【コラム・相沢冬樹】土用の丑(うし)の20日が近づいて、霞ケ浦産ウナギの近況が気になった。県内の天然ウナギは、福島第1原発事故の影響で2012年4月以降、出荷制限がかかっていたが、16年2月に解除されている。16年度の霞ケ浦・北浦の生産量(漁獲量)は3tと報告されたが、翌17年度分も知りたくなって、県霞ケ浦北浦水産事務所(土浦市)などを訪ねたのである。

農林水産省の統計だと、震災前の2010年は、天然ウナギ漁獲量245tのうち、霞ケ浦や那珂川流域などの茨城産は40tを占めて全国トップだった。15年には全国の漁獲量は70tしかなくなり、約5万tの国内消費量、約2万tの国内生産量の大半を、それぞれ輸入もの、養殖ものに頼る推移となった。

天然ウナギといっても、霞ケ浦は常陸川水門(逆水門)で海と隔てられているから、ニホンウナギが太平洋から直接入ってくることはない。ウナギの稚魚であるシラスウナギを放流し、その成長を待って採捕するものである。出荷制限中は霞ケ浦漁業協同組合によるシラスウナギの放流も手控えられ、再開したのは16年度からだから、同年度の不漁は致し方なかった。

シラスウナギ放流は、17年度も金額ベースで200万円ほど掛けて行われた。霞ケ浦では「はえ縄」でウナギを釣り上げる漁が普通で、漁期は夏までに終わっている。体調23㎝未満は採捕が禁止なので、資源の回復具合はしばらく様子をみないと分からない。

ウナギ:絶滅危惧種?天然記念物?

しかし、17年度統計はまだまとまっていなかった。霞ケ浦漁協に聞くと「水揚げは増えている様子だが、ウナギ漁は漁協を介さず業者と直接取り引きしてしまうので統計をとれない」そうだ。今年こそ霞ケ浦産ウナギの「地産地消」を期待したが、出荷制限中に漁をやめた漁師もおり、天然ものは依然手の届かぬところにある。

ニホンウナギは、絶滅のおそれのある野生生物のリストで絶滅危惧IB種に指定されている。採捕を規制するものではないが、この先は天然ものに限らずウナギを食べること自体が難しくなってくる。ニホンウナギのワシントン条約(CITES)付属書掲載が濃厚となっているためだ。

ニホンウナギの国際取引では、日本は台湾との稚魚のシラス貿易が禁止となっている中、漁獲実態のない香港からの輸入が問題となっており、台湾産も香港経由で日本に輸入されているといわれる。仮に付属書掲載となれば、密漁されたシラスウナギの輸出入は難しくなり、国内のウナギ養殖に大打撃を与えそうだ。

ワシントン条約締約国会議は来年5月に開かれる。勧告や規制発効のタイミングは流動的だが、最悪今年の土用の丑がウナギの食べ納めとなってしまうかもしれない。養殖ウナギでも絶滅危惧種を、天然ウナギなら天然記念物を食べているようなもの。資源保護を考えたいが、蒲焼きの香ばしい誘惑に懐具合以外で抗する術を持たないのが悩ましいところである。(ブロガー)