《続・気軽にSOS》10 はだしの国で靴を売る


【コラム・浅井和幸】はだしの国で靴を売るという話を聞いたことはあるでしょうか?ビジネスのたとえ話でよく使われるそうです。

ある靴を履いていない国に、2人のセールスマンが訪れます。セールスマンAが、本社に報告をしました。「この国では、靴は売れません。誰も靴を履いていないのですから」。セールスマンBが、本社に報告しました。「この国では、靴が売れます。誰も靴を履いていないのですから」

おおよそセールスマンBの方が、ポジティブで良い気がします。一般的には、ポジティブが良くて、ネガティブがいけないと教えられますからね。しかし、ポジティブにもネガティブにも、良い点と悪い点があるのです。

ポジティブな気持ちは新しい事に挑戦しやすく、ネガティブな気持ちは行動を変えにくいという特徴があります。ポジティブな気持ちは危険に鈍感になりやすく、ネガティブは危険に過敏になりやすいという性質を持っています。

どちらも特徴であって、長所にも短所にもなり得ます。ポジティブも、ネガティブも、程度やバランスが必要で、その場に合わせた適切な使い方が大切なのです。

先ほどのセールスマンBも、その国で靴が売れるかどうかはやってみなければ分かりません。さらには儲けが出るかどうかは、経費などとの兼ね合いがあり、さらに複雑です。

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の特徴をあらわした、ホトトギスの有名な俳句がありますよね。

1.鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス

2.鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス

3.鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス

この3人の方法は、優劣付けがたいですよね(もちろん、全ての方法を巧みに使えたから天下人になった3人だと思いますが)。

先ほどのセールスマンAは「殺してしまえ」と、その場での営業はあきらめ、別の、靴の売れそうな場所を探すかもしれません。セールスマンBは「鳴かせてみせよう」と売る工夫をするかもしれません。「鳴くまで待とう」は、その場ですぐには売らず、売れる時期が来たら一気に売ろうという考え方です。売れ始めた靴を真似て、大資本を使って一気に市場を狙う手もあるでしょう。

私たちは、手軽に上手くいく方法、きっかけを求めます。「成功するたった3つのこと」とか「成功者に共通する7つの習慣」といった文章をあちこちで見ます。「上手くいくきっかけを教えて欲しい」という相談をよく受けます。

それでも私がお願いしたいのは、工夫をし続けること、失敗を繰り返しても考え、行動を繰り返すことです。創意工夫、試行錯誤を繰り返してほしいのです。美味しい料理を作れるようになりたいのであれば、分量を丸暗記するだけでなく、味見をしたり、食べた人の意見を聞いたりして、次に活用するのがよいと思います。(精神保健福祉士)