金曜日, 4月 19, 2024
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イノシシ -検索結果

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つくばの市街地にイノシシ出没

つくば市の市街地にイノシシが出没している。11月初旬から12月初めに天久保4丁目、学園の森、天王台付近で相次いで目撃された。農村部ではイノシシによる農作物被害が大きな問題になっているが、街中でイノシシが目撃されるのは同市で初めてだ。市や警察は連日パトロールを実施している。現時点で被害の報告はない。 市鳥獣対策・森林保全室によると、11月4日、松塚と古来で目撃された。その後、7日に筑波大学近くの天久保4丁目の住宅地で目撃され、20日と21日には学園の森の商業施設周辺で目撃された。11月25日から12月4日には天王台で目撃された。 大きさなどは不明だ。これまで市内各所で目撃されたイノシシが同じ個体なのか、別の個体なのかなども分かっていない。 目撃場所付近では、市と警察などが巡回を続けているほか、学園の森付近では目撃場所近くにわなを設置している。3日までにまだ捕獲されていない。 「初期段階の対策重要」 農研機構畜産研究部門 動物行動管理研究領域の平田滋樹上級研究員。右の画像はイノシシの頭とあごの骨 つくばの街中にどうしてイノシシがいるのか。農研機構畜産研究部門 動物行動管理研究領域の平田滋樹上級研究員は「いつ、どこから来たのかは分からないが、イノシシは平地の休耕地や平地林、やぶなどが好適地。つくばは市街地でも豊かな自然が広がっているので、市街地でイノシシが目撃されても不思議ではない」と話す。平地林ややぶなどで、ススキやクズの根っこ、ドングリなどを食べているという。 目撃した場合の対応については「イノシシは警戒心が強い。石を投げたり、犬をけしかけたりなどは絶対せず、その場からそっと立ち去ってほしい」と話す。 一方「初期段階でどれだけ早く対策をとれるかで、その後の増え方が変わってくる」とし、住民ができることとして「目撃したら、日付けと時間、どっちに行ったかをメモし、行政に通報してほしい」とする。情報がたくさん集まれば集まるほど、居場所を絞り込むことができる。 さらに、えさを置いたり、飲食容器のごみを捨てると知らず知らずのうちに餌付けになってしまったり、人を恐れなくなってしまうので、餌付けやポイ捨てをしないことが重要だと強調する。 イノシシはどこに食べ物があったか覚えていて、目撃場所周辺に再びやって来ることがあるという。草が茂っていると茂みに隠れて、急にとび出してくる恐れがあるので、目撃場所付近では草を刈って茂みを減らすことなども対策の一つになるという。 市内では2018年1月、同市沼田のつくば霞ケ浦りんりんロードで住民2人が相次いでイノシシに襲われ、けがをする事故が発生している。 つくば市内の市街地でイノシシを目撃した場合の連絡先は以下の通り。市役所鳥獣対策・森林保全室 電話 029-883-1111つくば警察署  電話 029-851-0110

野生イノシシに豚熱ワクチン散布 13市町で

茨城県畜産課は、野生イノシシに免疫をつけることで豚熱(CSF)感染を防止するため、今月19日から6月10日まで、国や市町村、猟友会などと連携し、野生イノシシに対する経口(餌)ワクチンの野外散布を実施している。 散布市町村は、栃木県境寄りにあり野生イノシシが生息している大子町、常陸大宮市、城里町、笠間市、桜川市、石岡市の6市町と、渡良瀬遊水地から利根川沿い河川敷の古河市、境町、五霞町、坂東市の4市町。 さらに豚熱感染個体が確認された守谷市、取手市、常陸太田市の3市など、県下全域に及ぶ。 経口ワクチンはイノシシが生息する山林等の土中に埋める。トウモロコシなどを材料としたビスケット状の餌の中にワクチンを封印したもので、国の食品安全委員会で安全評価された成分や食品でできているという。 既に県内では野生イノシシに豚熱感染個体が確認されている。このため県は、豚飼育施設に入る予定があり、山林に入った場合は、山林から出る際、消毒液などで靴底等に付着した土を洗い流すなどの防止策を講じてほしいと呼び掛けている。(山崎実) 経口ワクチン散布市町と作業スケジュールは以下の通り。▽守谷市=5月19日(餌付)、27日(散布)▽常陸太田市=5月25日と27日(餌付)、6月1日と3日(散布)▽大子町、常陸大宮市、城里町、笠間市、石岡市、取手市、桜川市、古河市、境町、五霞町、坂東市=6月1日、3日、8日、10日(いずれも散布) 【豚熱】豚やイノシシが感染する病気で、伝染力が強く、致死率が高い。人には感染しない。国内では2018年9月、岐阜県の養豚農場で26年ぶりに感染が確認された。現在、国内で感染が拡大しており、県内では昨年6月、取手市内で感染した野生イノシシが初めて確認された。その後、守谷、常陸太田、常陸大宮市、大子町で12例の野生イノシシの感染が確認されている。一方、県内の養豚場では現在まで感染は確認されていない。

天候不順にイノシシ被害、コロナ禍にもめげず 筑波山麓で稲刈り

【相澤冬樹】稲刈りシーズンも最終盤、つくば市神郡の「すそみの田んぼ」で26日、NPO法人つくば環境フォーラム(田中ひとみ代表)による体験学習会「谷津田と森のガイドツアー」が開かれ、市民参加の稲刈りが行われた。筑波山麓の山すそに開かれた田んぼは今年、天候不順やイノシシ被害に悩まされた上、コロナ禍から市民参加による活動もままならず、悪戦苦闘の中、収穫の秋(とき)を迎えた。 すそみの田んぼは「生きものと共存するコメ作り」を掲げ、同フォーラムが2006年から取り組んでいる谷津田再生事業。例年秋には多くの家族連れを集め、収穫祭を兼ねての体験学習会を開いてきたが、今回は新型コロナ対策から大人限定で呼びかけ、約10人の参加で行われた。 細草川上流の「田んぼ」には、ホタルやカエル、タガメなど水生生物をはじめとする生きものが多数生息する。乾田化することのない谷津田は、多様な生態系を維持する環境だが、大型の農業機械が入らず手間がかかるため、農業者の高齢化に伴い全国的には耕作放棄が広がっている。同フォーラムでは約0.8ヘクタールの田んぼを隣りの山林と合わせて借り、あぜ道を作り、耕起した上で、主に手植えや手刈りによる稲作を行ってきた。田んぼボランティアや田んぼオーナーなど市民参加で通年プログラムを運営している。 今季はコロナ禍で、5月上旬に行う田植えイベントから縮小を余儀なくされ、栽培スケジュールが間延びした。全面無農薬栽培による稲作を実現できたが、天候不順、特に7月の長雨、日照不足が生長に大きな影響をもたらした。稲穂の実入りが思わしくないという。 加えてイノシシの出没時期が例年より早まり、8月から活動が見られるようになった。山側からの進入に備えて鉄製のフェンスを張り巡らしたが、今季は川側から二度にわたり侵入された。特に古代米の被害は甚大という。台風の直撃がなかったことで、倒伏イネは少なかったが、天候不順とイノシシ被害から、「作況指数でいったら50に満たないのでは」(スタッフの永谷真一さん)という最悪の状況になった。 それでも小雨混じりの天気のなか集まった参加者は、稲刈りをそれぞれに楽しんだ。一株ひと株を鎌で刈り取り、イネを束ねて稲木に掛け天日乾燥させる「おだがけ」作業まで取り組んだ。前後に学習会や自然観察、食事会など盛りだくさんのメニューを用意したため、短時間の稲刈り体験になってしまったのが残念な様子。 阿見町から参加の中山広子さん(70)は「小学生時代から約60年ぶりの稲刈り、おもしろくてもうちょっとやりたかった。来年は田植えから参加したい」と汗をぬぐった。

