金曜日, 11月 22, 2024
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川エビ捕り、漁協が料理教室【桜川と共に】12

季節ごとシリーズ化目指す つくば市内を流れる桜川で捕れた川エビを使った料理体験会が17日、つくば市栗原の栗原交流センター調理室で開かれた。桜川漁業協同組合(鈴木清次組合長)が主催した。桜川への関心を広げたいと、在来魚を用いた「親子料理教室」に向けたもので、来年度以降は川エビをはじめ、フナやコイ、ハゼ類のゴロなど、季節ごとに桜川で捕れる魚介類を材料にしてシリーズ化を目指す。この日は同漁協の鈴木清次組合長(82)が講師を務めた。 地域住民にとってかつて貴重なタンパク源だったが、漁獲量が減り今では作る家庭も少なくなった。出来上がった川エビのつくだ煮を口にすると参加者からは、「美味しい、絶品」「楽しくて普段の仕事を忘れられる」などの歓声が上がった。参加者は地元の女性5人。鈴木組合長が会長を務めるつくば市水質浄化対策推進協議会のメンバーで、日ごろ河川敷でごみ拾いや花壇の整備などに取り組んでいる。 この日のために用意したのは、鈴木組合長が桜川で採った1.5キロほどの大ぶりの川エビ。これから11月にかけて旬を迎えるという。鈴木組合長は、活動の幅を広げようと60歳で調理師免許を取得し、漁協などの活動の中で、川エビやコイなど、桜川の魚介類で作った手料理を参加者に振る舞っている。 この日作った川エビのつくだ煮も鈴木組合長の自信作。エビの量に見合った鍋を選び、砂糖、塩、みりん、醤油を適量混ぜ合わせ、沸騰したところにエビを入れていく。弱火で2時間煮込むと完成だ。ポイントはたっぷりの砂糖と、少量の塩。塩味が砂糖の甘さを引き立てる。 桜川への関心広げたい 今回の活動は、桜川が流れる地域住民に、川への関心を持ってもらうことだと鈴木組合長は話す。背景にあるのが、水質悪化や川辺の荒地化、増加する外来種と減少する在来種などだ。かつて桜川はきれいな水と豊かな漁業資源に恵まれていた。霞ケ浦を代表する在来魚のワカサギは、桜川など流入河川を産卵場にするが、桜川に遡上するワカサギも激減し、漁獲量はピーク時の1パーセント未満にまで減っている。 さらに漁協が抱える課題が組合員の高齢化だ。現在71人いる組合員の平均年齢は80歳を超えている。同漁協では、稚魚や卵の放流、川辺の整備・清掃等を通じた河川管理をしてきた。今後は多様な市民とのつながりの中で、地域住民の関心を得るとともに、次世代を担う若い世代の参加が必要だと考える。 桜川漁協では、子どもたちに伝統漁法の投網を教えたり、地域イベントにブースを出展したりするなど地域に向けた啓発活動を行ってきた。最近では、桜川で増えるアメリカナマズのほか、ブラックバス、ブルーギルなど特定外来魚の駆除をイベント化した「特定外来魚釣り大会」を開催すると、市内の中華料理店が霞ケ浦のアメリカナマズを料理した新メニューを開発するなど、桜川を通じて市民との新しいつながりが生まれつつある。今年5月からは、市民団体やNEWSつくばと漁協が協力し、伝統漁法など漁協の活動を参加者が学びながら、川の環境保全への関心を高めるための「桜川川守養成プログラム」が始まった。 鈴木組合長は「料理教室も、桜川への啓発につながれば」と期待を込める。(柴田大輔) ➡「桜川と共に」の過去記事はこちら

「汚した環境 未来に…」放流体験通し標語 つくばの児童16人表彰【桜川と共に】11

県内の小学4年生が河川での体験活動を通して学んだことを標語にする「『水辺に親しむ野外体験学習』標語コンクール」で、つくば市内の小学生16人が県知事賞など5つの賞に選ばれ13日、同市役所で表彰式が催された。 16人は栄小、栗原小、秀峰筑波義務教育学校の4年生で、桜川でフナの稚魚を放流し、体験を通して学んだことを標語にした。今年度は237人の応募があった。 県知事賞に選ばれたのは、栗原小の桜井琴乃さんの「よごしたかんきょう 未来のわたしたちにかえって来る」、つくば市長賞は秀峰筑波の井上結衣さんが作った「フナつかみ 子どもをはなし ふやしてこ」、同市教育長賞は同校の植松瑞希さんの「フナのち魚 全員むれてぼうけんだ」など3句が選ばれた。ほかに県内水面漁業協同組合連合会長賞に3句、桜川漁業協同組合長賞に8句が選ばれ、それぞれ表彰状を受け取った。 県内水面漁協連合会(高杉則行会長)が主催する標語コンクールで、県内の河川や湖沼で実施された漁協主催の「水辺に親しむ野外体験学習」に参加した児童から標語を募る。1996年から始まり、桜川漁協は2005年から参加。桜川流域の小学校に通う児童が毎年夏に体験を行って、学習したことを標語にまとめている。 表彰式には五十嵐立青つくば市長や森田充教育長、県内水面漁協連合会の八角直道専務理事、桜川漁協の鈴木清次組合長らが出席した。 県知事賞に選ばれた桜井琴乃さんは「受賞してびっくり。体験学習で桜川にゴミがあることを知った。水をきれいにしたいと思い、家ではお皿の油を紙で拭いてから洗うようにしている。これ以上汚すことのないよう、私たちが川をきれいにしていきたい」と話した。つくば市教育長賞に選ばれた植松瑞希さんは「受賞してうれしい。フナの放流体験で、魚が群れになって泳いでいくのを見て標語を作った」と述べた。 桜川漁協の鈴木清次組合長は「70年前、桜川は清流だった。魚が群れになって泳ぐ様子を夢にみるくらい。あの頃の清流に戻すためには皆さんの力を借りないといけない」などと話し、児童らの受賞を祝った。県農林水産部水産振興課の土屋圭巳技佐は「今年度は県で309人が屋外学習に参加した。川の環境を守り将来に引き継いでほしい」とあいさつし、児童らに表彰状を手渡した。(田中めぐみ)

