【コラム・斉藤裕之】弟の作業場には、建築現場で出る端材や解体作業で出た古材が無造作に積んである。春にはそれらを使ってポストをいくつか作った。シンプルな色を塗って、ヨーロッパで郵便のシンボルマークとしてよく使われるホルンを描いた。義妹のユキちゃんは家の壁に二つばかりポストを取り付けた。「郵便屋も戸惑うだろうに」と思ったが、一つは回覧板用だとかでまんざらでもなさそうだった。

この夏は巣箱を作ることにした。特に鳥が大好きというわけではない。巣箱が好きなのだ。巣箱を作り始めてかれこれ20数年になるが、多分、百個以上の巣箱を作った。

特に図面もなく、スライドソーでカットしてネジでとめていく。穴は大き過ぎず小さすぎず、シジュウカラぐらいの鳥が入る3センチほどの大きさにした。小1時間でいくつかが完成。屋根に色を塗って乾かした。作ったものは持ち帰らずに置いて帰ることにした。

なにしろ弟の家は緑に囲まれた山の中にあって、巣箱を架ける木には事欠かない。すでに、母家の前のヒノキの上にはリンゴ箱ほどの立派なのがある。フクロウを呼ぼうと弟が架けた巣箱だという。確かに、遠くの方でホーホーという声が聞こえる。

ロクジュウカラが入る小屋

さて、この巣箱を並べた写真をSNSに上げたら、欲しいという方がいたので茨城に帰ってもう少し作ることにした。作業場の前に、ちょうどいい板が野ざらしになっていたのでもらって帰ることにした。

ものの本を調べてみたら、寸法や穴の大きさ、架ける高さや位置など、巣箱を鳥に気に入ってもらうためのポイントがいくつかあるらしい。だが、私の経験では割と気紛れに鳥は入居している気がする。自然界のことを考えると、巣箱にはあまり色を塗らない方がいいような気がするが、好き勝手な色を塗った巣箱にも鳥は入る。

茨城の家に帰ってきたが、今年の夏の暑さはかなりしつこい。ある朝、思い立って残暑に立ち向かうように巣箱を作り始めた。今回持ち帰った板は古い民家の畳の下に敷いてあった松の野地板で、洗って干したら古材独特の味がある。地のままで十分にいい感じだったので、屋根にだけ色を施した。

いろんな形と色のものが10ばかりできたので並べてみた。なんだかとてもいい風景に見えた。先日、山口に書き残してきた今度建てる小屋のラフスケッチを思い出した。その絵と作った巣箱は似ていると思った。巣箱にはシジュウカラが入るが、小屋にはロクジュウカラが入る予定である。(画家)