【コラム・浅井和幸】以前、知っていることと理解していることは違うと、このコラムでお伝えしました。カウンセリングの知識や技法を、どの様に使うかが大切であるかと。

辛さや不安を緩和してくれるものだと思っている心理学やカウンセリングというものが、人や自分を傷つけてしまうこともあります。まあ、心理学に関していえば、援助でもなんでもないですし、要は心をどの様に振る舞うかの学問なので、今回、そこは置いておきましょう。臨床心理学と、インターネットで検索してもよいかもしれません。

包丁はおいしい料理を作るための道具です。自動車は、人や物を運ぶための道具ですね。時には、まずい料理をつくる道具にもなれば、不快な気分にさせて人や物を運ぶ道具にもなります。使い方をもっと間違えば、人を傷つけてしまう道具にもなります。実際に、大きな事件や事故は起こっています。

カウンセリングを勉強している人が好む言葉に、共感とか、受け入れるとか、認めるとかがよく出てきます。これらの言葉の指す意味を上手く使えたら、つらさに寄り添ってくれる味方と感じることが出来て心強かったり、気持ちに余裕が出来たりします。上手く使えないと、悪い言動や苦しい感覚を助長してしまうことに繋がります。

さらには、「共感しなければいけない」と脅迫的に考えてしまえば、共感できない自分はダメな人間だとか、自分に共感してくれない周りの人間は何も分かっていない悪者たちだと、余計にストレスと苦しみを上積みしてしまうことにもつながりかねません。

もう一つ注意が必要なのは、人は、何を言っているかという内容よりも、誰が言っているかということで、感じ方が大きく変わってしまうことです。その人と自分の関係性が、感覚や思考に大きく関わっているのです。自分と親の関係が悪い時に、親から正しいことをいくら言われたところで、素直に聞けないどころか、反発してしまいます。少々嫌なことでも、信頼関係のある親友の言葉は聞き入れてしまうものですよね。

では、自分のつらさに対して、自分で出来る対処法は何かないか?今回は、認知行動療法の技術の一つをお伝えします。まず、自分を傷つけてしまう人。好きな人が同じような苦しい状況の時に、その人にどの様な声掛けをするかを考えて、それを自分にも投げかけてみてください。次に、他人を傷つけたり、怒らせたりしてしまう人。同じような状況の時に、自分に投げかける言葉を相手にも伝えてみましょう。

最後に、自分も人も傷つけてしまう人。好きな人が、自分にかけてくれる言葉や態度を思い出しましょう。若しくは、カウンセリングを受け、あなたの存在の大切さを感じてみてください。休養もお勧め。悪循環になっているなと感じたら、何か別の方法を試すようにしてみてください。自分一人では難しい時は、誰かにSOSを出しましょう。(精神保健福祉士)