ボランティアで荒れ地を整備 河川敷が憩いの広場に【桜川と共に】10

つくば市栗原、桜川に架かる桜橋上流の河川敷に芝生の広場がある。県有地で広さは約3ヘクタール。筑波山や宝篋山を見渡せ、桜川の自然を満喫できる憩いの場だ。週末には市内外からピクニックやキャンプに訪れた人々が思い思いにのどかな環境を楽しんでいる。 月1回 18年間草刈りやごみ拾い 憩いの広場は、住民団体「桜川ふるさと自然再生の会」(宮本健次会長、会員11人)が、毎月1回、ボランティアで草刈りやごみ拾いなどの整備を行っている。会員は地元住民や桜川漁協組合員など。元は農地だったが、竹林や雑木林となり、不法投棄のごみで荒れていた場所だった。 元会長の宮本正夫さん(故人)がその様子を見て心を痛め、子どもの頃のように桜川に親しめる場をよみがえらせたいと、2005年7月に同会を立ち上げた。 当初は30人の会員で整備をスタートした。ごみの搬出や竹林の伐採を行い、07年には市の助成金を受け、重機を借りて整地を進めた。つくばブランドの芝生を張って、荒地は美しく生まれ変わり、以来18年間、月1回の整備を続けて広場の景観を維持している。21年からは県土木事務所から河川愛護団体の認定を受け、草刈り機の燃料や飲料水といった整備作業に必要な物品の現物支給を受けて活動するようになった。 原風景よみがえらせたい 会員の大里茂則さんは「子どもの頃は水辺の草を刈って家畜のえさにしたり、川から砂利を取ったりと川に行くことが多かった。県外に働きに出て、戻ってきたら全く様子が変わって川に入れなくなっていた」と話す。かつては川に行く用事があったので、川への道が自然と手入れされていた。しかし川に行く人が少なくなって、やぶになる所が多くなっていった。会員は皆、親しめる桜川の原風景をよみがえらせ、多くの人に親しんでほしいという思いから活動を続けているという。 「自分たちが草刈りをやらなければ、若い人はやらないんじゃないか」と話すのは前会長の楢戸和夫さんだ。現在、最高齢の会員は83歳。現会長の宮本健次さん(70)は「会員が減少し、高齢化している。30人いた会員が今は11人となった。ボランティアを募集している」と言う。 週末、広場を訪れていたスリランカ出身で市内在住のテンナコーン・スメダさんは、ほぼ毎週末、同郷の仲間たちでこの場に集まって交流をしている。「とても良い所で気に入っている。今日はお昼から子どもたちも入れて20人くらいで集まろうと思っている。広いので子どもが遊ぶのにいい」。市内から来たソロキャンパーの男性は「お気に入りの場所で、時々来ている。あまり人に教えたくない所かも」。週末の広場には市内外のナンバーの車が停まり、テントを張ってコーヒーを入れたり、風景を眺めたりして静かに過ごす人々が見られた。 芝生の広場は30日から来年3月15日まで、桜川の川幅を広げる工事のため一般の利用ができなくなる。工事は、国の「防災・減災、国土強じん化のための5カ年加速化対策」事業を活用して実施される河川掘削工事で、工期は今年8月から来年3月まで。土浦市田土部とつくば市栗原の桜川で工事が行われている。川の流れをよくするため1万平方メートルにわたって掘削するもので、事業費は約6000万円。(田中めぐみ) ◆桜川ふるさと自然再生の会の次回草刈り作業日は11月18日(土)。参加申し込み、問い合わせは出電話029-857-6147(宮本健次会長)へ。 ➡「桜川と共に」の過去記事はこちら

産卵床を造成 アユを呼び戻したい【桜川と共に】9

1990年代にアユがよく捕れていたという桜川。近年少なくなってしまったアユを呼び戻そうと、9月末、つくば市栗原の桜川で、重機を使って川底を耕す作業が行われた。川底にある直径1センチから2センチの小石や砂利に付いた古い藻類や泥をはがし、餌となる新しい藻類を定着させて、アユの産卵床を作るのが目的だ。9月下旬から11月ごろがアユの産卵期となるため、桜川漁協(鈴木清次組合長)が年に1度、この時期に産卵床の造成作業を行っている。 朝9時、漁協理事の酒井康男さん(86)が油圧ショベルを運転して広場から桜川に乗り入れ、1時間半ほどかけて川底を掘り起こした。この日の水深は30センチから50センチ程度。小倉さんと共に、鈴木組合長や理事の松田七郎さん、組合事務担当の小神野一巳さんが川底の耕うんの様子を見守った。 河床を耕したこの日、桜川の清掃や水質浄化などに取り組む「桜川多面的機能活動組織」が、生態系の維持、保全などを目的に魚類モニタリング調査を実施、1時間ほど投網を打ち、オイカワ、モロコ、ニゴイなどが捕れた。約40匹のうち、8割ほどがオイカワだったが、体長13センチの小さいアユ2匹も入った。耕うん後の今月7日に行われたモニタリング調査では、1時間の投網でアユ18匹、オイカワ114匹そしてボラ15匹が捕れ、アユの数が明らかに増えた。 漁協理事の小倉之一さんは「昔は三本爪の鋤(すき)を使って手作業で川底を耕していた。耕すとアユが増えるのは経験から確か」と話す。「昔はアユがたくさんいたが、今は減ってしまった。川にアユを呼び戻したい」と組合員ら。しかし、桜川にアユがいることが分かるとアユ目当ての遊漁者が増え、さらに減ってしまうのではないかとの危惧もあるという。 霞ケ浦から上ってくる陸封型 アユは年魚で、寿命は1年。普通は海で生活し、その後川に上ってくる回遊型の魚だが、桜川のアユは海には出ず、霞ケ浦から上ってくる陸封型だ。秋に川底の砂礫に卵を産むと10日から14日前後でふ化し、ふ化仔魚は1日も経たず霞ヶ浦に下る。冬は霞ヶ浦で過ごし、春から夏にかけて遡上してくる。 県霞ケ浦北浦水産事務所によると、桜川のアユ漁獲量について統計データはないが、1990年代から2000年代までは、遊漁者による釣りや漁業者による投網で漁獲されていた。しかし、近年は姿を見ない年が続いてきた。 昔と比べると少ないものの、今年になり再び投網に入るようになった。 霞ケ浦・北浦では、1992年以降に定置網(張網)などに入るアユが急増。多く捕れる状況は2000年代まで続いたが、現在は極めて少なくなったという。国の統計(漁業・養殖業生産統計年報)によれば、1999年に19トン(霞ケ浦18トン、北浦1トン)、2000年に12トン(霞ケ浦9トン、北浦3トン)、01年に3トン(霞ケ浦3トン、北浦0トン)で、02年以降は、統計に表れていない。最も漁獲量が多かったころの霞ケ浦・北浦では、築地市場や地元ホテルなどに鮮魚出荷したり、甘露煮などに加工したりしていた。桜川では自家消費のみだ。 桜川のアユの食性については、詳しい調査が行われていない。しかし、同じ霞ケ浦流入河川の恋瀬川で1996年に行われた調査では、アユが藻類をはむ行動や「はみあと」が観察されており、夏から秋にかけての餌は藻類主体であることが分かっているという。桜川のアユの「なわばり」行動については不明だが、当時、餌釣りが行われていたことから「なわばり」性は低いと考えられている。(田中めぐみ) ➡桜川と共にの過去記事はこちら

