金曜日, 4月 19, 2024
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台風 気象研究所 -検索結果

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過去40年で台風は大幅に遅くなっていた 災害増加懸念も 気象研

茨城県を9月に通過する台風の速度を、過去40年間で比較すると、大幅に遅くなっていることが分かった。気象研究所(つくば市長峰)の山口宗彦主任研究官が、18日開催された日本気象学会2021年度春季大会で発表した。 地球温暖化が台風に与える影響に関する研究は、これまで主に強さや発生数、経路に着目していた。今回の研究は台風の移動速度に着目しただけでなく、その速度変化に温暖化がどれくらい影響しているかを解析することで将来予測につなげた。 温暖化で時速61キロから39キロに 気象庁の台風の観測データから9月に発生した台風を対象に、過去40年について、前半20年(1980ー99年)と後半20年(2000ー19年)に分けて移動速度を比較した。茨城県では前半が時速61.2キロだったのに対して後半は時速38.9キロと、約36%遅くなっていた。大阪では33%、沖縄では26%遅くなっていた。秋の到来をもたらす偏西風の南下が遅れることで、台風を移動させる風が弱まっていたことが要因の一つと考えられた。 温暖化が続くと? 台風の速度は温暖化だけでなく、「太平洋十年規模振動」と呼ばれる、太平洋の海面水温に生じる十年から数十年規模の変動の影響も受ける。 そこで山口主任研究官はスーパーコンピューターを使って、過去に実際に生じていた温暖化を再現した9月の台風速度のシミュレーション結果と、実際にはあった温暖化を無かったことにしたシミュレーション結果を比べ、温暖化とそれ以外の影響を切り分けて比較することで、過去40年間の移動速度の鈍化に与える温暖化の影響と太平洋十年規模振動の影響を推定した。 計算には、地球の海表面と大気を、規則正しく並んだ格子(約1000万個)で覆い、それぞれについて東西風、南北風、気温、湿度の変数を20分ずつ、40年分計算した。計算の繰り返し回数は1億回を超える。 シミュレーションの結果、過去40年における移動速度の鈍化は、地球温暖化と太平洋十年規模振動が約1対1の割合で寄与していたことが分かった。 また地球の平均気温がこのまま上昇を続け、産業革命以降4度上昇した状態が続いた場合、将来、地球温暖化の影響がさらに強まって9月の台風の速度が現在よりもさらに20%程度減少するだけでなく、10月の台風の速度も減少することが分かった。 地球温暖化は台風の速度の減少だけでなく、降水量の増加ももたらしている。このままの状態が続くと、県南地方でも「降水の強化×移動速度の鈍化」の相乗効果により災害リスクが高まると、山口主任研究官は懸念している。(如月啓)

東京への台風接近1.5倍に増加 気象研 過去40年のデータ分析

【相澤冬樹】東京など太平洋側の地域に接近する台風の増加が過去40年の観測データから明らかになった、と気象研究所(つくば市長峰)が25日報告した。接近する台風は強度がより強くなっていること、移動速度が遅くなっていることもわかったという。 25日付の発表論文について、同研究所応用気象研究部、山口宗彦主任研究官がオンライン記者会見で説明した。 太平洋側で軒並み増加 台風は、平均で1年間に約26個発生し、そのうち約11個が日本に接近(台風の中心が全国の観測地点から300キロ以内に入った場合)する。接近数が「体感的に増えている」と思われても、これまで地域別・都市別などでは定量化されたことがなかったため、1980年から2019年の過去40年分の観測データや気象解析データを詳細に調査した。80年は静止気象衛星ひまわりの運用が開始された年で、観測データの品質が均質で信頼できる期間について調べた。 その結果、東京で、期間の前半20年に比べて後半20年の接近数が約1.5倍となった(図1)のをはじめ、名古屋、高知など太平洋側の地域で軒並み増加傾向をみせた。 前半20年は南方の洋上にあった台風が後半20年間に押し上げられた格好だ。 その要因としては、太平洋高気圧の西方、北方への張り出しが強くなっていることが考えられる(図2)。ただ、山口研究官によれば「今回調査から後半の増加傾向がこの先も続くかは判定できない」という。 また、中心気圧が980ヘクトパスカル未満の強い強度の台風に注目しても接近頻度が増えていること、台風の移動速度が遅くなっていることも明らかとなった。要因として、接近時の海面水温の上昇、上層と下層の風の差の縮小、大気中の水蒸気量の増加が、どれも台風の発達により都合の良い条件になっていること、さらに偏西風が日本上空で弱まっており、これにより台風を移動させる風が弱くなっていることが考えられるという。 地球温暖化との関連については、今後の解析によるとした。「太平洋十年規模振動」と呼ばれる気候の内部変動がこれらの変化と関連している可能性があることに注目、地球温暖化の影響と合わせてさらに解析を行う予定でいる。

