【コラム・浅井和幸】先日、あるお店に入るのに、小道から駐車場へ右折をしようとしました。私が運転する自動車の前を走る自動車は慎重に歩道を歩く歩行者を観察してから右折を始めました。歩行者の動きを確認してから動き始めたはずのその車は、私が考えるコースとは違う方向に徐行し始めたので、私はすぐにその車の後についていかずに、ことの様子を停車したまま見守りました。

私の前の自動車の前を横切る歩行者は、自動車前方から後方へ歩いています。自動車が右折をすることを考えると、歩行者は左側から右側へ歩いている状況です。私の前の自動車は、歩行者の今は空いている前方に向かって徐行し始めたのです。

もちろん、その瞬間は、歩行者はまだ左側にいるので、右側が空いている状況です。しかし、今、左側にいる歩行者は数秒後には右側に移動するのです。結果、自動車は歩行者が向かう数メートル先で数秒後に接触することが予想されます。結局、数秒後に、自動車は自分の目の前を歩行者が歩いていることになったため、停車することとなりました。

徐行ですから、特に危険な場面ではありません。しかし歩行者が先ほどまでいた地点は、現時点では歩行者の後方(自動車からは左側)となり大きく空いているのです。わざわざ歩行者が向かう先に車を移動させて鉢合わせになり停車するよりも、数秒待っていれば歩行者をやり過ごして、私の前の自動車は10秒弱という時間ではありますが早く駐車場に入れたことになります。しかも、歩行者にぶつかりそうになるかもと足を止めさせるような気を使わせずに。

現在の常識は何十年前の常識?

このように人や時間、物事はそこにとどまらずに未来に進んでいます。今現在の止まった感覚で空いているスペースに車を移動させることは、数秒後には空きスペースではなくなることがよくあることです。

将棋やゴルフで活躍し大金を手にするヒーローが出てきて、我が子にもそれらを学ばせようと考えるとします。確かに、そのブームがあることで競技が盛んになり、レベルも上がることでしょう。しかし、競技人口も増え、苛烈(かれつ)な争いに我が子を送り出すことは、賞金から遠くなる可能性もあります。

ブームの店を出すことで、供給過多となり、倒産・借金の道が待っているかもしれません。今考えている常識や普通は、何十年前の時代に合った教えかも知れません。先を見通すことは、我々凡人には難しいこと、いや、できないことだといっても過言ではないでしょう。しかし、これが当たり前だと思い込むことは、悪循環を起こしやすく、そのときは注意して観察、または信頼できる人に相談しましょう。

今や、過去に固執して、それをこれからの流れと思い込んで行動してしまうことは、人の進行方向が10秒後も空きスペースだと勘違いして、結果、その人と接触してしまうような動きをしているのかもしれないのですから。(精神保健福祉士)