川を次世代に託す 児童らフナの放流体験【桜川と共に】8

つくば市栗原の桜川沿いの広場に10日、市立栗原小学校(同市栗原)4年生児童59人が集まり、フナの稚魚40キロを放流した。桜川漁協(鈴木清次組合長)が種苗放流事業の一環として毎年行っている放流体験学習で、今年は同市内の栗原、栄、大曽根の3小学校と秀峰筑波義務教育学校を対象に各校40キロ、計160キロのフナの稚魚を放流する。 児童らはそれぞれのバケツに稚魚を入れて桜川に入ると、「冷たい」「気持ちいい」などと言いながら並び、鈴木組合長のかけ声に合わせて一斉に放流した。稚魚は群れになって泳いでいき、「かわいい」「元気だな」と声を上げながら見送るとしばらくフナを観察していた。 鈴木組合長は「フナは1匹だと小さく見える。川に入るとカワウやアメリカナマズ、ブラックバスなどたくさんの天敵がいるので群れになって泳いで大きく見せる。上から見ると黒い保護色になっており、下から見るとおなかは白いので空の色と同じに見える」とフナの生態や特徴について説明した。 また、「昔は川がプール代わり。今はプールがあるから幸せだよね。川にも遊びに来てほしいが、危険もあるので必ず大人と一緒に来てください。桜川にはたくさんごみがある。ごみを掃除し、下水も処理して水をきれいにしたい。逆水門(常陸川水門)を作ってからシジミが全くいなくなった。昔の桜川に戻したい」などと話した。児童らは真剣に聞き入っていた。 投網の技に児童ら歓声 放流体験の後は魚の漢字クイズが行われ、「鮒」や「鮎」「鯰」などの漢字のパネルが出されると、児童らは手を挙げて楽しそうに答えていた。クイズが終わると、新潟県出身で投網歴50年以上の組合員、佐藤孝男さん(73)が広場でしゃがむ児童らの頭上に投網を打ち、投網の技を見せた。網に捕まえられた児童らは歓声を上げていた。 児童からは「フナは何を食べますか」「桜川にはフナのほかにどんな魚がいますか」などの質問が上がり、組合員らが一つひとつ丁寧に答えていた。 瀧原奏(かなで)さん(10)は「楽しかった。組合長さんのお話を聞いて川にゴミがたくさんあると知った。自分たちが桜川を守らなければと思う」と話した。近野碧音(あおと)さん(9)は「川や魚が好き。いろんな生き物を増やせるようこれから桜川をきれいにしたい」と語った。 アユとオイカワの姿も この日、稚魚を放流したのと同じ時間、同じ場所で投網を打つ組合員がおり、アユとオイカワがかかった。オイカワは天ぷらにするとよいという。かかったアユを見て、組合員らは「昔はもっとたくさんのアユやシジミが捕れた」と思い出を語った。漁協組合員らは放流学習を通じて未来を次世代に託し、かつての桜川を取り戻すことを願っている。(田中めぐみ) ■これまでの【桜川と共に】記事はこちら

