【コラム・坂本栄】つくば市は洞峰公園を県から無償で譲り受け、市営公園として管理する方針ですが、その予算を節約するため、園内にある体育館などの電気・機械設備が古くなっても新品に取り替えず、修理-修理で持たせる考えです。この施設「劣化容認」計画が市議の間で問題になっています。

「ケチ・ボロ」計画に市議から疑問

市の維持費ケチケチ⇒諸施設ボロボロ計画について、複数の市議が全員協議会で問いただしました。そのやりとりは、記事「34億円超の県試算認めるも平行線 洞峰公園の補修・更新費」(11月2日掲載)をご覧ください。市の管理方針と市議が指摘する問題点を整理すると、以下のようなことです。

<執行部の考え方>

▼県の計画には、約31億円(20年でならすと毎年約1億5500万円)の電気・機械設備、内装・外装、屋根などの更新費が入っていた。しかし、市はそういった設備類を新しいものに取り替えず、修理-修理で維持していく。

▼修理-修理で80年(体育館は築43年+あと37年)持たせ、その予算を毎年約3500万円計上する。

<市議からの疑問>

▼市営体育館は築60年で設備等を更新(長寿命化改修)することになっている。洞峰公園の施設だけ修理-修理で80年持たせるというのは、ダブルスタンダードではないか。

▼県の基準を無視して、モーターなどを新しいものに取り替えず、施設が80年も持つはずがない。家電などを使う生活人として、とても理解できない。

公園の管理費を少なめに見せたい?

常識的な更新計画を無視して、市はどうして修理-修理にこだわるのでしょうか? この疑問を解き明かすために、洞峰公園をめぐる県と市のバトルを振り返っておきます。

発端:洞峰公園に民営のグランピング施設を設ける計画を県が発案⇒反対:グランピング施設を設けることに市は大反対⇒対案:施設利用料の値上げによる公園管理費ねん出を県に提案⇒拒否:他の県施設とのバランスが悪いと県は市案を拒否⇒名案:公園を市に無償で譲渡する(押し付ける)案を県が提示⇒譲受:市は県案を受け入れ公園を市営化する方針。

当たり前のことですが、譲り受けることで市は洞峰公園を自分好みに管理できるものの、その経費は自分で負担しなければなりません。しかし、「グランピング施設があってもいいから公園管理は県に任せておけ」といった反対の声もあります。こういった市民を少しでもなだめるために、市が考え出したのが「ケチ・ボロ」計画なのでしょう。

市施設の将来に対する無責任の構図

でも何か変です。市が抱える懸案処理のため、これまで県がきちんと管理してきた公園の諸施設を粗末に扱おうとしているわけですから。市長は、20~30年先、自分はその職にいないと思っているのでしょう。市議の多くも、先々のことは自分に関係ないと考えているようです。市施設の将来に対する無責任の構図と言えます。

私は、169「…苦慮する市議会…」(10月17日掲載)で議会に三つの選択肢を示しました。①更新無視で設備・器機が老朽化するのを承知で譲り受ける(市案に賛成)②地域の大事な公園だから更新費用はケチらない(市案を増額修正)③新規の支出を避けるため洞峰公園を譲り受けない(市案に反対)―です。

どれを選択するか、各市議は判断力を問われます。洞峰公園を市営化する条例案(①ないし②を選ぶ市議は賛成? ③を選ぶ市議は反対?)、公園管理に必要な補正予算案(①を選ぶ市議は賛成? ②ないし③を選ぶ市議は反対?)について、各市議が12月議会でどういった採決行動を取るのか、その一覧表を本欄に載せる予定です。(経済ジャーナリスト)