【コラム・坂本栄】前回のコラム(吾妻カガミ41回)では、つくば市長五十嵐さんの行政スタイルを取り上げました。要約すると、市民の考えを重視する慎重なスタイルではあるが、クレオ跡への対応については不自然な工作があった、といった内容でした。クレオ跡問題は市のホットな案件になっていますので、今回もこの問題をフォローします。

市当局は、クレオ跡再生プランをまとめ、9月議会最終日の全員協議会に「クレオに関する検討状況について」と題する資料を配りました。なかなかよく整理された討議資料です。

ただ、市が主導して会社を立ち上げ、百貨店とスーパーが入っていた建物を買い取り、商業施設と公共施設が入る複合ビルにリフォームするという構想には、議会から批判的な意見もあったようです。新会社への市出資金だけでも20億円という「絵」ですから、議会の心配も分かります。

市議からどんな意見が出たのか、ニュースつくばの鈴木宏子記者がリポートしています(9月28日掲載)。「全員協議会では『さまざまな課題がある中、なぜクレオを優先するのか』『周辺部にどれだけ波及効果があるのか』『公共性があまりにも少ない』『テナントが埋まらないというリスクはないのか』『拙速に進めるべきでない』などの質問や意見が相次いだ」と。

民業圧迫と特定会社優遇

市のシナリオでは、10月下旬に臨時議会を開いてもらい、出資金20億円を含む補正予算の承認を得て、12月中旬に現所有者の筑波都市整備から土地建物を購入する、となっています。ですから、一連のプロセスでは賛否が噴出することでしょう。

市当局の焦燥(一昔前までの中心地区から賑わいが失われる)はよく理解できますが、市が「旧」中心地区の開発に乗り出す(デベロッパーになる)ことには違和感を覚えます。特に「おやっ」と思ったのは、以下の2点です。

討議資料には、改修後のビルの賃料を、周辺相場(月坪1~2万円程度)の半分(同7,500円程度)にする、と書かれています。周辺には大中小のお店やオフィスが入るビルがたくさんあります。市の息がかかったビルの賃料は、これらの半分ということですから、官による民業圧迫といえます。

また資料には、予想される入居施設も記載されています。それによると、5~6階には地元企業オフィスが入るそうです。市の補足説明では、つくば創業の精密機器会社が1.5フロアー借りるそうですから、特定の民間会社が優遇されることになります。

TXつくば駅周辺の不動産市場秩序を乱し、地元ゆかりの会社を特別扱いにする―先に違和感を覚えると言ったのはこういった点です。つくば市は自由で民主的な市場経済を壊していくのでしょうか(少し大げさな表現?)。(経済ジャーナリスト)