アメリカナマズを四川料理に ガチ中華で食事会【桜川と共に】7

桜川漁業協同組合が主催し7月上旬につくば市や土浦市の桜川で開かれた「特定外来魚釣り大会」(7月16日付)。一般参加者が釣り上げたアメリカナマズ3匹をつくば市在住の医療通訳士、松永悠さんがもらい受け、市内の中華料理店に持ち込んだ。調理を頼んだのはつくば市天久保にある中華料理店「麻辣(マーラー)十食」。オープンして1年ばかり。つくばではまだ珍しい、日本人向けにアレンジしない、いわゆる「ガチ中華」の店だ。 四川料理が専門。筑波大学大学院出身の元留学生が経営する。当初都内での出店を考えていたが、コロナ禍だったこともあり、ゆかりのあるつくば市に店を構えた。メニューには霞ケ浦で捕れたコイを数十種類の香辛料で調理した料理もある。四川省は海に面していない内陸部であることから、主に川魚を食べる食文化を持ち、ナマズやハクレン、フナやコイなどを香辛料で調理する料理が数多くある。 桜川のアメリカナマズを料理 松永さんの呼び掛けで、ナマズ料理を含む本格四川のコースを楽しもうと東京や千葉から参加者10人が集まった。牛肉を使った前菜「夫婦肺片(フーチーフェイピェン)」や「麻婆豆腐」、「回鍋肉(ホイコーロー)」などの四川料理と共に、桜川のアメリカナマズを使った3品「辣子鯰魚(ラーズーニエンユー)」、「酸辣鯰魚(サンラーニエンユー)」、「豆鼓鯰魚(ドウグーニエンユー)」が並んだ。 「辣子鯰魚」はナマズをカリっと揚げて唐辛子と花椒(ホアジャオ)で作った麻辣で味付けした料理。見た目から辛そうだがそれほど辛くはなく、花椒のさわやかな香りとナッツの香ばしさがナマズのから揚げにマッチしている。「酸辣鯰魚」はナマズを蒸して酸味と甘みのあるソースをかけた料理。淡白なナマズの身がふっくらとしていて、ソースがナマズをひきたてる。「豆鼓鯰魚」は発酵した黒豆の調味料を使った蒸し料理で、酸辣とは違った深い旨味とコクがあるソース。これもナマズによく合っていた。 食事会に参加した都内在住の西岳晴さんは、仕事で広東省深圳(シンセン)市に4年間住んでいたことがある。かつて食べていたような本格中華を求めて参加した。桜川のアメリカナマズ料理について「中国で食べた雷魚などの川魚よりこちらの方がおいしく感じる」と驚きを語る。 コースを食べ終わると総料理長の羅彬(ラヒン)さん(44)が姿を見せ、参加者から拍手を受けた。桜川のアメリカナマズは「使えます。おいしいです」と言う羅彬さん。メニュー制作の顧問をする孫麗(ソンレイ)さん(37)は「四川料理の香辛料と技法を使えば、ナマズもいろいろな美味しい料理に変身できる。ハクレンも適した調理法を使えば本当においしい魚。地元の野菜、魚、お肉を取り入れて、地産地消に尽力したい」と話す。 桜川漁協(つくば市松塚)の鈴木清次組合長は「野生のナマズなので、毎日何匹捕れると確約できるものではないが、1匹いくらでも売れるのであれば売りたい」と期待する。仕事の傍ら都内のガチ中華の店を食べ歩き、インターネットで紹介している松永さんは「麻辣十食は都内の店に全くひけを取らないと感じ、ナマズ料理をお願いした。地元のガチ中華店から地域課題の解決につながれば」と話す。アメリカナマズやハクレンの四川料理への活用に期待が膨らむ。(田中めぐみ) ➡連載企画【桜川と共に】の過去記事はこちら

特定外来魚駆除へ 釣り大会開き活用法模索【桜川と共に】6

7月上旬、つくば市と土浦市の桜川で「特定外来魚釣り大会」が開かれた。県内外から親子連れなど約70人が参加し、午前中だけでアメリカナマズ126匹、ブラックバス2匹、ブルーギル9匹の計約131キロを釣り上げた。 同大会は、釣り好きの一般参加者の協力を得て特定外来魚を駆除しようと、桜川漁業協同組合(つくば市松塚、鈴木清次組合長)が毎年主催している。釣果の9割を占めたアメリカナマズは1980年代に霞ケ浦に定着し、2000年ごろに爆発的に増え始めたとされる。雑食性で、組合員が捕まえたアメリカナマズの腹を割くと、ワカサギなどの在来魚のほかモグラまで出てきたことがあった。漁協では刺し網やはえなわ漁を組合員に推進しているが、捕っても収益になる見込みがないことが課題となっている。 釣れたアメリカナマズはこれまで穴を掘って埋めていたが、「ただ殺すのは忍びない」(組合員ら)と今回新たに、つくば市内の中華料理店や、近隣農家で働いている外国人技能実習生らが引き取り、食べてもらうこととなった。漁協は多方面に声を掛け、新たな活用法を模索している。 県内外から参加 釣り大会は、釣り上げた総重量で順位を付け、兵庫県から参加した斎藤直之さん(39)が16.7キロで優勝した。斎藤さんは筑波大の卒業生。「在学中から桜川でバケモノ(アメリカナマズ)が釣れると知り、釣りに来ていた」と話す。大会には都内や栃木県在住の釣り仲間と一緒に参加した。 つくば市内在住の小学5年青山秀延(しゅうすけ)さんは「魚が好きで初めて参加した。釣りはおもしろい」と、釣り上げたアメリカナマズを優しく手で持ち上げてみせた。市内在住の小学6年菊池風汰さんと小学4年泰佑さんの兄弟は、釣り好きでよく川に出掛けるという。続けざまにヒットし、手慣れた様子でリールを巻きあげ、笑顔を見せていた。 アメリカナマズは背びれと胸びれに太く鋭いとげを持っており、漁業者や釣り人がけがをすることもある。漁協組合員の鈴木孝之さんは、釣れたナマズを手に持って「ナマズは小さい頃の方がとげが固い。それは小さいうちは敵に襲われやすいから。大きくなるととげが柔らかくなる」と子どもたちに説明。鈴木さんが小さいナマズのとげでどれだけ大きなナマズを持ち上げることができるかやって見せると、親子から歓声が上がっていた。 ハクレン大量遡上、カワウ減少傾向 アメリカナマズ、ブラックバス、ブルーギルといった特定外来魚以外にも、桜川ではハクレンの大量遡上など、魚種の変化が組合員の間で問題になっている。ハクレンは特定外来魚ではないが、外来種で、一昨年から4月、5月に大群となって桜川を遡上するようになった。体長60センチから90センチと大型の魚で、今年4月30日には、漁協の活動拠点であるつくば市松塚で「ハクレンジャンプ」と言われる集団跳躍行動が見られ、漁業者らを驚かせた。大型外来魚の増加に伴ってコイやアユなどはいなくなり、これらを餌とするカワウも減少傾向にあるという。(田中めぐみ) 連載【桜川と共に】の過去記事はこちら ハクレンの過去記事はこちら https://youtube.com/shorts/_XM4Bgdt7dk

