆久さん(土浦市)の「通い慣れた坂道」の3作品が選ばれたほか、16作品が入選した。表彰式には16人が出席し、表彰を受けた。 上野さんの「幾何学模様」は、夕闇が迫る中、あかね色に染まる空に、葉を落とし裸になったレンコンの茎や花弁が、無限の幾何学模様のように浮かび上がる瞬間をとらえた。 最優秀賞と同時に茨城県知事賞を受賞した上野さんは「レンコンは有名だが、どこで作られているか知らない人も多く、紹介したという思いでレンコン畑の写真を撮った。幾何学模様というタイトルはカメラを構えた瞬間思いついた。受賞は大変うれしくこれからも茨城県の良いところを撮り続けていきたい」と語った。 審査員を務めた土浦写真協会会長のオダギ秀さん(77)は「昨年に比べても良い作品が増えてきた。何をどう撮るか、カメラを使って作品を作るという思いが必要だと思う。カメラの性能が上がっても、気持ちの問題は変わらないので、これからも良い作品を撮り続けて欲しい」と述べた。 受賞・入選作品20点の展示会は28日から3月31日まで同市中央、土浦まちかど蔵で開催される。20点はさらに土浦の魅力を紹介するため、市国際交流協会を通じて、姉妹都市の米国パロアルト市と友好都市の独フリードリッヒスハーフェン市に送られる。作品は土浦市観光協会のホームページに掲載されている。(榎田智司)

移動投票車で高齢者が模擬投票 ロボットが立会人に つくば市

投票箱を積んだワゴン車が高齢者や障害者などの自宅前まで出向いて、住民に車内で模擬投票をしてもらう実証実験が23日から27日までの5日間、高齢化率が高い筑波山麓のつくば市筑波地区と臼井地区で実施されている。ワゴン車は実際の選挙で「移動期日前投票所」となる。市は今年秋の市長選・市議選で導入を目指している。 今回の実証実験は、内閣府の先端的サービスの開発・構築に関する調査事業に採択された。市は東京海上日動火災保険、KDDIなどと共に、今年秋の選挙での実現に向け技術的検証に取り組む。 26日は、同市臼井・六所地区区長の柳原敏明さん(68)の自宅前に移動投票車のワゴン車が来て、柳原さんは車内で模擬投票を行った。車内には投票箱が設置され、公職選挙法で定められた投票立会人については、1人が立ち会ったほか、分身ロボット「オリヒメ」が立会人に加わった。オリヒメは本投票所とつながっていて、カメラを通じて遠隔から投票の様子を見守る。また移動投票車は、車いすの障害者や高齢者が後方ドアから車内に入ることが可能なつくりになっている。 両地区住民には今月9日、封書が届き、模擬投票の参加者はそれぞれ、スマートフォンや電話で予約をしていた。①自宅まで移動投票車が来るサービスと➁自宅から移動投票所までの送迎するサービスと2つの実証実験が用意され、車が駐車できるスペースがある住民の自宅前にはワゴン車が出向いた。自宅前に車が停められない人には送迎車が準備され、送迎車を利用しての模擬投票も行われた。 柳原さんらの模擬投票に先立って26日は、記者向け説明会が実施された。五十嵐立青市長があいさつした後、市政策イノベーション部科学技術戦略課の前島吉亮課長が概略を説明。運営にあたるスパイラルの甲木空さん、KDDIの阿部英孝さんが詳細を説明した。国家戦略特区のスーパーシティを担当する内閣府地方創生推進事務局の菅原晋也参事官と、東京都荒川区の選挙管理委員会も視察に訪れていた。 市科学技術戦略課の前島課長は「スーパーサイエンスシティ構想の中に、インターネット投票というのがあり、本来はそれを目指したいが、まだ実現に至っていない。今回、住民サービスの一環として、誰一人取り残さない社会の実現を目指しており、市内でも人口減少が続き、高齢化率の高い筑波・臼井地区での実証を行うことになった」と話した。 模擬投票をした区長の柳原さんは「高齢化が進む地域なので新しい試みは歓迎したい。ただスマートフォンなど高齢者はあまり慣れていなかったりするので、参加の方法はもっと検討してもらいたい」と述べた。送迎車を使った模擬投票に参加した臼井地区の木村嘉一郎さん(94)は「選挙には家族に送迎してもらって行っていたが、自宅まで来てもらえればありがたい。秋の選挙には使えるようになれば良い」と語った。 同市は、2024年の市長選・市議選でインターネット投票を導入することを看板に掲げ、22年にスーパーシティに認定された。しかしネット投票に対しては、なりすましや強要などの課題が指摘される中、今年秋の選挙では実施できない。代わって市は、ネット投票導入につながるステップだと位置づけ、秋の選挙で移動期日前投票所を導入したい意向だ。これに対し公職選挙法を所管する総務省は、昨年7月の国家戦略特区ワーキンググループのヒヤリングで、今回の実証実験について「(ネット投票と)切り離して議論していく必要がある」という認識を示している。(榎田智司)

