三橋俊雄さん

【コラム・三橋俊雄】みなさん、はじめまして! 私がデザインの道を歩み出してから、はや半世紀が過ぎました。幼い頃から“絵を描くこと”と“ものづくり”が好きだった私にとって、高校3年時に知った「工業デザイン」の世界は、思ってもみなかった出会いでした。大学は工業意匠学科に進学し、卒業研究では「障害児のためのデザイン」を行いました。

その後、デザイン事務所に入り「プロダクトデザイン」に従事。36歳でもう一度学生に戻り、「地域づくりとデザイン」について学びました。その後、大学教員となってからは、主に「障害者の福祉用具デザイン」や「過疎地域の活性化デザイン」を学生たちと進めてきました。大学で最後に関わったテーマは、「遊び仕事(マイナー・サブシステンス)」という、人間の「生き方のデザイン」でした。

こうして私が歩んできたデザインの道を振り返りながら、みなさんと「デザインの世界」について楽しく語り合えることができればと思っております。

中華の青椒肉絲を作る 

今回は、「料理はデザインである」というお話からいたしましょう。

人は、お腹がすくと「今日は何を作ろうか」と思案します。冷蔵庫をのぞくと、豚肉、ピーマン、タケノコなどの食材があります。そこで、「チンジャオロースー(青椒肉絲)を作ろう」と思い立ちます。もちろん、「青椒肉絲」の具材が台所になければ、必要なものを買いに行くことから始めます。酒、醬油(しょうゆ)、それにオイスターソースなども確認して、料理に取りかかります。

このように、「料理をする」とは、「お腹がすいた」という課題(問題)に対して、食べたい料理をイメージし、食材や調理道具など、台所の限られた条件の中でやりくりしながら料理を行い、最後は食べる(課題を解決する)という一連の行為であり、それは「デザイン」をすることに他なりません。

自分をすてきに見せる

また、あなたが、外出する前に鏡の前で、帽子からドレス、靴下、バッグなど、あれこれと悩み、選ぶという行為も、「自分をすてきに見せたい」という目標に向けた課題解決型の創造的行為であり、それも「デザイン」と言えるでしょう。

そのように考えたら、自転車を直すのもデザインですし、お母さんが赤ちゃんの将来を考えながら育てていくこともデザインです。

このように、わたしたちは、「目標(課題)を抱き」「いろいろ考えて」「それを実行し」「目標に到達する(解決する)」というデザインの行為を、無意識のうちに、日々、行っているわけです。すなわち、みなさん一人ひとりが「デザイナー」であると言っても過言ではないのです。(ソーシャルデザイナー)

【みつはし・としお】1973:千葉大学工業意匠学科卒業/1973〜6年間:GKインダストリアルデザイン研究所/1979〜6年間:二番目のデザイン事務所/1985〜6年間:筑波大学(デザイン専攻)・千葉大学(環境科学専攻)にて学生/1991〜6年間:筑波技術短期大学・千葉大学にて教官/1997〜18年間:京都府立大学にて教員。6年単位で「居場所」を替えながら、さまざまな人と出会い、さまざまなデザインを行ってきました。退職後つくばに戻り、「竹園ぷらっと」「ふれあいサロン」「おやじのキッチン」など、地域の「居場所づくり」「まちづくり」のデザインを行っています。