【コラム・先﨑千尋】原子力規制委員会は先月26日の定例会合で、東海村にある日本原電東海第2発電所について新規制基準の適合審査に「合格」したと決めた。再稼働に向けては、さらに工事計画、20年運転延長の審査をクリアする必要があるが、期限とされる来月月22日までにいずれも認可されるようだ。

「合格」したからといって、東海第2原発の安全性が担保されたわけではないが、原電は今後再稼働に向けてしゃにむに突っ走ると思われる。しかし、その道のりにはいくつかのハードルが待ち構えている。まず地元の同意。今年3月に、原電は再稼働や運転延長にあたって県と東海村のほか、水戸、日立、ひたちなか、那珂、常陸太田の周辺5市にも事前了解の権限を認める新しい安全協定を結んだ。5市1村のうち一つでも同意しなければ、再稼働はできない。

もう一つは、避難計画の策定である。東海第2の事故に備え、30㌔圏内の14市町村が避難計画の策定を義務づけられているが、これまでに策定を終えたのは3市だけ。それも問題だらけと聞く。東海第2の30㌔圏内に100万人近い人が住んでおり、病院や老人ホームなどの施設もあまたある。東京電力福島第1原発の事故の時、8万人でも地元市町村は住民の避難で右往左往したが、東海第2でのまともな避難計画などできっこないと、昨年の県知事選で策定当事者になる橋本昌さんが発言していたことを思い出す。

だから、「合格」翌日の新聞各紙は「地元同意や避難計画課題。明確な道筋描けず」「地元同意権持つ首長ら再稼働『慎重に判断』」などという見出しを付けて報道している。

再稼働反対のデモ 集会 各地で

原電側の動きに合わせるように、再稼働反対の集会も県内各地で行われている。先月1日には水戸市で1000人が集まり、デモ行進を行った。この集会には、福島原発事故で被災した福島県南相馬市の桜井勝延前市長が、事故後7年半後の今もなお続く地元の苦しみを説明し、「原発は人の生命を危うくし、環境を汚染する。福島の現実を知ってほしい」と訴えた。また地元である常陸農協(本店・常陸太田市)の秋山豊組合長も、「事故が起きれば農業生産ができなくなり、土も汚染される」と、農協として再稼働に反対する意思を表明した。

さらに先月29、30日には東海村、今月6日には常陸太田市、7日にはひたちなか市、13日には水戸市で再稼働に反対する集会などが開かれた。

13日の集会で講演した村上達也前東海村長は「首都圏で唯一、人口密集地に何故原発があり、再稼働させようとしているのか。原子力界にとって、原子力発祥の地東海村の原発の火は消せないということだ。問題だらけの東海第2。次に事故を起こすのは東海第2かもしれない」と危険性を指摘し、「新安全協定の締結は成果だ。再稼働を阻止するには、一人ひとりの原発をなくせという意思表示が大事。ノーの声をあげよう」と力説した。20日には東京神田一橋の日本教育会館で首都圏大集会が開かれる。(元瓜連町長)