【コラム・中尾隆友】前回のコラムでは、茨城が元気になるための政策を3つ提案したが、「NEWSつくば」という媒体でもあるので、今回から、つくば市がさらに輝くための提案を数回に分けて申し上げたい。

1つめは、情報処理能力の育成に特化した「情報科学大学」(仮称:市立の専門職大学あるいは単科大学)をつくることだ。経済のデジタル化が進むなかで、ビジネスの現場では膨大なデータの活用を考えるAI技術者が不足している。現在、横浜市立大学や滋賀大学などがAIに精通する人材育成を目的とした学部を新設し、志願者が殺到しているという。しかしこれらの大学に、地方創生という観点から学部を新設したという発想が見受けられないのは残念なことだ。

情報科学大の新設の目的は、大企業が欲するAI人材を教育し供給する条件として、つくば市に大企業の本社機能の一部または研究所を移転してもらうということだ。その過程では、大学は複数の大企業と提携関係を構築し、共同研究や人材交流などで結びつきを強めることが有効だろう。その成果として、大企業は研究に没頭できる環境と人材の採用の双方を獲得する一方で、つくば市は将来の良質な雇用確保と優秀な若者の定住を実現できるというわけだ。

当然のことながら、専門職大や単科大をつくるために、最初からそのすべてを地方の財政で賄うというのは無理がある。だから地方自治体は、淘汰により廃校になった大学・高校や不要になった施設などを改修・刷新することで再利用するという選択肢を持つべきなのだ。そのうえで、つくば市には有望な候補地が何カ所かあることも忘れてはならないだろう。

大企業誘致と大学振興

前回述べたように、IT企業を中心に本社機能の移転需要は確実にあるのだから、つくば市は東京に近いという利便性や生活・教育環境の充実といった強みを発揮し、多くのIT企業を誘致できるポテンシャルを持っている。おまけに、市には運動公園用地として購入した46㌶の遊んだ土地がある。この土地を無償で貸すなどして、移転のインセンティブを強めることもできるはずだ。

これに対して、筑波大学でAI人材を育成する学部を新設すればいいのではないかという意見が出てくるかもしれない。たしかに、筑波大が協力してくれるのであれば、理想的な流れであると思う。ただし、筑波大が市と協力して地元の活性化を目指す方針を共有できるのかという難題をクリアしなければならない。また、そうでなければあまり意味がない。

いずれにしても、私が強く願うのは、つくば市が地域の特色や強みを分析・可視化したうえで、「大企業の誘致」と「大学の振興」を組み合わせた施策を進めてもらいたいということだ。やはり、相性の良い施策を組み合わせてこそ、相応の効果を発揮することが期待できるからだ。

つくばはシリコンバレーの街並みに似ているといわれるが、AIやIT、IoT関連の企業が集積する日本版シリコンバレー「つくバレー」を目指すのもおもしろいだろう。もし行政が本気で取り組みたいのであれば、私も惜しみなく協力させていただきたいと思っている。(経営アドバイザー)