【コラム・田口哲郎】 前略 先日、旅行で仙台に行ってきました。私は高校卒業まで12年間を仙台で過ごしましたので、思い出深い町です。仙台といえば杜(もり)の都として有名です。杜の都というのは伊達政宗が家臣の屋敷に果樹などの樹木を植えるよう推奨したことで、都市計画と植栽が絶妙なバランスでうまくいき、その伝統が現在の仙台市にも受け継がれているという意味だそうです。 たしかに、青葉通り、定禅寺通りのけやき並木は見事ですし、メインストリートのつき当たりには西公園という広瀬川沿いの崖の上にある緑地があり、都会の中でも存分に自然を感じられます。 ヒューマンスケールに見合った町 仙台平野の北端に青葉山があり、より北には泉ケ岳がそびえます。この都心へのアクセスもよい北側エリアには、バブル期に東京に本社を置く大手デベロッパーがニュータウンを開発しました。私はそこに住んでいました。 今回、自家用車でニュータウンに行きました。団地の住人の高齢化が進んでいたものの、空気がきれいなのか家々は古びておらず、20年前とそんなに変わらない光景がありました。団地から駅前(仙台では「まち」と言います)までは車で15分でした。住んでいた当時は、郊外は「まち」まで出るのに不便だなと感じていました(バスだと40分かかりました)が、その考えが間違っていることに気づかされました。 団地から「まち」までは近かったのです。車も多くなく、道も空いていました。茨城県南を含む首都圏では考えられないことです。仙台という町がいかにコンパクトで、都市機能が集中しているのかがわかります。あまり移動に時間をかけなくても、都市生活が送れるのはとても魅力的だと思います。 仙台駅前から勾当台(こうとうだい)公園までつづくアーケイド街を歩きました。古くからの仙台のお店はかなり閉店していて、チェーン店が増えていました。残念なことですが、裏を返すと、仙台でも東京と変わらないお店に行けるようになったということです。今回は仙台という町が持つポテンシャルを改めて知る機会になりました。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)