【コラム・及川ひろみ】秋も深まってきました。この時期、多くの野鳥が里山にやって来ます。冬に向かい、さらに南に渡って行く途中に立ち寄ったものと、冬を里山で過ごすためにやって来るものと、様々な種類が見られます。

渡りの途中のホトトギスは、桜に付く虫を盛んに食べ、少し前に南へ旅立って行きました。今年は池の水が例年より少なく、浅い水面が広がっていますが、魚を捉えるミサゴ(魚をよく狩る大型のタカ)が池にダイブし魚を狩る姿がよく見られます。ミサゴは間もなく南(西)に向かうことでしょう。

池では、バンの群れが水面に残った水草の上を器用に猛烈なスピードで歩き、時にはばたく姿が見られます。水面の枯れたヒシをついばんでいます。また、ドングリが好物なカケスは、ドングリを冬の餌として林床に隠しますが、ドングリをくわえたカケスが林に向かう姿がこの時期よく見られます。運がいいと、林床に隠すところも見られます。口先に見えるのは1個ですが、1度に5~6個口に入れ運びます。

カケスはギャーギャーとよく鳴きますが、渡ってきたころは特ににぎやかに鳴くような気がします。他の鳥の鳴き声をまねるのも上手で、だまされることがあります。カケスの声は本来ダミ声で美しいものではありません。まねた時少しダミ声が混じることがあり、ちょっと変だと思うとカケスの声だったりします。

真冬に夏鳥のサシバの鳴き声を聞きました。どうして、今ごろサシバが、と耳をそばだてると、わずかにしゃがれ声が混ざり、カケスかと気づいたとたん、ギャーとカケス本来の声に変わりました。

マガモ、コガモ、ハシビロガモ

物まねと言えば、モズもよく他の鳥の鳴き声をまねます。今ごろのモズは樹のてっぺんで、テリトリー宣言をしているかのように、ギーギーと盛んに高鳴きをしていますが、春になるとツバメ、シジュウカラ、時にはインコの鳴きまね、それも次々繰り出し、技を見せびらかすように鳴きます。秋の鳥の代表的な小鳥、モズを「百舌」と書く所以です。

池にはカモたちもやって来ています。マガモ、コガモ、ハシビロガモ、いろいろ見られますが、どれも地味な色で、真冬のカモとは大違いです。シベリアやカムチャッカで子育てをするカモ、オスが派手な姿であったらキツネなどの動物に狙われ危険です。

ヒナを育てる時期は、メス同様地味な姿をしています。秋、日本に渡って来たばかりの時には、オスはメスそっくり、目を凝らしてよく見ないとオスであることが分かりません。

さて、冬に向かい恋の季節を迎えるころまでには美しい姿に変身します。季節の移ろいとともに、生き物のさまざまなドラマに出合います。里山、これからますます野鳥が増えます。(宍塚の自然と歴史の会代表)