狩りガール押し立てイノシシ狩猟 県がコンテストと体験ツアー

【相澤冬樹】茨城県がイノシシ狩猟コンテストを行っている。亥年(いどし)の今季が初開催。元年度の「狩猟者登録」を行ったものが参加でき、新年2月15日まで県内で捕獲したイノシシ限定で体長の大きさを競う。 県民以外でも参加できるが、茨城県で狩猟者登録を行い、県内で捕獲した体長(尾の付け根から鼻の先までの長さ)100センチ以上のイノシシが対象になる。捕獲方法はわな猟、銃猟になるが、国の補助金が出ている有害鳥獣捕獲許可と指定管理鳥獣捕獲等事業で捕獲したイノシシは対象外となる。 参加者は捕獲したイノシシを横たわらせ、メジャーで採寸する写真を撮って応募する。コンテストは、体長に後ろ足長を加算したポイントを基準に審査し、上位入賞者を決める。第1位は最優秀狩人賞として10万円相当の副賞が贈られるのをはじめ、5位までを表彰。女性参加者の第1位には狩りガール賞(副賞5万円相当)、応募数が最も多かった者には特別賞として県猟友会長賞(副賞5万円相当)が出る。 県によれば、県内のイノシシによる農作物被害は17年度に約1億5000万円で、前年から約3割増加し、獣類全体の8割以上、鳥獣全体の約3割を占めた。さらに最近は市街地にまで出没し、通学や日常生活の安全安心の観点から看過できない状況になっている。 対策の強化が求められる一方で、捕獲の担い手となる狩猟者は20年前に比べてほぼ半減した。狩猟免許所持者の約7割が60歳以上と高齢化も進んでいるなど、全県的に担い手の確保が大きな課題となっている。 このためコンテストは、狩猟の意義や役割を広く発信し、理解を深めてもらうとともに、少しでも多くの人に捕獲の担い手になってもらう機会と位置づけ実施する。この際「大型獣を駆除するほど個体数の減少に効果があるという研究結果もある」(県自然環境課)ことから100センチ以上を対象にした。現在わな猟、銃猟合わせ延べ4000人近くが参加資格を持つという。 定員超えの狩猟ツーリズム コンテストは県の主催、県猟友会の協力で行われるが、応募や問い合わせの窓口は旅行代理店が担っているのが異色だ。同店では今季の猟期中、2回に分けて「狩りガールと行く狩猟体験ツアー」(主催は県)を企画・催行しており、第1回の「わなプラン」は今月7、8の両日、城里町で行った。 箱わなの架設見学やイノシシの解体体験に29人が参加、土浦市から3人、つくば市から1人の参加もあった。全体で20代、30代からそれぞれ2ケタの参加者があり、底辺拡大の目的は一部果たした。来年2月8、9日には第2回「銃プラン」の開催が予定されており、こちらは1月17日の締め切りを前に募集定員超え、抽選が必至となっている。 問い合わせはJTB水戸支店(電話029-225-5233)

【亥年折り返し】㊦ 昨季イノシシ500頭を捕獲 つくば市、国道125号をめぐる攻防

【相澤冬樹】つくば市では2018年1月、沼田のつくばりんりんロードで、地元住民がイノシシに襲われケガをする事件があり、4月には金田のさくら運動公園、桜中学校付近で目撃情報がもたらされ、緊張が走った。ここまでくると、学園地区とは目と鼻の距離である。 同市が、イノシシを対象とする鳥獣害被害防止計画を作成したのは2017年度。担当は農業政策課だが、猟友会などと連携した捕獲対策は環境保全課が所管する。19年度までの3カ年、毎年160頭から210頭の捕獲を計画していた。 18年前半の事故と目撃情報から、筑波山ろくの地区長を中心に駆除の要望が高まった。イノシシは11月から翌年3月までが猟期で、銃器とワナによる捕獲体制が強化された。市内には猟友会支部が3地区にあり、協力を呼びかける一方、市も山林上空にドローンを飛ばすなどして生息分布を探り、ワナの適正配置に役立つよう情報を流した。 結果、18年度の捕獲頭数は一気に500頭、計画頭数の倍以上に達した。市環境保全課は「地元にお願いした自助努力の成果が表れた」と胸を張った。筑波山ろくに並行して小田、北条を走る国道125号を越えての目撃情報もぱたり途絶えており、筑波山域への封じ込めには成功しているとみている。地元からも「被害も減っているようだ」(六所地区)と好感されている。 しかし、同課は「手放しでは喜べない」としている。農研機構のイノシシ研究者、仲谷淳さんが指摘していた「捕獲数が多い地域ほど被害も多くなる」状況の可能性を否定できないからだ。500頭もの捕獲がこの先の状況をどう変化させていくか、動向を見守りつづける必要がある。20年度からの鳥獣害被害防止計画の作成に向け、被害情報の収集、狩猟免許取得者の拡大などに取り組んでいる。 仲谷さんによると、イノシシは元来平地を好む生き物なので、山に追い込み、正面から防御すると脇から遠回りに漏れ出す生態がある。筑波山ろくの防御線は土浦市に入ると、旧新治村を通る県道つくば千代田線に変わる。しかし旧土浦市の今泉地区あたりまで侵入跡がみられることから、平地への越境はすでに始まっているようにもみえる。さらに同市東部、市街化が進むおおつ野地区でも出没したとの情報がある。 耕作放棄地や放棄果樹園などを足場に、市街地へ侵入してくると市民生活への影響も懸念される。「市街地では発砲もできず、わなも仕掛けられない。交通事故や安全対策など被害は農地や農作物にとどまらなくなる」(仲谷さん)。 土浦市農林水産課では、「筑波山域には実際、どれほどの生息数がいるのか、実態を計れないところが悩み」という。同市の防止計画はかすみがうら市と共同で19年度に策定。イノシシについては18年度の被害額439万円を21年度に307万円まで減らす目標を立てた。捕獲数の目標は年間150頭。同課によれば、15年以降、直接的な予算は年間250万円ほどで、毎年100頭前後を捕獲してきた。生息実態がつかめないため、これらの計画数値が適正かの判定もできかねているのが実情のようだ。

