《土着通信部》12 「アカンサスの学舎」復元 土浦一高旧本館

改修工事を終えた土浦一高旧本館正面玄関

【コラム・相沢冬樹】洋風建築で、屋根の棟や尖塔の頂上に設置する飾りをフィニアルと呼ぶ。これにアカンサス(ハアザミ)の花を配した県立土浦一高(土浦市真鍋4丁目、杉田幸雄校長)の国指定重要文化財、旧土浦中学校本館(旧本館)は「アカンサスの学舎」の別名がある。しかし、その花が咲くのは正面両翼端の切妻屋根の上のみで、中心にある正面玄関の頭頂部のフィニアルは長い間、武骨な四角錐の飾りに置き換えられていた。

同校出身の建築史家、一色史彦氏は「玄関の三角屋根を見上げるたびに、私は気が滅入ってしまう。この頂きにはかつて見事に大きなアカンサスの花が開いていたことを想うのである。これを設計した人にとっては耐えられない姿であろう」(住宅建築、1994)と書いた。創建当時の古写真から、玄関の切妻屋根の上にもアカンサスのフィニアルが掲げられていたことが確認できる。

同校は明治30年(1897)の創立、旧本館が現在地に建設されたのは明治37年(1904)のことだった。設計は創建当時茨城県技師だった気鋭の建築家、駒杵勤治(1877 – 1919)による。1974年の夏、一色氏は旧本館の屋根裏に分け入って、1つの棟札を探し当てた。「上棟式大頭梁茨城県技師工学士駒杵勤治」と墨書されていた。この発見によって1976年、旧制中学校校舎としては全国で初めて、国の重要文化財指定を受けることになった。

天井高が約5mもあり、採光のため縦長の上げ下げ窓のついた教室は、冬場の寒さが厳しかった。80年代以降授業には使われなくなり、創立90周年を機に資料展示室や復元教室として整備された。展示品は、上棟の棟札をはじめ、校舎模型、旧制中学校校旗、卒業生の永瀬義郎氏(版画家)や高田保氏(作家)の関連資料など。復元教室はNHKドラマや映画の撮影にも用いられ、毎月第2土曜日に一般公開されていた。

しかし、2011年東日本大震災で被災したため閉鎖され、2016年から耐震補強工事に合わせ全面的な改修に取り組むことになった。同校の創立120年記念事業として創建時の姿に復元をめざすもので、外壁のカラーリングから更新される。断面観察等の結果、これまでに7回の塗り替えが確認され、創建当時の塗色は暗紫色と淡褐色であったことが判明したためだ。また人造スレートになっていた屋根材を創建当時の天然スレートに葺き替えるため、同質の石を産するカナダのケベック州から石盤を輸入するなどした。

この復元のシンボルとなったのが正面玄関の屋根飾りだった。建物部分の改修工事は3月までに終わり、左右対称のゴシック様式で統一を図った校舎の中央、切妻破風屋根の尖端にアカンサスの4弁の花を模したフィニアルが戻ってきた。改修は現在外構工事に移っており、展示物の搬入などを待って、8月ごろに竣工式、10月から月1回の開館日を再開する予定でいる。(ブロガー)

▼旧本館建築の見どころと改修の詳細は、土浦一高ホームページ「ぶらり旧本館ご案内」(第33代校長・横島義昭氏執筆)に詳しい。

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