4年ぶりにゴロが戻ってきた【桜川と共に】5

6月下旬、桜川漁業協同組合の2023年度総会がつくば市栗原、栗原交流センターで開かれ、29人の組合員が出席した。組合員の平均年齢はおよそ80歳で、最年少は49歳だ。総会では5月24日に起こったハクレン大量死の経緯や(5月27日付、6月2日付)、今年が10年に1度の漁業権の申請の年となることが報告され、今年度の予算や漁業権行使の規則などについても審議された。 昨年6月の正組合員数は108人だったが、高齢化による脱退で今年5月末には89人と減少。鈴木清次組合長は総会で「組合員や遊漁者を増やす努力が必要。そのためには魅力をつくらないといけない」と話した。外来魚を含む桜川の水産資源の活用について考えることが喫緊の課題となっている。 投網ができること必須 専業はおらず、自分や家族で食べる分だけを捕る組合員が多い。組合員になるには投網ができることが必須で、代々、親や先輩から投網を学んできた。投網を完全に修得するには10年かかるという。 今年、漁業権を申請する漁業の種類は、「こい漁業」、「ふな漁業」、「わかさぎ漁業」、「えび漁業」、「にごい漁業」、「おいかわ漁業」、「はぜ漁業」の7種類。「す建(すだて)」という竹や木を建てて網に誘導する漁法や、刺し網、巻き網などの漁法が許可されている。「す建」は5カ所、竹で十字に組んだ骨組みに網を付けてすくいとる「四手網(よつであみ)」での漁法は5カ所までなどと制限がある。「す建」は最近はやる人がおらず、「四手網」は1カ所のみで操業している。 四手網は全国最大級 桜川に1カ所ある「四手網」は1辺の長さが三間半(約6.36メートル)。川に設置してあるものとしては全国でも最大級ではないかと組合員らはいう。組合員らが知る限り、少なくとも80年ほど桜川で四手網漁法が続いている。「四手網」は竹で毎年作り直すが、作り方は現在、鈴木組合長一人しか分からない。継承しなければ四手網漁は絶えてしまう。 漁協には、「筌(うけ)」と呼ばれる筒状の伝統漁具など、昔から桜川で使われてきた竹材の道具も保存されている。これらも昔は手作りで作っていたが、今は市販のプラスチックのものが使われることが多くなった。 ゴロの遡上に歓喜 組合員の塙雅夫さん(81)は、投網や「長ぶくろ」と呼ばれる網を使った漁法で小魚やエビを捕っている。7月2日、塙さんが4日前に仕掛けた「長ぶくろ」を見に行こうとしていたところ、ゴロと呼ばれるハゼ科の小魚が桜川を帯状になって遡上してくるのを見つけ、知人に電話した。 「急いで網持って来てくんねえか」。電話を受けた知人が小さな四手網を持ってきた。胴長を着た塙さんが四手網を持って川へ入ると、ゴロがどんどん入ってくる。「すごい、すごい」。昼過ぎから3時間ほどで4キロほどのゴロが捕れた。 鈴木組合長もやってきた。「組合長、すごいよ」。「4年ぶりくらいに上がってきた」と鈴木組合長。塙さんの仕掛けた「長ぶくろ」の方にはテナガエビがかかっていた。ゴロと合わせて大漁だ。ゴロは佃煮にしたり、天ぷらにしたりするとおいしいという。集まった鈴木組合長や組合理事の松田七郎さんらは「どんどん入るね。(魚群の帯が)まだまだ来るよ、切れないよ」。「何が原因か分からないけど久しぶり。いいことだね。うれしいね」と話し、顔をほころばせた。(田中めぐみ) https://www.youtube.com/watch?v=jUkDN5QXz9I

川遊び創出に海洋クラブ助け船 【桜川と共に】4

「最近の子どもたちは川に入ってはいけないと教わる。もっと川で遊んで、桜川の環境に興味を持ってほしい。そして澄んだ桜川を取り戻したい」。桜川漁協の組合員らは、大人が安全を重視するあまりに子どもたちが川から遠ざかっている現状を憂う。そんな中、子どもたちが川で遊ぶ機会を創出しようと、桜川に新しい風が吹き込んできた。 地元NPO、7月から本格的な活動へ 桜川での自然体験活動を先導するのはNPO法人Next One.(ネクストワン、つくば市研究学園)。筑波大学大学院で体育科学を修めた井上真理子さん(39)が代表を務める。桜川漁協の協力を得て今年から「B&G Next One.海洋クラブ」を発足させた。本格的な活動を7月から開始する。月1回、桜川での自然体験を行い、地域の人と交流しながら、環境問題についても学びを深めていく予定だ。 28日には、同クラブの活動拠点となる桜川漁業協同組合(つくば市松塚)でカヌーやライフジャケットなどの舟艇器材配備式が行われた。式では井上さんや器材を提供した公益財団法人B&G財団(東京都港区)の理事長である菅原悟志さんらが挨拶。市内外から訪れたクラブ員の児童ら16人とその保護者ら、つくば市環境保全課や観光推進課の職員も出席し、児童と漁協組合員らがクラブ発足を記念して桜の木2本の植樹を行った。式後は児童らが組合員やネクストワンのスタッフらから手ほどきを受けて釣りやカヌーの体験を行い、桜川の自然を満喫した。 同クラブ員で松代小学校5年の山本杏さん(10)は、舟艇器材配備式で「時間、空間、仲間、3つの『間』を大事にして桜川で活動していきたい」と話し、器材の配備への感謝を述べた。山本さんはこれまでにも霞ケ浦でカヌーに乗った経験があり、「特に2人乗りのカヌーで息を合わせて漕ぐのが好き。ここでの活動も楽しみ」と桜川での活動に期待を寄せる。 井上さんは、「桜川での活動はASOBICLUB(あそびクラブ)として、幼児から大人まで参加可能な部活動として、遊びを通していろんなことが学べる場となればと考えている」と話す。毎月第1日曜日を活動日とし、ネクストワンのホームページで参加の募集を呼びかけていくという。 「B&G海洋クラブ」は海や川などでの環境学習を通し、地域の子どもたちの育成や地域貢献活動を行う組織で、全国で281カ所が海洋クラブとして登録し活動を行っている。ネクストワンはスポーツでの健康増進を図るイベント活動を行う団体で、今年から海洋クラブに登録した。県内では8番目の登録となるという。海洋クラブへの登録は年間活動日数10日以上、活動人数800人以上などが条件。今回、B&G財団からカヌー5艘、SUP2枚、ライフジャケット35着など総額約100万円の器材が無償貸与された。これらの器材は今後の活動実績などに応じて無償譲渡するという。(田中めぐみ) 「桜川と共に」過去記事はこちら

