【コラム・及川ひろみ】私たちの会が活動を始めた1989年、その頃はまだ宍塚の里山では田も畑も結構見られました。その後、急激に休耕地が増え、年を経るに従い、ツル草や篠竹に覆われた荒れ地が広がっていきました。

大池の堤防下の谷津も、田んぼ作りを止める農家が増え、休耕田に変わっていきました。田んぼは、里山の生態系を支える上でとても重要な環境です。会では、休耕になった田んぼを再び田んぼに戻したいと地元の方に相談。96年、休耕地を借りて耕作を始め、99年から本格的に活動を始めました。

会は、現在3種類の田んぼに関する活動を行い、池の下の谷津全体の約半分の土地で米作りをしています。今回は田んぼ活動の中の一つ、「田んぼの学校」の話です。

田んぼの学校は、稲作とそれに伴う伝統文化(食・行事など)を学ぶ食農教育、里山の自然や田んぼの環境を学ぶ環境教育で、稲作の作業と稲作に関わる行事を大人も子供も一緒に取り組む協働の楽しさを味わう活動です。

植える品種はまんげつもち(もち米)、しめ縄用稲(わらとして利用)、耕作のやり方は機械化される以前(60年代ごろまで)の方法を基本としています。苗代に種をまき、田植え、草取り、稲刈り、脱穀を手作業で行います。多様な生き物を育む環境づくりと省力化のため、不耕起、冬水田んぼの方法をとり、農薬、除草剤は使用しません。

参加費は資料代として年間1家族1000円です。教育を受ける機会・権利を均等にする考えで設定しています。

毎年25組ほどの親子を対象に、種まきから食べるまで、継続して稲に関わり、四季の里山環境に関わることで、稲作や自然環境について深く学びます。異年齢の子ども、大人、家族の学び・交流の場です。複数年参加する親子がスタッフメンバーに加わります。

親子で年間を通して活動したことから、その後、会を支える重要なメンバーになっていった事例も多々あります。最近、市民団体の高齢化が問題になっていますが、若いメンバーが増えることは会の活性化に欠かせません。田んぼの学校は「田んぼの学校」の活動を超えたものになっています。

4月8日は今年度の開校式でした。4月は開校式、現地見学、種まき。5月は草取り、あぜと溝の整備。6月は田んぼの観察会(農家が作る田んぼ、里山内の田んぼで学びます)、田植え、さなぶり(田植えが終わったことを祝う伝統行事、昼食交流会)。7月は生き物調査、草取り。8月はしめ縄用稲の刈取り、かかし作り、稲の花の観察。10月は稲刈り。11月は脱穀と唐箕(とうみ)で選別、収穫祭。12月はかかし送り、わら細工。1月はならせ餅(伝統行事正月の餅つき)、修了式―。

田んぼの学校は、他の田んぼの活動に参加する人たちの協力が欠かせません。会の活動はどれも連携して行っていますが、田んぼは特に水の管理など年間を通した連携活動が不可欠です。(宍塚の自然と歴史の会代表)