【コラム・斉藤裕之】宇部の個展に向けてのロングドライブ。いつもパクを預かってくれるマヨねえこと小山さんは「1か月でも預かるよ」と言ってくれたが、山口で義妹のユキちゃんもパクを待ってくれていることだし。何も好き好んで千キロの道のりを犬と絵を積んで軽自動車で走らずともと思うのだが…。

とにかく無理せず安全運転。しかしなにせ長丁場なので、飽きない工夫が必要なのだけれども空いているのは耳ぐらい。普段はラジオ派、というよりも特に好んで音楽を聴く習慣もないのだけれど、高速道路でそれまで聴いていたラジオ局の電波が届かなくなるという厄介なこともあって、改めてCDの良さに気付いたのだ。

例えばCD1枚で1時間、約百キロは退屈しないで走れる。ところが世の中はサブスクやブルートゥースの時代になっているし、私の家にはろくにCDがない。

キーボードプレイヤーとしてバンドをやっている友人のマサシさん。銀行員の彼は私より一回りほど若い。先日はライブに招待されて、50年代から90年代までの洋楽を中心に楽しませてもらった。そうだ!彼にCDを借りよう。

「じょうばん せーん!」 

ところで長女の子供、つまり孫が3才近くになって2人で出かけることになった。というのも、2人目ができたので長女は少しでも体を休めたいから上の子の面倒を見てくれというのだ。生まれた時からしばらくはうちにいたし、それからも割と頻繁にうちに来ているので孫とは仲良しであるから、ふたりきりで出かけることに不安はない。

目指すは常磐線。そう、孫は電車が好きなのだ。「じょうばん せーん!」と繰り返しながら、楽しそうに駅のホームに到着。踏切を通過する度に喜び、さてどこまで行こうかと思ったが、その日は鉄橋を渡って我孫子で下車。それから、別の日には土浦までの旅を楽しんだ。

さてパクと山口に出発だ!

後日、快くCDを持ってきてくれたマサシさんとそんな話をした。というのも…彼の息子さんは以前私の家に絵を描きに来ていて、まだ学校に上がる前だったか、どうやら電車が好きだというので、とりあえず電車ばかり描かせた。家にあった子供百科事典の「でんしゃ」の項目数ページは切り取られ彼専用の見本となった。で、なんと息子さんはこの春JR西日本への就職が決まったというではないか。

JRといえば、CMにも使われた「いい日旅立ち」という歌がある。私が高校を卒業するころに流行(はや)った曲だ。なぜだか家に百恵ちゃんのレコードがあって聴いていた思い出がある。昨年まで新幹線の中で流れていたのも記憶に新しい。

さてパクと山口に出発だ! 「いい日旅立ち」になりますように! マサシさんのCDからどんな曲が流れてくるか楽しみだ。(画家)