アメリカナマズに熱視線 「ガチ中華」で食べて活用【桜川と共に】3

桜川で増えている外来魚アメリカナマズを食べて活用できないかと、新たな模索が始まっている。4月上旬、「東京ディープチャイナ研究会」に所属するつくば市在住の医療通訳士、松永悠さん(49)が中心となり、アメリカナマズを使った本格的な中華料理を試食する会を開いた。 集まったのは同会代表で、「ガチ中華」を発掘するメディアサイトを運営する「東京ディープチャイナ」編集長の中村正人さんや、インバウンド・地方創生に関するメディアで編集に携わる大坊比呂志さんなど、本格中華に興味を持つ30代から50代10人と、中華料理のシェフ1人。都内からつくば市松塚の桜川漁協拠点を訪れてナマズ釣りを体験し、中華料理2品を試食した。 「ガチ中華」は、日本で暮らす中国語圏の人が好む、日本人向けのアレンジをしない本格的な中華料理だ。中国語圏のオーナーが経営する「ガチ中華」の店は、新宿、池袋、新橋、上野などを中心に都内で急増しており、都内近郊にも広がっている。顧客は主に日本で暮らす中国人だが、近年は海外旅行気分を味わいたいと訪れる日本人ファンも増えているという。本格中華にはナマズを使った伝統料理がいくつかあり、中でも四川省の麻辣(マーラー)を使った料理が有名だ。 ナマズと聞いて「ガチ中華」ファンの食指が動いた。中村正人編集長は「麻辣中華と結びつけることで新しい地域の可能性が見つかったらおもしろい」と話す。 参加者らは朝9時頃から釣りを開始。すぐには釣れず、途中漁協の組合員2人も手伝いに加わった。午前11時過ぎ、釣りは初めてという石坂みずきさんの竿(さお)にナマズがヒットし、見事に釣り上げた。その後、3匹釣り上げ、計4匹を参加者らが絞めて、田悦良さんがその場で料理した。田さんは北京出身だが四川料理も手掛け、都内のいくつかの中華料理店を掛け持ちするシェフ。麻辣鍋とトマト鍋2種類の鍋を作り、参加者らと桜川漁協の鈴木清次組合長が試食した。 参加者の一人、中村征太郎さんは「ナマズは初めてだったので泥臭いのかなと不安があったがそんなことはなく、シンプルな白身魚のような淡泊な食感と味わい。麻辣鍋の方はご飯がほしくなるようなパンチがあり、お酒のつまみにもぴったり。トマトベースの方は野菜スープやミートソースのような印象で、こちらはパスタと組み合わせたり、子ども向けにもいい」と好印象。ナマズを最初に釣り上げた石坂さんも「麻辣もトマトもどちらもとてもおいしい。ナマズの骨で出汁を取った麻辣鍋のスープがなんとも癖になるおいしさ。米麺を入れるのもよいかも」と話した。 ナマズフェスや返礼品の提案も 鈴木組合長とナマズ料理を囲みながら、ナマズをどう利用するかについてもアイデアが出た。中村征太郎さんは、つくば駅周辺の公園で「ナマズフェス」を開催し、食べたことのない人にナマズ料理を振る舞ってつくばが産地だとアピールすることを提案。イベントにはつくばにゆかりがあるタレントやアーティストを招待して集客力、告知力アップにつなげてはどうかと話した。また、フェスのTシャツを毎年異なるデザインで作成、販売すれば、コレクションしたいと参加する人が増えるのではと考えを話した。 大坊さんは「麻辣ナマズ鍋セット」を商品開発し、つくば市の特産品としてふるさと納税の返礼品にすることを提案。寄付金は桜川の河川環境の整備、ナマズ養殖などに使用することもできるのではと言う。「地域課題を解決していくには、民・官の連携が不可欠だが、日本が誇る学園都市つくばなので『学』との連携も視野に入れてみては」とアイデアを出した。 試食会を企画した松永さんは「まずはつくば市内の中華料理の店と連携して実験的に使ってもらおうと考えている。生態系の保全など環境問題に貢献できたら」と話す。現在、食べるためにアメリカナマズを捕る漁業者はいない。(田中めぐみ) ➡【桜川と共に】1の過去記事はこちら ➡【桜川と共に】2の過去記事はこちら

