【コラム・坂本栄】つくば市議会は12月定例会で県営洞峰公園の市営化にOKを出しました。市営化に賛成か反対かの討論を聞いていて、何かおかしいな~と思ったことがあります。県から公園を無償で譲り受けるに至るプロセスで、知事と市長の間でまともな話し合いが無く、これまで県が負担してきた維持管理費を丸々押し付けられたことです。

市営化の財政負担は妥当か否か

市営化に伴う財政負担が妥当か否か、概略、以下のようなやり取りがありました。

反対議員:▽体育館など園内施設の設備更新費は、あと37年(43年前に建てられた施設を80年持たせるというのが市の想定)で50億円かかる、▽これに公園の維持管理経費74億円(毎年2億円✕37年)を加えると、市の負担は現在価格で124億円にもなる。

こういった過大な負担を避けるために、公園と園内施設の管理は県に任せておけばよい、あるいは両者が負担し合うという主張です。

賛成議員:▽国のデフレ脱却補正予算から市に17億円の地方創生臨時交付金が入ったし、地方交付税交付金をもらっていない市の財政は安定している、▽一部市民は、公園の維持管理を手伝ってもよい、体育館などの施設利用料値上げも仕方ない―と言っている。

財政状況からは問題ないし、市民参加型管理や施設利用料引き上げで歳出は抑えられるという主張です。

県と市の共同管理案は浮上せず

簡単に言うと「経費がかかり過ぎ」対「いやなんとかなる」という構図ですが、市が公園全体と園内施設をセットで譲り受けたことを不思議に思いました。というのは、土浦市の霞ヶ浦総合公園の場合、文化体育館や多目的広場は県営、屋外プールや風車エリアは市営と、県と市が維持管理を分担しているからです。

土浦の管理モデルを参考にして、体育館などの園内施設は引き続き県に任せ、沼や緑地の公園エリアを市が引き受けるという共同管理協定ができていれば、市の負担は半分ぐらいで済み、施設の設備更新費を心配する反対市議も納得したでしょう。

知事との直接協議は一度もなし

討論を聞いていて、なぜ共同管理案が浮上しなかったのか氷解しました。県から市に公園改修計画(目玉はアウトドア施設設置)のサウンディングがあった2020年秋以降、市長は知事と洞峰公園の運営方法について直接話し合ったことが無いというのです。

「市長が知事にアポを取って話し合ったことは一度もいない。何度も直接協議するよう求めたが、その気配すらなかった」(反対議員)、「一部市民から県の計画に反対する声が出たあと、市長は県に懸念を伝えたとSNS(ネット発信ツール)に書き込んでいた」(別の反対議員)。

「一度入ったアポが前日になってキャンセルされてしまった。でも、知事とは様々な場で会っているし、市と県の担当職員間で話し合っているから、問題はない」(賛成議員)。

立ち話程度で重要案件について交渉するのは無理でしょう。県との間に齟齬(そご)がある問題の解決に市長は自ら動こうとせず、反対論をネット上で展開していたというのは驚きです。結果、県は懸案施設を取り下げたものの、公園+施設の管理を市に押し付けました。一方、市は懸案施設を止められたものの、公園+施設をセットで引き取ることになりました。

重要案件について組織のトップと話し合うのが首長の仕事です。ところが、市長は知事と対面で話し合わず(面談を拒否された?)、県の無償譲渡案を丸呑(の)みする形で対県バトルを収めざるを得ませんでした。(経済ジャーナリスト)

【市議の投票行動 アンダダ―ラインは発言者

<市営化に賛成した市議 敬称略

▽つくば自民党:長塚俊宏、黒田健祐、神谷大蔵、小久保貴史、久保谷孝夫

▽つくば・市民ネットワーク:川村直子、あさのえくこ、小森谷さやか、皆川幸枝

▽公明党つくば:浜中勝美、小野泰宏

▽創生クラブ:小村政文、高野文男

▽新社会党つくば:金子和雄

▽山中八策の会:塩田尚

▽清郷会:木村清隆

▽つくばチャレンジチャレンジ:川久保皆実

<市営化に反対した市議敬称略

▽自民党政清クラブ:宮本達也、木村修寿、塚本洋二、飯岡宏之、鈴木富士雄

▽日本共産党つくば市議団:山中真弓、橋本佳子

▽新緑会:中村重雄