【コラム・及川ひろみ】宍塚の里山に設置している哺乳類調査用カメラには、今年もアライグマが毎月のように撮影されています。1977年、アニメ「あらいぐまラスカル」が放映されて以来、かわいいアライグマを飼いたいと飼育ブームが起こり、大量に輸入されました。しかし愛らしいのは生後数カ月間。人に慣れることはないばかりか、凶暴になり手に負えなくなります。

そんなアライグマ、自然の中で生きるのがいいと、里山などに放たれ野生化しました。メロン、スイカ、トウモロコシなど農作物が大好物。また、水辺の生き物カエルなどの両生類や魚類を捕らえ、生態系にも影響を及ぼすアライグマは特定外来生物です。

宍塚で最初にアライグマを確認したのは2007年。この事件をきっかけに、宍塚の会は専門家と共に、アライグマ防除計画の策定を県議会に請願しました。これによって、茨城県では行政が責任を持ってアライグマを捕獲・駆除することになりました。

現在では、高知、富山、秋田を除くすべての都道府県で確認され、茨城県でも08年の80倍に捕獲頭数が激増し、生息域が全県に拡大することが懸念され、農業被害も年々増加しています。農業県茨城にとって、アライグマ増加は大問題です。

雑食性で強い繁殖力

さて、対策はどうなっているのでしょうか。アライグマを畑や庭で見つけた人は、捕獲用籠罠(わな)を市町村から借り、捕獲。それを職員が引き取り処分します。しかし、悠長(ゆうちょう)なことを言っている場合ではありません。農業被害が深刻な市では、捕獲罠50個を貸し出し、さらに20個を近く購入するそうで、職員が真剣にこの問題に取り組んでいます。

私たちはこのような事態を招くことを懸念し、09年、被害が広がっていた千葉県の職員、アライグマ研究の第一人者・池田徹先生(北海道大)を招き、生態・被害の実態を勉強する「アライグマ学習会」を開きました。また、アライグマ問題が潜在化する県内市町村、県の担当職員に参加を呼びかけ、箱罠による捕獲も行いました。

茨城県のホームページには「日本では天敵がなく、雑食性で強い繁殖力を持っていることから、このままでは急激に個体数が増加し、それに伴い生態系や農作物への被害が急速に拡大し、分布も全県に拡大することが懸念される」とあります。

外来生物の安易な持ち込みが、計り知れない問題を引き起こすことをアライグマ問題が示しています。現在、里山における捕獲は捕獲地域の対象外であるため、度々撮影されているにもかかわらず捕獲することができません。この矛盾を解決するため、県・市に掛け合っていますが、埒(らち)が明かないのが現状です。(宍塚の自然と歴史の会代表)