消えたワカサギ 水遊びの生態系から【桜川と共に】2

桜川漁協の拠点、つくば市松塚の桜川のほとりには4月上旬、桜や菜の花、チューリップが咲き誇っていた。元々雑草や不法投棄で荒れていたこの場所は、漁協のメンバーたちで構成する多面的機能活動組織が定期的な草刈りや清掃を行い、花を植えて環境を整備した。訪れる人々はウグイスの鳴く美しい景色の中、写真を撮ったり、釣り糸を垂れたりして思い思いに楽しんでいる。 しかし、牧歌的な風景とは裏腹に、水の中では大きな変化が起こっている。「ワカサギが全然上がってこない。魚がいないからカワウも来ない。このままでは桜川の漁業はあと7年も持たない」漁協組合長の鈴木清次さん(80)は表情を曇らせる。 放流用も確保できない記録的不漁 ワカサギは霞ケ浦と流入河川を行き来している。桜川漁協では毎年ワカサギの卵を200万粒放流していたが、令和に入ってから記録的な不漁が続き、今年はついに魚卵の採取ができず、放流もできなかった。霞ケ浦での放流は行われたものの、北浦を含む霞ケ浦のワカサギ漁獲量は2019年の119トンから21年には34トンにまで落ち込んでいる(県農林水産統計年報)。 不漁の一因に水温の上昇が考えられる。ワカサギは水温30℃を超えると死ぬ個体が出るとされており、霞ケ浦で調査が進められている。流入河川の改修や霞ケ浦の消波堤の造成の影響についても調査中だ。近年適用が拡大された農薬の影響の懸念を口にする漁業者もいる。 今、桜川で釣りをすると外来種のアメリカオオナマズやミシシッピアカミミガメばかりが釣れる。小さいころから桜川で遊び、70年以上桜川を見つめてきた鈴木さんと漁協理事の酒井康男さん(86)は桜川の生態系がすっかり変わってしまったと話す。特に昭和38年(1963)に完成した常陸川水門は特に生態系に大きな影響を与えたという。 プール代わり 飲んだり食べたり 今、桜川の水は濁っているが、鈴木さんと酒井さんが子どもの頃は水が澄んでおり、桜川に入って遊んでいたと話す。「夏は毎日泳いで遊んでいた。水を手ですくって飲むこともできたんだから。お腹も壊さなかった」と鈴木さん。 酒井さんは「プールの代わり。子どもの頃は巻き網漁をやる大人の後ろをずっと付いて行った。たくさん魚が捕れたよ」という。アユやオイカワ、クチボソ、ニゴイ、フナ、ウナギなどの魚やシジミ、モクズガニがたくさん捕れたと振り返る。「かいぼりして、手づかみでシジミを捕って、家に持って帰って母親が味噌汁にする。ニゴイのこいこくもおいしいんだ」 川から田んぼへの用水路の泥の中にはウナギがおり、長い柄の先にかぎをつけた「ウナギかき」という道具でウナギを捕ることができた。田んぼにもドジョウがたくさんいた。「ざるを持ってきゅうりやトマトを取って、川に入れて冷やしておく。遊んでのどが乾いたらそれを食べてね。桑の実を食べて、口を真っ赤にしてさ、紅みたいに」酒井さんも「なあ」と相づちを打ち笑顔になる。二人とも、幼い頃桜川で遊びまわった記憶が鮮明にあるという。 当時は海の魚の流通が少なかったため、桜川で捕った魚を山間部や谷田部の方に売りに行っていた。小学生や中学生の子どもたちも自分で捕った魚を売って歩き、お小遣いにしていたという。「本当なら今からが楽しい時なんだ。昔はわなをかけるとドジョウがいっぱい捕れてね」「今の子どもは川には入っちゃいけないと教わるからね」 鈴木さんは昭和42年(1967)25歳で、酒井さんは昭和45年(1970)35歳の時にそれぞれ漁協に入った。酒井さんの記憶によると昭和37年(1962)頃には420人ほどの組合員がいたというが、高齢化が進み現在は107人だ。鈴木さんや酒井さんが加入した当時から現在まで、漁業だけで生計を立てている人はおらず、ほとんどが農家との兼業だという。 桜川の生態系は大きく変わってしまったが、2人は漁協への加入以来、桜川の環境改善のため、放流事業や漁場の整備、特定外来魚の駆除などに取り組み続けてきた。鈴木さんは「上流の下水の整備をして、下は水門を開けてほしい。10年、20年かかるかもしれないが、昔のような桜川に戻していろんな人に遊びに来てもらうことが私の願い」と話す。(田中めぐみ) 【桜川と共に】1回目はこちら

平均年齢80歳 漁協組合員ら不法投棄撤去し見回り【桜川と共に】1

県西の桜川市を水源とし、つくば市や土浦市などの平野部を通って霞ケ浦に流入する桜川。流入する56河川の中で最大規模の一級河川だ。上流の磯部稲村神社(桜川市)付近は古くから桜の名所として名をはせ、桜川は歌枕や文学作品の舞台ともなってきた。 桜川に漁業協同組合がある。土浦市との境界にあるつくば市松塚に拠点を置き、組合員は107人、平均年齢は約80歳。漁協は桜川の生産力の増進を図ることが役割で、事業内容はフナの稚魚やワカサギの卵の放流、河川の清掃、河床耕耘(こううん)といった漁場の整備、特定外来魚の駆除など多岐にわたる。 幼い頃から桜川で遊び、桜川を見つめてきた漁協組合長、鈴木清次さん(80)は、この60年ほどで桜川の環境が大きく変わってしまったと話す。桜川漁協の活動を追いながら、桜川の置かれている現状を取材する。 1時間で2トントラック1台分に 3月上旬、漁協の組合員6人とつくば市水質浄化対策推進協議会(会長・鈴木清次組合長)の会員12人の計18人と市職員2人が桜川沿いの清掃活動を実施した。朝8時50分、参加者が同市栗原の桜川沿いに集合すると鈴木さんがあいさつ、掃除の工程についても説明し、市職員が用意した軍手やごみ袋を参加者に配布した。参加者たちはそれぞれ軽トラックやワゴン車など数台に分かれて乗り込み、約1時間、桜川沿いを走りながら、ごみが不法投棄された地点を巡って拾い、トラックに積み込んだ。 桜川沿いの数カ所には、空き缶やびん、ペットボトル、ビニール袋、衣類、おむつなどの生活ごみ、テレビなどの粗大ごみや金属ごみが投棄されていた。バッテリーや機械部品のようなものもある。比較的最近捨てられたと思われるもの、何層にも積み重なって埋もれているものも掘り起こして回収する。「こんなものも捨ててあるよ」、「まだ埋まっている」。時間内に全部は回収しきれず、諦めたごみもあったが、それでも集められたごみは2トントラック1台分ほどになった。 清掃活動に毎年参加している女性は「前はごみがもっと多くひどかったが、清掃活動を続けて、これでもだんだんきれいになってきた」と話す。清掃活動は、霞ケ浦問題協議会(会長・安藤真理子土浦市長)が実施する「霞ケ浦・北浦地域清掃大作戦」の実施日に合わせて毎年、年1回行われている。 「多くの人に来てもらいたい」 清掃活動以外に桜川では、漁協に所属する3人の河川巡視員が月2回見回り、不法投棄がされていないか、川が適切に利用されているかなどを監視している。ほかにも組合員が自発的に見回りを行っている。夫が巡視員をしている女性は「ごみだけでなく、川辺に子猫が5匹捨てられていることもあり驚いた」と話す。 桜川の管轄である県土浦土木事務所によると、巡視員から連絡があった不法投棄は、昨年度15件、今年度は7件。例年15件ほどだが、毎年不法投棄がされる箇所には今年度から看板を設置する対策を行い、効果が表れているという。 組合長の鈴木さんは、大作戦以外の日も20年以上、清掃活動を地道に続けてきた。「川に捨ててもいいと思っている人がいて、トラックで持って来て捨てている。現場を見たら警察に通報する。意識を変えてもらわなければならない。もっときれいにして、多くの人に桜川に来てもらいたいと思っている」と鈴木さんはいう。(田中めぐみ) 随時掲載

