【コラム・冠木新市】11月3日(金)、4日(土)、5日(日)、つくば市神郡(かんごおり)の石蔵Shitenで「金色姫伝説旅行記/つくばシルクロード2023」のイベントを開催した。3日は20人、4日は5人、5日は30人集まった。この10数年間、つくばで活動してきたが、神郡の地では始めてのイベントだった。

享和3年(1803)。常陸の海岸に髪の長い異国の女性が「うつろ舟」で漂着した。その事件は江戸の瓦版で紹介され話題を呼んだ。今年はその事件から220年目にあたるので、ぜひとも伝説が残る神郡でやりたかつた。

全体は「演劇仕立ての講演会」になっていて、「第1章 筑波恋古道」「第2章 天竺から来たお姫さま」「第3章 瓦版・うつろ舟事件」「第4章 金色姫と八犬伝」「第5章 金色姫からのメッセージ」と、過去、現在、未来へと旅する構成である。

会場を「うつろ舟」内部のタイムマシーンに見立て、時間旅行して「金色姫伝説」の変容を体験するというもの。もちろんフィクションだと誰もが考えるわけだが、話が進むにつれ、これは本当のことではないかと見えてくる仕掛けになっている。

「第4章」で、満州事変があった年、昭和6年(1931)に製作された無声映画「里見八犬伝の暗号」のガリ版刷りの台本が、神郡の蔵で発見された。「それがこの蔵であり、だからこの場所でやりたかったのです」と語ると、ほとんどの参加者がうなづいていた。信じきって帰った人も多くいた。すみません、これはフィクションです。

うれしかったことがある。13年前に作った歌「筑波恋古道」をソプラノ歌手で吹き込みし直したところ、以前にまして評判が良く、CDが欲しいと3人の方から言われたこと。また、この曲をテ一マにした映画「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」第1話を上映したところ、興味を持つ人が多くいた。以前、映画を見てあまり受けなかった2人からも、「今回見たら面白かった」との感想が聞けたこともだ。

そして「第4章」では、18年前の「北斗七星伝」を絵本バ一ジョンで語ったところ、皆、食いつくような目で見て、スマホで撮影していた。

T・カ一チスの「グレートレ一ス」

イベントを終えて、アメリカ映画「グレートレ一ス」(1965)が無性に見たくなった。監督はブレイク・エドワーズ。主人公は、全身白ずくめの善玉グレート・レスリー(トニー・カ一チス)と、全身黒装束の悪玉フェイト教授(ジャック・レモン)。フェイト教授は、レスリーに対抗しニュ一ヨ一クからパリへの自動車レースに出場する。

無声映画風のドタバタ喜劇で、2時間40分の大作である。特に、前半40分、レ一スに入るまでが面白い。フェイト教授が奇妙なデザインの人力飛行機などでレスリーを襲うシ一ン。レスリーが女性を見つめると、キラリとマンガみたいに瞳が光るシ一ンなど、次から次へと楽しい場面が連続する。

イベントの最後で、金色姫伝説は、つくばが誇るべき財産だから、つくばから世界に向けてアピールしていきたいと、フェイト教授ばりに宣言した。後で、参加者から感激したとの声をいただいた。うーん、このレ一スは、まだまだ続きそうだ。サイコドン ハ トコヤン サノセ。(脚本家)