【亥年折り返し】㊤ フロントラインは県南にあり 農研機構イノシシ研究者が警告

【相澤冬樹】亥年(いどし)も折り返し。農作物を食い荒らすイノシシ対策の研究に長年取り組んできたつくばの研究者は、捕獲や防除柵の設置対策は、誤ると被害を増加させる可能性があると指摘する。茨城県は現在、県南の未生息地にまで分布が広がるかのターニングポイントに立っており、このフロントラインを突破されると全国1、2を争う被害県となるかもしれないという。イノシシを止める手立てはあるのだろうか。 被害が出てからでは遅すぎる 警告を発しているのは、農業・食品産業総合研究機構(農研機構)専門員、仲谷淳さん(63)。イノシシ研究歴は西日本農業研究センター、中央農業研究センターを通じ40年を超える。仲谷さんによれば、農業産出額に占めるイノシシ被害の割合(被害率)で、現在西日本は東日本の4倍程度高いが、近年は茨城、千葉の被害額が拡大しており、茨城県は2001年の30位から、17年には10位に順位をあげた。この増勢が懸念材料だ。 イノシシ対策には、猟銃や檻(おり)による「捕獲」、柵を設置しての「防除」、食物や隠れ場所を取り除く「環境整備」の3対策があるが、いずれも中途半端では被害の拡大につながるおそれがあるという。 実際、捕獲数が多い地域ほど、被害も多くなる傾向がみられる。「統計的に、檻で除去できるのは生育頭数の半数以下にとどまる。ある地域で、1年目に100頭捕獲して次の年200頭捕獲したという場合、取り逃がしたイノシシは1年目には100頭以上だが、2年目には200頭以上。コストをかけて被害を拡散させていることになる」。捕獲数の増加は単純には喜べない。生息数増加の反映とも考えられ、むしろ警戒すべきべき状況とも言える。 防除柵も、設置した場所の被害は着実に減少する。しかし、柵の設置を計画的に進めなければ、押し出すようにイノシシを里や街の中へと誘導し、被害を拡散させてしまう。「江戸時代の対馬藩では、年貢確保のため細切れに柵で囲った中へのイノシシを追い込み、駆除する殲猪令(せんちょれい)という強硬手段で絶滅を図った」(仲谷さん)というが、島の中だからできたことだし、現代社会ではここまでの徹底は難しい。 近年、耕作放棄地が増えて、イノシシは山間から山里へと勢力を拡大し、平地まで下りてきている。全県的にみるとこの分布生息域は行方市や潮来市、稲敷市などに広がって目撃や捕獲例が見られるようになり、放置すれば県南都市部へ進出する勢いという。そのフロントラインがつくば市だと旧筑波町の筑波山ろく、土浦市では旧新治村域を超えて今泉地区あたりに達している。 仲谷さんは「そこを突破されると被害は農作物にとどまらず、対策費も増大する一方となる。予防対策こそ重要で、そのラインに合わせて、捕獲・防除・環境整備の3つの基本対策を連携して徹底的に実施する必要がある」とアピールする。すなわち、被害が出てからでは遅すぎる、見つけ次第捕獲、除去する早期対策が望まれるという。 しかし、被害が出ていない段階で、行政が予算措置を講じて対応に動くのは容易でなく、問題提起にとどまってしまいがちだ。(つづく)

初日の出イメージし赤いイノシシに 筑波学院大で年賀状コンペ

【橋立多美】筑波学院大学(つくば市吾妻)の来年の年賀状デザインを決める2019年賀状コンペの表彰式が17日同大で行われた。グランプリに輝いた経営情報学部2年の小松崎匠さんと、準グランプリの菅野萌々子さん(同学部2年)に大島愼子学長から賞状が授与された。 同コンペは同大の師走行事で、今年で6回目。グランプリ作品は同大の年賀状に用いられるという。学長、学部長らが審査にあたり、親しみやすく新年の明るさがあり、大学の年賀状にふさわしい作品が選ばれる。今回は11人の15作品の中から選ばれた。 グランプリを獲得した小松崎匠さんは「初日の出をイメージして丸っこいイノシシを赤にした。グラフィックデザイナーを志望しているが受賞したことで公共に関する作品づくりに自信がついた。大学の年賀状に使われることは光栄で、襟を正していきたい」と話した。 準グランプリの菅野萌々子さんの作品は、画像データに変換した和紙を背景に12頭のウリ坊が輪を描く。「紙の暖かさが好きでバックに和紙を用いた。ウリ坊は1頭ずつ歩き方に違いを持たせ、輪で『和』を表現して新年への思いを込めた」と話してくれた。 経営情報学部ビジネスデザイン学科の高嶋啓准教授は「来年の干支のイノシシをモチーフに、親しみやすい大学のイメージを伝えるデザイン性の高さが買われた」と受賞作を評価した。

犬からイノシシへ 東筑波ユートピアで干支引き継ぎ式

【斉藤茂】石岡市吉生の動物園「東筑波ユートピア」で20日、今年の干支の戌(いぬ)と来年の亥(い)=イノシシ=の引き継ぎ式が行われ、同園のマスコット犬「りく」(柴犬)と、この夏同園で生まれたというイノシシが仲良く式に臨んだ。 式典は同園のエントランスに祭壇を設けて行われ、2頭が他の動物を代表して筑波山神社(つくば市)と神名神社(石岡市)の宮司から幸せと健康の祈願を受けた。 2頭は終始、おとなしくして式典に臨んだ。式典後、同園オーナーの小川高広さん(80)が2頭の頑張りに感謝して両脇に抱きかかえると、互いに鼻を突き合わせてそれに応えるなどほほえましい光景も。取り囲んだ報道陣や見物客らが盛んにシャッターを切っていた。 同園ではテレビ放映をきっかけに全国の大勢の動物ファンから寄せられた募金約5800万円を元に現在イノシシランドを整備しており、来年3月には約40頭のイノシシを一般公開する予定。 小川高広さんは「動物園の運営は決して楽ではなく、赤字続きで何度も止めようと思ったが、今年は全国から励ましの声が届き、若いスタッフたちも意を強くしている。来年はイノシシが活躍してくれることを期待している」と、笑顔で今年を振り返っていた。