土浦の街をモノクロ写真で表現 市民ギャラリーが企画展

土浦の歴史ある街並みや変化、そこで生活する人々の日常を、モノクロ写真で表現した写真展「ツチウラ・モノクローム」が16日から、土浦駅前の同市大和町、土浦市民ギャラリーで始まった。同ギャラリーが主催する。 展示してあるのは、市内で活動する写真愛好家や愛好団体のメンバーが1993年から2023年までの約30年間に撮影した203点で、複合商業施設として土浦駅前に開業した1997年当時のウララビル(現市役所)、かつて桜町にあった銭湯「松の湯」、江戸後期や明治の建物が残る中城通りに面した改修前の県指定文化財「旧矢口家住宅」、霞ケ浦湖岸周辺に広がるハス田、新治地区の石仏など。 時間の流れとともに変化していく街並みを、土浦駅前を中心にモノクロ写真で改めて振り返るという内容で、色彩が排除されていることで、対象の質感や存在感、光がより鮮明に表現されている。 開催にあたっては、テーマ別にモノクロ作品を公募し、応募があった60代から70代の12人の作品が展示してある。12人は、石川多依子さん、岡本紀明さん、佐々木隆さん、関郷さん、高木紀英さん、高畑徹伸さん、多田明美さん、茅根英二さん、塚本留蔵さん、松延洋子さん、吉田宣好さん、吉原世都子さん。作品は1人2点から57点まであり、最も多い57点を出展した石川多依子さんは市内で個展を開催したこともある。 作品の大きさは、A3や半切(35.6×43.2センチ)で、個々人でフレームを作り出品していることから多少ばらつきもある。デジタルカメラを使いモノクロモードで撮影した作品のほか、カラー写真をモノクロにした作品などもあるという。 同市民ギャラリー主任の若田部哲さんは「モノクロ写真は構図が大事で、一瞬の光を切り取るという写真の原点がある。現代はスマートフォンなどで誰でも写真を撮れる時代なので、気軽に白黒写真に挑戦してほしい。個性的でアートっぽい写真が撮れると思う」と話す。(榎田智司) ◆同展は2月12日(月)まで、土浦市大和町1-1、アルカス土浦(市立図書館)1階、土浦市民ギャラリーで開催。入場無料。開館時間は午前10時~午後6時。月曜など休館。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー)へ。

筑波山に初雪 例年より1カ月ほど遅く

筑波山に13日午後、この冬初めて雪が降った。14日朝には頂上付近にうっすらと雪が積もっている様子が麓から見られた。 記者は筑波山の麓に住み、15年ほど前から筑波山の初冠雪の写真を撮りSNSに投稿している。昨シーズンの筑波山の初冠雪は12月5日、例年は12月中旬ごろで、今シーズンは例年よりも1カ月ほど遅い。 13日は上空に強い寒気が流れ込んだ影響などから、筑波山周辺は午後3時ごろから7時ごろまで降雪があった。 中腹のつつじケ丘付近でも激しく雪が降り、筑波山頂から夜景を見るロープウェーの夜間運行「サンセット&スターダストクルージング」は13日午後3時ごろから荒天の影響のため中止となった。 筑波山の気象状況はライブカメラで確認することが出来る。(榎田智司)

防災と組み合わせ4年ぶり「どんど焼き」 つくば 田中青年会

地元青年会が中心になり、つくば市田中で7日、4年ぶりに開かれる「どんど焼き」が、今年は防災と組み合わせた形で開催される。地域住民が大勢集まる行事を防災意識向上に結び付けたいと、防災士の民間資格を持つ田中青年会会長で会社員の松崎貴志さん(43)が呼び掛けた。 田中地区では例年、どんど焼きに地域住民が200人くらい集まる。当日は青年会が豚汁、もつ煮込み、餅などを200人分用意して無料でふるまう。今年は地元の田中子ども育成会に協力してもらい、アルファ米の防災炊き出しセット200食を用意し、ご飯を炊いて食べてもらう。「年配の人の中にはレトルト食品を食べたことがない人がおり、防災食は慣れていないと非常時に食べられないことがあるため、普段から食べておこうということ」と松崎さんは狙いを話す。 田中地区は桜川に隣接する。2019年の台風19号で川の水が増水し道路や水田が浸水、集落まで迫った教訓から、松崎さんは昨年2月にも地域の子供会と防災キャンプを実施した(23年1月5日付)。 防災キャンプは子供中心の企画で、高齢者まで巻き込むことが出来なかったため、松崎さんは新たな取り組みが必要だと考えていた。コロナ禍で実施できなかった「どんと焼き」が今年再開され地域住民が大勢集まることから、防災と関連付けて開催できないかと考えた。 昨年4月に企画を青年会のメンバーに話すと「なぜそんなことをやらなければいけないのか。予算はどうするのか」という疑問の声も出たが、イベントの手順を考えるなど工夫をして、賛同を得た。 子ども食堂通じ「フェースフリー」に出合う 松崎さんは全国の子ども食堂を支援している認定NPO「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(湯浅誠理事長)のスタッフの一員でもある。むすびえを通して昨年、愛媛県宇和島市で開かれた子ども食堂の炊き出し体験イベント「ぱくパーク」に出掛け、「フェーズフリー」という言葉に出会った。 イベントは、子ども食堂を非常時にも安心して食事がとれる防災拠点にしようという取り組みの一環で、フェーズフリー協会(東京都文京区)が主催するフェーズフリーアワード2023の金賞を受賞している。 フェーズフリーとは、いつも行っていることを非常時にも役立つようにデザインしようという考え方で、日常時と非常時という2つのフェーズをフリーにするという意味。松崎さんは宇和島でイベントを手伝い、地元つくばでも出来ないかと考えた。毎年地域で行っている行事を、もしもの時に役立つようにしたいと、どんど焼きの際に防災訓練を兼ねた炊き出しセットを提供しようと思い立ったという。 松崎さんは「日常から防災意識をしっかり持っていれば、非常時に役に立つ。『いつも』が『もしも』に役に立つというフェーズフリーの意味を浸透させるきっかけにしたい。地区としては年に1、2回、防災訓練を開催できれば」と話す。(榎田智司)

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