【コラム・橋立多美】過日取材で、世界の主要な新興国の中で経済成長が際立つインドネシアから研修にやってきた女子中学生8人に会った。彼女たちがつくばで着付けと茶道を体験するというイベントだった。

8人のうち4人がスカーフのような布を頭にかぶっていた。これはイスラム教の女性が頭を覆う布で「ヒジャブ」と言う。同国の90%がイスラム教徒だと聞くが、黒髪を見せている中学生が半数を占めていてヒジャブの着用は強制的ではないらしい。

しつこく着物と帯の購入を勧められる着付け教室に通ったかいあって、なんとか自力で着られることから当日着付けを手伝った。片言の日本語しか通じないが身振り手振りで彼女たちと意思の疎通ができた。

かつてヒジャブは黒い無地の布だったが、今は上記の写真のようにカラフルな色に取って変わり、数枚持っていてその日の洋服に合わせて使うのだという。おしゃれなヒジャブを扱う店や、斬新なヒジャブのコーディネートを指南する雑誌が若者たちに人気で、最近は「ヒジャブ女子」と言われているそうだ。

ファッショナブルなヒジャブ

ヒジャブを付ける手順を見せてもらった。三角に折ったヒジャブをかぶり、額の上の角の長さを指でつまんで確認すると、あごの下で留める。留めるのは待ち針状の細いピン1本。針の先が首に刺さることはないかと聞くと、取巻く女生徒たちははじけるように笑って「ない」と答えた。鏡も見ずに着用に要したのはわずか数秒。5歳になると誰でも自分で付けるという話にうなずけた。

襟足と重ねた襟元が強調される着物。ヒジャブはそこを隠してしまうが、褐色の肌にマッチした鮮やかなヒジャブと彼女たちの若い肢体で日本人では表せない個性的な装いに仕上がった。「これもありだな」と思わせた。

ヒジャブは、イスラム教の聖典コーランの「美しい部分は人に見せぬように」という趣旨の教えに基づく。だが毎日着用するならファッショナブルに楽しくと変わりつつある。そこには宗教上の教えを守りつつ、明るい出口を見つけた女性たちの息吹を感じる。いつの世もどこの国でも若い女性が時代を引っ張るのだ。(ライター)