イノシシランド開設へ 東筑波ユートピア

【斉藤茂】石岡市吉生の動物園「東筑波ユートピア」が来年のえと亥(い)=イノシシ=にあやかり、イノシシ専用の放牧場の整備に乗り出している。来春オープンを目指している。 東筑波ユートピアは旧八郷地区の小高い山の中腹にあり、13㌶の園内にはニホンザルやクマ、ポニー、クジャクなど約30種類の動物が飼育されている。目玉のお猿の演芸ショーをはじめ、近年はウサギやドックラン、猫カフェなど小動物との触れ合いコーナーに人気が集まっている。 イノシシランドが設置されるのは動物園の頂上部の傾斜地で、かつてニホンザルを飼育していたエリア。しかし管理小屋や周囲のフェンスが老朽化したため、閉鎖状態が続いていた。今回はこの施設を大幅にリフォームし、現在40頭ほど飼育しているイノシシを公開する一方、子供のウリボウとの触れ合いなども楽しんでもらう方針。 具体的には1㌶の外周を囲う古いフェンスを新調し、入園者の周遊路や監視小屋、休憩所、ふれあい広場などを整備する。一帯は国定公園に指定されているため施設の配色や音、構造などに配慮。神経質なイノシシの生態も考慮し、自然に近い飼育環境を整えていく。 工費約5000万円は全額が寄付金。今年に入って数回、テレビの動物番組で同園が紹介され、これをきっかけにクラウドファンディングを立ち上げたところ、全国から寄付の申し出が殺到した。 オーナーの小川高広さん(80)は「これまで毎年赤字続きだったが、来年こそは入園者を増やし、経営を安定させたい。3月にはイノシシの元気な姿をお披露目させたい」と語り、農家にとっては厄介者の存在に大きな期待を寄せている。 ◆入園料は大人1200円、子供720円。年中無休。

《くずかごの唄》22 異常気象の夏 野生のイノシシも異常に

【コラム・奥井登美子】「異常気象が治まりますように」。オゾンの神様、二酸化炭素の神様、いろいろな神様にお祈りしなければならないと思ったけれど、どうしていいか解らないので、桜川市真壁の五所駒瀧神社にお参りにいってみた。 この神社は歴史のある神社で、巨木の森に囲まれ、敷地の中の苔むした石が千年の歴史を語っている。ここへ来ると、いつも自然の懐に抱かれたような、しみじみした豊かな気持になれるのであった。 しかし、今回は違っていた。苔むした大小の石がいたるところに乱雑に散らばっていて、苔がむき出しになってしまっている。広い境内の中が何か異常なのだ。宮司の奥様、桜井まゆみさんが説明してくれた。 「今年の夏の異常気象で、山の木の実がいつもと違うのでしょう。イノシシが子供を連れて、こちらの生活にお構いなく出てきて、田んぼの稲は全滅。境内の石をひっくり返して、中のミミズを採って食べたり、柿の実をもいだり、メチャメチャです」 「こんなに、イノシシに荒らされた年は初めてで、何だかとても怖いです。野生のイノシシだけに、何か地球の異常を感じているのかしら」 とうとうクーラーに頼る 今年の夏は、1946年の気象観測以降、最も暑い夏だったそうである。私も生れて初めて体温より高い気温を体験し、今まで自宅には外壁にツタを這わせてクーラーをつけずにがんばってきたのに、生命の危険を感じて、とうとうクーラーをつけてしまった。テレビのニュースでも、熱中症の危険をしつこく報じていた。 日本人の老若男女すべての人が、生命を守るために、異常気象と防災を意識しながら生活しなければならない時代に入ってしまった。これは日本の歴史始まって以来はじめてのことである。オゾン層の破壊、海水温の変化など、地球全体を視野に入れて行動しなければならない。 もうすぐ、つくばで「世界湖沼会議」が始まる。われわれは日常生活の中で何をすればいいのか真剣に考えなければならないと思う。(随筆家)

この国の農業をどうする?《邑から日本を見る》155

【コラム・先﨑千尋】政府は先月27日、農政の憲法と言える「食料・農業・農村基本法」の改正案を閣議決定し、国会に提出した。同法の前身は、1961年に制定された農業基本法。経済の高度成長に合わせた法律だったが、1999年に、経済と農業・農村の激変に対応するために現行の法律になった。 法の制定から25年経ち、世界では食料争奪が激化し、国内では人口減少が進んでいる。今回の改正は、食料安保の確保を基本理念に掲げ、紛争に伴う食糧危機や地球温暖化、人口減少に対応し、環境と調和のとれた食料システムの確立を目指すというもの。来年度予算の成立後に衆参各院で審議がなされる見通しだ。 改正案では、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義している。食料自給率のほか、肥料や飼料など農業資材の確保などを念頭に複数の目標を設定し、達成状況を年に1回調査する。また、環境と調和のとれた食料システムの確立や多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興、水産業及び林業への配慮も条文に盛り込まれている。 では農業の現状はどうか。 同法制定時と比べて、農業の基盤である農地面積は57万ヘクタール(12%)減少し、基幹的農業従事者は234万人から116万人と半減している(23年)。農家の手取り収入となる生産農業所得は3兆1051億円(22年)と、大企業1社の売り上げにも満たない。この間、食料自給率はエネルギー換算で40%から38%にダウンしている(22年)。 この基本法案はわが国の農業のあるべき姿を示しているのだが、掲げている「環境と調和のとれた食料システムの確保」や「多面的機能の発揮」などは、現状がそうはなっていないことを証明しているものだ。どうしてそうなってしまったのかの検証がなされなければ、為政者の希望、願望にすぎない。 農業では食えない現実 国全体の数値や法律のことはさておき、私が住んでいる地域の周りを見てみよう。やはり遊休農地が年々増えており、後継者もいない。イノシシがワガモノ顔に田畑を荒らしている。空き家も増えている。 その根本原因は何か。訳は簡単だ。農業では食えない、生活できないから。弥生時代以来、日本人は全体として米を腹いっぱい食べることを夢みてきた。それが達成できたのが1970年頃。まだ50年前のことだ。喜んだのは束の間。すぐにコメ余りになり、減反政策が始まった。米価もどんどん下がり、農水省の統計でも大幅赤字だ。 変化の兆しもある。すぐ近くで花づくりをしているI君。石岡市八郷地区で有機農業・里山農業に取り組んでいるY君。いずれも農家の出身ではない。2人とも明るい。遊休農地を借りて干し芋用のサツマイモを作付けしているK君。隣町のM農場は、昨年から牛の飼料となるデントコーンを一面に作付けしている。常陸大宮市では、市が率先して有機農業に取り組み、学校給食にも有機農産物を提供している。 県内では農業でゆったりと暮らしている地域もある。鹿行地域や坂東市岩井地区などだ。あちこちの直売所もにぎわっている。ぼやくだけでは何も生まれない。生産者が変わるだけでなく、消費者も変わらなければ、とつくづく考えている。わが国の農業がなくなれば、詰まるところ、国民全体、消費者の皆さんも困るのではないか。法律以前の話だ。(元瓜連町長)

