【コラム・塚本一也】TXつくば駅周辺の商業施設が苦戦しているようです。今月20日、つくばセンタービル内のシェーキーズが閉店することになりました。万博以来30年の長きに渡って営業し、ファーストフードバイキングの草分け的な店舗でした。西武デパートやイオン跡地の入居者も決まらず、駅に近いビジネスホテル内の飲食店も撤退し、つくば駅の駅ビル的存在である商業ビルもテナントの入れ替わりが頻繁です。

つくば駅周辺では中心市街地の官舎が廃止となり、その跡地の再開発が徐々に進んでいます。つくば駅は始発駅であるため戸建て住宅や分譲マンションの売れ行きがよく、不動産業者はこぞって開発を進めています。しかし、住宅だけが先行するのではなく、商業やオフィスなどの都市機能を備えたバランスのよい市街地を計画しなければ、いびつな街をつくってしまうことになります。

俗に「水清ければ魚住まず」と言うように、学園都市の初期のまちづくりを振り返ると、商業施設や歓楽街などの開発を抑制したために、「つくチョン族」と言われた学園都市への単身赴任者の自殺が多発するような事件を生んでしまいました。用途地域の指定だけでは、民間の商業施設はなかなかその通りには開発が進まなかったのです。

昭和50年代から科学万博の開催された60年代にかけて、学園都市の商業的な中心市街地は松見公園前の天久保地区でした。この地区では科学万博開催の折に、地元歓楽街も必要であろうということで、接客を伴う店が特別に飲食店として営業許可をいただいたという経緯があります。

バブルのころは大変なにぎわいを見せた地域ではありましたが、TX開通後は駅周辺に繁華街ができたこともあり、徐々にテナントの虫食い状態が進行しております。また、天久保地区には吾妻中学校や筑波メディカルセンター病院などが建設され、近年は文教地区となったため、PTAや地域住民からは地区計画の見直しの声が上がっております。

太古の昔から都市には歓楽街や繁華街が付き物であり、生身の人間が生活する憩いの場として発展を遂げてきました。ただ、そういった地域では様々なトラブルも発生することが多く、犯罪や災害をどのように抑止するかということも課題の一つです。吾妻小学校を吾妻中の近くへ移転させる小中一貫のメリットをさらに活かし、一方で小学校跡地と官舎跡地を一体的に開発し、大規模な複合商業施設を建設するようなドラスティックな発想で再開発に臨んではいかがでしょうか。

IT・ロボットなど、つくばが得意とする方法で管理・運営を行い、血の通った人間が行き交う街並みを計画的に創ることが「つくば」らしい「まちづくり」ではないでしょうか。(大曽根タクシー社長)