【コラム・古家晴美】今回は、つくば市北部の農村に住む沢辺賢子(たかこ)さん(78)にお話をうかがった。50年前に玉里村(現小美玉市)の農家から嫁いで来た。当時、舅(しゅうと)と姑(しゅうとめ)は、主に稲作と養蚕を営む農家で、自分たち息子夫婦はその手伝いをしながら、養豚やシイタケ栽培に取り組んでいた。

そして、その後約30年間は、バラを中心に栽培してきた。しかし、温室の燃料費高騰などもあり、バラ園は今年2月に閉園し、後継者である息子さんはブドウを栽培している。

専業農家の現役主婦の活躍ぶりには、頭が下がる。賢子さんがバラ園で働いていた2月までの生活は多忙を極めた。バラの作業にいつも追われ、近所の人とも長話もできず、家事と仕事の合間の時間に自家用畑の面倒を見ていた。

出荷前日の月・水・土の1日のスケジュールを振り返ると、朝6時に起床し、夫婦の朝食の準備、8時から花切り開始。12時に昼食の準備、13時半くらいからずっと花を束ねている。週末以外の18時には、家族の夕食の準備を始めなければならない。

大人ばかり7人の大家族の食事では、1日8合の米を食べきる。それに伴う大量のおかず作りも一仕事だ。朝からずっと花の作業と家事に付きっ切りとなり、息つく暇もない。

そして、日・火・木の花の出荷が終わる午前10時からお昼頃を、賢子さんは自家用畑の作業時間に当てていた。この地域では、自家用野菜を作る畑を「〇〇の畑」と地名で呼ぶ以外に、「ソトヤラ」(外谷和原)とも言うとのこと。

賢子さんは、5畝(せ=500平方メートル)の畑を1人で面倒を見ている。舅の手伝いをしながら、畑仕事を覚えた。姑は養蚕にかかりきりになっていたので、舅が自家用野菜を栽培していたのだ。賢子さんが本格的に作り始めたのは、舅が他界してからのことだ。

干し柿、こんにゃく、たくあんも

今の季節は、ナス、キュウリ、トマト、ピーマン、インゲン豆、ジャガイモ、白瓜、玉ねぎ、トウモロコシなどが食べ頃だ。また、仏壇に供えるための百日草、ダリア、グラジオラス、ホオズキも大輪を咲かせ、実をつけている。

畑の中央の小梅と南高梅、柿の木の根元には、こんにゃくが青々とした葉を茂らせている。去年は梅干を10キロ漬けた。今年は干し柿とこんにゃくを作る予定だ。冬になれば、大根35キロをたくあん漬けにする。大根の運搬を除けば、すべて1人でこなす作業だ。

賢子さんにしても、他界されたお姑さんにしても、農家の女性は、まさしく「縁の下の力持ち」だ。たくましい。(筑波学院大学教授)