【コラム・坂本栄】米フェイスブック(FB)の社長、M・ザッカーバーグが米議会の公聴会でいじめられている。創業14年で超急成長、ITの世界的企業になり、その高収益へのねたみもあるのだろう。私も一ユーザーとして議論の行方に注目している。

FBについては、このコラム・シリーズで取り上げたことがある(昨年10月4日、初秋の桜?はしゃいで反省)。今、利用者は20億を超えているそうだが、元々ハーバード大学生仲間のネット情報交換ツールだった。「あす学食でパーティーをやる。関心あるやつは集まれ」といった具合に。

それが、日本の人口の16倍の人が使う地球規模ツールに大化けした。検索エンジンからスタートした「グーグル」、通信販売の注文をネット化した「アマゾン」と並ぶ、ネットビジネス・サクセスストーリーの御三家になった。

私がFBに関心を持ったのは、使い方にではなく、企業価値についてだった。ニューヨーク市場に株式を上場するとの記事を読み、「FBって何だ。株を買ったらもうかるかどうか、ツールを使ってみよう」と。インストール直後は利用をさぼっていたが、現在、お友だちは400人近くに拡がった。

個人情報露出の良と否

もうけ過ぎの問題は置くとして、公聴会でのFB批判は面白い。そのひとつは、FBに登録された個人データが電子的に引き抜かれ、選挙コンサルティング会社が米大統領選の票操作(トランプに有利にクリントンに不利に)に使ったという指摘。

その数8,700万人分というから、かなり深刻といえる。コンサルによる選挙操作はどの国でもなされてはいるが、大量の個人データ(趣向や経歴)を利用して候補者の印象(雇い主の候補は好印象に、対立候補は悪印象に)を操作できれば、有権者の投票行動に影響を与えられる。

FBに登録する際、必須ではないものの、複数の個人情報をアップする。その数が多いほど友だちの輪が広がる(友だちを探して来てくれる)という仕掛けだから、どうしても多めに開示したくなる。私の場合、本名、顔写真(もっとも10年以上前のものだが)、学歴、職歴、現職のほか、自己紹介まで出している。

FBのビジネスは、こういった情報の登録者に楽しんでもらい(仕事に利用してもらい)、利用者が関心を持ちそうな広告を画面に潜ませるモデル。個人データが規制されると、FBのビジネスモデルが成り立たない。ヘビーユーザーとしては困ったことになる。(経済ジャーナリスト)