【コラム・奥井登美子】JR土浦駅のお隣に新しい土浦市立図書館ができて、私の楽しみが増えた。美人で、気心の行き届いた入沢弘子館長にお会いするのもうれしいが、なによりも、本を選ぶ楽しみが増えたのである。

町の中に本屋さんが少なくなってしまい、読みたい本が手に入りにくくなってしまった。若い人たちは、取り寄せればいいのにと簡単に言うが、本というものはタイトルとか広告だけで送ってもらうものではない。ページをめくって、わくわくして、コレなら読んでみようと買うのが本というものなのに、取り寄せは本の楽しみ方を知らない人のやることである。

前の市立図書館は家から近いけれど、本が少な過ぎて、お目当ての本が1~2冊見つかれば幸運という存在だった。

年を取ってくると、誰でも白内障気味で、目が悪くなる。私が図書館に行って、最初に行くのが児童書コーナー。活字が大きいから年寄りに向いている。

この間、土浦協同病院で「薬剤耐性対策の公開講座」があった。「近年は医療機関外での市中感染型の薬剤耐性感染症が増加している現状です。ヒト、動物といった垣根を越えた世界規模での取り組みが必要であることが認識され、公開講座を企画しました」とある。

駅前図書館の賢い活用法

具体的にいえば、トリインフルエンザのものすごいものが土浦地域に流行した場合、医療機関と従事者は、どう考え行動すればいいのか。その基本的なことを、講座で話してくれるらしい。行きたいけれど、チト待てよ。私はサイキン、サイキンの勉強をしていない。ディノコッカス・ラディオデュランスはどんな菌でしょうかと聞かれても、解らない。

そういう時の助け舟は、図書館。本を何冊も選び出して、気持のいい窓辺の机の上にずらり並べて、見比べ、読み比べる。そういうことの出来るスペースがたくさんあって、ゆっくりと、楽しそうに、1人で読んでいる人たちも多い。

薬剤耐性感染症の本は専門的過ぎるのか、適当なものがなかったが、子供の本で「ずかん・細菌」(技術評論社)が、よく出来た絵本で、耐性菌のことまでわかりやすく書いてあった。

絵本だから、写真と絵が大きく描いてあるので理解しやすい。「絵本」といって馬鹿にして、開けてもみない大人もいるが、絵本の方が凝縮された知識が得られる場合があるのだ。最近の科学絵本は、しっかりと、内容の充実したものが増えてきた。

せっかく素敵な図書館が出来たのだから、年寄りも子供も、絵本を見て楽しもうではないか。(随筆家)