【コラム・室生勝】2017年版の高齢社会白書によると、まだ前期高齢者が後期高齢者よりもやや多いが、2020年以降は前期者より後期者が増加し、2035年に後期者がピークになるという。また、後期者は最期を迎えたい場所として自宅を望む者が56%、病院や福祉施設を希望する者が30%という。

これからは、社会保障費の抑制政策から、病院や福祉施設の増設は期待できない。しかし、自宅以外の「終(つい)の住みか」を望む者が増えるのは必至である。

後期高齢者が増加すると、必然的にひとり暮らしが増える。ひとり暮らしには昼間独居もあることを忘れてはならない。単身の息子や娘との世帯では、彼らが仕事に出かけている間、高齢者は午前8時ごろから夕方6時ごろまで1人きりになるからだ。

厚労省の「年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合」(2017年6月)を見ると、要介護者の発生率は、40~64歳で0.4%、65~69歳で2.9%だが、80~84歳では28.2%、85歳以上では60.0%となっている。

75歳を過ぎると、健康や事故のリスクが大きくなる。その主な原因は、脳卒中、認知症の発症、持病の悪化、転倒による骨折などである。急な体調変化や事故に早く気付き、すぐ手当すれば、入院期間は短く、医療費も高額とならず、退院後の介護費用も増えない。

ところが、ひとり暮らしや夫婦世帯の上記のような健康や事故のリスクを想定した支援体制は不十分である。

在宅医療介護の多職種が連携した個々のケアチームを、できるだけ圏域内でケアマネジャーが中心になって編成する。ケアチームには当然、かかりつけ医も加わることになるが、かかりつけ医が近くの診療所医師でなく、往診しない病院の臓器別専門医であることがある。主治医を近くの診療所医師と病院専門医の2人制にしてもいいのではないか。

住民への在宅医療・在宅ケアの啓蒙講座を、各圏域で診療所医師と地域包括支援センターで実施することが急務である。つくば市では、2013年度から社会福祉協議会が「地域見守りネットワーク事業」を全域で実施している。

同市の見守り希望登録者は2018年2月現在387名。内訳は、ひとり暮らし高齢者235名(60%)、昼間独居高齢者73名(19%)、高齢者世帯66名(18%)、その他13名(3%)である。地域から選ばれた「ふれあい相談員」が中心となって、近隣住民と「見守りチーム」を編成し、定期的な訪問や安否確認を行っている。

かかりつけ医が加わったケアチームに訪問看護師が参加、さらに「見守りチーム」と協働して、ひとり暮らし高齢者と高齢者夫婦世帯に安心安全な生活を提供してほしい。(高齢者サロン主宰)