この国の農業をどうする?《邑から日本を見る》155

【コラム・先﨑千尋】政府は先月27日、農政の憲法と言える「食料・農業・農村基本法」の改正案を閣議決定し、国会に提出した。同法の前身は、1961年に制定された農業基本法。経済の高度成長に合わせた法律だったが、99年に、経済と農業・農村の激変に対応するために現行の法律になった。 法の制定から25年経ち、世界では食料争奪が激化し、国内では人口減少が進んでいる。今回の改正は、食料安保の確保を基本理念に掲げ、紛争に伴う食糧危機や地球温暖化、人口減少に対応し、環境と調和のとれた食料システムの確立を目指すというもの。来年度予算の成立後に衆参各院で審議がなされる見通しだ。 改正案では、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義している。食料自給率のほか、肥料や飼料など農業資材の確保などを念頭に複数の目標を設定し、達成状況を年に1回調査する。また、環境と調和のとれた食料システムの確立や多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興、水産業及び林業への配慮も条文に盛り込まれている。 では農業の現状はどうか。 同法制定時と比べて、農業の基盤である農地面積は57万ヘクタール(12%)減少し、基幹的農業従事者は234万人から116万人と半減している(23年)。農家の手取り収入となる生産農業所得は3兆1051億円(22年)と、大企業1社の売り上げにも満たない。この間、食料自給率はエネルギー換算で40%から38%にダウンしている(22年)。 この基本法案はわが国の農業のあるべき姿を示しているのだが、掲げている「環境と調和のとれた食料システムの確保」や「多面的機能の発揮」などは、現状がそうはなっていないことを証明しているものだ。どうしてそうなってしまったのかの検証がなされなければ、為政者の希望、願望にすぎない。 農業では食えない現実 国全体の数値や法律のことはさておき、私が住んでいる地域の周りを見てみよう。やはり遊休農地が年々増えており、後継者もいない。イノシシがワガモノ顔に田畑を荒らしている。空き家も増えている。 その根本原因は何か。訳は簡単だ。農業では食えない、生活できないから。弥生時代以来、日本人は全体として米を腹いっぱい食べることを夢みてきた。それが達成できたのが1970年頃。まだ50年前のことだ。喜んだのは束の間。すぐにコメ余りになり、減反政策が始まった。米価もどんどん下がり、農水省の統計でも大幅赤字だ。 変化の兆しもある。すぐ近くで花づくりをしているI君。石岡市八郷地区で有機農業・里山農業に取り組んでいるY君。いずれも農家の出身ではない。2人とも明るい。遊休農地を借りて干し芋用のサツマイモを作付けしているK君。隣町のM農場は、昨年から牛の飼料となるデントコーンを一面に作付けしている。常陸大宮市では、市が率先して有機農業に取り組み、学校給食にも有機農産物を提供している。 県内では農業でゆったりと暮らしている地域もある。鹿行地域や坂東市岩井地区などだ。あちこちの直売所もにぎわっている。ぼやくだけでは何も生まれない。生産者が変わるだけでなく、消費者も変わらなければ、とつくづく考えている。わが国の農業がなくなれば、詰まるところ、国民全体、消費者の皆さんも困るのではないか。法律以前の話だ。(元瓜連町長)

巡回指導より野犬捕獲こそ必要 《晴狗雨dog》7

【コラム・鶴田真子美】茨城県では多くの野犬が捕獲されています。今日も野犬の子犬たちが県動物指導センターに収容されてきました。茨城県の狂犬病予防接種実施率は平均で62.9%です。畜犬登録率も同じくらいかと思われます。飼い犬でさえ、まだまだ管理がしきれていません。 なぜこのように多数の飼い主不明の犬が、茨城にはあふれているのか? 減らすにはどうすればよいのか? 人口密度、地形、住民意識にも左右されますが、自力で解決しようと努力する市町村(牛久市、守谷市、取手市、常総市など)と、対策が講じられていない市町村は、市町村別の犬収容頭数表にも表れています。 母犬を中心に保護を進めるのが野犬抑止の鍵です。昔から、犬は安産、多産と言われてきた通り、犬はひとはらで5~10匹も出産します。そのうち半数がメスとします。犬は半年で妊娠可能となります。1頭のメスから5頭のメスが産まれたら、次のシーズンには60頭に増えるのです。野犬の繁殖を抑えるには、メス犬を捕獲することが重要です。 県は2019年から保護指導課に任命職員2名を配し、野犬多発地域の放し飼い取り締まりを始め、それから4年が経ちます。しかし、その成果については疑問が残ります。開示請求した文書をみても、飼い主不在の家の巡回を繰り返すだけで、たまに、つなぐよう指導した、柵を直すよう指導した―と記載されているだけです。 巡回指導より、野犬捕獲こそが必要です。野犬多発地域の解決のために、早急に協議会開催が求められます。獣医師会、NPO法人、個人ボランティア、住民代表、市町村環境政策課職員をメンバーにして、野犬撲滅のワーキンググループを結成する必要があります。2015年、常総市が野犬140頭を皆生かして譲渡し、ゼロにした経験を踏まえ、同じことを自治体で一斉に行うのです。 犬の畜犬登録や狂犬病予防接種の実施は市町村の業務ですから、飼い犬に関する膨大なデータを市町村は保有しています。地域ごとに町内会や地区会があり、どこにどんな犬がいるか、野犬多発地帯の情報などは集約可能なはずです。 ワーキンググループで、チームごとに自治体を分担し、捕獲と順化を行うのです。そのための収容施設と医療、譲渡までのスタッフを揃えるために、目的を明確にしたふるさと納税制度を作ったらどうでしょう。県犬猫殺処分ゼロを目指す条例第10条には「犬猫の収容頭数を減らすため必要な施策について…協議会を組織し協議するものとする」と記載されています。 一昨年から、県には外国製捕獲機の購入を要望してきましたが、昨年、県は試みに輸入しました。野犬は、従来の鋼鉄のハクビシンやイノシシ用檻ではなかなか入りません。米国製の軽量組み立て式檻を用いれば、警戒心の強い犬も保護できます。(犬猫保護活動家)

