【コラム・若田部哲】秋の味覚・栗と言えば、長野県小布施町や兵庫県丹波市が有名ですが、実は生産量日本一は茨城県。かすみがうら市はその中心地のひとつです。

その中でも「高継(たかつぎ)」という、今では日本の栗栽培において広く普及している方法を確立したのが、同市の「四万騎(しまき)農園」。今回は、同農園の3代目である兵藤昭彦さんに、おいしい栗栽培についてのお話を伺いました。

四万騎農園は昭彦さんの祖父、兵藤直彦氏により大正8年(1919)に創業。直彦氏は凍害に弱い栗の木の育成を改善するため、土台となる台木の高いところで接ぎ木をする高継苗を開発し、茨城の栗の生産性向上に多大な足跡を残されました。

昭彦さんによれば、栗の栽培にはスタンダードな方法がなく、その生産者により正解が異なる面白さがあるそうです。四万騎農園では代々の工夫の結果、木の間隔を4メートル空けて植樹し、さらにその後間伐により8.5メートル間隔としているとのこと。

また、12~3種類に及ぶ品種を生産することにより、9月から10月下旬まで収穫期を広げ、収穫する労力の集中を避けるとともに、時期ごとにより異なるおいしさが楽しめるよう工夫をしているそうです。

渋皮煮のマロンジャムも

ところで栗と言えば秋ですが、この農園には春にも見事な名物が! それが、栗畑一面に咲き誇る菜の花です。緑肥のために数十年前に蒔(ま)いた菜の花が、いつしか種が土にすき込まれて自然に生えてくるようになったとのこと。本来、花を咲かせることが目的ではないものの、この風景を楽しみにされるお客さんが増えたことにより、できるだけきれいに咲くよう、心配りをされているそうです。

さて、同園では生栗のほか、渋皮煮、ジャムなども販売しています。昭彦さんのおすすめは、手間暇かけた渋皮煮。そのほか渋皮煮をベースにして作ったマロンジャムも、看板メニューとして親しまれています。

「プレーン」「ラム」「オー・ドゥ・ヴィ」の3種類のジャムは、粒感たっぷりの濃厚な味わいで、パンやアイスと共にいただくと、濃厚な栗感を存分に楽しめる逸品。また、ローストポークやチキンソテーなど、肉料理のソースに使っても相性抜群でおススメです。

代々の工夫により磨かれてきた、濃厚かつ芳醇(ほうじゅん)な秋の味わいを、ぜひお楽しみください。(土浦市職員)

<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

 

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