【コラム・入沢弘子】いま、図書館界で旬の2つのテーマがあります。1つは「まちづくりと図書館」。中教審の諮問「地域活性化やまちづくりに資するために、教育委員会所管の図書館等を首長部局に移管する」を受け、図書館が公共政策の一端を担う比重が高まり、「本来の図書館機能」の低下を招くとの懸念があることです。

2つ目は指定管理者導入の影響です。図書館運営に民間企業等が参入することが可能になりましたが、専門的な人材育成や長期的な計画遂行、地域ならではの図書館サービス提供の継続性を危ぶむ声もあります。

先月開催された関東甲信越地区と全国の2つの研究大会でも、これらのテーマが盛り込まれました。「聖域」だった図書館が、外部要因によって変化を迫られることに危機感を持つ保守的な方が多いのでしょう。

土浦市は、中心市街地活性化を視野に入れたコンパクトシティを推進する中で、図書館を移転させた経緯があるため、駅前のにぎわいを創出することも当館の重要な使命です。併せて、これまで以上の図書館サービスの充実も事業計画に掲げています。

新図書館 2つのミッション

このため、施設自体をシティプロモーション資源とした事業を実施し、開館190日目の今月1日には、年間目標の9割弱の35万人来館を達成しました。運営は一部業務を民間企業に委託しています。おかげで、これまで司書職員が取り組む時間がなかった事業にも、専門性を発揮してもらっています。

私は、関東甲信越大会で、まちづくりに貢献する図書館の事例として、これまでのプロモーション戦略とその成果を発表しました。

長年勤務した広告会社では、「得意先企業の課題解決にノウハウを駆使して貢献する」ことが方針でしたので、市のミッション遂行と図書館運営の両立は当然のことでした。しかし、図書館関係者の間では、民間からの公募館長の発表に賛否が分かれたと聞いています。コンサバティブな方には違和感があったのでしょう。

いま、図書館は変革期に差しかかっています。社会や利用者ニーズに合った、「その市ならではの図書館」はどうしたら実現するのでしょうか。あなたのまちの図書館は、どんな図書館になっていくのでしょうか?(土浦市立図書館館長)