巡回指導より野犬捕獲こそ必要 《晴狗雨dog》7

【コラム・鶴田真子美】茨城県では多くの野犬が捕獲されています。今日も野犬の子犬たちが県動物指導センターに収容されてきました。茨城県の狂犬病予防接種実施率は平均で62.9%です。畜犬登録率も同じくらいかと思われます。飼い犬でさえ、まだまだ管理がしきれていません。 なぜこのように多数の飼い主不明の犬が、茨城にはあふれているのか? 減らすにはどうすればよいのか? 人口密度、地形、住民意識にも左右されますが、自力で解決しようと努力する市町村(牛久市、守谷市、取手市、常総市など)と、対策が講じられていない市町村は、市町村別の犬収容頭数表にも表れています。 母犬を中心に保護を進めるのが野犬抑止の鍵です。昔から、犬は安産、多産と言われてきた通り、犬はひとはらで5~10匹も出産します。そのうち半数がメスとします。犬は半年で妊娠可能となります。1頭のメスから5頭のメスが産まれたら、次のシーズンには60頭に増えるのです。野犬の繁殖を抑えるには、メス犬を捕獲することが重要です。 県は2019年から保護指導課に任命職員2名を配し、野犬多発地域の放し飼い取り締まりを始め、それから4年が経ちます。しかし、その成果については疑問が残ります。開示請求した文書をみても、飼い主不在の家の巡回を繰り返すだけで、たまに、つなぐよう指導した、柵を直すよう指導した―と記載されているだけです。 巡回指導より、野犬捕獲こそが必要です。野犬多発地域の解決のために、早急に協議会開催が求められます。獣医師会、NPO法人、個人ボランティア、住民代表、市町村環境政策課職員をメンバーにして、野犬撲滅のワーキンググループを結成する必要があります。2015年、常総市が野犬140頭を皆生かして譲渡し、ゼロにした経験を踏まえ、同じことを自治体で一斉に行うのです。  犬の畜犬登録や狂犬病予防接種の実施は市町村の業務ですから、飼い犬に関する膨大なデータを市町村は保有しています。地域ごとに町内会や地区会があり、どこにどんな犬がいるか、野犬多発地帯の情報などは集約可能なはずです。 ワーキンググループで、チームごとに自治体を分担し、捕獲と順化を行うのです。そのための収容施設と医療、譲渡までのスタッフを揃えるために、目的を明確にしたふるさと納税制度を作ったらどうでしょう。県犬猫殺処分ゼロを目指す条例第10条には「犬猫の収容頭数を減らすため必要な施策について…協議会を組織し協議するものとする」と記載されています。 一昨年から、県には外国製捕獲機の購入を要望してきましたが、昨年、県は試みに輸入しました。野犬は、従来の鋼鉄のハクビシンやイノシシ用檻ではなかなか入りません。米国製の軽量組み立て式檻を用いれば、警戒心の強い犬も保護できます。(犬猫保護活動家)

パクちゃん 山口へ行く《続・平熱日記》117

【コラム・斉藤裕之】お盆に思い切って故郷山口に帰ってみることにした。鉢植えの水やりは「百均」のペットボトルを再利用したものでなんとか凌げそうだが、問題は犬のパク(ハクは随分前から「パク」という呼び名に代わってしまっている)をどうするか。預かってくれそうな先もいくつか思い当たったのだけれど、ここは一緒に車で帰ろうと決めた。 片道千キロ。しかも車嫌いのパクにとっては辛い旅になることはわかっていた。しかし、この先も車で2人?旅をするにあたっては、いずれ通らねばならない試練。思い立ったが吉日。渋滞を避けたつもりで出発してみたものの、すでに人々の移動は始まっていた。首都高通過に予想以上の時間がかかった上に、景色優先で選んだ中央道では名古屋の手前でホワイトアウト級の土砂降りに遭う。 やれやれ何とかたどり着いた。弟の家は山の中にあるほぼぽつんと一軒家だ。と、ちょっと目を離した隙にパクが山の中へと消えてしまった。「パクー!パクー!」と呼べども反応がない。「そのうち帰って来るよ」と弟夫妻。辺りはだんだん薄暗くなって、ヒグラシが寂しく鳴き始める。 山中にはイノシシの罠(わな)もかけてあるというし、かれこれ3時間が経つ。諦め半分の気持ちでふと外の縁側を覗くと、そこにパクが座っている。「パクー!」。顔と足が汚れていて、どうやら山の中の散策を楽しんだらしい。我が家に来て1年半。元はノラ公だったので、初めはなつくのか心配だったけれども、ちゃんと戻ってきてくれたぞ。 コーヒーの木は、なじみのカフェに 翌日。さして目的もないが、まずは粭島(すくもじま)に行き、弟の船で出航。アジ、タイ、カワハギの大漁。それから、件(くだん)のホーランエー食堂で冷たいそばをいただく。別の日には、瀬戸内海、日本海の道の駅を探訪。ビニール袋いっぱいの小ぶりのサザエが千円。 透き通るようにきれいな海に戸惑うパク。帰りの山道では、「何か落ちてる?」と思って車で近づいてみると、なんとウリ坊。死んでいるのかと思って、車で近づくと足をバタバタさせて、昼寝? それから、ずっと疑問に思っていたこと。小さい頃、裏の山に一家で出かけると、母が摘んでいた丸い葉っぱ。確かその葉っぱで、柏餅(かしわもち)を作っていたと思うのだけれど…。道の駅で買った柏餅。なんと、その葉っぱに包まれている。弟の奥さん、ユキちゃんによると、「この辺りでは柏の葉の代わりに、サルトリイバラを使うんよ」。 帰りは渋滞もなく、ほぼ予定通りの時間に自宅に着くことができた。着いてまずは2階に上がる。枯れはしないかと心配だったコーヒーの木。元気そうな姿に一安心。実は留守をしていた間に一考して、この木はなじみのカフェに寄贈することを決めた。 オーナーもこの申し出を喜んでくれたし、家で私1人が見ているよりも、多くの人に触れ合うことができて、その方が木もうれしいに違いない。私も会いに行くのが楽しみだ。いつか花を咲かせてくれるなんてことを思うのは、ちょっと虫が良すぎるかな。 長旅を終えたパクも、安堵(あんど)した様子で階段下の定位置に寝転んでいる。旅から帰ったときのお決まりの文句でも言いたそうだ。「やっぱり我が家が一番。住めば都ねー!」(画家)

