【コラム・及川ひろみ】里山の環境を変える脅威の一つに竹林の拡大があります。かつて、マダケは利用範囲が広く、どの農家も庭や裏山にマダケ林を持っていました。冬になる前に伐り、稲を干すオダの脚や農作業用のかごに使うなど、無くてはならないものでした。

しかし農業も暮らしも様変わりし、利用されることなく、里山内では雑木林、スギなどの植林地にも広がり、林を飲み込む勢いで広がっています。竹林拡大の脅威は、特に西日本では大きな環境問題となっていますが、宍塚周辺でも目に余るものがあります。

里山の会では、1990年から孟宗竹林の伐採活動を行っています。会が伐採していた隣の竹林では、山主が1人で孟宗竹と格闘していました。その山には古墳がありましたが、間もなく古墳も竹で覆われてしまいました。

2006年、土浦第四中学2年生210人が2回、環境を学ぶ体験に里山にやってきました。その際、池の外来魚の学習や竹林の学習・体験を行いました。全員がマダケの伐採、孟宗竹の根を掘り採る活動をしました。代わる代わるスコップで根を掘りましたが、硬い土が竹の根を取り囲み、掘り採ることができませんでした。

竹の根は大層細かく、土中の団粒構造を破壊します。雑木林の土壌と竹林の土壌を比較すると、竹林では竹の根が広がる30㎝ほどの深さまでは、団粒構造が約1/3に減り、土壌が固く締まってしまいます。竹林の拡大は見た目に脅威を感じるだけでなく、土壌中にまで大きな影響を与え、さらに土壌水環境にまで影響を及ぼしているのです。

タケノコが竹にまで成長するのはひと月ほど。多くの水分を吸い上げ大量のタケノコを生産する竹林ですが、土壌表面には竹の葉が積もり、水分が土壌に入りにくくなるなど、竹が土壌の水環境に及ぼす影響は大きいことを、茨城大学の黒田久雄先生が宍塚の竹林で明らかにされています。

また伐採した竹は、乾くと固く、10年以上も腐ることなく姿をとどめ、処分も頭の痛い問題です。会では大型チッパーを借り、伐採した竹を粉砕しています。最近、中小型の竹用チッパーを貸し出す行政も増えていますが、孟宗竹には使えません。粉砕した大量の竹チップは、里山内の悪路舗装、農園の土壌改良に使っていますが、たくさんのカブトムシの幼虫がチップの中で育っています。

竹林の拡大を止めることは簡単なことではありません。里山の保全は手間暇がかかり、簡単ではないことを痛感しています。

かつて孟宗竹に覆われた古墳ですが、会がすべての竹を伐採、現在では様々な里山の植物が見られる古墳になっています。竹林は程よく手入れがされたところはとても気持ちのよい空間になります。タケノコが出たら食べ、食べきれない竹は若いうちに伐採。竹を増やさず、そして適当な更新を図りながら、気持ちのよい竹林作りを目指しています。(宍塚の自然と歴史の会代表)