線状降水帯を自動検出 防災科研 17日から気象情報に活用

梅雨入り間近。台風の到来時期も迫り、お天気キャスターや気象予報士から「線状降水帯」の解説が聞かれるようになるはずだ。防災科学技術研究所(つくば市天王台)をはじめとする研究グループが、線状降水帯を自動的に検出する技術開発に取り組み、11日、研究成果が発表された。気象庁の「顕著な大雨に関する情報」に実装し、17日から運用が開始される。 防災科研のほか、日本気象協会(東京・東池袋)、気象庁気象研究所(つくば市長峰)が、2018年度から内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で取り組んできた。研究成果は同日、研究代表者の防災科研、清水慎吾主任研究員がオンライン発表した。 常総市の鬼怒川が決壊し、全半壊家屋5000棟以上という甚大な被害をもたらした2015年9月の関東・東北豪雨で、一躍その名が知れ渡った線状降水帯。毎年のように大雨で甚大な水害・土砂災害が発生しており、線状降水帯をリアルタイムで把握する技術開発は喫緊の課題となっている。しかし、その形成・維持のメカニズムは解明されておらず、発生の予測は容易ではなかった。 線状降水帯は、次々と発生する発達した雨雲が列をなす「組織化した積乱雲群」によって、数時間にわたってほぼ同じ場所に停滞することで作り出される。線状に伸びる長さ50~300キロ、幅20~50キロ程度の強い降水を伴う雨域と定義される。 非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている線状停滞型の強雨域をどう検出するか。降雨強度でなく、より客観的な積算雨量を用いることで「可視化」できることから、解析雨量の3時間積算を用いた線状降水帯自動検出技術が導入された。 研究グループでは、条件設定を2度にわたって行った。まずは、①3時間積算降水量が80ミリ以上の分布域が線状(長軸対短軸の比が2以上)②その面積が500平方キロメートル以上③領域内の3時間積算降水量の最大値が100ミリ以上-の3条件を満たす雨域を「線状降水帯」として検出しようとした。 ただし、洪水や土砂崩れなど災害対策の観点からは、線状降水帯を検出した地域で災害が必ずしも起こるわけでない。そこで、気象庁と協議の上、第2期SIPで開発した検出技術を基に、積算雨量基準と気象庁の危険度分布を組み合わせ、検出条件をより厳しくすることにした。 2度目は、①3時間積算降水量が100ミリ以上の分布域が線状(長軸対短軸の比が2.5以上)②その面積が500平方キロメートル以上③領域内の3時間積算降水量の最大値が150ミリ以上-の3条件に、大雨警報などの要素を加味した検出条件となった。 年平均44回程度検出 防災気象情報は警戒レベル4相当以上の状況の想定となる。2017年7月から2020年までの検出回数を算出すると、年平均44回程度、災害発生の危険が急激に高まっている地域における線状降水帯の検出が可能となった。この約8割で災害が発生している。 積算雨量を用いるということは、それまでに降った雨量の結果から事後判定をする形。レベル4対象地域の中の特定エリアで線状降水帯が発生すると事前に予報するものではない。清水主任研究員によれば「警戒レベル4.5という言い方もできる。警戒レベル4で全員避難の体制に入っているわけだから、改めて避難指示をする形にはならない」という。 成果は17日から、気象庁の「顕著な大雨に関する情報」への提供が開始される。危機意識を高めてもらうキーワードとして活用するのが狙いで、気象予報士やお天気キャスターなどによる解説情報として主に利用されることになる。2時間先、半日先の予測と組み合わせた精度の向上は今後の課題ということだ。(相澤冬樹)

12/16 気象研オンライン研究成果発表会

今年度の気象研究所(つくば市長峰)の研究成果発表会は、新型コロナウイルス感染症対策のためオンライン開催となる。温暖化やゲリラ豪雨などをテーマに、5人の研究者による講演動画が12月16日午後2時からホームページ上に公開される。来年1月27日午後2時まで。各講演のあらましをまとめた予稿は掲載済み。 「オンラインで伝える研究の最前線」で、発表される5講演のテーマ、講演者は次のとおり。 ▽「北極域の急速な温暖化」庭野匡思(気象予報研究部主任研究官) ▽「令和2年7月豪雨の特徴-球磨川流域に記録的大雨をもたらした線状降水帯の構造と発生過程」益子渉(台風・災害気象研究部室長) ▽「集中豪雨予測のための水蒸気ライダーの開発」酒井哲(気象観測研究部主任研究官) ▽「スーパーコンピューター『富岳』を用いた豪雨や洪水の予測に向けて」川畑拓矢(気象観測研究部室長) ▽「津波の即時予測技術の発展-東日本大震災から10年」対馬弘晃(地震津波研究部主任研究官) 予稿は講演ごとにホームページに掲載されている。

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