パクちゃん 山口へ行く《続・平熱日記》117

【コラム・斉藤裕之】お盆に思い切って故郷山口に帰ってみることにした。鉢植えの水やりは「百均」のペットボトルを再利用したものでなんとか凌げそうだが、問題は犬のパク(ハクは随分前から「パク」という呼び名に代わってしまっている)をどうするか。預かってくれそうな先もいくつか思い当たったのだけれど、ここは一緒に車で帰ろうと決めた。 片道千キロ。しかも車嫌いのパクにとっては辛い旅になることはわかっていた。しかし、この先も車で2人?旅をするにあたっては、いずれ通らねばならない試練。思い立ったが吉日。渋滞を避けたつもりで出発してみたものの、すでに人々の移動は始まっていた。首都高通過に予想以上の時間がかかった上に、景色優先で選んだ中央道では名古屋の手前でホワイトアウト級の土砂降りに遭う。 やれやれ何とかたどり着いた。弟の家は山の中にあるほぼぽつんと一軒家だ。と、ちょっと目を離した隙にパクが山の中へと消えてしまった。「パクー!パクー!」と呼べども反応がない。「そのうち帰って来るよ」と弟夫妻。辺りはだんだん薄暗くなって、ヒグラシが寂しく鳴き始める。 山中にはイノシシの罠(わな)もかけてあるというし、かれこれ3時間が経つ。諦め半分の気持ちでふと外の縁側を覗くと、そこにパクが座っている。「パクー!」。顔と足が汚れていて、どうやら山の中の散策を楽しんだらしい。我が家に来て1年半。元はノラ公だったので、初めはなつくのか心配だったけれども、ちゃんと戻ってきてくれたぞ。 コーヒーの木は、なじみのカフェに 翌日。さして目的もないが、まずは粭島(すくもじま)に行き、弟の船で出航。アジ、タイ、カワハギの大漁。それから、件(くだん)のホーランエー食堂で冷たいそばをいただく。別の日には、瀬戸内海、日本海の道の駅を探訪。ビニール袋いっぱいの小ぶりのサザエが千円。 透き通るようにきれいな海に戸惑うパク。帰りの山道では、「何か落ちてる?」と思って車で近づいてみると、なんとウリ坊。死んでいるのかと思って、車で近づくと足をバタバタさせて、昼寝? それから、ずっと疑問に思っていたこと。小さい頃、裏の山に一家で出かけると、母が摘んでいた丸い葉っぱ。確かその葉っぱで、柏餅(かしわもち)を作っていたと思うのだけれど…。道の駅で買った柏餅。なんと、その葉っぱに包まれている。弟の奥さん、ユキちゃんによると、「この辺りでは柏の葉の代わりに、サルトリイバラを使うんよ」。 帰りは渋滞もなく、ほぼ予定通りの時間に自宅に着くことができた。着いてまずは2階に上がる。枯れはしないかと心配だったコーヒーの木。元気そうな姿に一安心。実は留守をしていた間に一考して、この木はなじみのカフェに寄贈することを決めた。 オーナーもこの申し出を喜んでくれたし、家で私1人が見ているよりも、多くの人に触れ合うことができて、その方が木もうれしいに違いない。私も会いに行くのが楽しみだ。いつか花を咲かせてくれるなんてことを思うのは、ちょっと虫が良すぎるかな。 長旅を終えたパクも、安堵(あんど)した様子で階段下の定位置に寝転んでいる。旅から帰ったときのお決まりの文句でも言いたそうだ。「やっぱり我が家が一番。住めば都ねー!」(画家)

みんなが協力しての文明生活 《遊民通信》27

【コラム・田口哲郎】 前略 以前から、今の生活水準を維持するのに必要な文明の利器は何だろうか?と考えていました。それは電力、水道、気密性の高い住居、空調、温水洗浄便座だと思います。電力と水道水さえあれば、たとえこの地上にたったひとり取り残されても、家にこもればなんとかなりそうです。空調と温水洗浄便座はぜいたく品でしょうが、一度使ったら空調・温水洗浄便座以前には戻れません。科学技術が人間生活を快適にしましたが、その基盤は電力と水道水が築いたものです。でも、人はたったひとりでは、どうにもなりません。 ヒストリーチャンネル制作の「人類滅亡 Life after people」という番組があります。コンセプトは人類が突然消滅した想定で、その後の都市の様子をシミュレーションするというものです。なんとも不気味な設定ですが、いろいろ考えさせられる内容でもあります。 人類消滅の翌日からさまざまな変化が起こり、自然が都市を侵食し始めます。植物がはびこり、ペットが野生化し、かつての都会は動植物王国になる。そして消滅後50年後あたりからランドマークが次々と崩壊します。たとえば、ロンドンだとビッグベンやロンドン橋が、ワシントンだとホワイトハウスが、フランスだとエッフェル塔が無残にも崩れ落ちるのです。 現実にはあり得ないことが次々に映し出され、目が離せません。最後はだいたい人類消滅後300年後の街がただの森林になってしまうという結末です。CGがリアルでまるでそこにいるような感覚になります。 人はひとりでは生きられない 人間がいなくなってまず起こることは、停電です。その停電に復旧はありません。これは大問題です。明かりがなくなります。とりあえず、発電機を確保するでしょうが、近くのガソリンスタンドは電力がなければ燃料補給の役に立たないでしょう。 水道も止まります。スーパーマーケットをはしごして水や食料を得ることで当面はしのげると思います。でも住む場所を移していかねばなりません。10年もすると川にかかる橋は崩落するでしょう。すると移動もできなくなります。定住して農業をすると言ってもノウハウがありません。野犬やイノシシにおびえながら暮らすのです。 絶対の孤独の中で、沈む夕日を眺めながら思うことでしょう。みんながいての自分なのだと。見知らぬ人が電気をつくり、水をつくり、科学技術を発展させてくれているからこその今の生活です。 岸田首相が所信表明演説で「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」ということわざを引用しました。先達が築き上げてきた快適な生活のありがたさをかみしめつつ、人間が厳しい自然の中で生きていくこととは何か? 人間が集団で社会を築く意義は何か? を考えることは、今こそ大切なのかもしれません。我々は、普段気にしていませんが、実はとてももろい文明の中で生きているのです。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

みんなが協力しての文明生活 《遊民通信》27

【コラム・田口哲郎】前略 以前から、今の生活水準を維持するのに必要な文明の利器は何だろうか?と考えていました。それは電力、水道、気密性の高い住居、空調、温水洗浄便座だと思います。電力と水道水さえあれば、たとえこの地上にたったひとり取り残されても、家にこもればなんとかなりそうです。空調と温水洗浄便座はぜいたく品でしょうが、一度使ったら空調・温水洗浄便座以前には戻れません。科学技術が人間生活を快適にしましたが、その基盤は電力と水道水が築いたものです。でも、人はたったひとりでは、どうにもなりません。 ヒストリーチャンネル制作の「人類滅亡 Life after people」という番組があります。コンセプトは人類が突然消滅した想定で、その後の都市の様子をシミュレーションするというものです。なんとも不気味な設定ですが、いろいろ考えさせられる内容でもあります。 人類消滅の翌日からさまざまな変化が起こり、自然が都市を侵食し始めます。植物がはびこり、ペットが野生化し、かつての都会は動植物王国になる。そして消滅後50年後あたりからランドマークが次々と崩壊します。たとえば、ロンドンだとビッグベンやロンドン橋が、ワシントンだとホワイトハウスが、フランスだとエッフェル塔が無残にも崩れ落ちるのです。 現実にはあり得ないことが次々に映し出され、目が離せません。最後はだいたい人類消滅後300年後の街がただの森林になってしまうという結末です。CGがリアルでまるでそこにいるような感覚になります。 人はひとりでは生きられない 人間がいなくなってまず起こることは、停電です。その停電に復旧はありません。これは大問題です。明かりがなくなります。とりあえず、発電機を確保するでしょうが、近くのガソリンスタンドは電力がなければ燃料補給の役に立たないでしょう。 水道も止まります。スーパーマーケットをはしごして水や食料を得ることで当面はしのげると思います。でも住む場所を移していかねばなりません。10年もすると川にかかる橋は崩落するでしょう。すると移動もできなくなります。定住して農業をすると言ってもノウハウがありません。野犬やイノシシにおびえながら暮らすのです。 絶対の孤独の中で、沈む夕日を眺めながら思うことでしょう。みんながいての自分なのだと。見知らぬ人が電気をつくり、水をつくり、科学技術を発展させてくれているからこその今の生活です。 岸田首相が所信表明演説で「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」ということわざを引用しました。先達が築き上げてきた快適な生活のありがたさをかみしめつつ、人間が厳しい自然の中で生きていくこととは何か? 人間が集団で社会を築く意義は何か? を考えることは、今こそ大切なのかもしれません。我々は、普段気にしていませんが、実はとてももろい文明の中で生きているのです。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

