【コラム・室生勝】どこの市町村でも地域包括支援センター主催の圏域別ケア会議が開かれる。ケアマネジャーが担当している在宅高齢者が抱えている問題について、その地域の医療福祉介護関係者が集まって検討する会議である。つくば市では年間、各圏域で6回、計36回開催される。

この会議で検討される事例の課題で多いのは、ひとり暮らし高齢者、高齢者のみ世帯、認知症、介護保険のサービスでは受けられない生活支援などである。

大半の高齢者が現在の住居に住み続けたいと願っているが、支援がないと生活できない事例が多い。ゴミ出し、買い物支援など、介護保険サービスでは利用できない生活支援サービスを、地域の人たちがボランティアで提供している地域もある。つくば市では生活支援体制整備事業がモデル地区で始まっているが、体制づくりを早く終え、市内どこでも同じようにサービスが利用できるようになってほしい。

調理、掃除、洗濯などの生活支援のほかに、急病、転倒、怪我などの緊急時の支援も必要だ。ひとり暮らし高齢者の場合、緊急通報できる電話を設置し、複数の協力員が安否確認に駆けつけ、かつ救急車が出動してくれる「緊急通報システム事業」を利用できるが、高齢者夫婦世帯は利用できない。通報は、電話器から離れていても、発信装置を身につけることで可能だが、絶えず持っている利用者はほとんどいないという。

高齢者夫婦世帯や昼間ひとり高齢者の緊急時支援には、「ツクツク見守りたい」というサービスがあるが、119番に電話をかけることができない場合もある。夫婦のどちらかが倒れたとき、片方は冷静に電話通報できるだろうか。

高齢者だけの世帯では整理や掃除が行われず、ゴミ屋敷状態になっている家もある。台所には食べ残しや使用した食器が放置され、廊下や居間にはレジ袋、食品トレー、食べ残し、古新聞などが散らばっている。和室には万年床が敷かれ、周囲に靴下、下着、シャツ、ズボンなどが散乱、足の踏み場もない。これでは、夜間トイレに起きたとき、つまずいて転倒する危険性もある。

まれではあるが、近隣に迷惑をかけるどころか、高齢者自身が危険にさらされる失火もある。ガスコンロや種火の消し忘れ、寝タバコなどがその原因である。認知症の人でなくても、後期高齢者のうっかり忘れもある。

ひとり暮らしや高齢者夫婦が住み慣れた家で最期を迎えるには、現在用意できるサービスを全て提供しても安心安全な生活を保証できない。高齢者に安心安全な生活を提供する方法として、住み慣れた地域の集合住宅も考えてもよい時機に来ているのではないか。(高齢者サロン主宰)