【コラム・山口京子】60歳の還暦の際、「大人になれないまま、おばあさんになってしまった」と感じ、すこし空しい気持ちになったのを覚えています。65歳の今は「これからの時間で、したいことができたらいいな」と思うようになりました。

この数年、自分が生きてきた時代がどういう時代だったのかを確かめたくなりました。時代や社会の空気を吸って、自分の思考や価値観がつくられていったとしたら、その時代や社会の姿が分からないと自分もこれからも見えてこないのではないかと…。

時代や社会というものには建前と本音があり、その隔たりが大きいのではないか…。マスメディアによって見せられている現実と、マスメディアによって隠されている現実があるのではないか…。見せられている現実だけを受け止めて考えてしまうと、なにか大事なことを見落として、誤った判断をしてしまいそう…。

できるなら、誤った判断はしたくないし、間違った認識は避けたいものです。なので、限られた範囲ですが、テレビや新聞だけではなく、報道された記事に関する様々な書き手の本を読むようにしています。そうすると、ニュースで報道されていない事実や歴史、視点、書き手の立ち位置が分かって、目からうろこが落ちる経験を何度もします。本は貴重です。

そもそも国民主権とはなんなのか

戦後78年が経ちます。表向きには、日本は日本国憲法に基づく国民主権の国家であると言われていますが、そもそも国民主権とはなんなのか。主権という言葉を考えたら、すごい意味があるでしょう。主権を担える国民とはどんな国民なのか。

自分はとてもそんな立派な人間ではないから、国民主権という言葉を他人事のように感じてしまいます。大事なことの決定権にはずっと無関心で生きてきた人生だったような…。知人が「テレビや新聞がスポーツで盛り上がったり、芸能人のスキャンダルを大きく報道しているとき、国会でどんな法案が通っているか調べてみるといいよ」と言っていました。

国会なんて意識のうえでは遠い存在ですが、一度法律が可決されるとそれに生活は拘束されます。どんな法律が可決されているのか。その法律の内容はどういうものなのか。だれからのどんな働きかけがあって、どういう法案がつくられるのか。自分が国民として無関心を続けていったときに、国会に働きかけるのはだれなのか。

もしかしたら、国民主権の国であるならば、可決されてはならない法案が可決されているのではないか。わからないことばかりです。(消費生活アドバイザー)