桜川の環境見守る「川守」養成 参加者募集 5月から体験学習会

NEWSつくば、漁協、市民グループが協力 【お知らせ】NEWSつくばは、桜川漁業協同組合、市民グループ「桜川ナマズプロジェクト」と協力し、つくば市などを流れる桜川に親しみ、川を見守る人「川守(かわもり)」を養成する体験学習会「川の未来を考えよう!―2024桜川川守養成プログラム」を5月から開催します。 つくばや土浦市を通り霞ケ浦に流入する桜川は1960年代まで、地域の人が泳いで遊べる川でした。漁業者によると当時は、飲むことができるほど清らかな川で、シジミやウナギ、モクズガニなどがいたそうです。 今、桜川は水質悪化、川辺の荒地化や不法投棄、外来魚のアメリカナマズやハクレンの増加、ワカサギの記録的不漁など様々な課題を抱えています。 これらの課題に取り組もうと、桜川漁業協同組合(鈴木清次組合長)は地域住民と共に、川辺の整備や清掃、稚魚の放流、アユの産卵床をつくるための河床耕うんなどに取り組んでいます。NEWSつくばは2023年3月からこれまで計11回にわたって漁協組合員らの活動や桜川の課題などを取材し報道してきました。 一方、組合員は平均年齢80歳と高齢化しており、川の環境を見守る次世代の担い手が必要です。桜川漁協の鈴木清次組合長は「私たちが子どもの頃は、桜川は澄んだ水でした。澄んだ水の桜川を取り戻し、漁業者にとって魅力ある川にしたい」と話しています。 そこで、NEWSつくばと桜川漁協、ナマズプロジェクトの有志が実行委員会(代表・田中めぐみNEWSつくばライター)をつくり、NEWつくばなどが後援し、桜川の環境を見守る「桜川川守養成プログラム」を企画しました。 養成プログラムは年5回実施し、漁協組合員から昔の話を聞いたり、桜川で親から子へと伝わってきた投網を学んだり、1辺6メートルと川では最大級の四手網(よつであみ)を見学したり、特定外来魚のアメリカナマズを釣って駆除したりと様々なプログラムを予定しています。このプログラムで桜川に親しみながら生態系や伝統漁法について知り、桜川の川守になってみんなで環境を見守りませんか。 4回以上プログラムに参加した人を実行委員会が桜川を見守る「川守」に認定します(イベントは来年度も開催予定ですので、来年にかけて参加も可)。川守になった人には認定グッズを進呈し、桜川での地域活動のイベント情報をお知らせする予定です。 【24日追記】「2024桜川川守養成プログラム」の参加申込は定員に達したため締め切りました。 2024桜川川守養成プログラム ▷第1回 プレイベント 投網講習会(桜川の昔と今についてのお話)日時 5月5日(日)午前10時~午後2時 小雨決行場所 つくば市松塚 桜川漁業協同組合拠点参加費 1回500円/1人対象 小学生から大人まで(小中学生は保護者同伴)。動きやすい服装で申込 参加申込受付フォームから申し込む。締め切りは4月30日(火)定員 各プログラム10人。 以降のイベント日時と予定(内容は天候等の事情で変更となる場合があります)▷第2回 ハクレンジャンプ見学と在来魚・外来魚の勉強会6月9日(日)小雨決行 午前10時~午後2時 ▷第3回 特定外来魚釣り大会と外来魚の試食会 7月予定▷第4回 稚魚の放流体験と投網講習会(予定)9月予定▷第5回 1辺6m四手網見学会と伝統漁法勉強会(予定)10月6日(日)小雨決行 NEWSつくば「桜川と共に」の過去記事は下記の通り1、平均年齢80歳 漁協組合員ら不法投棄撤去し見回り➡2023年3月17日付2、消えたワカサギ 水遊びの生態系から➡23年4月3日付3、アメリカナマズに熱視線 「ガチ中華」で食べて活用➡23年4月25日付4、川遊び創出に海洋クラブ助け船➡23年5月29日付5、4年ぶりにゴロが戻ってきた➡23年7月4日付6、特定外来魚駆除へ 釣り大会開き活用法模索➡23年7月16日付7、アメリカナマズを四川料理に ガチ中華で食事会➡23年7月20日付8、川を次世代に託す 児童らフナの放流体験➡23年7月23日9、産卵床を造成 アユを呼び戻したい➡23年10月12日10、ボランティアで荒れ地を整備 河川敷が憩いの広場に➡23年10月28日11、「汚した環境 未来に」放流体験通し標語➡24年3月14日

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