【コラム・塚本一也】つくばエクスプレス(TX)の延伸論がいろいろな場面で語られるようになりました。私はTX延伸を考えるときに、都心への延伸とつくば以北への延伸では視点を分けて考えるようにしています。

都心延伸については、東京駅乗り入れを最優先に考えがちですが、それは相手を知らずに嫁ぎ先を決めるようなものです。重要視すべきは、どの路線と相互乗り入れするかということです。交通政策審議会の答申では、臨海地下鉄線と相互乗り入れして、銀座経由で羽田までという夢のようなプランが検討されているようです。基幹交通の起点・終点は交通ターミナルに接続すべきであり、羽田空港乗り入れは歓迎すべきプランです。

また、TXの東京駅方面延伸を論ずるとき、常磐線との旅客獲得競争が話題になりがちですが、都心へ通う沿線住民の選択肢の幅を広げるという視点が重要だと思います。経営会社が異なるため、それぞれの営業戦略を優先しなければならないという事情はあります。しかし、沿線自治体や出資している行政府が調整役を担い、沿線住民に最大限のメリットをもたらすような路線計画にすることも公共交通の責任です。

それには、北千住駅のハブ機能を活かすことにもっと着目すべきだと思います。北千住駅は東武線、常磐線、TXが同一階のコンコースで乗り換えが可能であり、千代田線も地下鉄として乗り入れているため、近年は都心北部の交通拠点として乗降客が急増しています。その利便性を最大限に活かすことを考慮し、東京各方面へのアクセスを確保することが常磐線、TX沿線の将来に大きな影響を及ぼすと思います。

一方、北部方面延伸については「我田引鉄」の発想ではなく、茨城の将来を思い描き、水戸とつくばのアクセスをいかに改善するかという問題意識を持つことが大事です。さらには、茨城空港を首都圏第3空港として認識し、インバウンド観光需要の首都圏北部の玄関口であり、首都災害の場合のバックアップ機関という地位を確保することが重要と思います。この2つの方程式を解こうとすると、答えはTXの茨城空港延伸に導かれるものと思われます。

私は自分の経験と知識を活かし、様々な場面で「TX延伸」について訴えてまいりました。私事により今回コラムが最後となりますが、これからもどのような立場であろうとも、つくば経済圏、茨城県、日本の将来のために、この国家プロジェクト実現の運動を継続していきたいと思います。短い間でしたが、拙文をご購読いただきありがとうございました。「NEWSつくば」の益々のご発展を御祈願申し上げます。(大曽根タクシー社長)