ハチマンタロウにやられた? 《続・平熱日記》91

【コラム・斉藤裕之】今年は庭のブルーベリーが驚くほどの豊作だ。ところが、喜び勇んで実を採っていると、枝の間に入れた腕を何者かにチクチクと刺される。その痛みは独特で尋常ではない。とはいえ、次々と熟す実は収穫しなくてはならない。なにせ、袋いっぱいの実は知り合いのカフェのスイーツの材料として引き取られ、ランチと引き換えの手はずになっているのだから。 「ハチマンタロウにやられた?」と、カフェのマスター。茨城ではそう呼ぶらしい。毛虫の仕業ということはわかっていたが、イラガという蛾(が)の幼虫で、虫を触らずとも全身から毒液や毒針を発射するらしい。「デンキムシ」とか「ヒリヒリガンガン」とか、いろんな呼ばれたりするらしいが、洗ったり薬をつけてもなかなか痛みが治まらない。 目に見えないほどの毛虫の毒液とあっては避けようがない。だから、手袋と手甲をして完全防備で摘み取ることを覚えた。それにしてもハチマンタロウとは、たかが毛虫にしてはたいそうな名前で気に入った。 そこで思い出すのが「キンタロウ」だ。故郷山口の日本海側。萩や長門あたりの海沿いを走っていると、このキンタロウに出会うことができる。炭火の上で焼かれる、小ぶりの赤い魚がキンタロウの正体だ。一夜干しにしてあって、とてもおいしい。カミさんは今でもたまに「キンタロウ食べたい!」とつぶやくことがあるほど。正式名称は「ヒメジ」という魚。多分流通にはのらない雑魚だが、こちらもかわいらしい名前だ。 オッコトヌシとキンタロウ! ここまでくると、もう一丁「〇〇タロウ」といきたいところだ。いろいろ考えてみるが、古くは漫画の主人公、食べ物のチェーン店などに多く、またワクチン担当のタロウやボルサリーノをかぶったタロウなど、やはりタロウは伝統と安定感があるのか、政界では割と好まれるらしい。 そういえば、前総理のお父さんも「シンタロウ」だったか。私の場合は、母親によく「寝タロウ」と言われていたことを思い出す。しかし、3年寝たあとにお金を儲ける寝タロウとは違って、私は「プータロウ」となってしまうのだが。 さて話は戻って、恐らく、毛虫が「ハチマンタロウ」と呼ばれるようになった理由があるはずだ。何かのきっかけで、ある限られた地域や家族の中でしか通じない呼び名が使われることがあるように。 最近耳にして気に入っているのが、弟の嫁さんが魚のカワハギの頭につけた呼び名「オッコトヌシ」。アニメに出てくるイノシシの親分だが、なるほどそっくりである。酢醤油でいただくと、イノシシ同様、ほほ肉は美味だとか。まずは尾頭付きのカワハギをさばいて料理をしなければ、出会うことはないと思うが。 「今日の夕飯は?」「オッコトヌシとキンタロウ!」。ことばひとつで、暮らしは楽しくなる?(画家)

ハチマンタロウにやられた? 《続・平熱日記》91

【コラム・斉藤裕之】今年は庭のブルーベリーが驚くほどの豊作だ。ところが、喜び勇んで実を採っていると、枝の間に入れた腕を何者かにチクチクと刺される。その痛みは独特で尋常ではない。とはいえ、次々と熟す実は収穫しなくてはならない。なにせ、袋いっぱいの実は知り合いのカフェのスイーツの材料として引き取られ、ランチと引き換えの手はずになっているのだから。 「ハチマンタロウにやられた?」と、カフェのマスター。茨城ではそう呼ぶらしい。毛虫の仕業ということはわかっていたが、イラガという蛾(が)の幼虫で、虫を触らずとも全身から毒液や毒針を発射するらしい。「デンキムシ」とか「ヒリヒリガンガン」とか、いろんな呼ばれたりするらしいが、洗ったり薬をつけてもなかなか痛みが治まらない。 目に見えないほどの毛虫の毒液とあっては避けようがない。だから、手袋と手甲をして完全防備で摘み取ることを覚えた。それにしてもハチマンタロウとは、たかが毛虫にしてはたいそうな名前で気に入った。 そこで思い出すのが「キンタロウ」だ。故郷山口の日本海側。萩や長門あたりの海沿いを走っていると、このキンタロウに出会うことができる。炭火の上で焼かれる、小ぶりの赤い魚がキンタロウの正体だ。一夜干しにしてあって、とてもおいしい。カミさんは今でもたまに「キンタロウ食べたい!」とつぶやくことがあるほど。正式名称は「ヒメジ」という魚。多分流通にはのらない雑魚だが、こちらもかわいらしい名前だ。 オッコトヌシとキンタロウ! ここまでくると、もう一丁「〇〇タロウ」といきたいところだ。いろいろ考えてみるが、古くは漫画の主人公、食べ物のチェーン店などに多く、またワクチン担当のタロウやボルサリーノをかぶったタロウなど、やはりタロウは伝統と安定感があるのか、政界では割と好まれるらしい。 そういえば、前総理のお父さんも「シンタロウ」だったか。私の場合は、母親によく「寝タロウ」と言われていたことを思い出す。しかし、3年寝たあとにお金を儲ける寝タロウとは違って、私は「プータロウ」となってしまうのだが。 さて話は戻って、恐らく、毛虫が「ハチマンタロウ」と呼ばれるようになった理由があるはずだ。何かのきっかけで、ある限られた地域や家族の中でしか通じない呼び名が使われることがあるように。 最近耳にして気に入っているのが、弟の嫁さんが魚のカワハギの頭につけた呼び名「オッコトヌシ」。アニメに出てくるイノシシの親分だが、なるほどそっくりである。酢醤油でいただくと、イノシシ同様、ほほ肉は美味だとか。まずは尾頭付きのカワハギをさばいて料理をしなければ、出会うことはないと思うが。 「今日の夕飯は?」「オッコトヌシとキンタロウ!」。ことばひとつで、暮らしは楽しくなる?(画家)

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