【コラム・坂本栄】土浦市立中学校でのいじめ問題に関する教育委員会と議会文教厚生委員会の対応に違和感を覚えています。教育委は本サイトの取材に回答を拒否してメールによるコメントで済ませ、文教厚生委はこの問題を取り上げないことを決めました。教育委の回答拒否と議会の審議回避の理由はなぜか同じであり、「関係生徒のプライバシー保護」でした。

不十分な教育委の対応

2019年春から22年春にかけて、車いすの生徒が受けたいじめがどんなものだったのか、学校と教育委は繰り返されるいじめにどう対応したのか―などは、保護者の証言に基づく記事「いじめをなぜ止められなかったのか 保護者が再調査求める…」(9月3日掲載)に詳しく出ています。

また、コラム166「高齢研究者と車いす生徒に冷たい土浦市」(9月4日掲載)では、教育委の市民にやさしくない対応に疑問を呈しました。

教育委がそれなりの対応をしたにもかかわらず、いじめが続いたということは、一連の生徒対応が不十分だったことを意味します。いじめられた生徒はすでに中学校を卒業しているのに、保護者が再調査を求めているのは、いじめた生徒への指導が不徹底だった原因を調べ、再発防止の教訓にしてほしいと思っているからです。

市議会も教育委に同調

この事案について本サイトの記者が取材を申し入れたところ、教育委はメールで「関係する生徒等の個人情報やプライバシーに関わることであり、回答を差し控えさせていただく」(指導課長)と、回答を拒否してきました。プライバシー保護を盾に、いじめの実態や教育委の対応などは話したくないということです。これでは、いじめの原因がわかりませんし、保護者が求めている教訓も得られません。

また、なぜ議会で取り上げないのか文教厚生委の某市議に聞いたところ、「決して無関心なわけではない。これは人権とプライバシーが絡むデリケートな内容であり、議会で取り上げると、話し合った内容が全て広く一般へ公開されることになる」といった返事でした。

教育委がプライバシー保護を理由に回答を拒否したのは、いじめた生徒に対する指導の詳細を知られたくないからでしょう。それはそれとして、教育行政のチェックを仕事にしているはずの文教厚生委は、結果として教育委のいじめ問題隠しに同調してしまっているのではないでしょうか。いじめた生徒は自分の行為を反省せずに大人になるでしょうから、教育委は児童生徒を正しく育てるという仕事を怠っていることになります。

個人の情報を守る方法 

先の記事には、いじめられた生徒が誰なのか、いじめた複数生徒が誰なのか、固有名詞は書かれていません。それがこの種の記事作成の作法だからです。でも推測はできますから、いじめられた生徒と保護者はすでにある程度のプライバシーをさらしています。生徒と保護者はそういった覚悟を固めているということです。

文教厚生委がプライバシー保護を心配するのであれば、委員会を非公開の秘密会にし、固有名詞をA、B、C、D…にすればよいでしょう。

教育委と議会の逃げの姿勢を知った保護者は、いじめ問題に「無関心ではない」文教厚生委に対し、子ども生徒と連名で文書を提出し、審議を促すそうです。矢口勝雄(郁政会、委員長)、田中義法(新勇会、副委員長)、吉田千鶴子(公明党)、鈴木一彦(新勇会)、勝田達也(郁政会)、福田勝夫(共産党)、平岡房子(社民党)、根本法子(公明党)の各氏が市議の仕事をするのか、気になります。(経済ジャーナリスト)