【コラム・田口哲郎】
前略

オカルトが似合う街は新興住宅地だと前回書きました。新興住宅地は伝統的な宗教色がありません。そしてオカルトは伝統宗教とはちがった意味をもとめます。ですから、新しくできた、科学技術があちこちに感じられる新興住宅地を歩いていると、そこはかとなくオカルトの匂いを感じるのです。

現在のオカルトの源流は19世紀フランスに求められます。そのオカルティスムの祖はエリファス・レヴィとされています。レヴィはタロットカードをユダヤ神秘主義思想にもとづいて整備しました。この思想は歴史があり、ある意味伝統的です。それではオカルトは宗教的伝統がないわけではないではないか、と言われそうです。たしかに源流ではそうです。

でも、現在までさまざまな社会の変化を経たオカルトには、宗教的伝統の影はほとんどないと言えるでしょう。宗教の伝統で育ったオカルトが世の中に広まる途中で、旧来の宗教の養分を消化吸収して、新しい「宗教のようなもの」をつくろうとしています。

「Ⅵ 恋人たち」のカード

前置きが長くなりましたが、ここでタロットを使って、オカルトが似合う街を眺めてみたいと思います。私は散歩していて、オカルトと街をつなげてみたらどうかと思いつきました。今回は、ひたち野うしくを、タロットの大アルカナ(22枚)のなかの1枚をひいて、オカルト的に見てみます。よくカードを切って、1枚を選びました。出たカードは「Ⅵ 恋人たち」のカードです。

このカードの絵柄は、太陽の光のもとで、雲のなかに大天使がいます。地上にはアダムとイブを思わせる裸の男女が向かい合って立っています。大地の奥には高い山が遠くに見える。男女それぞれの背後には1本ずつ気があり、男の後ろの木は炎の花が咲いている。女の後ろの木にはリンゴがなっていて、幹にヘビがからんでいます。このカードは全体的にとても明るく美しいイメージです。

ひたち野うしくは超高齢社会にあってとても若い街です。子育て世代も多く、小・中・高生が多く歩いています。若い家族が子どもを育てて、活気がある街。これがこの「恋人たち」のタロットカードによく表れていると思います。1回1枚ひいただけではただの偶然じゃないかと言われそうですが、この偶然を信じることが、オカルトには大切だと思います。ごきげんよう。

草々
(散歩好きの文明批評家)